一方そのころ、異界の勇者は……
ズドドドドド……っと町中に大きな音が響き渡っている。
聞こえてきたのは刑務所の方。突如現れた巨大な結界が破られたのだ。
たぶん話に聞いていた、創造というチート能力で、何かしらの攻撃をおこなっているのだろう。宿屋のおばさんに教えてもらったのだが、そこに魔王が向かったらしい。ならば心配するだけ無駄だ。
そもそも、そうする暇があるならば、私は突如として出現した龍を、一匹でも多く狩らねばならない。
住人の避難は、あの魔王の親衛隊や、国の兵士達が行っている。
だから、私のやるべきことはこれだと思った。
誰かがやらねば、街は燃えカス一つ残らない。
しかし、問題はそれ以前。少々まずい事態なのだが、その龍にあまりダメージを与えられていない。
魔王から聞いていた柔らかさではない。明らかに硬いのだ。
「魔王め。お前が倒したおかげで耐久力を上げられたのであれば、恨むぞ」
とはいえ、魔王が抵抗しなければ情報を得られなかったのは事実。ならばと今、見せる時。
炎の剣と光の剣を出現させ、合わせ融合する。
「お前のような敵に使いたくはなかった。量産型なんぞに! 」
自身の力を底上げする輝く剣と、灼熱の炎の剣。合わさり、出現させた光炎の剣を、龍の腹に食い込ませる。
「焼ききってやる! 」
剣から現れた炎は、龍の鋼を超える強度を持つ肉体を溶かし、その勢いで、龍を焼き斬る。
グギャアアアアアアオ!!
悲鳴をあげながら消えていく龍をよそに、次々の龍を焼き斬っていく。
「失敗作なぞこの程度! なじむ神作に優るはずがないのだ! 」
空から次々と龍が降り立つ。
「何匹来ようと無駄であると、なぜ理解しない? わからぬならば、理解するまで倒すのみ! 」
「龍が全滅……やったのは一人? 」
マイクを切って、状況の確認。刑務所は、鳥さんと虫さんのおかげで壊滅状態。
しかし、他を任せた龍さんは、ほぼ全滅……。使えないなんて訳じゃないなら、あの男が強いだけ。
「ギフト……いや、私と同じ? どっちかどうかは知らないけど、頭にきちゃう。オウカの一撃を簡単に耐えられるくらいの固さはあるのに、世界って広いのね」
このままにしておくわけにはいかない。街は今火の海だけど、これ以上続けても、狩られ続けて魔力が尽きて、退散しなきゃ行けなくなっちゃう。
「さすがにちょっと強すぎない? でも、誰だろうと変わらない。私を苦しめたこの国への復讐、それを止めるというなら容赦はしない」
魔王城の時のように地上を消し飛ばしてもいいけど、あれ、とっても疲れるのよね。それに、なんにも無くなるから、私が求める復讐の形じゃないし。
「ギフトはなんでも規格外。ならもう少しだけ強くしてあげる。それで無理なら妥協する、それでいきましょ」
さあ、行ってらっしゃい龍さん達。今度こそ、負けないでよ?
「はあ! 」
また一匹倒した。
無尽蔵にわき続ける龍を倒し続けて、これで何体目だろうか。
制限なんてないんじゃないかと思うほどだが、しかし所詮はこの程度。私だって、魔王を倒してここにいるのだから、これぐらいなんてことはない。
「……さすがに少しは疲れてきたな」
とはいえ、少しも少しだ。この調子なら1日程度は継続できる。
空から、新たな龍が背後に降り立つ。
「まだくるか。いい加減諦めたらどうだ? 」
振り返った先にいたのは、それは先ほどまでとは違う。銀の龍だった。
いや、一緒だ。姿形は先ほどまでと一緒だ。しかし、赤や緑やバリエーションがあった体色が、全て銀で統一されている。
「彩り捨てて、シルバー塗装。何が変わった? いいや、何も変わらぬ!」
どうせ焼き斬れる! 変わったところで、どうというのだ!
