対勇者 二戦目。勇者の力
いっぱいの魔力を使って結界を張った。そう簡単に壊れることはない強度のはずだ。
「武器の持ち込みはあり。この修練場を囲む枠から出たら負けだ」
「おーらい把握」
姫様達は結界の外での観戦だ。姫様の前ってのもあるけど、やっぱり負けたくないな。
「いくぞ魔王! 」
「こい! 」
イサムの手に握られているのは赤い剣! 炎の火力でごり押すか!
でも残念。今の僕には、あの時なかったアタッチメント兼武器がある!
「剣の柄ではないか! そのようなもので私の剣は防げない! 」
「それはどうかな? 」
瞬間に現れた氷の剣は、溶けることなく、赤い剣と打ち合う。
「氷の剣!? なぜ焼ききれん! 」
「いっぱい魔力こめたからさ。簡単に焼ききられちゃ困るね」
「しかし、所詮は炎と氷。時間があれば押し勝つ! 」
確かに剣に触れているところから溶け始めている。 これはまずい。
「なーんてね」
剣の軌道上から体をそらし、柄に炎の魔力を送る。
剣が折れれば剣としては使えない。同じように根元が溶ければ剣としては機能しなくなる。
「外した!? 」
柄から外れた氷と共にイサムは前に倒れる。
「隙ぃだーらーけ! ウィンドボム! 」
その体勢! 風魔法の速さをかわせるか?
「こんなもの! かわさずとも問題ない! 」
体ごとねじって剣で打ち落とすだと!? 脳筋じゃないか! しかし
「圧倒的問題ないといわせてもらおう」
ウィンドボムの形状は玉だ。そして、名前通りの風爆弾だ!
「爆発するのか! 」
切りつけた瞬間に突風が発生。勇者は耐えきれず吹き飛ばされる。
「こんなことで負けるものかぁ! 」
あれって例の橙の剣!
「ブレェーーキ! 」
叫びながら地面に突き刺して自身にブレーキをかける。
ズザザザと大きな音を立て、ながら減速し、ラインぎりぎりで踏みとどまった。
「耐えきったぞ……」
「その剣、いつそんなに育てたんだ?」
「あらかじめのストックだ。次の手いくぞ」
両手に魔法の剣……。
「二刀流か」
「早とちりだな。こうするのさ! 」
風と炎の剣を合体させた!?
一瞬の輝きの後、赤と黄緑の二色を持つ剣を手にしていた。
「なにか変わった? 」
「変わったさ」
気づけば背後に。予想外の凄まじいスピードに反応が遅れる。
振り下ろされる剣に気づいた時には、迎撃なんて選択はできない。
防御一択!
「ウォール! 」
地面から生えてきた土の壁。攻撃を遮る。
「遮れるものか! 」
しかし、遮れたのは一瞬だけだ。剣が触れた瞬間、土の壁にヒビが入る。
「殺す気かよ! 」
「殺す気でなければ、お前に勝てるわけがない! 」
壁が作った一瞬の隙のうちに後ろへと下がる。剣など当たるはずのない距離がある。
「敗北を知ることは、悔しさを知ること。そして、それは強くなるためのバネとなった! 」
そのままの勢いで剣を地面に叩きつける。
炎の衝撃波が直線に迫る。
「くらえばお前でも消し炭だ! どうする魔王!」
自分を取り囲む小さな結界を張るも砕け散る。
相殺しなければ!
柄を衝撃波に向けて、雷の魔力をこめる。
「打ち消す! 」
そして雷撃を打ち放つ。
ぶつかりあった力は爆発し、力のかけらも残らなかった。
「これが新たな力。剣と剣の融合だ。まだ二本までしか融合できないが、それでもこの破壊力。我ながら恐ろしい」
「確かに、一瞬も油断できない力だ。けど……」
「最初はおしてたのに! なんでオウカが追い込まれてるのよ! 」
「戦いとはそういうものだ」
きどるな父様キモい。
「それにしてもすごいな、あの戦士。魔王に迫る実力かもしれない」
でも確かにあの能力はすごい。彼もまた、転生者ってことなのかしら。
「このままいけば、魔王に勝てるんじゃないか? 」
「どうかしら」
私はしっている。オウカという男が、どれだけ優しいのか。半年前の出来事が、どれだけ彼を苦しめたのか。そして私は知らない。オウカという男の力の底を。だって私はまだ一度も見ていない。彼が勇者の力を使うところを。
「ちゃんと勝ってよね。オウカ」
「負ける気がしない!」
「そうでなくては倒しがいがない! 」
こっからはちょーっと本気で行くよ!
