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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
8章・10年の時間が経った惑星アルトリア。
158/284

語られる世界情勢。

「はい皆さん、ディアナ様が居られる階層に到着しましたからさっさと向かいますよ!」


 キャロルさんと共に光る板に乗ってこの階層に来たまでは良かったのだが、先程までの事を相当根に持っているらしく、彼女の俺達に対する物言いは刺々しくなっていた。


 うわぁ……。 さっき俺達がキャロルさんの話しを聞かずに騒いでた事を、まだ根に持っているのか……。


 不機嫌となっているキャロルさんの案内で、石畳が綺麗に敷き詰められている通路を無言で歩き続ける俺達だった。


 流石にこのままでは不味いと思ったのか、菊流が小声で話し掛けて来た。


「ちょっと共也。 このままの雰囲気の中ディアナ様と会う訳にはいかないし、キャロルさんに謝罪した方が良くない?」

「やっぱりそうした方が良いのかな……」

「そうするか……」

「キャ、キャロルさん」


 全員でキャロルさんに謝罪しようと呼び止めようとしたのだが、相談していた内容が彼女に聞こえていたらしく、振り返ったと同時に綺麗に断られてしまった。


「謝罪はしなくて良いですから、次に天界へ来る様な事があったら大人しくしてて下さいね? それで今回の事は水に流しましょう」

『はい……』


 それ以降、案内してくれるキャロルさんの後ろを無言で付いて行くと、通路の先に円卓の机を取り囲むように座っている人達が見えて来た。


 その中で、銀髪を腰辺りまで伸ばしている女性が、質素な椅子に座りながらこちらに優しい笑顔を向けていた。


(もしかしてこの人が?)


 予想は的中した様で、キャロルさんはその女性に対して綺麗に頭を下げるのだった。


「ディアナ様、お客様方をお連れ致しました。 皆さん、女神ディアナ様と6人の妹達です」


 キャロルさんに紹介された6人の女性達は椅子から立ち上がると頭を下げた。 その背中には真っ白な羽根が生えていて、全員が違う髪色を持つ人達だった。


 そして、銀髪銀目の女性が椅子から立ち上がると、その綺麗な唇から声が紡がれた。


「先程キャロルから紹介されましたが、もう1度名乗らせて頂きます。 私がこの世界の創造神の女神ディアナです。 皆さん、ようこそ天界に」


 女神ディアナ様が柔らかく微笑む顔を見た俺達は、あまりの美しさにしばらく何も言葉を発する事が出来なかった。


 そんなディアナ様は、俺達の気持ちを知ってか知らずか続けて発言する。


「エリアさん、菊流さん、そして共也さん。 世界を混乱の渦へと落とした、魔王グロウを倒すきっかけを作ってくれたあなた達にとても会いたかった……。 そしてあなた達に過酷な時間を過ごさせてしまい、申し訳ありませんでした……」


 先程とは違い目に涙を浮かべてディアナ様がいきなり謝罪をしてくれたのだが、雲の上の存在である彼女のいきなりの謝罪に俺達がどう反応して良いのか分からずにいると、キャロルさんが慌ててディアナ様を静止してくれた。


