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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
8章・10年の時間が経った惑星アルトリア。
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大人となった幼年組。

「ところで本当に今更なんだけどさぁ、何で共也が私達と一緒にお父様の遺言状の内容を確認してる訳? おかしくない?」

「本当に今更だな!!」


 ミリア王妃の部屋で、グランク様の遺言状を一緒に確認していた俺を訝し気に見て来るクレアに、ある疑問が沸いて来た。


(……もしかして、俺とエリアが婚約した事を、クレアに報告して無いのか?)


 エリアに目線を送るとやはり俺の予想は当たっていたらしく、彼女は冷や汗を流しながら目線を逸らした。


 家族の婚約を伝えていなかった事も問題だと思うが、このままクレアにずっと何も言わのも違うと思い、今更ながらエリアと婚約している事を告げる事にした。


「えっとなクレア。 今更ながら告白するが、俺とエリアは10年前に条件付きだけど婚約しているんだ。 ホラ、エリアの左手の薬指に指輪が嵌められているだろ?」

「え、えぇぇぇぇ!? お姉様が共也と婚約してただなんて、私一言も聞いて無いんだけど!? と言う事は、もしかしてミリアお母様はこの事を知ってたの!?」

「知ってましたけど……。 私はグランクから知らされているものとばかり……」

「聞いて無いわよ!! 皆してそんな重要な事を私に言い忘れてるだなんて、みんな酷くない!?」


 エリアとの婚約を10年間も知らされていなかった事が余程ショックだったのか、クレアは頬を膨らませながら、しばらくの間俺達を目を細めて睨んでいた。


「ク、クレアごめんなさい……、ね?」

「むう!! 知らない!」


 その後、クレアに機嫌を直してもらう為に、しばらく平謝りする事になる俺達だった……。


 ==


 ミリア様の部屋で謝り続ける俺達を見て、クレアは諦めた様に一度大きく溜息を吐いた。


「もう良いです……。 エリアお姉様達が私を除け者にしようとしなかったと確認が取れましたし、もうこの件でグチグチ言うのは止めます。

 でも次からは、必ず私にも話しに教えてくださいね? 報・連・相ですよ!?」

「はい……」


 10年間人形と成ってしまっていた影響で年齢的にもそうだが、どちらが姉か分からない状態になってしまった光景を微笑ましく見ていた俺を、目聡く見つけたエリアが鋭い視線で睨んでいた。



 エリアがニッコリ微笑んで来る姿に危機感を覚えながら……。


 遺言状の開封も終えた俺達が元の部屋に戻って来ると、そこには幼年組だった頃の面影を残して大きく成長した小姫ちゃん達が集まっていた。


「あ、……本当に共也さんだ! ジェーンちゃん、共也さんだよ!!」

「だ、だからそう……言ってるじゃない……ですか……。 小姫ちゃん、興奮するのは分かりますから、首を絞めるの止、め、て~~!!」

「きゃあ! ジェーンちゃんごめん!!」

「「共也兄さん、久しぶり!! 私達も立派に成長したから、きっと共也兄さんの役に立てるはずだから、必ず私達を頼ってね?」」

「風ちゃんと冷ちゃんか?」

「「当たり」」


 水色と緑色の髪を、三つ編みにして、前に垂らしている双子の月下姉妹の姿もそこにあった。


「アハハ! 良く言われるんだけど、そんなに変わったかな?」

「俺達が知り合った時は、2人ともあまり話そうとしなかったじゃないか」

「そうだっけ? まあそれは置いておいて」

「置くのかよ!」

「まあまあ、共兄さんはクレアに会って遺言状も渡したんでしょ? ならこの後はどう行動はどうすんの?」

「そうだな……」


 俺はオリビアさんとバリスさんに会おうとしている事と、ギルドカードの再発行をして貰おうとしている事を伝えると2人は納得してくれた。


「なるほど明日バリス夫婦に会いに行くのですね。 3人は城下町の一角に居を構えているので、会いに行って上げると良いよ、きっと喜ぶはず。

 冒険者ギルドもすぐ近くにあるから、ついでに寄れば丁度良いはずだよ」

「分かった、情報ありがとな。 でも今日はもう遅いから明日かな」


 窓の外はすでに暗くなっていて、外には至る所に篝火が灯されていた。


「あれ、もう夜になっていたのね。 では私達2人はレイルさんを呼んで来るから少し待ってて、共兄さん」

「そう言えば他の幼年組だった奴等はここに居ないのか? 会ってみたいんだけど」


 俺の言葉を聞いた、2人は足を止めて振り返ったんだが、とても悲しそうな顔をしていた。


 まさか……。


「あ。 アハハ……。 私達の顔に出てた? それも含めて後で話すから皆も心して聞いてね……」


 そう言うと月下姉妹は、扉を開けてレイルさん達を呼びに部屋を出て行った。


「小姫ちゃん、2人が言ってた事って……」

「うん……。 共也さんの想像通りだけど、ちゃんとした内容は皆が揃ってからね……」


 その小姫ちゃんの言い方に嫌な予感を感じる俺達だったが、再び部屋のドアが開かれると少し白髪が増えたレイルさん達が部屋の中に入って来て、俺とエリアの姿を見つけると涙を流しながら手を握って来た。


