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エピソード072 決闘、私と火竜1

久々に本気で戦闘シーン書いたらちょっと……長くなっちった。テヘペロッ♪

※グロ表現は出来る限り取り除きましたが、苦手な人はごめんなさい。


「──悪いが勝たせてもらう」


「勝つのは────私だッッ!!」


 先手必勝。

 大地を豪と揺さぶる決闘の合図と同時、私は最初の一手を繰り出した。


「【ジオ・プロテクト】、【アクア・マインド】!!」


 それは幾度となく唱えた防御(DEF)・魔防(MND)強化魔法。黄褐色と蒼色の魔法痕がさざなみを描くように織り成し、私の体表面に耐性膜を形成する。


 ステータスのほどんどを犠牲にして成り立つDEFを【ジオ・プロテクト】で更に強化し、火属性魔法の耐性を【アクア・マインド】で補強する。

 竜種の隔絶した戦闘力に対抗する、基本にして確実な一手。


 しかし、今は人型形態である火竜の男、デンなんとかさん──ベル曰くデンデン──は、私の初手をフッと鼻で笑った。


「威勢の良い事を言う割には、退屈な魔法だな……多少強化した所でニンゲンが俺のブレスを耐えられる訳ないだろうがッ!」


 そう吐き捨てたデンデンは、両脚を踏ん張って中腰の姿勢を取り、ガパリと人型の顎門あぎとを大きく開くと口内を緋色に染めた。

 そのモーションは、過去に氷竜形態のベルが放ったブレス攻撃を彷彿とさせる。


 奴の言う通り、まだ覚えたての火属性耐性の魔法など焼け石に水。まともに食らえば即座に消炭になるかもしれない。


 精神が研ぎ澄まされ、周囲の雑音が消え、心的に隔絶されたこの世界には、私と戦うべき相手しか存在しない。


 ドクドクドクドクッ


 心音が早鐘のように脳内で鳴り響き、私の意図とは関係なく、身体が逃避行動に移ろうと暴れる。それを私は意志の力で押さえつけ──前へ、一歩踏み出す。


「【農耕祭具殿・馬穴】」


 私の呼び掛けに応じるように、手に一杯の無骨な馬穴バケツが握られる。一見するとそれは農作業に使われる、何の変哲もない水を溜めるだけの道具だ。

 また一歩、前へ。


 だけど私の、【農耕祭具殿】はただの道具じゃない。れっきとした――武具だ。

 さらに一歩。


「特殊スキル発動……【消火】」


 武具に宿る特殊スキルを唱えると、バケツにキラキラと輝く水が満たされる。水=消火なんて、よく考えれば私に似ていい加減な武具だ。

 効果は『一定期間指定対象が燃えないようにする』。これをブレス攻撃に掛ければ相殺する事が出来る――訳ではない。

 残念ながら、このスキルは対象に燃え移った火、あるいは瞬間的な火属性魔法の効果を消す事は出来るが、継続的に噴出される炎に効果は薄い。だけど……


 私はバケツを両手で持ち、高く、高く持ち上げる。


 紅蓮の炎が渦を巻き、奴の口内から轟々と溢れ、私の記憶から過去の戦闘が蘇る。

 火の勇者との戦闘を思い出せ。炎をかき消すイメージをしろ。アイツに通じたんだ、なら今回も──やれるはずッ!!



 ────滅せよ。



 デンデンから音無き声が発せられ、吐き出された炎は私に向かって扇状に押し寄せる。

 巨大な炎の壁を前に既に恐れはなく、私は――振り上げたバケツの水を、バシャアア!と自分の頭に被せて唱えた。



「複合魔法、【消火服】!!」



 刹那、炎の壁が私を飲み込み、視界が紅蓮に塗り潰される。本来ならこの時点で炭化してもおかしくないが、私は平然と炎の中を歩き続けていた。


 複合魔法【消火服】。

 過去に一度だけ使用した、火属性魔法に対する絶対的優位性を持つ防御魔法。

 体表面を耐性膜で覆う【ジオ・プロテクト】に、【消火】を組み合わせる手間が必要だが、目論見通り、火竜のブレス攻撃も無効化させる事に成功した。



 ────次は、私の番だよ。



 いまだ続く炎の道を、私は真正面から堂々と駆け抜ける。

 ハァハァと、たいした距離でもないのにいつもよりも息が切れる。

山頂でただでさえ空気が薄いのに、ブレス攻撃により燃焼され、周囲の酸素が枯渇しているのかもしれない。ならば……



 一気にッ、勝負をつけるッ!!