あの剣の柄、通称魔法剣の本領発揮は武器として使うことではない。装備することで発揮される。
自身の太ももに押し付けると、ベルトが射出され、固定される。
この状態で魔力を送ると不思議なことが起こるのだ。たとえば……。
「超加速! 」
風をまとい、先ほどまでとは段違いの速さでイサムに迫る。
「確かに速いが、私の剣ほどではない! 」
狙い振り下ろされた一撃をかわし、拳に魔力をこめる。
「燃えるぜフィスト! 」
イサムの頬を、炎が灯り燃え上がる拳で殴り飛ばす。
「練習したかいがあった!」
「一撃いれたからなんだ。速さはこっちが上だ! 」
体勢を立て直してすぐに、イサムは反撃にでる。
燃える拳を構えて、迎え撃つ。
「二度目ならギリ目で追える! 」
「果たして体は追い付けるかな? 」
「ちょっと難しいかもね」
迫るイサム。それを目で追うので精一杯な僕は、向こうからくるのを待っている。
後ろからくるか? それとも正面か?
思考を巡らせている最中だった。
イサムの手元が光って見えた。
「別の剣と融合させたか! いったいどうくる? 」
結界の中を縦横無尽に動き回るイサムを目で追い続ける。
瞬間何かが見える。気づけば頬に刃がかすったような傷が一つ。背後に残る小さな水溜まりをみて、理解する。
風で水の刃を加速させ放つ。水と風の融合剣だ。
くらったらやばい……今度はかわしてみせる!
甘い考えは無に帰すように、前後左右、そして空から殺意の雨が降り注ぐ。
ザザザザピチャリザザザザピチャリ
降り続ける刃の雨を避け続ける。
しかし完全に避けきれるはずもなく、その間にも切り傷は増えていく。
思考を巡らせ、考える。アイツを倒す方法を。
雷の魔力を魔法剣にこめる。
たった一つ見つけた答えを試すために。
作り出す炎にありったけの魔力を込めろ。
この作戦に全てをかける。
刃が迫るこの瞬間、空に向けて炎を放つ。
「プロミネンスボム! 」
結界の天井に衝突した炎は爆発し、今まさに殺さんとする雨を一瞬のうちに蒸発させた。
この瞬間に拳にこめろ! 目で捕えたならそれが最後だ!
曲がることなど決してできない、光の速度で迫る一撃。
「フレイムゥーーーーーバレッドォ!! 」
叩きつけられた結界は大きな音をたて崩れ、イサムは城の壁へと叩きつけられた。
「まだ……届かな……」
イサムは壁から落下し、地面に横たわる。
みる限り、意識はなさそうだ。
ったく。最後のあれ、絶対殺す気だったでしょ。まったく。
「ま、勝ったからいっか」
「で、姫様。改まってなんのようです? 」
あのあと、聞きたいことがあると姫様に呼び出された。
「なぜ、使わなかったのですか」
「何を」
「魔王は常に狙われる。あなたは色々例外だとはいえ、その理由は知っていますよね」
「勇者の力……」
魔王であり、勇者である自身が、知らないはずがない。
「貴方はまだ、私の前で一度も使っていない。貴方の本気をみていない」
……。
「あの力は、苦しんでる誰かのために使う。そう決めたんです」
「もしそのせいで、自分が死ぬとしても? 」
姫様の言い分はもっともだ。使っていれば勝っていたなんて、恥ずかしい言い訳でしかないし、それで死んだら、バカすぎる。でも、僕はそうするって決めたんだ。なぜなら……。
「そう願った力だから」
ねまふ。メルブラメルブラぁ!