十三話 誰が死語なんて決めたんだ
いつも誤字報告ありがとうございます。
「真実を知って一日経ちましたが、ご気分は?」
「気になる」
「何がですか?」
「朝一番、悠羽が、笑顔で黒幕みたいなことを言ったのが」
「一度はこういうことを言ってみたかったんです……!」
誰しもがしたくなる強キャラムーブ、他人より情報を持っていたら楽しくてついやっちゃうこれだがリアルでできたのは初めてだ。
知ってる物語に二次創作主人公として入り込めたらやりたくなる人、多いんじゃないでしょうか。
まさか設定も何も知らない世界でそれができるとは思わなんだよ。
今回の場合、微妙に情報で勝ってただけのイキりマウントムーブともいうがそれは黙っておいて欲しい。
「……というのは冗談です」
「嘘はダメ」
ピシッとデコピンをされてしまった。
ごめんなさいお母さんもう嘘はつきません……そう言って、よよよと泣くフリをしたら初瀬さんからの視線が強くなった。まずい、このままだとおしりペンペンされかねん。痛いのが嫌なんじゃなくて恥ずかしいんだよ。
「……あの言葉の第一の理由が素直にやりたかったからです。
第二の理由はそのままですよ……初瀬さん、気分はどうですか? やっぱり辛いですか?」
「………………まだ、悪い夢って思いたい」
少し初瀬さんの顔に影がかかる。
そりゃそうだ、あんなに取り乱した後に昨日の今日のことをサッパリと割り切れるはずがない。むしろ冷静だったらそれこそ洗脳を疑う。
「最悪の気分……と、でも解決まではこの状況ですごすか、街から逃げるかの二択しかありません。しかも街から逃げるのはハードルが高いでしょう……なのでまずは今日の朝ご飯、みんなをよく、色んな視点から見てあげてください」
「どういう、こと?」
俺が提案すると初瀬さんは小首を傾げた。
「んふふ、まずは見てから、ですよ。さあ初瀬さん、俺は後ろを向くのでとっとと着替えてしまってください」
「……? まだご飯までに時間が……」
「ないんですよ、実は」
そう、実は現時刻、朝ご飯ギリギリなのである。
俺はしっかりと着替えているが、初瀬さんはまだ布団から起き上がっただけの状態、大ピンチなのだ。
これは俺の推測だが、今日、初瀬さんの起床が遅かった理由は精神的疲労にあると思う。俺はそれ以外に考えられない。
初瀬さんはまだ、思い返すだけで暗くなるほどの状態なのだ、その精神状態が睡眠に影響を与えたと考えるのが一番それっぽくて手っ取り早いだろう。
だって心の疲労で睡眠時間が増すかどうかは俺知らないもの、偉い学者さんに聞いておくれ。
「わかった、着替える」
「じゃあ俺は部屋の外に……」
「出なくても問題はない、娘に見られて恥ずかしいことなんてない」
「娘じゃないですー、友じ……あっ……その、えーと……俺と初瀬さんって友達ですよね? 俺、一方的にそう思ってたら悲しいというか」
「私は娘に家族と思われてなくて悲しい」
最高に聞いてはいけない人に聞いてしまった。
食堂でたまにこのやり取りをすると、周囲からそろそろ娘だって認めろと言わんばかりの視線が飛んでくるのだが俺は認めんぞ。
「じゃあ、先に外出て待ってますねー」
◇
とても賑やかな朝食の場だ。
楽しい怒声が響いては大勢の笑い声と笑顔が沸き起こる。
俺たち日本人はここが生まれとは違う文字通り全くの別世界だからか、食事だけでなくたびたび大人数で集まっては笑い合うというのが習慣化してきていた。
よくいえば絆が深まった。
悪くいえば共依存し始めた。
俺は初瀬さんの横でパパンッと手を打って少し小声で嗚呼とわざとらしく話し始めた。
「はてさて彼らはどうしてしまったのだろう、それは彼らの環境にこそ原因があるのです」
役は語り手、話すは悲しい物語……と続ける。
「異界より招かれし彼らは先に語ったように哀れな状況下にある。
この世の人に反論する間も与えられず、魔王を討伐せよと期待を寄せられる」
観客は悲しいことにただ一人、『知覚拡張』の初瀬彩奈。
「いやだなぁ、こわいなぁ、やりたくないなぁ。
