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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
1章・異世界に、そして出会い。
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お転婆王女 クレア=シンドリア=サーシス

「そう!そこの最上 共也と言うあなた!」


 今、俺達はエリアの妹である、クレア第二王女に呼び止められていた。


「俺の事……。 ですよね?」

「あなた以外、最上 共也と言う人物がいるのですか?  まぁその事は今は良いです。 私があなたを呼び止めたのは聞きたい事があったからです!」

「何が聞きたいのでしょう?」

「兵士達の噂話を聞きましたが、あなたとエリアお姉さまがパーティーを組むと言うのは本当なのか?  と言う事が聞きたかったので呼び止めたのです。 で、本当の事なのですか?」


 額に青筋を浮かべながらニッコリと微笑むクレア王女に対して、誤魔化さない方が良いと本能的に感じたので素直に答える事にした。


「あ、ああ。 俺とエリアの2人に加えて、ここに居る菊流を加えた3人でパーティーを組むつもりですが……、どうかしましたか?」


 3人でパーティーを組む事を素直に伝えた俺に対して、クレア王女は何故か俺を指差して来た。


「反対です……」

「え?」

「反対だと言ったのです! 様々な人の噂話を聞きましたよ!? あなたは、使い道が全く分からない魔法スキルを1つ取得していただけで、他の有用なスキルは一切所持してい無かったと聞いていますが、本当の事なのでしょうか?」


 もうそんな話が、噂話として出回っているんだな。 他のスキルを所持していないのは本当だから、否定出来無いんだよな……。 でも、噂話として出回るのはちょっと早すぎじゃないか?


「確かに使い方の分からないスキルを所持しているだけで、他のスキルを持っていなかったのは事実です。 ですが、基本スキルの剣術スキルなどなら、努力と運次第で取得出来ると教わりました。 俺の言ってる事って間違っていないですよね?」

「確かに基本的なスキルなら、取得するのにそう時間が掛からないかもしれないわね……。 でも、あなたが他のスキルを取得出来たとしても、私はあなたの毒牙からお姉様を守ってみせるわ!」

「「「毒牙???」」」


『エリアを、俺の毒牙から守る?』俺達3人は、クレア王女の言ってる意味がすぐに理解出来ずにしばらく考え込んだが。


(ねぇ、もしかしてクレア王女が言いたい事って……)

(菊流、彼女が何を言いたいのか分かったのか?)

(多分、共也が旅の途中で、絶対エリア王女を手籠めにするって言ってるんじゃないかな?)

(するか! もし、その通りにしたとしたら、その後に待っているのは『死』の2文字だろ!?)

(普通に考えたら分かりそうなものだけど、クレア王女はそう思ってい無いみたいよ?)


 恐る恐る視線を戻すと、妄想豊かなクレア王女は人差し指を俺に向けたまま糾弾を続ける。 


「エリアお姉様が召喚主としての義務を果たそうと決めたのを良い事に、あなたはきっとエッチな事を要求してくるに違いありません!!」

「ク、クレア!?」

「む、むぐ!?」


 慌ててクレア王女の口を塞ぐエリアだったが、恥ずかしそうにこちらを上目使いで見て来ていた。


 そして、俺はエリアの視線を受けながらも、何でスキルの話からエロの話しになったんだ? と言う的外れな事を考えていた。


 きっと本で得た知識の影響なんだろうな……。


「クレア王女、そんな要求をエリア王女にしませんよ……」

「嘘だ!」


 おおう……。 惨劇が起きた村人の台詞を言うクレア王女に驚きながらも、何とか彼女を宥めようとしたが興奮していて話を聞いてくれない。


「エリアお姉様、訳の分からないスキルを持つ男と一緒に旅をする事は、エリアお姉さまが危険過ぎます! お願いですから、今すぐパーティーを組む事を止めて下さい!」

「クレア……、あなた……」


 激昂しながらも涙を流しながら、エリア王女が俺とパーティーを組む事を反対しようとするクレア王女の姿に、ただ俺が持つスキルが少ない事が理由じゃ無い事を知った。


(この娘はただエリアの事が心配なんだな。 だから、この後怒られたとしても、俺とパーティーを組む事を反対せずにはいられなかったんだな)


 涙を流すクレア王女に近づいたエリアは、肩に手を乗せて優しく話し掛ける。


「クレア……。 あなたが私の事を心配して、パーティーを組む事を反対しているのは分かってるわ」

「エリア姉様……」

「でも聞いて。 私はね、召喚主としての義務を果たそうとして、共也さん達とパーティーを組もうと思った訳じゃ無いのよ?」

「グス、じゃあどうしてその変な男とパーティーを組もうと思ったのです?」

「変ってあなたね……。 まあ良いわ」


 え? 良いの??