「ディアナ様! 女神であるあなたが頭を下げてはなりません!!」

「キャロル、良いのです。

 私の無理な願いを聞き届けてくれたこの3人が命を失いかねない程の頑張りを見せてくれたこそ、グロウの悪意から世界を救う事が出来たのでは無いですか!」

「う、それはそうですが……」

「これくらいしないと私の気が済みませ……、あれ? そう言えば何で菊流さんが当時と変わらない姿でここに? 確か光輝に殺されてしまったはずじゃ……」


 菊流が生きてここに居る事にようやく気付いたディアナ様は、不思議な様で可愛げに右手人差し指を顎に当てて頭を捻っている。


 そこで菊流本人の口から、どうして死んだはずの自分が存在して居るのかを説明してもらう事にした。


「光輝に殺された私が今こうして存在していられるのは、ヒノメのお陰なんです」

「ヒノメ……。 もしかして、その肩に乗っている幻獣の名ですか?」

「そうです。 そのヒノメが持っていたスキルで……。 幻獣? ヒノメが?」

「ええ、もしかして知らずに一緒に行動を共にしていたのですか?」

「・・・・・。 まぁ、その話は後で聞くとして。

 ヒノメが私を火の精霊として復活させてくれたからこそ、今ここに居る事が出来ているのですが……。 

 ディアナ様、もしかして人が精霊として復活する事は惑星アルトリアにとって禁忌に振れたりします?」


 一度確認の為にディアナ様はキャロルさん達全員に視線を送ると、全員が首を横に振った事で安心した様だ。


「禁忌に触れる様な事では無い様なので安心してください。 ですが、そのヒノメさんが死者の魂を精霊化させて復活させる事が出来る能力を持っている事に驚きました……。

 ですがそうですか……。 あなたがこうして存在してると言う事は、やはり今地上で活動している菊流さんは……」


 地上で菊流が活動している? 

 ディアナ様の呟きに驚いて顔を見合わせた俺達が再度その事で話を聞こうとしたが、もうその話を聞かれたく無いのかはぐらかされてしまうのだった。


「ディアナ様?」

「え? あ、ごめんなさい。 少し考え事をしていました……」


 話しを誤魔化そうとする彼女がこれ以上この話題を話してくれないと判断した俺達は、諦めて次の話題に移る事にした。


「本題に入ろうと思いますが、私があなた達を強制的にこの天界に招いたのは、謝罪をするだけではありません。

 エリアさん、この星に帰って来て、最初に降り立とうとした場所があなたの故郷シンドリア王国でしたよね?」


「はい。 私が生まれた国ですし、一番良く知っている場所ですから。 そこで情報などを集めた後に、旅の準備などをしようとしていたのですが……。 何か不味かったですか?」

「それは……」


 ディアナ様はとても悲しそうな顔を俺達に向けて来たので、今から彼女の口から語られようとしている内容に嫌な予感しかしない……。


 そして、ディアナ様は俺達に対して、重たい口をユックリと開いた。


「皆さんにお伝えしないといけない事が沢山ありますが。 良い報告はほとんどありません……。 心の準備をお願いします……」

「……そんなに大変な事にが起きているのですか?」

「えぇ……。 そうですね、まずはあなた達が降下しようとしていたシンドリア王国ですが……」


 一拍を置いてディアナ様は口を開いた。


「……暗黒教団アポカリプスの手によって破壊尽くされてしまい、都市としての機能をほぼ失ってしまっています……」

「え!?」


 その報告を聞いたエリアは、驚きの声と共にディアナ様に詰め寄った。


「ディアナ様、都市が壊滅ってグランクお父様やクレア、他の皆は無事なのですか!?」

「残念ながらグランク王は、侵入して来た光輝によって殺害されてしまいました……」

「光輝だって!? あいつ……」


 グランク王の死を知らされたエリアは数歩後ろに下がると、俺の胸に背を預けたまま呆然と立ち尽くしてしまっていた。


「そんな……お父様……。 あ! そうだディアナ様、クレアやお母様はどうなったのですか!?」

「その2人は現場に居合わせたカバレイル辺境伯の手引きで、命からがら王都から脱出する事に成功しました。 そして、現在彼女達はカバレイル辺境伯領でアポカリプス教団に対抗する為のレジスタンスを率いています」


 2人が無事な事を知らされたエリアは先程より少し落ち着いた様子を見せた。


 あのお転婆だったクレアが、レジスタンスを率いているのか……。


「ディアナ様、レジスタンスが結成される程、アポカリプス教団の影響力は世界に広がっていると言う事ですか? 確かに狂信者達でしたが、そこまで規模が大きくなるとは思えないのですが……」


 視線を下に移したディアナ様は、言い難そうに言葉を続けた。


「実はあの教団があそこまで力を付けてしまったのは、あなたの姉であるダリアの影響が大きいのです……」

「ダリア姉さんが!?」

「ええ。 彼女は様々な人々を魅了によって信者に招き入れて勢力を拡大していくと、凱旋して来た遠征軍を王都に招き入れると、信者達を使い奇襲したのです。

 私もようやく世の中が平和になる事が嬉しくなり、王都の人々に称えられている遠征軍の人々を見ていましたが、それは悲惨な光景でした……」


 その場面を思い出したのか涙を浮かべるディアナ様だったが、俺達にその時の事を伝えようとして唇と噛みしめると話の続きを口にするのだった。


「……王都に暮らしていた人々が街道を埋め尽くしていた為、満足に隊列を組む事すら出来ない彼等は各個撃破されたり、ダリアの魅了の力で隷属させられた者も多く出てしまいました。

 遠征軍は混乱の末、散り散りになりながらも何とか王都から脱出すると世界各地に散って行きました。

 

 そこからアポカリプス教団は、抵抗勢力のいなくなったシンドリア王国の各都市を制圧して回り、6割近くもの広大な面積を自分達の勢力下においた彼らは独立を宣言。【神聖国ヴォーパリア】と言う国を建国してしまったのです……」


 遠征軍が散り散りに……。 そうだ、ダグラス達の事を聞かないと!


