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エピソード間話 アーシア、浮かれてやらかす

ルシアの聖環の儀式で起こった怪奇現象の真相です。

 世界の壁をぶち抜いてルシアの世界に侵入……到着したアーシアは気配を頼りにルシアのもとにたどり着いた。


 しかしながら現実は残酷である。


 それはルシアが聖環の儀式に向かう数日前。

 アーシアは少し寂しい気持ちでルシアの背後に立っていた。


「折角超特急でルシアちゃんの元へ来たというのに、肝心のルシアちゃんには私の姿が見えないなんて……」


 少し、いやかなりうらめしやーな顔になっているので、もしこの姿が誰かに見えたとしたら恐怖に慄くことになるだろう。

 ルシアならば確実に泡を吹いてぶっ倒れる。


 本来神には『神気』と呼ばれる一種の気のようなものを纏うことで頂上の存在を人の子に知らしめることができる。

 元にアーシアは出来うる限りの神気を出してルシアにアピールしている。


 にも拘わらず、なぜルシアはアーシアを認識することが出来ないのか。

 それは大体アーシアのせいだ。


 以前も語ったが、アーシアは本来この世界の神ではない。

 左遷という形でこの世界に派遣されることになっても、正式にはこの世界の神に断って世界の壁を開いて中に入れて貰わねばならない。


 しかし、あろうことかアーシアは世界の壁をぶち抜いてきたのだ。

 世界の壁は外界からの異分子を敵と想定して構築されており、実は堕天でもしていない限り、他世界の神はその対象外だ。

 故にアーシアのように格の低い神でも一応世界の壁を破ることが出来た。


 もちろん、普通は破らないが。


 しかし、壁は壁だ。

 世界の壁を破るにはそれ相応の神気を必要としたのである。


 その結果、アーシアの神気は現在ほとんど枯渇してしまった。ようは出涸らしである。

 正式にこの世界の神に断って入れば、すぐにでもルシアと再会出来たというのに。


 ちなみにこの世界の神様は今、勝手にぶち抜いてくれた世界の壁の惨状に慟哭し、涙ながらに修復作業に取り掛かっている。


 出涸らしアーシアを人の子が認識するにはどうすればよいのか。アーシアは必死に考えた。

 そして1つの解決策にたどり着いた。


「そうだ、ルシアちゃんと契約して守護神になって縁を結ぼう」


 契約者に力を貸し、守護するもの。それには強力な絆が結ばれ縁ができる。

 そうすれば如何に出涸らしだろうとへっぽこだろうとお互いに認識することができるようになる。


 完璧な計画だ、とニヤリと笑うアーシア。


 実は、本来神気は時間を於けば回復するものであり、それは神としての格が高ければ高いほど早い。


 神格の最もわかりやすいバロメータは信仰する者の数である。

 アーシアは異世界の神であるから、もともとこの世界では神気の回復が本来よりも遅くなってしまう。さらに守護神とは個人と契約するため、信仰対象は個人に限定される。

 そのため、アーシアの本来の神格である下位神よりも一時的にだが、格が下がってしまうのだ。


 当然、格が下がると神気の回復がさらに遅くなり、弱体化したアーシアと契約したルシアへの加護にはデメリットが発生してしまうことになるのだが……これは別の話である。


「なるほど。ルシアちゃんは近々聖環の儀式を受けるのね。そのときに神託な感じでルシアちゃんの前に降臨して契約しよう!!うん、ルシアちゃん絶対喜んでくれるよ!」


 その後、ルシアが祭壇に呼ばれた際に……。


「うん。まずは私がいることに気づいて貰わないと!あ、この盃が丁度いいわね。これをルシアちゃんが近づくときに揺らしてやれば――、ってあれ?なんかルシアちゃん怯えてない?」


 盃をカタカタ揺らしてココにいるよアピールをしたらなぜかルシアが騒ぎ始めてしまった。

 怖がってこちらに近づいて来てくれない。


「うーん、たしかに急に盃が揺れだしたら驚くのも無理ないかも。あ、じゃあこの板を使って、ルシアちゃんって書けば気づいてくれるかも――ってルシアちゃん?!ぎゃああー!ルシアちゃんが倒れたぁ!!衛生兵!衛生兵ー!!」


 すべてにおいて人騒がせなアーシアであった。


お疲れ様でした。

楽しんでもらえたらなら幸いです。

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