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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
5章・帰還。 そして、和解。
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グランク王と魔王達との会談。

 最初はオリビアさんとの雑談を嫌々参加していた女性陣だったが、途中から会話の内容が恋バナになった辺りから輪になり会話に熱中していた。


「えぇ! オリビアさんってあの人に夢中だったんですか!?」

「菊流……。 あんた雪山でオリビアさんの態度を見て気付いてなかったの?」

「だって与一、バリスさんって女性にあまり興味が無さそうじゃない? だからてっきりオリビアさんの態度も私の気のせいかな~って思ってた……」

「はぁ……。 あんたって共也以外の男に関しては本当に鈍感ね……」

「ちょっと! 今ここで共也の事は関係無いじゃない!!」

「あら? 共也の事どうでもいいの?」

「そんな事……無いけどさ……。 あっ! 与一今はバリスさんの話しをしてるんでしょ!?」

「……相変わらず話題を変えるの下手くそね……」

「五月蠅いな……」


 何故か会議室で恋バナが始まってしまったが、俺達は参加出来るはずも無いので男で固まり話し合っていた。


「へへへ。 共也、先程の菊流の言葉への返答はどうするんだ?」


 そうダグラスに茶化された俺は両耳を塞ぎ聞こえない振りをする。


「そう言う話はまた今度な~?」

「早めに答えてやれよ?」

「出来ればな……」

「ちくしょう……。 共也は相変わらず無自覚にモテやがるな……。 俺にも一人くらいそんな娘が居てくれても良いじゃないか……、くぅ……!」


 俺の横でガチ泣きする鉄志にちょっと引いていると、何を思ったのか恋バナをしていたリルちゃんが輪から外れて、ガチ泣きしている鉄志の肩に手を置いた。


「どんまいです鉄志兄。 どうしても彼女が出来ない様なら、私が鉄志兄のお嫁さんになって上げますから、元気出して下さい!」


 その会話が聞こえていた女性陣は恋バナを止めて、鉄志の肩に手を置いているリルちゃんに一斉に視線を向けた。


『「「「「「ええええええ~~~~!?」」」」』


 両手を胸の前で組み〖ふんす!〗という文字が見えるんじゃないか? と言うくらい気合を入れるリルちゃんに、鉄志は驚きの顔と同時に、今まで見た事が無い程華やいだ顔をしていた。


「リルちゃん! 君が、君だけが僕の女神だったんだな……。 ありがとう!!」

「鉄志兄が何を言ってるのか分からないけど、私が言ってるのは彼女が出来なかったら。 だよ?」

「うおおぉぉ、リルちゃーーん!!」

「え……。 私って、もしかして判断を誤った!?」


 リルちゃんに抱き着き号泣する鉄志を見てさらにドン引きする俺達だった。

 

 お情けでまだ未成年のリルちゃんに彼女になって貰うって……。 それで良いのか鉄志よ…。


 俺達が女性陣の方に視線を向けると『うわ~…。 鉄志それは無いわ~』という顔をして、リリス達幼年組を鉄志から遠ざけていた。


「良いさ!! 俺にはもうリルちゃんって女神がいるんだ、何とも思わない!!」

「ねぇ、鉄志兄、話しを聞いて? 彼女が出来なかったらって言う条件を頭に入れてる?」

「どうだ共也! 俺にも彼女が出来たぞ!!」

「お~~い。 鉄志兄~~、人の話をちゃんと聞こうよ?」


 何だか片側通行の恋と思わなくも無いが幸せそうにしている鉄志を見てイラっとしたが、まあ実際ダグラスもメリムと言う婚約者を作った訳だし、あまり突っ込むのは可愛そうだと思い黙っている事にした。


「さあ皆、グランク様に緊急の会見を開いてくれるように申し込みに行っていた従業員も帰って来てるでしょうから、そろそろお城の方に向かいましょうか」


 みんなと恋バナや雑談をして満足したオリビアさんは、城に向かう為に予約を取り付けに向かっていた従業員の人に緊急の謁見を申し込めたのか確認を取っていた。


「はい、グランク様はすぐにでもお会いになるそうなので、その時はこの書状を門番の人に見せてくれとの事です」

「ありがと。 じゃあ行ってくるわね」

「はい!」


 オリビアさんは1枚の書状を受け取ると、俺達に向き直った。


「さあ、みんな行きましょう。

 恐らく今日一番苦戦する相手になると思うから覚悟してね? 特にリリスちゃん、この戦争を起こしてしまったあなたの言葉次第では魔国に報復と言う選択肢を選ぶ輩も出て来るかもしれないから、今からでも頭の中でどのようにグランク様に自分の気持ちを伝えるのか、その方法を考えておいてね?」

