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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
6章・魔族と人族の戦争。
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2人の初めての共闘。

 姉のテトラは竜人将のクレストのアンデットと近接戦をしていたが、まだ成長し切っていない体では動きが鈍り始めているとは言え、曲がりなりにも魔将を名乗った人物のアンデットが相手では勝手が違う為、中々上手く立ち回れないでいた。


「アンデットになってかなり能力値が落ちてる上に、剣が2本とも折れているのにこの強さって、良くダグラスさんはこいつに勝つ事が出来たわね!!」

「はぁぁぁぁぁ……」


 クレストのアンデットは口を大きく開けるとテトラに息を吹きかけた。

 すると物凄い腐臭が、敏感な鼻を持つテトラを襲った。


「くっさ!! こいつ、口からもの凄く臭い息を私に吹きかけて来るんだけど、もう腐り始めてるんじゃないの!?」

「はぁぁぁぁぁ……」

「この! さっきから分かっててやってるんじゃないでしょうね!? 口を閉じなさいよ、腐りかけトカゲ!!」


 ―――ゴシャ!!


「ガフ……」


 顎に1発良いのを貰ったクレストのアンデットは数歩後ろの下がると、急に右手に持つ折れた剣を頭上に掲げた。

 だがテトラは何故その行動をクレストが取ったのか最初分からなかった。 けれども、奴の背後から沢山のアンデットが現れた事でその行動の意味を知る事となった。


 ―――ガシャガシャガシャガシャ……


 そう、右手の折れた剣を掲げた理由、それは骨達を招集する為だった。


「まずい! クレストと戦いながら大量の骨も一緒にするだなんてちょっと無理かも……。 アーヤ、あなたはあのスケルトン達の相手をお願い出来そう?」

「うん、やってみる! でもさ、私とテト姉が一緒に戦うのって初めてじゃない?」

「そう言えばそうね……。 数か月前まで私が守ってばかりだったあのアーヤが、今ではいっぱしの魔導士に……。 お姉ちゃん嬉しい!」

「もう、テト姉ったら……」

「じゃあ、あの骨達の事はアーヤに任せたわよ!?」

「任せて! 最初に骨達に対して範囲魔法を撃つから、お姉ちゃんはその後に突っ込んで」

「了解! 行くわよ!!」


 テトラはアーヤの詠唱の邪魔をさせないために、近寄って来る骨達を砕いて回る。


「ミーリス隊長みたいな大技はまだ使えないけど、2つ同時発動くらいなら出来るんだから!! 【アースストーム】それと【ウインドストーム】いっけー!!」


 アースストームとウインドストームの合わせ技を発動した事によって、小さな砂などを巻き込んだウインドストームは完全に凶器と化してしまい、巻き込まれたアンデット達は渦の中で切り刻まれて行き、次々と砕かれて行った。


「あの小さくて可愛かったアーヤが、こんなエグイ魔法を使いこなすようになるなんて……。 お姉ちゃん嬉しい感情と寂しい感情がごちゃ混ぜになって、何て言って良いのか分からないわ……」

「もうテト姉、そんな事は後にしてよ!? 今はクレストのアンデットを倒す事が先決でしょ!?」

「う、ごめん……。 それじゃ行くわよクレストゾンビって待って……。 あんた何で今度は左手の折れた剣を掲げてんの……よ?」


 まさか……。


 先程クレストが右手に持つ剣を掲げた時の光景が、私の頭の中を通り過ぎたと同時に奴の背後から金属音を撒き散らしながらかけて来る一団が目に入った。


 ―――ガシャガシャガシャガシャ……”


「ちょっとーー!! アーヤの範囲魔法のお陰でやっと減った骨達がまた増えたじゃない!!」

「テト姉、危ない!!」

「え?」


 アーヤの声を受けて私が振り向くと、そこには私がスケルトン達に気を取られている内に近寄って来たクレストが、折れた剣を振り下ろそうとしている所だった。


 油断してるつもりは無かったけど、これは腕の一本は覚悟しないとかな?


