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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
6章・魔族と人族の戦争。
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送還後の戦場。

【共也達を送還した後の離れの宮殿】


 青白い燐光を残し、共也とエリアは魔法陣と共に故郷へと帰って行った後の話し。


「ち、結局奴に止めを刺す事が出来なかったか……。 おい女、共也達はどこに転移した、答えろ」

「私がお前なんかの為に素直に答えると思っているなら安く見られたものね。 例え答えたとしてもお前には手の届かない場所だから精々あの2人の影に怯えて暮らすが良いわ」

「あぁ、そうかよ。 ならお前に利用価値は無いな……。 死ね」


 自分の思い通りにならなかった苛立ちから、光輝は持っている黒く輝く剣でリリスの胸を背中から貫くと、容赦なく引き抜いた。


「か、は……」


 剣で貫かれた事で胸から大量出血が始まったリリスは意識を失い、共也達が先程までいた場所に倒れ込んだ。


「共也に止めを刺す為にはこの世界のどこからか探し出す必要があるのか……。 面倒臭え……」


 光輝は知らなかった、先程共也達と共に消えた魔法陣は地球に帰還する為の魔法陣だと言う事を。

 そして共也とエリアは地球へと移動している最中だと言う事を。


「まあ良い、アポカリプス教団の信者共は世界中で活動しているんだ、命令を出して探させれば居場所くらいすぐ判明するだろう。

 その時は生まれて来た事を後悔するくらい追い詰めてやる……。 くくく」

「そう……。 それがあなたの所属する組織の名前なのね、良い事を聞けたわ」

「あ? お前、剣で胸を貫かれたのに何で生きてるんだ?」

「ドワンゴ親方が守ってくれた……」

「親方?」


 “パリン!”


「お前……。 それは身代わりのブローチか……」


 そう、シンドリア王国でドワンゴ親方から貰った【身代わりのブローチ】が今ここで砕け散り、リリスの命を辛うじて守ったのだ。


「貴重な身代わりアイテムで生き延びる事が出来たのに、わざわざそうやって起き上がるとは馬鹿な奴だ」 

「仲間をそうやって簡単に切り捨てる事が出来るお前には一生分からないよ」

「何だと?」

「ディーネ、マリ、菊流が命を懸けてお前の足止めをしたのに、私だけ死んだふりで生き残りましたとは言えないよ……」

「そうか、なら次は本当に死ぬが良いさ」


 再び剣を振り上げた光輝に対して、リリスは微笑みをもって応える。


「ふふふ、あなたって本当に周りが全然見えて無いのね。 私達が居る部屋の中を良く見て見なさいよ」

「何? 部屋の中だと?」


 光輝はここに来て初めて部屋の中を見渡した事で、所狭しと並べられた謎の装置に気付くのだった。


「何だこの奇妙な装置は……」

「その1つ1つに私の魔力が蓄えられている装置よ、さっきまでは魔法陣の構築にかかり切りで攻撃に回す余裕が無かったけど、今はその魔法陣の構築をしなくて良いから攻撃をする事も可能だわ」


 最初は装置を見て驚いていた光輝だったが、装置をある見ていると有る事に気付いた。


「クックック」

「何が可笑しいのよ……」

「お前俺が分からないとでも思っているのか? さっきの魔法陣の為に、そこの装置に蓄えていた魔力をほとんど使い果たしているのは分かっているんだ。

 例え攻撃魔法を発動させたとしても威力は無い事はわかってるんだよ」


 その指摘を受けたリリスだったが、逆に口の端を上げると光輝に笑いかけた。


「そうね、目に見える範囲の装置の魔力は使い切ったわ……ね」


『目に見える範囲』リリスがそう呟いた事で光輝は明らかに動揺し始めた。


「そんなハッタリ僕には……。 いや、目に見える範囲? まさかこの装置は地下にも……」


 光輝が沸てて地面の下に魔力探査を行うと、信じられ無い数の装置が埋められていた。


「あら、ようやく気付いた? そうよ、グロウが設置した装置は地下にもあったのよ。 私の魔力を使って悪さをしようとした彼奴には腹が立つけど、今はそれがとても助かってるわ」

