14
翌朝、ずっとベレンガリアと過ごしたかったのにルオーは呼び起こされた。
ノックされたドアを恨めしげに見つめ、ベレンガリアを見る。
寝たふりをしているとすぐにわかった。
それもそのはずだ。ノックよりも前に、何処かからか歩いてくるその音でベレンガリアは目を覚ましていたはずだったから。それなのに目を開けて見送ってくれないというのは、まだベレンガリアの気持ちの整理がついていないという証拠に他ならなかった。
わざと閉じるその瞼に「いってくるよ」と囁いて、部屋をあとにする。
廊下には騎士団の部下がいた。
「早朝に申し訳ございません。任務が急遽入りまして」
「内容は」
「護衛です。近頃、孤児院に子どもが増えたのに支援金が少ないと批判が集まっており、急遽、皇后様が巡察という名の激励に向かわれるそうです」
「今日?」
こくりと頷く部下。
それはなんとも急な話である。当然に予定していた業務を放り出すわけにもいかず、ルオーに白羽の矢が立ったわけだ。これは急いで警護の計画を立て、人員を配置しなければならない。ルオーは速やかに指示を出して、自身も支度をしようとした。
後ろ髪引かれる思いで、ベレンガリアの眠るドアを振り返る。もう二度と、リーシェに引き渡したくなかった。リーシェにベレンガリアを頼んだら、またルオーの言葉を捻じ曲げて嘘をつき、ベレンガリアを洗脳してしまうだろう。
自分が戻ってきたら──ベレンガリアはリーシェと共に姿を消してしまっているかもしれない。
そう考えると、ルオーはとてもじゃないけれどベレンガリアをひとりにするわけにはいかなかった。扉を開ける。
葛藤はあった。
けれども、やれるという自信が勝った。
「ベル、一緒に来てくれ」
ベレンガリアは少しの躊躇いのあとで、ベッドの上で体を起こした。
仕事先にベレンガリアを連れて行こうとするのは、初めてだった。
短くて申し訳ありません。
長く書けなくても投稿していこうと思いました。