そう思いながらも外見は取り繕って周りを見れば、同じく取り繕って使命に燃えるように見せる同郷のものたち」
彼らのだれもが断れず、最初の一歩を踏み出せなかったのです。
「やるしかないかと腹を括れども、そうするほどに心に影が浮き出るのもまた事実。
失った同郷の心を埋めるものは手を伸ばせばそこにいる。
手を伸ばせば届いてしまう、届かせあってしまう、届かせすぎてしまう」
きっとホームシックを誤魔化そうとしているのだろう。
“するべきことがあるから”と誤魔化して、意識しないためにも心を埋める同郷に依存していく。
「これこそ悲しい物語の揺るがぬ真理……いえ、彼らの心理で、ございます」
パンッと締めの柏手一つ。
そして俺は、にぱっと笑った。
「初瀬さん、どうでした?」
「どう……アドリブ能力が高いと思う」
「違いますよ……彼らの現状です」
「…………仕方ない」
一瞬躊躇って、できるだけ周りに聞こえないように初瀬さんは答えた。
心配しなくてもこっちの話は向こうには聞こえていない。
魔法でも何もなく、ただ彼らが興味を示さないように俺が動いているだけだ。
ふふんっ、この技能はそれなりに自信があるのだ。
これがあるからこそちびっこさを利用した不意打ちが効かなくなっても勝率があるし、この技能だからこそこの技術の存在に気づかれないのだ。
なぜか初瀬さんには気づかれることがあるのが謎だけれど、なんども役に立ってきた自慢の技である。
いやー昔、気配がない系黒幕ロールプレイを練習した甲斐があったね。
この体に慣らすのにそう時間はかからなかったいつもお世話になっている素敵でファンタスティックなプレイヤースキルなのだ。
「仕方ない……そう、俺たちが軽く依存しあうのは仕方がないことなんです」
「何が言いたいの?」
「じゃあよくいえば仲が深まった親しい彼ら……彼らの状態異常は?」
「…………過半数、かかってる」
ふむ、洗脳されているのは過半数ほどらしい。
そしてかかっていないのはもちろん通常通りという訳だ。
「じゃあ初瀬さん、そのかかってる人達の依存は絆は……命令されたものに見えますか? 本人の意思が関与しない人形さんに見えますか?」
「……見えない」
「ええ、そうです。それです……そしてどっちの人も笑いあってます」
「……。それでも……」
そういうと、初瀬さんはやはり飲み込めないように暗いままだ。
まあそうだろうな、誰もが俺みたいに納得して解決に急ぐような事態になるまでほっておこうなんて割り切れるわけがない。
「さて、初瀬さん。いかがいたしましょうか?」
「……?」
「事態の解決、積極的に進めてみます?」
「……できるの?」
「ええ、俺だけじゃなくなっちゃいましたしね」
「だけ、だったらどうもしなかったの?」
「いえいえ、一回逃げてその後に解決できそうだったらやってました」
「それは、ほぼ何もしないと変わらない」
洗脳の解決すらだんだんどうでもよくなっていたなんて言わないでおこう。
うひゃー洗脳を忘れるように洗脳されてる説が出てきちゃうのー。
「で、どうします? 行動を起こしましょうか……? まぁ一択でしょうけど」
「……悠羽、お願い」
「喜んで」
「でも」
「……?」
初瀬さんは食堂を見回して言った。
なるほど、どおりでだんだん初瀬さんの声が小さくなっていったわけだ。
「この空間で話す内容じゃないと思う。小声でも誰かに聞かれてそうで怖い」
「あ、あー。あはは……テヘペロ」
「それ、死語らしい」
……うそん。
◇
バレないような行動をしてるんだか小声だか知らないがもう少しバレにくい場所で話して欲しいと初瀬さんに言われてしまったため、また後でお話することとなった。
当たり前である。
万が一の「ま」の字もなく油断とアホ顔晒して、敵地で仰向けで腹を出して服従のポーズを虚空に向けてするような所業をしてる方が阿呆というものである。
朝ごはんの食堂から場面は変わって訓練場。
昨日は四日に一度の休みだったので今日は訓練の日だ。