 私は腕1本を捨てる覚悟で交差させて衝撃に備えると、何時まで経っても衝撃が襲って来る事は無かった。


 不思議に思ったテトラが恐る恐る顔を上げると、そこには炎と風の魔法を交差させてクレストの1激を受け止めているアーヤの姿があった。


「きゃあ!!」


 だがその均衡も長く続く訳も無く、アーヤはクレストに殴打され後方に吹き飛ばされて行った。


「アーヤ!!」


 テトラが殴り飛ばされたアーヤの元に行こうとするが、クレストの攻撃を捌くのが手一杯で妹の側に行かせてくれない。


「この…………。 退け!!」

「ゲヘヘヘ……」

「こいつ……!」


 馬鹿にされたと分かった私は頭に血が昇った状態で殴りかかろうとしたが、アーヤの声に我に返った。


「テト姉、私の事より、今目の前に残ってる炎と風魔法が交差してる中心点を身体強化した状態で蹴り抜いて!!」

「な、何で!?」

「説明は後! 消えちゃうから早く!!」

「あ~~、もう! 後で説明しなさいよアーヤ!! 【オリビア式・身体強化】はぁ!!」


 そして私はアーヤの指示通りに炎と風が魔法が交差している中心点を蹴り抜いた。


「これで何か起きるの?アーヤ」


 私が蹴り抜いた途端に、2つの魔法が混ざり合い波紋が広がる様に歪み始めた


 おやぁ? 私には何だかとても嫌な予感が……。


 ―――ゴオオオオオオオオォォォォ!!


