向かい そして3
「そういえば、師匠はどうしたんですか? 」
メグがトイレに入って少ししたぐらいに、そんなことを聞いてきた。
「10歳を戦わせられるか。くる前に、学校に伝言を頼んである」
「私だって13です」
「だから、帰っていいと言っている」
「使い捨てる気だったんですか!? 」
そういう訳じゃない。
「誰が捨てるか。生きててほしいからこそだ」
「魔王さん、失うのが怖いんですか? 」
「怖いよ。そりゃ怖いさ。あんな苦しくて悲しい思いしたくないんだ。それなのに、君達がずかずかと入ってきたんじゃないか」
当たり前だというふうに、僕は彼女に言い返す。
「それもそうですね」
「それより、オバケが怖い割に、いっぱい喋れるじゃないか」
「あー、実は嘘なんです。本当は、魔王さんとお話してみたかっただけで、そのための口実みたいなものです」
「なんだ。話したいならそういえばよかったのに」
「最後に一つだけ、聞いてみたいことがあるんです 」
少し間をおいて、シズクは最後の質問を口にした。
「シズクさんとは、どういう関係なんですか? 」
そういえば、ちゃんと話したことない気がする。別に隠すことでもないので、話すことにした。
「友達だよ。魔王なりたての、嫌われものだった時に、友達になってくれた人」
「大切な人ってことですか? 」
「誰だって大切だ。姫様も、シズクも、君達のことも。みんなみんな大切だ」
「欲張りさんなんですね」
彼女のちょっぴり嬉しそうで、そしてちょっぴり悲しそうな声で、この話の幕は閉じた。
そして翌日の朝。僕が宿屋を出ようとした時だった。
「そこのお兄さん、外にでるなら気をつけな」
宿屋のおばちゃんがそんなことを言ってきた。
「何に? 」
「脱走犯だよ。先月、刑務所で爆発が起きて、その隙に何人か逃げ出したみたいな何だよ」
「そんなことで、誰が気をつけろって? 」
「あんた魔王さんかい!? 」
正面顔を見て、やっと気づいてもらえた。昨日もあった気がするが、きっと暗くてよく分からなかったんだろう。
「でもその話ちょっと気になるな。脱走犯のリストとかないの? 」
「宿屋に泊めないようにって、国からもらったものならあるけど? 」
「ヤバそうなら一人くらい捕まえとくからさ! それみーせて! 」
「仕方ないねえ。別に見せるなって言われてるわけじゃないし、ちょっとだけよ? 」
受け取った紙を、ぺらっとめくりながらみている。
「なんで……? 」
そこにあったシズクという名前と写真をみて、無になった。
その一瞬の無のうちに、何を思ったのか。何を感じたのか。気づけば僕は、何処かへ向かって走り出していた。
お腹が冷えるから腹巻きがほしい。こんど買いにでも行こうかな




