ちょっとした誤算の穴埋めを
「というわけで、君らここの掃除しといてね」
「ということでがわかりません」
「衣食住保証するから、代わりにここの掃除しろってこと」
「ということでがわかりました」
預かった5人には、一人立ちするまで、ここの掃除というか家事をしてもらう事にした。
このまえ作り直したとはいえ、住んでいるわけではないから埃がたまる。ゆえに少々汚いのだ。
「あ、シズクは別ね」
「私だけ? 」
「うん。男女が同じ屋根の下で生活だなんて……やましいことなどあってはならんと思うのです。だから、しばらくはこっちで暮らそうと思ったんだけど、それだとちょーっと不都合な点があってさ……」
「不都合? 」
「そう! 僕のかわいい妹を一人にしてしまうという最大級の誤算! きっと寂しい思いをするだろうし、ここから学校に通わせるには遠すぎる! というわけで、お願い! 姫様は城から出るわけにはいかないし、アイツは命を狙ってくるし、家にしばらく住んでほしいなんてこと、シズクにしか頼めないんだ! 」
僕はシズクに手を合わせて懇願する。
「わかった、いーよ」
「本当!? ありがとう! 」
「そのかわり、後で、オウカが転生する前のこと教えてね。自分で話題ふっといて、オウカが何してたのとか、話してくれなかったの、忘れてないからね? 」
わ、忘れてた……。そういえば、僕って転生者なんだゼ! みたいなこといっといて、炊飯器とホットドッグの話しかしてなかったんだっけ……。
「わ……わかった……」
正直、自分の過去の話をするのは好きじゃない。誇れるものじゃないからだ。けど、カイのためを思えばなんてことはない。しぶしぶながらも了承し……よう。
「それじゃ、案内してちょうだい」
「りょうかいデース」
「あら、テンション低いのね」
棒読みな返事に疑問を感じたシズクがそんなことを聞いてきた。そう感じたのならば、それはきっと、100パーセント、間違いなく、しばらく妹にあえないという事実と、カミングアウトのダブルパンチのせいである。
「テレポートできるのに、わざわざ家の中にとばなかったのはなぜ? 」
「そんな技術はないから平地に飛ぶの。業者じゃないんだから、それにそんなには歩かないはずだから……」
「家が見えてこないんですけど」
「飛べば一瞬だから……」
「前提がおかしいんです。私、飛べません」
ごもっともです。そもそも、空を蹴るという性質上、飛ぶというより、空に立っている。という表現の方が正しいのかもしれない。
突然、シズクが立ち止まった。
「どうしたのシズク、疲れたなら休憩でも……」
「疲れたからおんぶして」
なぜに!?
「私が疲ている原因は、あなたの練度不足によるものです。ならあなたは、私が疲れないようにおんぶをするべきです」
「いや別にいいんだけどさ!? いいんだけどさ!? 恥ずかしいとか、そういうのないの!? 」
「回りから見えないように細工された森の中で、いったい誰に見られるわけでもないし」
いやまあ、それはそうなんだけども!?
「いやね? もっとこう……異性におんぶされるっていうところだったりとかには……? 」
「おんぶはおんぶ。誰にされても変わりませーん。あ、もしかして恥ずかしいの? 」
いいきったー! いいきったぞこの人! そうだよ恥ずかしいよ! 異性をおんぶなんてしたことないよ! でも、確かに僕のせいっちゃそうだし……。
「うぅ、わかったわかりましたやりますよ! ちゃんとテレポートできない変わりにおぶってあげますよ! 」
「分かればよろしでレッツゴー!」
シズクをおぶりながら家へと歩く。痩せているからか、軽く感じる。後で、いっぱいご飯を食べさせてあげよう。そうすることにしよう。魔王城に住むことになった人達にも、腹一杯に食べさせてあげよう。それが、自分が与えてあげられる幸せだと思った。他にもあるのかもしれないけど、先に思いついてしまったのだからしかたない。
「ねえオウカ……」
「なに? 」
「助けてくれて、ありがと」
「どういたしまして」
そういって彼女は、僕の背中で眠ってしまった。
SUSHI! SUKIYAKI!