「ま、まさかお前……」

「ふふ、気付いちゃった? ねぇ、もし全ての装置を同時に自爆させたらどうなると思う?」


 地下に埋められている大量の装置を全て同時に自爆させるとどうなるかなど、火を見るより明らかだった。


「あ……の、馬鹿グロウが~~~!!!」

「理解したようね。 どうやらあなたが生きているとこの世界に良く無いみたいだから、ここで必ず仕留めさせてもらうわ」

「や、止めろ……。 僕が悪かった……。 もう共也達を追う事はしないし、奴の前にも2度と現れない……。 だから装置を自爆させるのは止めてくれ!!」

「ディーネ、マリ、菊流を殺害しておいて、それは今更じゃない?」

「菊流ちゃんの事はまだ僕が認めていないのだから、まだ死んだ訳じゃ無い!」

「何、シュレディンガーの猫みたいな理論で誤魔化そうとしてるのよ……。 実際足止めに行った菊流は戻って来ていないし、お前がここにいる。 それが全てでしょう?」


 光輝は1歩、また1歩と後ずさりしていたが、装置を自爆させられる前にリリスを殺す事を選択したようで、襲い掛かった。


「あ、うぁ……、ぼ、僕は、ただ菊流ちゃんを手に入れようとしただけなんだ!」

「もう諦めなさい。 動けない私も一緒に死んで上げるから寂しく無いでしょう?」

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ! 僕は、僕は生きるんだーーー!!!」


 光輝は呪われた剣をリリスに振り下ろしたが、最後の気力を振り絞り防御魔法を発動させて受け止めた。


(今代の勇者の称号を持つ者がこれか……哀れね……)


 その時リリスの魔力探知に引っかかる、懐かしい気配があった。

 

(この気配はトーラス? それにノクティスも……)


 トーラスの気配を感じたリリスは、急いで念話を繋ぐ事にした。


(トーラス……)


(リ、リリス様!? ご無事ですか!? 今どの辺りにいらっしゃるのですか、私がすぐに迎えに向かいますから場所をお教えください!!)

(ううん……トーラス……ごめん……私はここまでみたい。 せめてこいつだけは必ず道連れにしてみせるから……後はノクティスと一緒に協力して、この国の事をお願い……)


(リリス様! リリス様ーー!!)


 念話を切ったリリスは、ちょっと一方的だったけどトーラスに国の今後の事を託す事が出来たので、心置きなく逝く事が出来る。

 そう思っていると地下にある全ての装置が臨界点を迎えた様で、自爆すると宮殿が小刻みに揺れ始めた。


「全ての装置を起動させる前に、お前を殺せばーーーー!!」

「もう遅いわ。 皆……ごめんね……」


 その言葉と同時に、宮殿は白1色に塗り潰された。


「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」


 爆発に巻き込まれた光輝は重傷を負い、遥か彼方に吹き飛ばされて行った。


(良かった……あれだけの爆発ならあの男もタダじゃ済まないだろうし、少しは皆の無念を晴らす事が出来たかな? ごめんねトーラス、ノクティスあなた達を置いて先に行っちゃう私を許してね……)


 そして私は気を失ったのだが、再び気が付いた時には床も空も全てが真っ白な世界に1人立っていた。


「あれ、包帯が無い。 それにあれだけ大怪我を負っていた体も綺麗だ……。 それに本当に何も無い真っ白な世界……。 ここは一体何処なんだろ? お~~~い、誰かいないの~~?」


 私が声を張り上げるが、声が木霊すらしないので相当広いのは何となく分かったけど……。

 本当にここは一体何処なんだろう……。


 そう思い胡坐を掻いていると、私の頭上から声が聞こえて来た。


「リリス、迎えに来ましたよ」

「全くトーラスの奴。 リリスをあれだけ頼むと言ったのにこんなに早く寄こすとは……。 彼奴が来たらボコボコにしてやる……」


 私がこの懐かしい声を聞き間違えるはずが無い……。

 この声を聞きたくて夢の中でも良いからずっと会いたいと願っていた人達……、お母様とお父様だ!