「ディアナ様、ダグラス達は無事に逃げ延びたのでしょうか!?」

「ええ、ダグラスさん達はたまたま本隊からかなり離れて行動していたので無事だったのですが、他の名のある方達はかなりの人数が行方不明者となっています……」

「そうなんですね……」


 ダグラス達が無事だと言う事を聞いて俺は安堵したが、グランク王の死を告げられたエリアは顔面蒼白で、今にも倒れてしまいそうだった。


 そこに1つの椅子がエリアに差し出された。


「エリア嬢、この椅子に座ると良い。 少しは落ち着くはずだ」

「はい、キャロル様のお心遣いに感謝いたします……」


 素直に椅子に座ったエリアは、両手で顔を覆い隠すと静かに泣いていた。


「……これからあなた達が地上に降り立てば、残酷な光景を沢山目にすると思いますが、どうか心を強く持ち続けて下さい。

 そして、前回に続き今回も私のお願い事になりますが、彼の国神聖国ヴォーパリアを壊滅させて欲しいのです……」


 その言葉に反応した菊流が、ディアナ様に尋ねる。


「それは、私達だけで神聖国を壊滅させろと言う訳では無いですよね?」

「もちろんです。 こちらからも少ないですが戦力を出させて頂きます。 イリス、こちらに来て頂戴」


 俺達の前にイリスと呼ばれた金髪を肩甲骨辺りまで下ろした10歳位の幼女が、紫の目を俺達に向けてくると丁寧にお辞儀した。


「皆様方の旅に同行させて頂きます戦乙女の1人、7女のイリスと申します。 どうぞよろしくお願いいたします。 ………ねぇ、キャロル姉この言い方で合ってる~~?」

「ちょ! 何でちゃんと最後までやらないのよ、全部台無しじゃない!!」

「え~~。 でも、これで合ってるか不安になってさ~~。 と言う訳だから皆さん、改めてよろしくね♪」

「またディアナ様の威厳を高めるための企画が1つ破綻した…………」


 片手を上げて挨拶してくるイリスの後ろでは、ディアナ様はイリスの事を見て優しく微笑んでいるが、キャロルさんは地面に両手を付きガックリと項垂れていた。


 地面に手を付いて項垂れている人を、初めて見る事になるとは思わなかった……しかも異世界で……。


 片手をイリスの頭の上に置いたディアナ様は、彼女の能力を教えてくれた。


「イリスは天界にいる私達と通信する能力を有していますから、何か本当に困った事があればこの娘を通して連絡を入れて下さい。 出来る限り対処いたしますので」


 神と何時でも通信が出来るのは心強いな。


「共也さん、エリアさん、菊流さん。 あなた達3人には魔王グロウの討伐を協力してくれた報酬として好きなスキルを1つ授けますので、今から表示させるスキルボードの中から選んで下さい。

 この報酬は鈴さん達にも渡している物なので遠慮しないで受け取って下さいね?」


 俺達の前に薄く透けている黒いボードが浮かび上がり、様々なスキルが表示されていた。


「その中から好きなスキルを1つ選択して、その欄を触って貰えれば獲得する事が出来ます。 焦らなくて時間は十分にありますので、どうぞユックリと選んで下さい」

「分かりました」


 どれが良いか悩みながらスキルボードを俺達3人が眺めていると、ディアナ様が何かに気付いた様で目を細めて俺を凝視していた。


「あ、あの……。 ディアナ様、俺に何か?」


 俺の指摘に焦った彼女は何故目線がきつくなったのか、その理由を話してくれた。


「いえ、あなたの周りに薄っすらと青と白色の燐光が見えるので、一体何の光りだろうと思って見ていた為、目線がきつくなってしまいました」


 青と白の燐光?