「分かった……。 例えこの国の王に許してもらえなくても、戦争だけは必ず止める事を必死に説明してみせるのだ。

 だからみんなも勇気を出せる様に手を繋いで欲しいんだけど……。 良いかな?」

「うん、リリス姉ちゃん、一緒に頑張ろう! マリは手を繋いで上げる!」

「マリちゃん……」


 リリスの前に、ジェーン、テトラ、リル、マリの4人が揃うと手を差し出した。


「リリス、私も手を繋ぎますから頑張りましょう」

「わ、私もリリスちゃんと手を繋ぐからね!?」

「ジェーン、マリ、リル、テトラ……。 ありがとう……」


 幼年組の5人がリリスを中心に手を繋いで輪を作ると、城に向かって歩き出した。


 さあ、今日一番の山場だからな、この会談は必ず成功させないとだな。


 ==


 俺達は城門の前に立っている兵士にオリビアさんから預かった緊急会見の許可証を渡すと、彼等は確認を取る為に慌てて詰所の方へと走って行った。


「すでに会見する準備は整っているそうだから、そのまま謁見の間へ向かってくれ!」

「分かりました!」


 どうやらすでに謁見の間に通すように連絡が入っていたらしく、俺達はすぐに城門を潜って謁見の間へ向かった。


 そして俺達が謁見の間に入ると、不機嫌そうな顔を隠そうともせずにこちらを睨んでいるグランク王が玉座に座っていた。


「良く来たオリビア。 先程の届けられた書状にあった、この戦争を終わらせる事が出来るかもしれない。 とはどう言う事だ?

 内容が内容のため時間をこうやって作ったが……。 嘘でしたでは済まされない事は分かっているな?」

「はい。 グランク様、嘘を言い来ては居ない事を私の名に誓います」

「ほう。 そこまでの覚悟でこの会見を望んだとはな。 それでどうやってこの戦争を止めると言うのだ?」

「この戦争を止める、と言うよりその人物が戦争を終わらせる、と言った方が良いのかもしれませんね。

 そして、その人物はグランク様と会話する事を望んでいます」

「オリビア。 そこまで言うのなら、その戦争を終わらせる事の出来る人物とやらを紹介してくれぬか? 後ろにいる共也達では無いのであろう?」


 オリビアさんは後ろを振り向き顔を青くして小刻みに震えているリリスへ前に出るよう促した。


「と、共也……」


 リリスは俺の服を摘まんで前に出る勇気を出せないでいた。


「リリス、この戦争を終わらせるんだろう?」

「で、でも私の言う事が嘘だと言われたら……、この戦争を終わらせる事が出来ないよ……」


 固く俺の服を掴んで放さないリリスに、ジェーンが左手を差し出した。


「リリスちゃん、右手を……」

「ジェーン……。 ありがとう……」


 ジェーンがリリスの右手を、ジェーンの右手をテトラちゃんが、リリスの左手をマリ、そしてマリの手をリルが握ったのを見て、リリスは勇気を奮い立たせてグランク様の前に歩み出た。


