四十話 つよくなったとおもいたい!!!
今回は誤字の有無はしっかり確かめた!!!
ケド、文法がところどころおかしい気がする!!気のせいか!!!!!!(深夜テンション)
「……と、こうして天使と疫病神と人間が殴り合い、あなたが帰ってこれたのでした。
そのあとは浮遊の力の供給を失った大地がゆっくり地に落ちたり、その瞬間の衝撃で民間の方にもある程度被害が出たり……。
ああ、お姉様は一時の休眠に入りましたよ、もっと話したかったです」
そう言って王女サマは胸のペンダントの宝石を揺らした。
「おおー」
ぱちぱちぱちぱち。
動画サイトによってはアラビア数字の8の文字が並べられたコメントが流れそうな拍手をする。
だって何もわからないもん。
ちなみに俺は上半身だけ起こして聞いている。
俺は事の顛末を王女サマに子供を寝かしつける童話みたいに語られて、途中で割り込んできた初瀬さん──俺が寝かされていた部屋の壁に寄りかかって寝ていたが、俺と王女サマの声で起きた──にところどころ修正を入れられたバージョンを最後まで聞き終えていた。
率直に、もう一度。
「理解が追いつきません」
俺が地下空間に落ちるまでは理解った。わかったんだよ。
けどな、俺が下に落ちたあとから始まる文字通り人間お断りの超次元バトルはなんだ。
初瀬さんも王女サマも口に出して表現しようとして詰まったあと結局言葉に起こせず簡潔に終わらせた人知を超えたそのバトルis何?
「悠羽、体調は大丈夫?」
「あー……えっと」
そして童話のような回想がようやく終わったとばかりに、俺の理解が追いつくのも待たず初瀬さんが俺を心配してきた。
俺は手をぐーぱーさせたり肩を回してストレッチしたりして……。
「ってなんですかコノしっぽ!?」
「悠羽、長毛種みたい。かわいい」
体の心地を軽く確かめたらしっぽの毛が有り得んくらい伸びてたで候。
そういえば髪の毛がバカほど伸びてたって言ってたし、そっちはさすがに邪魔だからバッサリ肩くらいまで切ってくれてたらしいけどしっぽまではやらなかったのか……。
じゃあ眉毛とかまつ毛とかも伸びてたのかな?
それともしっぽだけが特殊?
それは今気にしてもしかたないことか。
「うーん……起きたてでちょっとだるくて重いですけど、さっき血を吐いた以外に気づける範囲の不調は……ない、っぽいですね。
あとは魔法の調子ですかね」
「……それ、悠羽、それが問題」
「そういえばそうでしたね。とりあえず、自分のステータスを確認してみてください」
「……?」
どういうことだろうか。
俺になんか地球にいた頃から憑いていたとかいう魑魅魍魎に関係でもあるのかな。
えーっと、ステータスを開いて……。
『
名前:浦谷 悠羽
種族名:獣人,ケット・シー
レベル:58
年齢:10(16)
各ステータス値─
HP:98
MP:0
STR:95
AGI:62
POW:20
DEX:31
VIT:14
INT:10
LUC:38
』
おお、レベルが一気に倍近くになってる。確か前回確認した時30だったもんな。
RPGとかだと自キャラのステータス眺めて時間を潰せたけどこの世界に来てあまりやってないから記憶に薄い。というかステータスの確認なんて思い出した時にしかやってないことを思い出した。
それにしても、さぞポイントが貰えてるでしょうね。能力値に割り振るのが今から楽しみだ……。
楽しみで仕方がありませんよ、ふふふ……うん?
おい、待て。
どういうことだコレ。
俺のファンタジー要素終了のお知らせか?
なあ、どうして、おかしくないか。
俺はようやく違和感に気づいた。
どうして俺の最大魔力量がゼロなんだ?
ホントなんで??
いやおかしい、見間違えか?
俺は目を擦って見直すが、そこで初めて目を瞑ってもステータスの画面が見えてることに気づいた。脳に直接視覚のイメージを送り付けてそれを俺の脳が目で見たものと勘違いして視界にステータス画面を映してるのかな?