先ほどまでと同じように、灼熱の炎で溶かし斬ろうとする。
しかし、どうだろう。炎は弾かれた。
弾かれた? 違う、一切だ。一切効いていないのだ。
「火炎耐性だと……? 」
今度はこちらの番と、攻撃体勢をとってくる。
「炎でも吐き出そうというのか! 」
龍の大きく空けた口から、火炎放射が放たれる。
それをかわして、剣を消し去り、新たな剣を作り出す。
「効かないのならば変えるだけ! 」
氷の剣と、水の剣。二つの力を融合させ、二つの力を合わせ持つ剣を生み出す。
「水の剣の真価は融合! 見るがいい、これがその一つ、氷水の剣だ! 斬られれば最後、一瞬の内に凍りつく! 」
龍を斬る。斬りつけたところから、徐々に凍り始め、切り抜けたつぎの瞬間にはもう、龍は全身カッチカチに凍りついていた。
「砕けてシマイだ」
ヒビが入り、パキーンと砕ける。
「体が砕けていない!? まさか! 」
剣を消し、風の剣と、雷の剣を作り出す。
そして、風の剣で風刃を、雷の剣で雷撃を作り出し、龍へと撃ち込む。
ズドンと命中するも、やはり効いていない。明らかに効いていない。龍の体からはダメージを微塵も感じない。
「完全耐性だと……? 」
かなりまずい事態だ。私の剣が通じない。私の力じゃ斬り殺せない。それが複数、どれだけ出てくるかもわからない。
つまり、今の私では勝てない。絶対にだ。
目の前の敵は、天敵の群れだ。
「グフッ!? 」
龍に遠くへと蹴り飛ばされる。体に痛みが走る。
たった今の一撃だけで、動けなくなるなんて、自分はなんて脆いんだろう。
すごく痛い。痛いからこそ、たとえ動けなくても、立ち上がらねばならない。勇者とはそういうものだ。正面を向き、立ち上がろうとしたその時に見てしまう。
今まさに、炎を放とうとしている龍の姿を。
絶私の体を、魔の炎が包み込む。
私は……死ぬのか? このまま焼かれて苦しみながら死んでいくのか? しかし、なぜだろう。叫び声が、苦しいともがく声が出てこない。
まさか、死を受け入れようと? 嫌だ、諦めるんじゃない。こんな量産型にくれてやれるほど、安い命じゃない。それ以前に、希望であるはずの勇者が、諦めるなどしていいものか。
立ち上がれ、折れるな、勇者だろう? 最後まで、立ち向かえ。闘志を捨てるな!
ちからいっぱい振り絞れ!
ナイフほどの大きさの光の剣を作り出し、龍の腹へと突き刺す。
驚く龍は、炎の拘束をとき、ギャオ、ギャオと叫んでいる。
このまま体の中かき回して、一匹だけでも倒してやる。
突き刺した剣を、かき混ぜるようにぐるぐると動かし、内部から倒そうと試みる。
しかし、暴れる龍の動きに振り回され、ナイフから手がすっぽ抜け、体が地面へと叩きつけられてしまった。
「ざまあみな……ばーか」
あとちょっとだった。こんなところで死にたくはなかった。
流れ星か。死ぬ前にみる景色がこれとは……流れ星? あれ、本当に流れ星か?流れ星にしては形がずいぶん剣みたいな……?
「あの剣は……! 」
「刑務所の避難は完了、後はアイツを正気に戻すだけ。くっはーーー、出し惜しみなんてしてたら、ありゃ確実に死んでたな」
「なぜ生きている! なぜ、なぜ、なぜ! あの時あたしは確実に! 」
「食われるっていうなら、もっと層を増やせばいい。たったそれだけだったんだ。正直魔力は残しときたかったけど、おかげであんまり残ってないや」
「オウカ! あなたは今度こそ確実に殺す! 復讐のために!! 」
「龍がここに集まってくる。銀色て……他に色なかったのか? 」
「嘘……そんな! 強度だって、耐性だってあるのに! たった一撃でやられちゃうの! 」
「さあ、今度こそ。君を助けるよ、シズク」
お友達からのアドバイスをもらったため、名前を少ーし長くしました。あんまり好きじゃないって?
……。