休みといえば、この世は別に七日の間に世界を作ったとかいいながら最終日休んだなんて神話はありはしないので別に七日おきのお休みなんて概念が存在しやしないのだ。なんならこの世界の神話曰くまだ世界の全部作り終わってないらしいし。読んでて「この山ここに置くのは仮設置、いつか変える」やら「暇が出来たらアレ作ろう」なんて人に話した最高神の一柱がすっかり忘れてその件に関して音沙汰もないなんて描写が書かれてるとは思わなかった。
……人間臭い神様なこと。
「さて、今日はストレッチと走り込みの前に連絡しておくことがある」
隊長さんがみんなの前でそう叫んだ。
なんだなんだとクラスメイトが隊長さんに注目する。
いつもは準備体操を軽くして少し走り込み……という名の能力値の差が浮き出る地獄を初めに挟んで訓練を開始する。野外に行くなり、ここで訓練するなりどちらをするにしてもここで軽く運動してから始まるのだ。
走り込む時は主に魔法職諸君は先頭集団の三倍遅いタイムをたたき出すのだが、座学や魔法ばかりやっていては戦場では役に立たないとは隊長さんのお話。全くもってその通りなのだが、律儀に走る魔法職諸君も真面目な連中だ。俺は魔法職ではないが、足の短さとか色んな要因が重なって魔法職より前で中間の集団の間という微妙な位置を走ることになっている。
「今度……九日後に野外で泊まる訓練を行う! 具体的にはいつも魔物を狩りに行ってるあの森の少し奥で班に別れて天幕を張って交代で不寝の番をしたりな。
……この世界に来てまだ日も浅く、詰め込みすぎと思うかも知れないが、すまない……君たちを成長させる上で今が最大の効率なんだ!
では、各自……体をほぐしたら走り始めてくれ」
そう隊長さんが話終えるとみんながバラけ始めた。
人が離れていくのを見計らって横にいた初瀬さんが小声で耳元に話しかけてきた。
「みんなのステータスは確認済み。今、私たちの会話が聞かれるようなことは、ないと思う。
さっきの……どう思う」
「どう思うって、野宿訓練のことですか? ……どうなんでしょうね。警戒してるのは、誰かの企みの可能性ですか?」
「そう」
「まあ、警戒するに越したことはないってやつでしょう。特に俺たちの班は特別強い人が集まってますから」
強い人たちが守ってくれるというわけではない。
むしろ、戦闘狂二人と高能力値が洗脳で自由意志を奪われて、俺たちを問答無用で襲いに来たらそりゃもう逃走の一択だ。
恐怖以外の何物でもないし、対策なんてそうそう思いつかない。
そしたら、初瀬さんと俺で全力で警戒をするしかないのだ。
今回のものをいい方向に考えるなら……初瀬さんみたいに洗脳のことを知ったら洗脳が解けるのを期待して、彼らに伝えるなどということか。
洗脳のことを知ったら解けるとして、それを教えられたうえで納得するまでの間に乗っ取られて襲いかかられたら詰みだからと大人数いる空間では出来ないが、少人数ならどうにかなるのではないかと淡い期待もある。
「まあ、お話はここらで切り上げましょう。ずっと話してると隊長さん……がやってきちゃってますよ」
「……ほんとだ」
「準備体操しましょうか」
「……そう、だね」
こちらにずんずん進んでくる隊長さんを見てササッと目と体の向きを逸らした俺たちは、ぴゅーっとわざとらしい口笛を吹いて準備体操を始めた。
あっもう走り出してるヤツいる。
◇
「さて、幾度となく邪魔されてきましたがやっとお話ができますね」
「寝る寸前だけど」
「そういうもんです諦めましょう」
ところはまたもや変わって部屋の中。
この世界のお月様も水面に映って二つになっていることだろう、そんなお時間のこと。
「秘密のお話にも、王城侵入にももってこいのお時間です」
「周囲に魔力の反応はない……両隣の部屋の反応は寝てる。聞かれる心配はない」
「じゃあ昨日は初瀬さんが疲れてて出来なかった徹底的な質問タイム、始めましょうか。どうぞ、なんでもお聞きください」
「なんでも? じゃあ……まず」
「はい」
「王城侵入って……なに?」
「……」
自分のベットに座った初瀬さんは、取調室の刑事さんのような瞳でこちらを見据えてきた。
速攻、目を逸らした。
早速墓穴を掘った。
俺ってば犯人の立場?
