第1話 シャリエッツ神話
はるか昔、この世には何もなかった。あるのは混沌だけ。しかし、ある時混沌の一部が切り離され、それは最初の神となった。彼女は全知全能の女神であり、名をシュメルといった。彼女はとても美しく、長い髪を持っていた。シュメルは自身の長い髪を編んで私たちの住んでいるこの世界を創り出した。するとまた混沌の一部が切り離された。そしてそれは天空の神ガイとなった。この2柱の神は後に原初の神と呼ばれる。
そして2人は愛し合い、5柱の神々が産まれる。
司法、平和などを司る女神アイア
戦、決闘などを司る女神アテュール
炎、鍛治などを司る男神スルトス
死、冥界などを司る男神ハスル
豊穣、母性などを司る女神ヨルテ
その後これらの神々が新たな神を創り出したり、結婚し子供を産んだりして多くの神々が誕生した。
ある時混沌からこの世の全てを記した知恵の雫が落ちてくる。シュメルはその雫である木を育てた。やがてその木はクヴァミルと呼ばれ、9つの実を実らせた。知恵の雫の知識はこの9つの実に分割され、知恵の実となった。やがてアイア以外の4人の神々は知恵の実をめぐって争い出す。アイアは仲裁に入るが4人の軋轢は深まるばかりだった。神々の多くは4人の神々のいずれかの味方をし、4つの勢力に分かれた。いずれの勢力にも属さなかった神々はアイアと共に仲裁に入るが4つの勢力による本格的な戦争が始まってしまった。数多の神々が消滅するなかヨルテ達の勢力が優勢になった。しかし、子供達同士、神々同士の争いを悲しんだシュメルとガイはクヴァミルを隠し、いずれかの勢力に属している神々が互いに傷つけ合うこととクヴァミルに干渉することを禁じる制約をかけた。2人の怒りと悲しみはやがて新たな混沌となり魔物を生み出した。そして力の多くを使った2人は眠りについた。
それでも諦め切れない4人の神々は自分たちを信仰する新たな種族を創り出した。
アテュールは精霊を。
スルトスは巨人を。
ハスルは悪魔を。
ヨルテは天使を。
そして彼らに魔法を授け、クヴァミルを見つけ出し、知恵の実を手に入れるよう命じた。しかしシュメルとガイの制約はとても強力で、神に近い存在である彼ら種族にもかかっていた。制約で思うように動けず、彼らもまた、新たな種族を創り出した。
精霊はエルフを。
巨人は人間を。
悪魔は吸血鬼を。
天使はエルフ、人間、吸血鬼の中から加護を与え、英雄を生み出した。
そして知恵の実を手に入れるよう命じた。これがこの世界の成り立ちである。