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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
1章・異世界に、そして出会い。
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2日目、謁見の間にて 後編


 菊流が こんなに早く俺達と合流出来た事はとても喜ばしい事だけど、何故か彼女の側には生活の補助をする為の召喚主が居なかった。


「菊流、お前の召喚主は何処にいるんだ?」

「あぁその事なら安心して? 私は召喚者の人とちゃんと話し合った上で、生活の為のサポートを断ったのよ」

「召喚主から教育を受ける事を断ったのか? 何でだ?」

「断った理由はねぇ」


 話しを良く聞くと、どうやら菊流は召喚主にサポート的な補助は必要無いからと言って断ったらしい。


「と言う訳。 私達のパーティに王女のエリアがいるから、この世界の常識を教えてくれる人は2人も必要無いかな~~って思ったのよ。

 だから、悪いと思ったけど、召喚してくれた人には必要無いと言って断りを入れておいたわ」


 確かに菊流の言う通り、同じパーティーに教育係は2人も必要無いな。


「確かに菊流の言う通りだな。 菊流にしては良い判断だったんじゃないか?」

「にしては、は余計よ……。 だけど、揉め事なく断れたことは良いの。 ただ……ね」

「何か気になる事でもあるのか?」

「うん……。 断りを入れた時のその人の顔が気になったのよ……。 まるで可哀そうな人を見る顔をしていた事が、ちょっと気になったんだよね……」

「可哀想な人物を見る様な顔……か。 う~~ん、何でだ?」

「分かんない。 エリアは何か思い当たる事が……ってエリア?」

「なっ、何でひょう!?」


(噛んだ)(噛んだわね……)


 相当慌てていたのか俺達への返事を噛んだエリアは、顔を真っ赤にして視線を逸らしてしまう。 その姿を見た俺と菊流は、ある1つの仮説が思い浮かんだ。


「「・・・・・」」


「エリアさん、まさかとは思うが、良く物語にある要素として実は王女様は世間の常識を良く知らない。 なんて事無いよね?」

「あ、あはははは! 共也さんも菊流さんもぉ、意地が悪いですよぉ~~。 ちゃんと戦闘知識くらい身に付けてるに決まってるじゃないですかぁ~~」


 は? 戦闘訓練?  違う! 俺達が聞きたいのは戦闘知識じゃなくて一般常識の方!!


 そんな俺の想いを『冗談で~~す!』と言って否定してくれると信じていたが、それ以降もオドオドと視線を泳がせるばかりだった。  


「え? まさかエリア本当に!?」


 本当にエリア王女が世間の常識を知らないとなれば、今後の予定もそうだがパーティーとしての活動にも影響が出てしまう。


 俺の焦りを知ってか知らずか、エリア王女の口から信じられない言葉が飛び出して来るのだった。


「えぇ~っと……。 そうだ! 何の情報を知らずに活動した方が、きっと共也さんの為になると思うんですよ!」

「俺の為?」

「はい! 風の様に予定を組まず旅をする方が、色々な人や出来事に巡り合えそうで旅がとても楽しくなりそうじゃありません!?」

「えっと……。 エリア、本気で言ってる!?」

「本気ですよ! それに共也さんの固有魔法の発動条件に、出会いが鍵になっているのはスキルカードのに説明文にも書いてあったじゃないですか! だから沢山の人と出会う事が、共也さんのスキルが発動するきっかけになるかもしれないと思って、あ・え・て・情報を集めていないんですよ! 私凄いでしょ!?」


 菊流と視線を合わせるが、菊流の余りにも酷い暴論に呆れるしかなかった。


 えっと、ごめん。 エリアはこう言い張ってるけど、俺と菊流はまだこの世界に来て2日目だぞ、どうする?