「共也君、エリア様、良くぞ、良くぞ生きて戻って来てくれた……。 私は君達にもう2度と会えないものとばかり……くぅぅぅぅ」

「お父様、少し落ち着いて。 2人が困ってらっしゃるわ」

「ミルル……、そうだな。 つい感極まってしまった……。 全く年を取ると涙もろくなっていかんな、2人共申し訳ない……」


 レイルさんは王都陥落の影響をもろに受けたのに、領地を維持したりして10年間頑張ってくれていたんだな。

 周りにいるメイドさん達も目に涙を浮かべている。


 そのレイルさんの苦労を労う様に、エリアがレイルさんの手を優しく握った。


「カバレイル辺境伯様、今までクレアやシンドリア王国の民を守って下さったあなたには感謝しかありません。 ですから謝らないで、今はあの夕食の時のように気楽に話し掛けてくれると嬉しく思います」

「エリア様……」


 2人が主従の再会に喜んでいる中、立派に成長して大人となったミルルちゃんが俺の隣に来て、言い難そうな顔を俺に向けていた。


 この娘も綺麗に成長したな……。 一体俺に何を俺に聞きたいんだ?


「共也さん……、あ、あのね……」

「うん」

「ジェーンに聞いたんだけど、本当にディーネちゃんは………、亡くなったの?」


 ああ、なるほど。


 その言葉を否定しようとすると、剣の中で休んでいたディーネが出て来て呆然としているミルルちゃんの頭を優しく撫でた。


「きゃ! だ、誰?」

「ミルルちゃん、あなたがくれたクッキーはとても美味しかったよ?」

「クッキーって……。 その事を知ってるって事は、ま、まさかディーネちゃん!?」

「うん。 ジェーンちゃんの言う通り1度死んじゃったけど、ディアナ様が水精霊として復活させてくれたの」


 優しく撫で続けるディーネの手を握り、ミルルは目から涙を溢れさせた。


「ディ、ディーネちゃん、ディーネちゃん……良かったよぉ……」

「ずっと心配してくれていたんだね、ミルルちゃんありがと」


 2人が手を取り合い喜んでいる姿を見ていると、いつの間にか横に立っていたジェーンが2人を見て涙ぐんでいた。


「共兄」

「何だ?」


 涙を拭い取ったジェーンは、この後で話したい事があるから外に来て欲しいと真剣な顔で言って来たので、必ず向かうと伝えると彼女と共に菊流達と歓談するのだった。


「共也君、君達が明日冒険者ギルドに向かうと聞いたのが、もう今日は遅い。 部屋は用意するから、今日は泊って行ってくれないか? ミルルもディーネちゃんに再会出来てとても嬉しそうにしているのだ、だから今日だけでも……な」


 一度京谷父さん達に視線を向けると頷いてくれたので、レイルさんの提案を心よく受ける事にした俺達だったが、まさかあんな事件に巻き込まれるとは思わなかった。


 ==


 懐かしい面々との楽しい夕食も終わり後は寝るだけとなった俺は、先程の話しを聞くためにジェーンを誘い、噴水の出す水の音が響く夜の庭園へと来ていた。


「それでジェーン、俺に伝えたい事ってなんだ?」

「うん……。 えっとね……」


 少し言うべきか躊躇っていたジェーンだったが、意を決して口を開いた。


「スノウちゃんの事です」

「スノウがどうしたんだ? そう言えばジェーンに預けてから、その後の事を聞いてなかったな……。 もしかして何かあったのか?」

「実はアポカリプス教団によって壊滅させられたシンドリアの都市を見たスノウちゃんは、自分の力不足を痛感してバリルート山脈に居る母親の元に修行しに向かったのですが、あれから一度も帰って来ていないんです。 その上……」

