人類滅亡と景色、幻想の保存
景色がいい所はどこかな?
みんなが行き来して見た場所じゃなくて、不思議に包まれた様な景色が見たい!
「さて……ここはどこ?」
気が付いて周りを見ると、一面に広がる草原。
遠くに何かが移動しているような土煙が立ち込めているけど、それ以外は青い空と緑に包まれた平野に山、川もいくつか分岐しているのが良くわかる景色。
これは、見たことも聞いたこともない景色に間違いない!
私はこの景色を収めようと携帯を取り出してカメラを起動させた。
この景色をカメラに収める。
すると、その写真を確認したとき、説明文が出てきた。
スピペ・ロージナ平原:人類の手が入っていない原生の平原。野生動物も本来の環境で生活できているが、近代になり人類の開発が加速し、危機を迎えていた平原は異世界へと環境、動物含めたそのままの景色が保存されるために転移した。この景色を人類は見ることができない。
最後、人類は見れないって書いてあるけど。
私、人だよね……?
「手もある。足もある。顔も……服も着てるし……どゆこと?」
自分の目で五体満足、人類であることを再確認する。
「人間だよー!!」
誰か知らないけど、私ここに居ちゃまずいよね!?
絶対だめだ!
「ここに居ちゃまずい! どこか別なところに!」
そう思い。一歩を踏み出すと。
瞬きをした間に景色が変わっていた。
変わった瞬間はわからなかった。
なぜ? どこかに行かなければと思ったから?
とりあえず、今の景色は大都会のど真ん中。足早に行き交う人々。
これも、景色だよね……。
おもむろに手に持ったままの携帯で行き交う人々、ビルのネオンをカメラに収める。
再び写真を確認するとまた、説明文が出てくる。
人類の栄光と衰退:人類は考えることをやめて命令のままに行うようになった。考えることをやめた時点で人類は衰退した。命令のままに動く“低次元生命体”となったのだった。ただ、上と周りを見れば人類の栄光に囲われていることに気が付いている者が一体、何人いることだろう? 環境としてこの景色も保存することにしよう。
「人類の栄光と衰退、確かにビルとか細かい技術は発展してきた。今は当たり前に使っているけど同じ動作を繰り返すようになっているように見えるのかな?」
そんなことをつぶやいたとき、誰かに背中を押されてまた一歩前に出る。
今度の景色は白い空間に丸いテーブルと一つの椅子があるだけの景色だった。
「おや、これは珍しいですね」
「え? 誰?」
どこからともなく、すっと耳に入ってくる声がした。
周りを見ても白い景色があるだけで、誰もいない。
「ふふ、すみません。私は景色、幻想の管理をさせていただいておりますオルティス・フレールと申します。人類滅亡に人類が協力してくれるのでしょうか?」
「え……人類滅亡?」
「はい、そうですよ。布藤真美さん?」
白い景色が私には真っ青になっていくように見えた。
人類滅亡とは、オルティス・フレールとはいったい何者? 景色の管理って?
聞きたいことは山ほどあったが、情報処理は追いついていなかった。