 魔族と戦争する以前に、お金の価値も、物の価値も分からない人間が無計画な旅をする事が可能なのか? そう菊流とアイコンタクトで会話をするが、出て来た答えは…。


「チェンジで!!」

「いやーーー!! 頑張りますから! 沢山調べますから、チェンジとか言わないで下さいよ! お願いしますから~~!!」

「でもなぁ……」

「でもなぁ。 じゃなくて! そうだ菊流さん、傍観してないで共也さんを説得する協力をして下さいよ~!!」

「いや~。 さすがに私も、全くこの世界の知識が無い状態での旅は遠慮したいかな~。 それにさ?」

「それに?」


 菊流は大袈裟に足を擦り始めると、エリア王女をチラリと見る。


「説得をする協力をする事に異論は無いんだけど……。 昨日、誰かさんに正座させられたから足が痛いのよね~。 謝ってくれれば、不思議な事に急に足の痛みが消えるだろうし、共也を説得する手伝いもしようかな?って思ってるんだけどな~!?」

「んぎぎぎぎぎ!!」


 エリア王女……王女様が『んぎぎぎぎ』って言っちゃ駄目でしょう……。


「……お、お2人とも……。 昨日は長時間正座させてしまった事を謝罪します……。 すいませんでした……」


 唇と尖らせてボソボソと謝罪するエリア王女を前にして、菊流がとても楽しそうに口角を上げて煽り始めた。


「良く聞き取りにくいので、もう少し大きな声でお願いしま~す!」


 とても楽しそうに……。


「お2人とも、昨日は長時間正座させてすみませんでした! これで良いですか!?」


 半ばやけくそに気味に謝罪する1国の王女って……。 


「うん。 これで貸し借り無しよ、エリア王女様」

「貸し借り無しって……。 まさか菊流さんはこれを狙って?」

「ん? 何か言った?」

「……いいえ、何でもありません。 これからは同じパーティーに所属するのですから、今後は対等の立場と思って構わないですね?」

「そう言う事! これからよろしくねエリア王女!」

「はい! よろしくお願いします」


 2人が固く握手をした事で、俺達3人が同じパーティーで活動する事が決まった瞬間だった。


「えっと……。 言い難いのですが、お2人にお願いがあるのですがよろしいですか……?」

「ん? なになに?」

「出来れば王女と付けずに呼び捨てで呼んで欲しいのです。 せっかく3人でパーティーを組む事になったのに、何だか私だけ距離があるみたいで……」

「あなたの言う事も一理あるわね。 分かったわエリア! これからよろしくね! ほら共也もエリアって呼んであげて!」


 菊流に促された事で、俺も名称を外してエリアの名を口に出して呼んだ。


「これから大変な旅になると思うけど、頼りにさせてもらう。 よろしくなエリア」

「こちらこそ末永くよろしくお願いいたします!!」


 ……ちょっと言い方が違う気もするが、まあ良いか。


 こうして俺、エリア、菊流の3人でパーティーを組む事となったが、今後パーティーメンバーが増えるかどうかは結局出会い次第。

 結局エリアが常識を知らないと言う話しは関係なく、行き当たりばったりな旅が主流になりそうな予感がする俺達だった……。


 大丈夫……だよな?


 ==

 

 ようやく話が纏まった所で今後の予定を話し合おうとしていると、光輝が爽やかな笑顔を振りまきながら菊流を目指してこちらに歩いて来た。


「うえ……。 光輝……、何の用?」

「何の用って。 菊流ちゃんが、共也とパーティーを組んだと言う話を聞いたから慌てて来たに決まってるじゃないか!? 僕は認めないぞ!?」

「何で共也とパーティーを組むのに、あんたの許可が必要なのよ……。 それに、私が加入する事は昨日の時点でエリアと話して決まっていた事よ」


 本当の事か確認の眼差しを送る光輝に対して、エリアが肯定する意味を込めて首を縦に振った。


「ふむ。 エリア王女が認めたと言う事は、どうやら嘘ではないようだね……」

「嘘を言う理由も無いからね」

「……まさか勇者として認定された僕よりも、現地の人間に無能の烙印を押された共也のパーティーを選ぶとはね」

「む、無能!? 光輝、あんたどういうつもり!?」

「つもりも何も僕は本当の事を言っただけだけど、何を怒っているのか分からないけどさ菊流ちゃん。

 もし何だったら、今からでも僕のパーティーに入りなよ。

 未知とは言え、1個のスキルしか持っていない男のパーティーより勇者の称号。 そして数々の強力な戦闘スキルを持つ僕のパーティーの方が、君を輝かせる事が出来ると思わないかい?」