ザ・現実逃避な考察ですね本当にありがとうございます。
「その魔力……本当に、不調ない?」
俺がステータスを眺めたまま絶句していると、察したように初瀬さんが質問をもう一度してきた。
ああそうか、初瀬さんは俺のステータスを見れるんだった。だから気づいたのか。
「そう言われると不調がある気がしてきてしまうのが人類という種族でして」
「不調、あるの?」
初瀬さんが心配そうな顔で覗き込んでくる。
「この城にいる、誰もわからなかった現象。説明がつかない、理解不能なことだから、どんな些細な違和感でも、気をつけないと……だめ」
「え……えーっと、じゃあ、こう……なんでしょう。なんか不調な気がするだけではどことは定義できないですね……」
「……魔法、使える?」
そう言われて俺は試しに魔力を動かそうとしたが、動かせない。
魔力は体内にあるような感覚はあるが、一切動かない、これはスキル的には動かせる魔力の判定じゃないのか。それとも別の何かなのか。
少なくとも俺はファンタジー世界に来て早々に最大級のファンタジー要素の魔法を失ったらしい。
ま、まぁ?
俺の普段の戦い方だとあまり魔法は使わないし?
むしろ魔法を使おうとしたら戦い方に取り入れて調整して単一化してって面倒だし?
いいもん。悔しくないもん。
「悠羽……? どこか痛いの?」
俺は涙目になった。ぐすん。
「こんなところですね。
……今回の私たちの企みはご破算ですよ……まあ、次がありますけど、今はご安心ください」
大した問題はなさそうと判断したのか王女サマが割り込んできた。とっとと話を進めたいらしい。
なるほど俺たち……というよりは初瀬さんたちは無事にこの王女サマの企みをどうにかできたようだ。
でも、わざわざ次もあるぞと宣言されてしまうとなんともね。
「じゃあ今ココで初瀬さんと協力して王女様を捕らえれば……」
「そうしたらタイキがあなたを無力化、ハツセを殺しますよ? クマミヤは命に別状はないですが重症、ハツセは魔力切れ、大きな戦力はこのふたつです。『勇者の器』は他人と群れると厄介ですが、単体なら処理できるでしょう……勘違いしないでくださいね、まだ私たちが強いということに変わりありません」
「……じゃあ、今俺たちを捕えないのは?」
「勝者へのご褒美ですよ? ……たとえ負けてもそれくらいをする余裕もなくては、世界征服など企みません。
あーあと、捕らえても今後邪魔されなくなる以外に利点はありませんし、異世界人が自ら行動してくれる方が、王都が大ダメージを受けた今狙ってくる利権が大好きな貴族たちへの対策が取りやすかったり……その他諸々メリットが、そこら辺は小難しいので省きますね」
大ダメージ与えたの誰が原因でしたっけ。
そのツッコミは俺は優しいのでしないであげた。
いやあ疫病神とやらが宿ってても?
善の心を忘れないっていうこう厨二病的な?
ね?
俺ってば超聖人、すごい、つおい。
「そういえば、さっき初瀬さんは殺すけど俺は無力化するって言ってましたよね? 俺こそもっとも殺しやすい状態だと思うんですけど……まさか、疫病神の影響で俺は実は半不死化しているとか……そういう、俺が超強くなったー的な……」
「そんなわけはなく、疫病神が宿っているためあなたを殺すと疫病神に祟られる可能性があるから殺したくないんです。あなたと親しい人間も出来れば殺さないでおきたいんですけどね……正に……そう、正に、あなたたちの故郷の言葉で虎の威を借る狐、疫病神の威を借る猫です。
あなたこそ、守ってくれてる疫病神の気まぐれで殺されないといいですね」
おい待て最後に不穏な言葉を残すな。
「ではまあ、やっと本題ですよ。道筋を戻したとも言います。
あなたにはこの国を出て言ってもらいます。拒否権はありませんよ、もし断るなら麻酔を打って国外まで持ってって放置します……でもそれは面倒なので、出来れば自ら出て言ってもらいたいのですが」
「えと、どうしてです?」
「あなたにこの国の中で死んで欲しくないからですよ」
当たり前じゃないですかみたいなテンションで語られた。
相当疫病神に祟られたくないらしい。