「お母様、お父様!?」

「リリス、会いたかったぞ!」

「ごめんなさい……。 2人に託されたオートリス国を私は守り切れませんでした……。 それどころか戦火の中心地にしてしまい……」


 言い切る前に私は前魔王であるお父様に頭を撫でられた事で、言葉を止めた。


「それ以上言うなリリス……。 ある程度の事はあの世と言う所から見させて貰っていたが、グロウの思考誘導と言うスキルが予想外だっただけで、お前が悪い訳では無い……」

「そうよリリス、あなたが悪い訳じゃない……それはこの父と母が保証します」

「そう……、なのですか?」

「うむ、小さな体のお前にオートリス国と言う重責を背負わせてしまった私達にも責任はあるのだ……。

 だからもう良いのだリリス、私達と心安らぐ場所で一緒に暮らそう」

「え? 2人と一緒に暮らす事が出来るのですか!?」


 リリスはその予想外の言葉に、目を輝かせて身を乗り出した。


「ああ、女神ディアナ様からのご好意で、私達3人は天界で暮らす許可を貰えたのだ」

「そうなのですね。 でも地上の方は戦争の方は、大丈夫なのでしょうか?」

「大丈夫だ。 お前の決死の自爆に魔王グロウが巻き込まれてボロボロになっていてな、クックック。 あれは見ていて爽快だったよ」

「あの爆発に巻き込まれたのですか……? 運の無い奴ですね」

「本当にな! アッハッハ!」

「それでリリス、あなたはどうしたい? ディアナ様に頼めば地上に戻して上げる事も可能よ?」


 地上に戻る事が出来る。 母からのその提案に、リリスは一瞬顔を綻ばせたがすぐに思い直し首を横に振った。


「いいえ、私はこのままお父様とお母様に付いて天界で暮らそうかと思います。 やっと戦争の元凶であるグロウも討たれそうになっているのですよね?

 ならそのグロウに操られて戦争を始めた私も居ない方が、人族との話し合いなどもスムーズに行くと思うのです……。

 ルナサスやトーラス達に会えなくなるのは寂しいですけど、お父様とお母様がいれば私は満足出来ると思います」


 2人はリリスの金の瞳を見つめると、頷いた。


「……そうか、良く考えて出した結論なのだな?」

「はい!」

「分かった! もう私からは何も言わん! お前も言うなよ?」

「分かってます、リリス……。 左手を」

「儂には右手を」

「はい! お父様、お母様天界への案内お願いします!」

「あぁ……。 行こう天界に」


 私は両手を両親に握られると天から光りが降り注いで来ると、私達はその光に導かれるようにユックリと天に昇って行くのだった。

 

 私が天に昇っている途中に、地上いるトーラスの声が微かに聞こえた気がした……。


(トーラス……。 私の保護者となってくれたリッチ……。 また何時か会えたなら謝りたいな……)


「どうしたのだリリス、下を見て」

「トーラスの声が聞こえた気がして……。 つい……」

「そうか……。 彼奴が天界に来ることがあったら一緒に暮らすか?」

「うん!!」


 こうして私は天界へと昇って行った。


 =====


【地上、離れが在った爆心地】


 そこにはトーラスが瓦礫の山と化した宮殿を、リッチの特殊能力である生体感知で微かな生命反応も見逃さない様に探していた。


「リリス様! リリス様は居られぬか!? 居たら返事をお願いします!!」


 だが返事も生体感知も反応が無い、その事にトーラスは焦りを滲ませていた。


「やはりさっきの爆発は、リリス様の最後の……いや! 諦めるなトーラス! あの方を助けるのだろう、しっかりしろ!!」


 自身を激励し、折れそうになっていた心を立て直したトーラスだった。


 その時、微かに生体感知に引っかかる反応がある事に気が付いた。


「虫か? いや、あの爆発で虫が生きている訳が……。 まさか、リリス様か!!」


 トーラスは微かに生体感知が反応した場所にある瓦礫を丁寧に退けた。


「リ、リリス……様……」


 するとそこには全身の至る所を骨折して、ボロボロになったリリスを発見するのだった。


「そ、そんな……。 何と……何というお姿に……。 リリス様ーーーーーーーーー!!!」


 トーラスはリリスの小さな体を抱き上げると、小さな主君の名を叫び続けた。



ここまでお読み下さりありがとうございます。


送還後の話をしばらく書いて行こうと思いますが、今回はリリスの事を書いて行きます。

次回でリリスの事は完結させるのでお付き合いの程よろしくお願いいたします。


次回も“送還後の戦場”で書いて行きます。

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