「俺の周りに……ですか?」


 辺りを見渡すが、それらしい光りは見当たらない為俺の頭には疑問符が沢山浮かんでいた。


「えぇ、共也さん、あなたの周りに漂う燐光は常にあなたを守ろうとしています。 命をかけて守ってくれた対象に心当たりはありませんか? 人でも動物でも何でも構いませんので」


 命を懸けて守ってくれたか……。 菊流はここに居るし。 他に?


「共也さん、もしかしてディーネちゃんの事じゃないですか? 光輝が部屋に来た時にディーネちゃんを殺したとか言ってた気が……」

「そう言えばそんな事を言ってたな……。 じゃあ後は同じ場所にいたマリか?」


「いいえ、マリさんは生きてあの場所から脱出する事に成功していますから、違うかと」

「え、マリは生きて脱出出来ていたのですか!? 良かった。 本当に良かった……。 じゃあ後は……」


 そこで事の成り行きを見守っていた京谷父さんが、ある事を思い出した様で俺に教えてくれた。


「共也、もしかしてタケの事を指しているんじゃないか?」

「え? タケ?」

「ああ。 動物病院の病室で、お前の額にタケが額を重ねると不思議な光りが輝いただろう? あの現象が何なのかずっと疑問い思っていたが、タケがお前を常に守ろうとしていたと言うのなら納得が行く話だ」


 そう言えばそうだ。 俺も当時は不思議な現象だと思っていたけれど、もしかすると俺は無意識の内に共生魔法が発動させていたとしたら……。


「京谷父さん、そうなのかな? そうだと嬉しいけど……。 ディアナ様、2つの燐光は魂だと予想出来ましたけど、どうなさったのです?」


 俺を守る燐光が2人の魂なのかもしれないと予想は出来たけど、一体何が気になるのだろう?


「……そのディーネさんとタケさんは共也さんを未だに守ろうとしています。 その2つの魂を菊流さんのように精霊化させる事によって、復活させる事が出来ると言えば……。 どうします?」

「復活させる事が出来るのですか!?」

「はい、これは共也さんを命懸けで守った2人のご褒美なので、契約者である共也さんの合意があれば履行する事が可能です」


 その台詞をディアナ様から告げられた俺は頭を下げて即答した。


「ディアナ様、お願いします! 2人を復活させて上げてください!!」


 ディアナ様は俺をジッとしばらく眺めた後に軽く頷いた。


「良いでしょう、2人の魂もそれを望んでいるようですね」


 2人が復活する! 


 右手を俺に向けて翳すと、ディアナ様独自の魔法なのか聞いた事も無い魔法を口にした。


「では行きます……『2つの魂よ今ここに契約者の元に精霊として顕現したまえ!』【神威魔法・精霊昇華】」


 ディアナ様の短い詠唱の神威と言う魔法が発動すると、青と白の魔法陣が俺の左右に現れると一際強い光を放った事で全員が目を閉じた。


 暫くすると光の収まった事で全員が目を開けると、魔法陣が合った場所には1人の綺麗な水色の髪を持つ女性と、俺を守って命を落としたとても懐かしいがとても大きくなった狼犬がそこに居た。


「共也さん、お久しぶりです。 とても会いたかった。 分かるかな? 私はディーネだよ?」

(共也、元気にしてたか!? 俺はタケだよ、覚えてるよな!?」


「ディーネ、タケ……君達に会いたかった、会いたかったんだよ……。 ううううぅぅぅ……」

「共也さんったら、会った早々に目から水を流しちゃって……。 そんな共也さんを見てたら私も目から水が出て来ちゃうじゃないですか……」

(共也、これからもお前をずっと傍で守ってやるからな! もちろん京谷パパ達や千世ちゃん達もずっと一緒だよ!)


 こうして俺の大切な2人は精霊となる事で、ディアナ様に復活させて貰う事が出来たのだった。


 ディーネ、タケ、お帰り……。


ここまでお読み下さりありがとうございます。

今回はアポカリプス教団の建国の情報と、ディーネ、タケの復活回でしたが、少し話の進行が遅い気がしますが気にしすぎでしょか……。


次回は“地上へ”で書いて行こうと思います、なるべく話の進行を進めようと思うので応援よろしくお願いします。


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