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Person~パーソン~  作者: 騎乃レン
11/29

~第壱幕~ 拾.第一日目の朝食

翌朝、五時三十」分になると、ガチャンという音と共にドアのロックが解除された。すでに目を覚ましていた秋は、特殊生時代からの癖となっている朝のストレッチや室内におけるトレーニングを行い、体の筋肉をほぐしていた。少し汗をかいたので、シャワーを浴びる。再び鏡の前に立った秋は、今度はこう自分に言い聞かせた。

「俺は『シュウ』だ」

        *

昨夜と同じく、教科書を読んで暇をつぶしていたシュウだが、朝食の時間が近づいてきたので、本を閉じる。

ガラッ。

クローゼットを開けると、制服・室内においての訓練服・屋外での訓練時に着用の戦闘服などが入っていた。昨日の向井の指示通り、シュウは制服を取り、その下に着るアンダーシャツ・手甲(指先が出るグローブ)・ブーツも取り出した。手甲は戦闘服時以外では着用自由なのだが、シュウは、あえて着ける。手の甲で、男か女かを判断されやすいからだ。着替えが終わると、シュウは部屋を出た。何度も試してみたが、このドアは深夜から早朝までのオートロック中以外には、各自が自由に鍵をかけることができないらしい。おそらく、SBS生がすばやく出動できるように、また、SBSの教官(軍人)たちが何不自由なく部屋に入ることができるためにであろう。

        *

部屋を出たシュウは、このSBS生専用寮の一階へ下りて渡り廊下を通り、本館一階の食堂を目指した。前方にも後方にも、同じくSBS生が歩いていたが、誰もつるむことなく一人で静かに歩いている。『普通』の学校であれば、話し声や笑い声であふれているはずだろう。

だけど、ここは、俺たちは、SBSだ。

「『普通』で、いられるワケないんだ……」

その声は、消えいるロウソクの炎のように、小さなものだった。

        *

しかし、食堂へ着くと、そこは雰囲気が異なっていた。おそらく、昨日に野外訓練をしていた一般軍人たちが大勢いるからだ。彼らは互いにしゃべりながらも、食堂へ入って来るSBS生たちを、ちらちらと見て観察している。シュウは、それに気づいていたが、何も気にとめることなくトレーを取り、皿に乗せられた料理などを受け取るために、その列へと並ぶ。歩み進むごとに、決められたメニューのおかずの皿を取り、みそ汁とご飯を自分でよそうと、適当に席を見つけて、そこに座った。食堂には長机がいくつも置かれている。区切られているワケでもないのに、一般軍人の彼らとSBS生は、それなりに離れて座っていた。

まぁ、当然と言えば当然か。

そう思い、さぁ食べようとした時だった。人の気配を感じた。シュウは目線を上げる。

「一緒に食べてもいいか?」

西本と原田だった。別に支障はないので、シュウは承諾する。それを確認すると、西本はシュウの前に、原田その左隣に座った。

「まるで『見せ物』だな」

すぐさま、その言葉をつむいだ原田に対し、西本は眉をひそめる。

「どういうことだよ」

彼は意味がわからなかったらしく、小声でたずねた。逆に、シュウはわかっていたので、

「同感だな」

と応える。しかしながら……。

原田(こいつ)、観察力があるな。

気づいているSBS生は少ないだろうに、原田はすぐに感づいていた。シュウは素直に感心する。

「あそこだよ」

西本にもわかるように、原田は軍人たちの方へ目線を送った。

「どこだ?」

「あっ、馬鹿!!」

原田が止める前に、西本は体を彼らの方へおもむろに向けてしまった。すると、それに反応した何人かのうち、一人の軍人がこちらへやって来た。

「ヤバッ!!」

西本はようやく、自分の緊張感のなさに気づいたようで、戸惑う。軍人は、ポンと西本の左肩に手を置いた。西本はビクッとする。

「そんなに、怖がるなよ」

男は笑っている。しかし、昨日の向井たちのこともあり、三人は警戒した。

「何か、ご用ですか?」

パニックでしゃべることのできない西本に代わり、シュウは冷静に言う。

「いや、何も。この子と目が合ったものだから。君たちはSBS生だろ?」

「はい、そうです」

「せいぜい、頑張るんだな。国の代表なんだから、みんな期待しているよ」

それじゃあ。また。

彼は西本の肩を、ポンポンと二回たたくと、向こうへ戻って行く。

「「はぁ……」」

原田も西本も安心したのか、ため息をはいた。

「金子、お前すごいな」

原田が言う。

「俺、もう、何も言えなかったぞ」

西本も言った。

「別に、ケンカを売りに来た感じじゃなかったし……冷静に対処したまでさ」

「その落ち着いた感じが、すごいんだってば」

西本は感心しているが、その後、原田からみっちりと説教をくらうはめになる。

「少しは、気をつけろ!!」

まぁ、今までが『普通』の生活だったんだから、仕方ないか……。

シュウは思う。

それよりも気になるのは、原田だ。

『普通』にしては、できた奴だな。

今後も原田に関しては、そう思うことが幾度とあるのだが、それはまた別の話である。

        *

原田からの説教に慣れているのか、西本は落ち込む様子もなく、食べ終わると立ち上がった。

「よし、行くか。ホームルームへ」

シュウらも立ち上がり、三人は食器を返却して、三階のホームルームへと歩き出した。



お知らせ(>人<;)2021.1.18

現時点において、投稿話に【改】がついているものがありますが、後書きの変更や本文の改行ミスであり、本文の内容そのものは変わっていません。なろう初心者のため、操作慣れしていなくてすみません。気をつけます!! ≧ ﹏ ≦

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