「召喚した共也さんと目が合った時に感じたの。 もしこの人とする旅がどの様に過酷になっても、きっと乗り越えて行けると言う確信があったのよ? だから、共也さんのパーティーに入ると決心した時も、この後どんな旅になるんだろうと言う楽しみの方が勝っていたほどですよ?」

「でも、戦闘スキル1つも持っていない仲間を連れた旅程危険なものはありませんよ!?」

「そうね、あなたの言う通り危険な旅になる可能性が高いでしょうけど、すでに私は共也さんを信頼しています」

「不思議に思いましたけど、どうしてお姉様は会ったばかりのその男を信頼するのですか?」

「ふふ。 それは私にも分からないけど、直感としか言いようが無いわね」


 心配で涙が止まらないクレア王女に、エリアは優しく語り掛ける。


「クレア、あなたが私の身を案じて心配してくれてるのはとても嬉しく思っています。 だから、そんな悲しい顔をしないで。 ね?」

「お姉様……。 グス」


 優しく微笑みハンカチでクレア王女の涙を拭うエリアはそのまま彼女の頭を撫でる。

 すると、先程まで頑なにパーティーを組む事を認めなかった彼女だったが、静かに首を縦に振った。


「お姉様の考えは分かりました……。 まだその男とパーティーを組む事を完全に納得している訳ではありませんが、もう組むなとも言いません。 ですからお姉さま、必ず無事に帰って来てください!」

「クレア、ありがとう。 ですが私も簡単に死ぬつもりはありませんよ」


 頭をエリアに撫でられた事で落ち着いたクレア王女は、俺の顔をジッと見つめると頭を深く下げた。


「最神 共也……。 先程の無礼な行いは謝罪する、だからどうかお姉さまの事を頼む……」

「分かった、君からの謝罪は受け取るから顔を上げてくれ。 子供に頭を下げさせるのは流石に絵面が悪い。 だから、エリアは必ず無事に連れて帰って見せるよ」

「うん。 お願い」


 涙を袖で拭い笑うクレア王女は、俺達とは逆方向に歩いて行った。


 明日、冒険者ギルドに向かう準備の為に自分達の部屋に戻ろうとすると、先程俺達とは逆方向に歩いて行ったはずのクレア王女の声が通路に響いた。


「最神 共也!」

「ん? クレア王女、何か用事でも思い出したのかい?」


 振り返った俺が見た光景。 それはクレア王女が、俺のすぐ目の前まで来ていて……、勢いを付けて飛んで……、両足を揃えて……。 そして、その勢いのまま俺に突っ込んで来た。