「ほう、そなたがこの人族と魔族の戦争を止める事の出来る人物か?」

「そうだ……。 いや、そうです。 私の名は魔王リリス、この戦争を始めた張本人だ……です」

『何だと!!?』


 一瞬にして謁見の間に殺気が溢れ、近衛兵長であるデリック隊長が魔剣バルムンクに手を掛けようとしたが、グランク様が剣を抜く事を静止した。


「グランク王、魔王リリスですよ? 今ここで仕留める事が出来たなら一時的にでもこの戦争を終わらせる事が出来るのです!」

「それはそうだが、まあ待てデリック。 先程の名乗りには確かに驚かされたが、魔王リリスと言う名は嘘では無いのだな? 金髪金目の少女よ」

「あぁ、私は正真正銘この戦争を始めてしまった魔王リリスだ。

 そしてこの会談が終わった後は魔国に戻り、この騙されて始めてしまった戦争を止める……。 それを伝える為にオリビア殿が緊急会談の予定を取り付けてくれたのだ」

「騙されて初めてしまった戦争とは、どう言う事か説明して貰えるのだろうな?」

「それは……」

「それは私から説明させていただきますグランク王よ」


 リリスがグロウの事を説明しようとしたが、ルナサスが間に入り口を開いた。


「そなたも初めて見るな。 名を聞いてもよろしいか?」

「私の名はルナサス。 魔王ルナサスです。 そして、リリスとは別の魔国を治めている魔王の1人で、今日偶々この国に来ていたのだけれど、リリスと遭遇してしまったと言うのが話しの流れです、グランク様」

「な、そなたも魔王の1人だと!?」

「えぇ、証拠が欲しいならこれを見て貰えれば分かりやすいかと」


 ルナサスが側頭部を触ると、今まで隠れていた羊角が現れた。


「どう? この羊角が私が魔族だと言う証拠にならないかしら?」

「その羊角、確かにその角を持つあなたを魔族だと疑いはしないが……。 ルナサス殿は何故このシンドリア国に来ていたのだ?」

「私はね、昔から人族の生活に興味を持っていたの。

 だから調査目的もあったから街中で占い師として活動していたんだけれど………。

 今日共也達と久しぶりに会って会話してたのに、このリリスが襲って来てね! だから監視の意味も込めて今一緒に行動しているのよ!!」


 リリスのこめかみを両手でぐりぐりとするルナサスの姿は、妹にお仕置きをする姉の様だった。

 

「痛いから~! ルナサス、いきなり殴って悪かったからもう許してーーー!! 痛い、痛い!!」


 しばらく2人のやり取りを眺めていたグランク王だったが、ルナサスが言った調査目的と言う言葉が引っかかり、何故人族の調査が必要なのか質問したのだった。


「人族を調査していた目的?

 調査の目的はね、もしリリスがこのまま戦争を続けて人族の国を滅ぼしてしまった場合、焼け出された人々を難民として受け入れても大丈夫かどうかの調査よ。

 受け入れたけど素行が悪くて、元々住んでいた人達が割を食うのを避けるのが為政者の役割な訳だしね」

「なるほど……。 その調査結果を聞かせて貰いたいが、今はリリス殿の事に話を戻そう。

 リリス殿が騙されていた。 とはどういう事であろうか?」

「あ、そう言う話だったね。 そうねグランク様、魔国はいくつもあるのはご存じですよね?」

「その様に報告を受けている、それが関係が?」

「えぇ、その魔国の中の1国に【グロウ=ドロイアス】と言う魔王がいて、何人かいる魔王の中でトップクラスに嫌わている奴よ。

 あいつは息を吐くくらい自然に嘘を付くから、魔王達の間でも要注意人物として周知されていたんだけど……」

「リリス殿が、そいつの嘘を信じてしまったと?」


 そこでルナサスに説明して貰っていたリリスが頷き、騙されてしまった経緯を話してくれた。


「そう……なのだ……。 私も奴が要注意人物だとトーラス達から散々聞かされていたのだから、もう少し注意を払っていたらこんな事態にはならなかったかもしれない……。 でも、お父様とお母様の葬儀に来てくれたグロウに会わない訳にはいかなかったのだ……」