「悠羽、いくつやった?」
罪をどれほど犯したのかと初瀬さんが問い詰めてくる。
「えっと、あの……王城探索の許可は……一応、夜間はもらってます」
「誰から許可を貰ったのか、わからないけど……あの本は、神話を持ち出す許可は?」
「もらって……ません。い、いいじゃないですか。あそこ実質、黒幕の根城ですよ? 俺知ってるんですからね、メガネかけた黒髪黒目の犯人があの城に住み着いてるって!」
「……まあ、それはしょうがないこととする。誰かに、洗脳された兵士に、怪我をさせたりは?」
「それは……してません。ええ、断じて」
向こうから襲ってこない限りは危害を加える必要はないからね。
多分やってない。
おそらくやってない。
あっ記憶にないだけで一回投げ飛ばすぐらいはやったかもしれない。
「なら、いい。夜間の王城探索……悠羽? ちゃんと寝てなかったの?」
この質問が本命だとばかりに近寄ってくる。
一番痛いところを突かれた。
あ、あれーコレ……今この城を渦巻く陰謀についてのお話では。
初瀬さんの表情から、なんでも答えるって言ったよなという感情が読み取れる。
「うっ……でも、初瀬さんに寝ろって言われてからちゃんと寝るようにはしましたよ?」
「スキル『ショートスリーパーLv.3』……それ、なに?」
「うぅっ……な、何を」
「あの時、注意してからも夜更かししてたの?」
「……むぅ……壁に張り付いたりする怪盗ごっこが案外楽しかったんですよ!」
「だと思った。城の構造把握、情報入手をメインにしてたなら不問にしてた。けど、悠羽が全力で楽しまないわけがない」
「謎の信頼!! でも夜行性の生物が混ざった俺は夜になるとテンションが上がるんですよ!」
ふっふっふ、俺は夜に不幸をもたらす黒猫ちゃんだからね。
「深夜テンションって、知ってる?」
俺は枕で顔を覆った。
何もわからない、私存じ上げない。
「にゃにを言ってるかよくわかりませーん」
「あのね、悠羽」
俺に接近した初瀬さんが、猫耳の間に手を置いて撫でてくる。
それにびっくりして思わず手を弛めたスキに枕を奪われてしまった。
「夜、遊びながらも調査してたのはわかった。悠羽なりに一応何かをしようとしてたのも、わかった」
俺の前でしゃがみこんで目線をあわせて続けた。
「前に体がちびっこいから不都合があるって、そう言ってた。気づいてないかもしれないけど……悠羽の体、思った以上に弱くて幼い」
「……?」
どういうことかと俺は手を見てグーパーさせた。
「遅くまで起きてた次の日、動きが少し雑。悠羽の体は今、幼い。……それは、ゲームのアバターで小さくなる……みたいなものじゃなくて、大人より睡眠時間で大きく不都合を被るような、そんなもの。もちろん、ほかの要因でも」
「……」
言われてみれば心当たりはあった。
あのころよりも動きが鈍いなと思ったことがある。既に体そのものの操作にはある程度慣れていたのに。不思議だったが、気にするほどのことではなかったからステータスの問題だろとすぐに忘れていた。
「体が子供、しかも男の子でもない……高校生も子供だけど、小学生の女の子とどちらが体力があって、免疫があって、無理ができるのか一度よく考えて。じゃないと、いつか倒れる」
この体が俺の行動になれるのが先か、無理が祟って倒れるのが先か。倒れるのが先だろうな。
「これからこの世界で、どう生きるのかはわからないけど……それだけは覚えておいて。私みたいに、口うるさく言う人がいるとは限らない」
「……はい」
ご尤もでございます。
そういえば、この体の健康について自ら考えた覚えがないな。
高校生でゲームしながら徹夜とかしてた分、幼くなったこの体の異変に気づきずらくなっているのかもしれない。
認識を改めないと、俺……割とまずいんじゃないか?