「理由は疫病神だけじゃないですよ。街で相当派手にやったらしいですね、今回の件は簡単に言うと何者かが『幻影魔法』を使い兵士を騙し国家転覆を企てたと発表していますが、あなたが殺した暴走していたとなっている……まあ実際洗脳されていた兵士の数があまりに多いこと多いことで、しかも城内じゃなく街中なものですから、洗脳されたままその光景を見た人間も多いこと。
スキルも完璧じゃありません、上手く私の使う洗脳スキルを活用して解いても、記憶が残ってしまってる人は多くいます……ついでに兵士の家族だった人も。
“暴走した兵士”だったとはいえ家族の方も割り切れる訳じゃなく……」
「あ……うん、何となくわかりました王女様たちのせいですね」
「あなたが派手に殺しすぎたとも言います。あんなエグい殺人術、どこで学んだんですか?」
エグいとは失礼な。
俺はただパターン化した対人間用の動きを用意してあって、それを自己暗示で無意識に単調に再現しているだけ……言うほど“だけ”って感じじゃないけどそうなんだからエグくはないぞ。グロくもない。
無機的に効率よく処理してるだけだぞ。
まあ、ロールプレイの都合上、内心は無機的どころか高揚しまくってるけど。
対人用かつ複数人を相手して効率よく討伐、経験値稼ぎにはバッチグーな技術だろ。
「それはそれとして……納得いきませんし、国から出ていかずここで死んで嫌がらせしてやろうかなとは思ったりしますが……まーあ? 俺は優しいので? 出て行ってあげましょう。ええ、俺は優しいので出て行ってあげますよ」
俺はドヤっとしながら見下ろすようなテンションで言った。
王女サマがカチンときた顔をした。
「あと、出ていって欲しいなら最低国から出るまで死なない程度のキャンプ道具ください」
「野営のための道具……まあ、最低限なら、すぐに用意できますし……今すぐ出ていってくれるんですか!?」
「現時刻わかってますよね?? ねえ、カーテン閉めてロウソクつけてるからって騙されませんよ現在深夜ですよね??」
ぱぁっと喜んだ顔をした王女サマ、コイツもしかしなくても人が嫌な思いをすることに快楽を覚えるタイプだな。
イイ性格してやがるよクソ、首輪つけて組み伏せてやろうかしら。
「……というか、今ここでこだけ話してて何も言ってこないって、初瀬さんは事前にこれ聞いてたんですね」
「うん、説明中に割り込まれても、邪魔だからって」
「……まあ、否定はしないですね。というか最初らへんは十分邪魔になってませんでした?」
「ひどい、反抗期」
「違いますが」
「ハツセはここに残るんですから、連れていこうとしないでくださいね」
「まるで誰か連れてっても良いみたいな言い草ですけど」
「そうですよ、というかミズウチ? とかいうあの子、あの子もあの子で貴重な人材なんですけど、タイキは危険だって言うし、本人は旅に出たいって言うし……ということで同行する人はそういうことになってます」
うげ、水内さんか。
今もなんなのかよくわかってないあの人か。
互いに好きな分野については急速に早口になる雰囲気を感じ取って遠慮しあってなんやかんや色々と薄い壁を張っているというのに。
信用も信頼もできるけど気まずいよ……。
いや待てよ、なんか同行者勝手に決まってるけど俺の拒否権はどこいった。
「……そういうことで、今日は遅いので明日また。過労で死なれても困るのでしっかりと休んでくださいね」
「善性は一応あったんですね」
「一応ってなんですか。さあハツセ、話したいことがいっぱいあってうずうずしているのは分かりますが今はあなたも部屋で寝てください。明日があります。
大丈夫、もう私たちが何もしないというのはあなたが1番わかっているでしょう。お姉様がまた寝ちゃったショックで私も枕に向けて泣きたいんです、とっとと退室するとしましょう?」
「むぅ……悠羽、また明日。おやすみ」
そう行って二人は部屋から出ていった。
警戒心はまだ残っている、けど眠気が凄いんだなこれが。
もう全部ほっぽりだして寝ようか。
朝起きて最悪な状態になってたらそれはそれってことで。
明日の俺頑張れ!
そろそろプロローグ兼一章終わります。
次章のプロットは詳細に書いて今回みたいなことにならないよう頑張らないと……。