「ジェーン?」

「彼の国に潜入している仲間からの報告で、重要な客を招き入れる部屋に大きな雪豹の毛皮が敷いてあったと……」


 俺はそれを聞いて全身の血が冷たくなるのをハッキリと感じて、地面が揺れている錯覚に陥った。


「え……、それはスノウの毛皮で間違い無いのか?」

「分かりません……。 でも最初、その部屋にはそんな立派な毛皮の敷物など無かったらしいので、スノウちゃんが未だに帰って来ていない事を考えると……」

「そんな……」


 あまりの衝撃に暫く何も言えなった俺は庭園に設置されているベンチに座って項垂れていると、そんな俺の両手をジェーンが優しく握り話し掛けて来てくれた。


「共兄、私があなたに伝えた事は可能性の話しであって確定情報じゃないです。

 明日共兄が冒険者ギルドに行ってギルドカードを再発行してもらえば、きっとスノウちゃんの事も載っているはずだよ。 諦めないで……」

「そうか、ギルドカードを見ればスノウが本当に死んでいるなら、魔法欄から削除されているはずだよな……」

「うん、明日私も冒険者ギルドに付いて行くから、一緒にギルドカードを確認してみよ?」

「ああ、ありがとジェーン、少し落ち着いたよ」

「ふふ。 良かった」


 優しく笑いかけてくれるジェーンの笑顔見て、俺は顔が熱くなるのを感じていた。


「し、しかし、みんな大人になってしまってこれじゃどっちが年上か分からなくなってしまったな」

「そんな事無い! 私達は共兄達の事を本当の兄や姉と思って慕ってるんだよ。 だからこれからも私の事を妹分として……。 ううん、共兄には1人の女性として見て貰えると……嬉しいかな……」

「ジェーン、それって……」


 1人の女性として見て欲しいって、そう言う事……だよな?


 自分の言ってしまった言葉に気付いたジェーンは、余りの恥ずかしさに耳まで真っ赤にすると両手で顔を覆うのだった。


「ジェーン……」

「共兄……」


 そんな良い雰囲気が漂う中、夜の庭園に聞き覚えの有る2人の声が響き渡った。


「ああ! ジェーンが抜け駆けしてるー!!」

「風、冷!? 何でここが分かったの!?」

「ん~、何となく?」

「そんな事で共兄との時間を邪魔しに来たの!? も~~!!」


 3人が取っ組み合いを始めてしまい、この事態をどう治めて良いか俺が悩んでいた時だった。



『きゃああああぁぁぁぁ!! ミルル様!! 誰か! 誰か来て! 賊よ!!』


―――ガシャ~~ン


 窓ガラスを突き破って黒マスクをした連中が俺達の前に降り立ったのだが、その連中の腕の中にミルルちゃんが猿ぐつわをされた状態で捕まっていた。


「ゲハハハハハ!! お前等、退かないと無駄に怪我をするぞ!?」


 何処かで聞いた事にある特徴的な笑い方をするそいつは、俺達を突破しようと突っ込んで来たが、いち早く反応した風と冷がそいつ達の前に立ち塞がった。


「ミルルを何処に連れて行こうと言うのですか、今すぐ開放しなさい。 それにあんた達もまだこんな事をしているだなんて……心底見損なったわ!」

「うるせえな、良い娘ちゃんのお前等に言われたくねえんだよ。 強力なスキルを得た俺達が好きに生きて何が悪いんだぁ!?」

「そうだ、そうだ! 俺達は自由に生きてえんだよ。 お前等のような女共の指図なんか受けねえよ!」


 ジェーン達3人を知ってるこいつらの顔には微妙に見覚えが……まさか!!


「お前等……まさか俺達と一緒に召喚された幼年組だった奴らか?」

「あ? お前は何処かで……」

「おい、さっさとずらかるぞ! 兵がこっちに集まりだしている!」

「ち! 確かにこんな奴らに構ってる暇は無いか、あばy」

『ミルルを何処に連れて行こうとしているのですか、そんな真似を私の目の前でさせる訳がないでしょうが下衆共!! 【ウォータニードルとバインド】』


 ミルルの危機に剣から飛び出したディーネは、攫って逃げようとしていた男2人の足を水の杭で打ち抜いて地面に縫い付けた上に、頭を除く全身を水で覆い拘束した。


「「ぐ、ぎゃああああ!!」」


「ち! 女を攫うのは無理か……。 しょうがねえ、お前等ずらかるぞ!!」

「拘束された奴らはどうします?」

「ああ? こうすれば良いだろうが!」


 リーダーらしき人物が投擲した物体によって、頭を穿たれた2人は一瞬何が起こったのか分からなかったみたいだが、直ぐに状況を理解した。


「ガ! ど、どうし……て……、俺達を……下……」

「鈍間はいらねえんだよ、あばよ!!」


 何かを投擲して2人を躊躇なく殺害したそいつは、煙玉を使って逃亡を図った為辺り一面が煙で覆われてしまい追う事が出来なくなってしまった。


 徐々に煙が晴れ始めると、そこにはミルルを攫おうとしていた死体が2つあるだけだった。


「あいつ、まさか……」


 あの独特な笑い方と最低な下衆っぷり……まさか奴は……。


 こうして幼年組と再会した俺達だったが、またも厄介ごとに巻き込まれてしまうのだった。



ここまでお読み下さりありがとうございます。

風と冷達と再会を果たし、重要な話し合い後にスノウの情報を告げられる共也でした。


次回はバリスとオリビアとの再会、そしてギルドカードを再発行してもらう話にしようと思っています。


次回は“冒険者ギルドでカードを再発行”で書いて行こうと思っています。


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