 私が蹴り抜いた魔法が横に伸びる炎の竜巻となり、前方にいたクレストや骨達全てを巻き込んでしまった。


『クアアアアアアアアア!!』


 そして、炎の竜巻が収まると、そこにはクレストやスケルトン達が跡形も無く消滅してしまっていたのだった。


「い、いたたたた……」


 私はその結果を見る前に、炎の竜巻が発した衝撃を受けてアーヤがいる場所まで飛ばされてしまった。


「アーヤ、クレスト達は!?」

「えぇっと……。 さっきの炎の竜巻に巻き込まれて消滅しちゃった……」


 私が顔を上げた事で目の前に広がった光景は今後忘れる事が出来ないだろう。

 それ程、辺り一面が広範囲に渡って焼け焦げてしまい、クレストやアンデット達は装備品の残骸と魔石を残して消滅したのだった。


「…………ねぇ、アーヤ。 あんたこうなる事を知っていて、この威力の魔法を私に発動させたの?」

「え、えへ♪ ここまでの威力が出るとは思わなかったけどね……。 まあ、勝てたから良しとしなきゃ〖パシン!〗痛いじゃないお姉ちゃん!」

「次からはどんな時でも、前日に使う可能性のある魔法の内容を私に言う事! 良いわね?」

「はい……」

「……ふぅ、ほら手を出して。 クレストのアンデットを消滅させたって、シグルド大隊長に報告に行くわよ」


 手を差し出してアーヤを引き起こしたテトラは報告に行く前に、もう一度先程の魔法が発動して暴れ回った跡地を見て身震いした。


 あの炎の竜巻が上手く制御出来たから良かったけど、あれがもし暴発してたらここら一帯が……。 いやいや、考えちゃ駄目……。


 テトラとアーヤは、アンデット軍団の要の1つだったクレストを消滅させる事に成功した事を、本陣に居るシグルドに報告に向かうのだった。


 残る危険なアンデットは巨人将ギルオクスのみ。



===


【ノクティスが率いている傭兵団視点】


 ノクティス率いる傭兵団は遊撃部隊として奮戦していたが、何かに反応したギルオクスのアンデット体が、何故かこちらに迫って来ていた。


「ノクティス、デカいのがこっちに来るぞ。 どうする?」

「ファルカス団長迎え撃ちましょう! 柚葉さん、構いませんよね?」

「もちろんよ、私も手を貸すからさっさとあんな奴片付けちゃいましょう」


 柚葉はノクティスに救助されてから、遊撃隊員として一緒に行動して骨達を相手に戦っていた。


「まずは足を止めます。 彼の者の動きを封じよ【重力魔法・グラビティ】」


 ノクティスがギルオクスに重力魔法をかけるが、元々が巨体なので大して効果を発動していなかった。


「おい、ノクティスあいつまだ動いているが、もう少しあいつの動きを制限出来んのか!?」

「そうは言っても、元々がデカすぎるんですよ……」


 困ったな。 あの巨人の動きを制限したいけれど、他の魔法だと他の団員達も巻き込んでしまう……。


 ノクティスが頭を悩ませていると、柚葉が手を伸ばし先程ノクティスが発動させた重力魔法に干渉し始めた。


「私の重力魔法が糸の様に紡がれてギルオクスの体に巻き付いて行く……。 もしかして、これは柚葉さんの魔法ですか?」

「そうよ。 これは私の固有魔法だけど、出会ったばかりの人に詳しい性能を言う訳にはいかないから、ごめんなさいね」


 そして柚葉が紡いだ重力魔法の糸をギルオクスの体に巻き付かせると、奴は重力魔法の影響を受けて完全に身動きが取れなくなった。


「良くやった嬢ちゃん! これで突っ込める! 行くぞ野郎共~~!!」

「「「あいあい~~~!!!」」」


 ファルカス率いる傭兵団は周りの骨達を巨大な武器を用いて砕いて行くと、ギルオクスに近づいた子供団員達は巨大なハンマーで、まずは足を破壊し始めた。


 ―――ゴチュ、ブチュ……。


「ギルオクスはすでに死んでるから痛みは無いとは言っても、見てるだけで全身に鳥肌が立つわね……。

 あ、足の小指を叩き潰した……。 うへぇ~、さすが子供ね。 遠慮が無いわ……」


 私はどんどんと叩き潰されて小さくなって行くギルオクスを見ていると、節々が痛み始めるので早々に視線を逸らせて他の骨達を相手にする事にした。

 だが、ギルオクスに動かれても嫌なの重力の糸で拘束は続けたまま、私は重力魔法で出来た糸を数本自分の周りに配置すると、走り回る事で骨達を砕いて回った。


「やっぱり重力魔法の糸だと打撃判定になって砕きやすいみたいね。 炎の糸だと中々倒れてくれなかったから、これは便利で良いわね♪」


 私はさっきまで苦戦していた骨達を次々に砕く事が出来る物だから、楽しくてギルオクスの事をすっかり忘れてしまっていた事が仇となってしまった。


「柚葉さん、危ない!!」

「え? きゃあ!?」

「おおおおおおおおぉぉぉぉ!!!」


 なんとギルオクスは、足を潰された事でバランスを崩した事で倒れた。 その勢いを利用した奴は、私を右手で握り拘束するのだった。


「こいつ、何で私を執拗に狙って……。 まさか自分が死んだのが私のせいだと思ってるって訳!?」

「まずい! 皆足への攻撃は止めてこいつの腕を切断するんだ! 嬢ちゃんが握り潰されちまうぞ!!」

「ぐぅ……。 こんな所で死ぬ訳には!!」

「柚葉さんを……放せ!!【混合魔法・風土破断】」


 ノクティスの放った魔法のお陰で、私を拘束していたギルオクスの右手首を切断する事に成功した事で、命からがら抜け出す事が出来た。


「柚葉さん、大丈夫ですか!?」

「ノクティスさん、少し体が痛みますが何とか……。 あの……。 ノクティスさん??」


 ノクティスさんは何故か私の手を握ったまま放してくれない……。

 それどころか頬を染めて俯いて……。 えぇぇぇ!?


「おい! ノクティス、まだ奴の処理が終わってねえんだから、嬢ちゃんを口説く前にこっちを手伝え!!」

「く、口説くって、僕はそんなつもりは……」


 柚葉は慌てるノクティスを見ていると、揶揄ってみたい……。 と言う衝動が顔を出して来た。


「そうなんですね……。 ノクティスさんにとって私はその程度の女性なんですね……。 およよ……」

「そ、そんな訳無いじゃないですか! 柚葉さんの事は一目見た時から……って柚葉さん?」


 私はそんな慌てるノクティスさんを見ていると可笑しくて、喋っている最中に我慢の限界が来てしまい大笑いしてしまった。


「ご、ごめんなさい……。 ノクティスさんの反応が可笑しくて……。 ぶふ、アハハハハハ!!」

「酷いですよ柚葉さん、私を揶揄ってたんですね!?」


 私とノクティスさんが笑い合っていると、ギルオクスの動きを封じたファルカスさんが団員を連れて集まって来た。


「ノクティス、嬢ちゃんとイチャ付くのは後にしろ。 ギルオクスの奴は何とか動かなくしたから、今の内に炎魔法で焼却してくれ」

「僕はイチャ付いてなんか!」

「早くせんか!! 復活してしまうぞ!」

「く! 柚葉さん後で()()()をしましょうね?」

「はい、いくらでも話し相手になりますよ、ノクティスさん。 ギルオクスはあの通り巨体ですので頑張って焼却して下さいね♪」


 こうして最後の脅威も取り除かれ、後に残ったのは普通の強さの骨達と、未だに上空で3人と戦っている魔王グロウのみとなった。


 終戦の時も近い。



ここまでお読み下さりありがとうございます。


今回で魔将のアンデットは全て討伐され、残るは魔王グロウ1人となりました。


 次回でこの戦いも終われると良いな……。


 次回は“惨めな最期”で書いて行こうかと思っています。


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