「ぐふぅ……!」


 あまりに華麗なドロップキックに反応が遅れてしまい、俺はそのままクレア王女の攻撃を綺麗に受けてしまった。 


「と、共也さん!?」


 エリアの悲鳴が響く中、意外と威力のあったクレアのドロップキックを受けた俺は、壁際まで吹き飛ばされてしまった。

 そしてスカートに付いた埃を払い起き上がったクレア王女は、両腕を胸の前で組むと俺に対して警告をして来た。


「あはは! エリアお姉さまを易々と手に入れられると思うなよ! 共也!」

「クレアーー!!」

「キャ~!!!(笑)」


 クレア王女は脱兎の如く逃げ出すと、子供とは思えない程の速度で通路の角を曲がって行き、そのまま姿が見えなくなってしまった。


「ぐ……理不尽だ……」

「共也、災難だったわね……。 でもあの年の娘に力で負けるのはさすがにだから、今後の為にも体を鍛えよ?」

「よろしく……菊流」


 菊流にまで心配をかけてしまう始末……。 でも菊流の言う通り、今後も訪れるクレア王女の奇襲に備える為にも体を鍛えるしかないか……。


 ==


 この後、食堂で夕食を取っている俺達の前に深い蒼色髪を肩甲骨辺りまで伸ばしている、幼馴染の1人福木 愛璃(ふくき あいり)が近づいて来た。


「愛璃ちゃんじゃない、難しい顔をしてどうしたの?」

「えっと、相談したい事があるの。 少しだけでも良いから、話を聞いて貰っても良いかしら?」

「良いけど……。 何かあったの?」


 愛璃は難しい顔をしながら一度呼吸を整えると、その相談内容を話し始めた。


「2人は室生のスキルの問題点って、把握してる?」

「うん、今日練兵場にいた室生と、少しその話をしたから……」

「なら話が早いわ。 あなた達がもし旅の途中で、銃本体は無理だとしても、黒色火薬の材料の一つ、硫黄や硝石を見つけたらすぐ連絡を欲しいのよ。 銃自体が無いからと言って、槍を振ってるあいつの姿を見てるのは可愛そうでね……」


 室生と俺はスキル自体が使用出来無いから何処か似た様な感じがするが、それはそれ、これはこれだ。


「任せてく愛璃ちゃん。 黒色火薬が見つかったらすぐにでも愛璃か室生に知らせるよ」

「ありがとう菊流……。 銃本体はすぐに手に入れる事が出来ないだろうけど、火薬があれば銃弾を作って貯めておくことが出来るし、余ってたら手榴弾や爆弾にする事も可能だからね」

「う、うん。 そうだね……」


 爆弾を作るレシピか……。それが魔族側に流れない事を願うが、可能性ばかりを考えていても前に進む事が出来ないから意味が無いな。


「あ、後私が取得したスキルは【二刀流】と【双剣術】だから、忘れないでね?」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


【名前】

 :福木 愛璃(ふくき あいり)


【性別】

 :女


【スキル】

 :二刀流

 :双剣術


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 火薬の材料を見つけたら、すぐにでも持って帰って愛璃か室生に知らせると約束したのだが。


 愛璃の顔を微笑を浮かべながら見つめる菊流の姿を見て、愛璃の綺麗に整った方眉が跳ね上がった。


「菊流そんなにニヤニヤしてどうしたのよ……」

「いや~、室生は愛されてるな~って思ってね?」

「なっ! そ、そんなのじゃ無いわよ!!」

「えっ! 愛璃ちゃん違うの?」

「ち、ちがわ……無い……けど……」


 問いにか細く答えた愛璃は顔を真っ赤にして俯いてしまうと、そのまま黙り込んでしまった。


「やっぱり愛璃ちゃんは可愛いな~」


 俯く愛璃を菊流は抱きしめると、頭を撫でて落ち着かせる。


「それで愛璃ちゃん。 火薬の材料を見つけた場合は愛璃ちゃんに知らせるのは構わないんだけど、銃本体を作れる職人に心当たりはあるの?」

「あんたねぇ。 こうやって抱き付いたまま、話を進めるのは止めてくれない?」

「駄目だった?」

「……まあ良いわ。 今銃本体を作れそうな鍛冶職人の情報を集めているけど、こっちも全く進展が無いわね…。  優秀な鍛冶師が見つかれば私が直接交渉してみようと思ってるけど、多分お金や時間が相当かかるでしょうね……」

「この世界の人に取って銃って完全に初見の上、オーダーメイドだから高くなるよね……」

「愛璃ちゃん、もし優秀な鍛冶師が何か理由があって野に下っている場合は、詳しく話しを聞いてみるわね?」

「ええ、私も継続して各方面から調べてみるから、何か分かったらすぐお願いね。

 エリア王女様、お食事中に突然割り込んですいませんでした」


「いいえ、愛璃さんに取って、とても重要な事なので気にしないでください」

「あれ? 私って自己紹介しましたっけ?」

「ふふ。 菊流さんが、何回もあなたのお名前を呼んでたじゃないですか。 福木 愛璃さんで合ってますよね?」

「ええ、それで合っていますけど……。 自己紹介が遅れてしまって申し訳ありません」

「謝らないで下さい。 せっかくこうして知り合えたのですから、私とも仲良くして下さいね?」

「こちらこそよろしくお願いします。 またの機会があれば、ユックリとお話をしましょう」

「是非お願いしますね」


 その後、夕食を済ませた俺達は、自室に戻り大人しく明日に備え眠る事にしたのだった。


(明日は憧れの冒険者ギルドか、楽しみだな)


2日目終了です。

次回、冒険者ギルドへ向かいます。

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