「うん、じゃあ本題に戻ろう」
「……本題? えーっと俺への注意が本題じゃなかったでしたっけ?」
「その記憶力は元からかもしれない」
「あ、いや……冗談ですよ覚えてましたよ。ほら、あれですよね、そのお話」
「じゃあ、なに?」
「えーと、俺への注意、夜更かし、王城探索、原因……洗脳! そうだ、それについてのお話ですよね!」
ドヤッと俺は覚えていたのだと胸を張った。
文字通り、無い胸を張るという行為はこういうことだったのか。
「うん、すごいね、覚えてたね」
初瀬さんはどこか優しい瞳で俺の頭を撫でてきた。
かつてこれほど不名誉な褒められ方があっただろうか。
だんだん悲しくなってきた。
「うぅ……もう、先に知ってること全部言っちゃいますからあとから気になることを聞いてください!」
「涙目……感情が表に出やすい?」
「泣いてないです! それより、音が伝達しなくなる魔法とかありませんか!?」
「ない、静かに泣きたいの? ほら、ギューって、してあげる」
「ち、ちちち違いますよ! ただ、声がお話が部屋の外に届かないようにした方がいいかなって思っただけで! というかこんなことやってるからお話が進まないんですー!!」
全部話しちゃいますよと言った俺は初瀬さんの耳に近づいて小声で俺の知る限りの全てを話した。
全てを聞き終えた初瀬さんは顎に手を当てて何かを深く考え込んでしばらくすると一人で頷いて顔を上げた。
「悠羽、まず……第二王女様のお話。地下の牢屋に閉じ込められてる、だっけ」
「ええ、そうでしたね。王城の地下の牢屋に」
「王女様について二つある。
一つ目は、巷に流れている第二王女様の状態は、病弱だから城から出れない。これは、幽閉のことを誤魔化す嘘だと思う」
「へぇ……あの人そう言われてたんですか。俺もそうですね、姿を見せないことを誤魔化す方便だと思います」
「私は……第二王女の存在を、昨日初めて知った」
昨日……あの状態だった日のことをよく覚えてるな。
「二つ目に、悠羽の話だと、悠羽に最初会った時に警戒した様子がない」
「それは……俺があんなことをしてたから……」
「それでも、少したりとも警戒しないのはおかしい。むしろ、おかしなことを叫びながら扉を蹴って入ってきた人間をどう思う?」
「怖い……です」
俺だったらビビって口も聞かない自信がある。
「初期POWが20もある悠羽が怖いなら……私でも怖い。
しかも、第一王女様は死んでいる、らしい」
「……!?」
「そう、王女様の周りには色々不思議なことが多い。
もし調べるならここをに絞ると何か出てくるかもしれないし、同時に一番危険なところ」
薮をつついて蛇がこんにちはしてくるかもしれない。
今までどおり目的なく探すんじゃなくて一点に絞るか、こんな簡単なことが出てこないあたり、俺の思考は退化しているのかもしれない。
「まだ、いくつか。今日のうちに……全部話そう」
「そうですね。足りてない脳を補っていただけるとありがたいです……」
そうして夜が更けていく。
情報交換と意見の出し合いとはすごいものだ。一人で思いつかなかったことがじゃんじゃんと出てくる。
それはそれとして、今日はしっかり眠るようにと俺を逃がさないために抱きついて眠るのはやめて欲しいです初瀬さん。
そんなこと言ってまた夜更かしするつもり?
違うわ、あの、あれが、あたってるんだよ馬鹿野郎、寝れるわけあるか!
体も健康状態も幼女でも、心は男子高校生だと何度言ったら、ぎゃー! 寝ぼけてもふもふしないで、なでなでしないで。
みゅう……寝れない……。
今回時間かかったし納得いく出来じゃないぬわあああああああ!!!
そもそもこの話までにTSという要素を生かせたことあったか!?ない!断じてない!!