 リリスはグロウに騙された悔しさで事を思い出しているのか、顔を歪めた上に唇を強く噛みしめているものだから、血が滲んでいた。


「自分の手を汚さずに嘘で相手を動かすか、そんな魔王もいるのだな……。 それでリリス殿」

「はい……。 なのだ……」

「そなたが戦争を起こした事を後悔している事は分かった。

 そしてそなたが自分の国に戻り、戦争を止める為に命懸けで動く事も分かった……。

 だが、今までの事を『はい終わり』……とは行かない事は分かっておいでか?」


 グランク様の真剣な眼差しを見たリリスは生唾を飲み込み、謁見の間は静寂に包まれて彼女の返答を待っていた。


「分かってる。 もし、戦争を終わらせる事が出来たのなら私はこの命を……」


『命を絶つ』そう言いかけたリリスだったが、そこに最後まで言わさない様に口を挟む人物が現れた。


「お父様良いじゃないですか、まずはリリスちゃんがこの戦争を止める。

 その目的を達成して平和になった後に、また何か問題が発生した場合は皆で協力して解決していけば良いではありませんか」


 リリスの言葉を遮ったのはエリアだった。

 彼女はリリスの前に歩み出ると、グランク王を正面に見据えて堂々と佇んでいた。


「エリア? そなたも王族なのだから戦争が止まったからと言って、それで終わりとならない事くらいわかっておるだろう?」

「分かってますよ? それが何か?」

「何がって……。 お前……」

「はぁ……。 確かに為政者であるお父様が戦争の賠償金などを求める、と言うのは自然な話しかもしれませんが、まずは早々にこの勘違いから起こってしまった戦争を止める事の方が先決なのでは無いのですか?」

「う……。 それはそうだが……。 だがなエリア、お前も分かってると言っていたでは無いか。 民達も疲弊しておるのだから、戦争が終わっても先立つ物が無いと暮らして行け無いのだ……」

「それも戦争が終わってから考えればよろしい事でしょう!?

 その後に発生した問題なんて各国が強力して解決していくしか道は無いのですから」

「む、むう……」

「お父様、この沢山の人の命が失われ、出口の見えなかったこの戦争をこれ以上血を流さないで止める事の出来るチャンスが『今』目の前にあるんですよ!?」


 エリアの強い言葉に、さすがのグランク様も口を挟めないでいた。


「確かにエリア王女の言う通りですな。

 この戦争を一度完全に終わらせた後で問題を精査していくのが、一つの手でしょうな……。

 王よ敵地にわざわざ来てまで説明してくれたリリス殿を一度だけで良いので、信じてみてはいかがでしょうか?」

「ギード……。 だが……」

「完全に信じろとは申しません。

 本当に戦争を止める事が出来た場合は臨戦態勢を解除すればよろしいかと、私達が今までして来た事が変わる訳ではありません」

「そうだな……。 一度だけ。 一度だけリリス殿を信じてみる事にしてみよう……。 それで良いかなリリス殿」

「あぁ! 必ず! 必ずこの戦争を止めて見せるのだ! だから信じて待ってて欲しい!!」


 グランク様の信頼を得る事が出来たその言葉を聞いたリリスは、顔を輝かせるのだった。


「グランク王よ、このトーラス。 感謝の言葉もありません……、先日の無礼な振舞を許して欲しい……」

「何だ! どこから声が聞こえて来たのだ!?」


 唐突に聞こえて来た声の出所を探し始めたデリック隊長達だったが、俺達がリリスの頭に乗る頭蓋骨が先日会議室に攻めて来たリッチのトーラスだと説明すると驚かれたが、頭蓋骨だけと言うフォルムに何かを察したのか優しい目でトーラスを見ていた。


「まぁその、なんだ」

「言いたい事があるならハッキリ言うのも礼儀の1つですぞグランク殿……」

「まぁそうカリカリしないでくれトーラス殿。

 この戦争が終わってまた会う時には、会議室を攻めて来た事など水に流して酒を酌み交わしましょう」

「ありがたい……。 私もリリス様と一緒に皆を説得してみます……、戦争はもう終わりだと」

「ホッホッ。 平和になると良いですな、リリス殿、トーラス殿」


 ギードさんも話が纏まった事で、立派な髭を触りながら微笑んでいた。


 こうして最大の難関であったグランク王との会談も何とか乗り切る事が出来たが、まだリリスの国オートリスにいる魔族達の説得が残っている。

 だが先代の魔王の時代から付き従っている魔族ならリリスの言う事を聞いてくれるだろうから大丈夫だろう。

 そして、戦争が終わり平和になったならオートリス国にみんなで遊びに行ってみるのも良いな。


グランク王とリリス達の会談で何とか戦争を終わらせる事で合意する事となりました。

次回の予定としては会食の話しにしてみようかと思ってます。

次回は『会談が終わり。 そして』で書いて行こうかと思っています。

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