「・・・・・・・」


 右手を差し出して勧誘する光輝の笑顔を前に、相当頭に来た菊流は強めの口調で断りを入れた。 


「ねぇ光輝、あなたも知ってる思うけど、私と共也は子供の頃からずっと一緒だったから気心が知れてるの。 だから今更他の人と組む気は無いのよ……。 勧誘してくれた事に対しては感謝するけど、諦めて?」


 断固拒否してこの話は終わらせようとした菊流だったが、その態度が面白く無かった光輝は絶対に口にしてはいけない事を口走った。


「共也と気心がしれた? いや、違う! 君は千世ちゃんが亡くなったのは未だに自分のせいだと思っているんだ。 だから、その贖罪の為に共也と『光輝ぃ!!! それ以上言うなら、例え幼馴染のあなたでも許さないわよ!!!』……」


 菊流の怒声に会場全体が静まり返ってしまい、重苦しい沈黙が暫く続いてしまうのだった。


 そんな重たい空気の中で、先に口を開いたのはやはり周りの空気を読めない光輝だった。


「ごめん、今のは僕の失言だったよ、忘れてくれ。 ただね菊流ちゃん、君を必要としてる人は他にもいるという事を忘れないでくれ」

「・・・・・・・」

「これ以上話しても進展は無さそうだね。 今日の所は退散するから、また今度誘う時は良い返事を期待してるよ菊流ちゃん」

「五月蠅い、さっさと私の前から消えろ。 私がお前のパーティーに入る事は絶対に無い」

「怖い怖い。 じゃあね菊流ちゃん」


 返事を返そうとしない菊流は、光輝が去っていく後姿を鋭く睨みながら静かに……、そして力一杯拳を握って本気で怒っていた。


 光輝、馬鹿な奴……。 一番触れて欲しくない菊流のトラウマを触っておいて、誰がお前の勧誘を受けるかよ……。 


 人混みの中に光輝の姿が消えるとユックリと振り返る菊流は何時もの笑顔に見えたが、その目元には微かに涙が浮かんでいた。


「ごめんね共也……。 久々に本気で切れかけちゃった……」


 涙が零れそうになっている菊流の頭に手を置いた俺は、彼女が落ち着くまで撫でてやった。


「菊流さん、大丈夫ですか?」

「エリア……」


 今にも涙が溢れそうになっている菊流の笑顔を見た事で、エリアも光輝に対して悪感情を持ったのだった。


「あんな最低の勇者は放っておいて、私達はこれからの事を話しましょう?」


 年下のエリアに慰められている。 そう感じた菊流は、袖で涙を拭き頷いた。


 ==


「私達のパーティーは現状3人ですが、2人は『こいつは絶対に誘いたい!』って人はいらっしゃいますか?」

「う~~ん。 幼馴染の連中は出来れば全員誘いたい気持ちもあるが、そうすると1パーティーとしては人数が多くなりすぎるんだよな……」


 ダグラスや鈴など、全員入れるとすると最終的に一体何人になる事か……。


「それはまだ魔物との戦闘もしていない時点では、ちょっと困りますね……」

「だよなぁ……」

「う~~ん。 では慣れるまではこの3人で行動するとしましょうか」

「それが良さそうね……」

「そうと決まれば早速今後の事を話し合いましょう。 ですが、ここで話し合うのは他者に筒抜けですので、共也さんの部屋に移動して今後の事を話し合いません?」

「賛成!!」 

「菊流!? エリア、何で俺の部屋?」

「「さああなたの部屋に移動しましょう!」」

「俺の疑問に答えて!?」


 俺の疑問は完全に無視されてしまい、今後の事を話し合う為に俺の部屋へと移動する為に会場を後にする事となったのだが……。 


 ……何で俺の部屋で、今後の予定を話す必要性があるんだよ!?

次回は共也の部屋での今後の話し合いです。

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