「【農耕祭具殿・鍬】!!」


 私はバケツを愛用のくわに持ち替え、大きく半身を切って得物を隠す、いわゆる脇構えの状態で、目眩まし代わりに利用させてもらった炎から颯爽と飛び出す。

 絶対の自信を持つ炎のブレスから無傷で飛び出した私を目前で視認し、驚愕に目を見開くデンデン。


「せぇりゃぁぁあああッ!!」


 私は、ギリギリまで自分の身体で隠していた鍬を、アッパースイングの要領で振り抜いた。

 膝から腰、そして腕へと全身のバネをフル活用して力が伝達され、さらに遠心力まで借りて加速する鍬刃がデンデンの顎をピンポイントで捉える。

 ガチンッ!と、ブレス攻撃のために開かれていた顎門が強制的に閉じた。


 ボンッ!


「ゴフッ?!」


 くぐもった爆発音がデンデンの口から聞こえ、目を白黒させている。どうやら出口を失った炎が口内で暴走したらしい。


 しかし、流石は戦闘好きの一族。デンデンはすぐに混乱状態から抜け出して体勢を整え、鋭い爪で反撃を仕掛けてきた。


 対して私は鍬を振り抜いたせいで腕が上がり、胴ががら空き。

 このまま何もしないままではガードも出来ずに、ただただ自分のDEFが通用する事を祈るばかりだったろう。

 

 そう。何もしなかったら、だ。

 そして、竜種の頑丈さを知っている私が、一撃だけで終わらせるわけがない。


「【農耕祭具殿・大鎌】!!」


 私は腕に持っていた鍬を消し、刃渡り100cmはある重厚な草刈用大鎌を、()()()()()()()()()()()()()()()に、空中に出現させた。


「……チッ!」


 鍬とは違って明らかに殺傷性のある見た目の大鎌を嫌がり、咄嗟にデンデンの攻撃の手が鈍る。

 そう、普段の竜種形態なら気にも留めない……どころか目にも映らないだろうからね。人型の戦闘、視野に慣れていないから、そこで躊躇うんだよ。

 

 竜種の頑丈さなら、たとえ人型であっても空中に放り出された大鎌なんて、払うどころかたやすく砕けるだろうに。


 しかして私はその一瞬の隙を逃さない。

 鍬という重りを消した事で自由となった身体を即座に制御し、再度出現させた鍬でデンデンの頭部を大上段から全体重を掛けて一気に振り下ろした。


「おりゃあああッ!!」


 ギィィイイン! という人を殴打したとは思えない、しかし確かな手応えを手のひらに感じる。

 でも悪いけど、まだ私の攻撃は終わりじゃない。


「まだまだぁ! 【鍬】・【円匙】・【円匙】・【鍬】……【円匙】・【鋤】!!」


 ゴン! ギン! ガキン! ズシッ!


 袈裟打ち、横薙ぎ、逆袈裟打ち、刺突──。


 私は次々と最適な農耕具を出しては消し、出しては消し、と振り抜いた後の硬直を無理やりキャンセルして攻撃を繋げる。

 デンデンも反撃の素振りを見せるが、適所で頭部を揺らし続けているので、それもままならない。


 最後のすきでデンデンを突き飛ばして距離を取った。

素早く腰元に吊るした小袋から石を取り出し、セットアップポジションから瞬時に身体を沈み込ませ、地面スレスレからリリースする。


「【ストーン・バレット改・スワロー】」


 放たれた石はまるで地面に吸い付くかのような超低空軌道で飛翔し、デンデンのすぐ目の前で急角度でホップ、狙い通り()()に抉り込む。


 ボグゥ!


「あッッハ、オぅ……!!」


 視界外からの急所直撃に、さしものデンデンも、手で抑えて内股にへたり込んだ。


 傍から見ると、12歳の少女が男を物凄い勢いで農耕具で滅多打ちにした後、手のひらサイズの石を急所に投げつける、というドン引き案件である。


 ここまで、戦況は圧倒的有利。

 しかし、私はハッハッハッ……と肩で息をしつつ、焦燥に駆られている。



 これだけやっても、ストップが……終わりの合図がかからない。



 それすなわち、私の攻撃はデンデンに有効なダメージを与えていない事を示唆している。

 その証拠に、都合10撃以上全力で攻撃したのにも関わらず、所々擦過傷が見受けられる程度のダメージでしかない。


 火竜は比較的DEFが低いって話だったけど……私の攻撃では届かない、か。


 最も効果があったのが最後の急所への一撃だが、そう何度もくらってくれるとは思えない。

 ……いや、一応私も乙女として、そして前世では男だった身として、執拗に急所攻撃ばかり行うのはどうかとも思うし。

 

 ともかく、普通の攻撃ではダメージを与えられない。

 ならば、普通じゃない攻撃を──

 


 シュゴゥ──ッ



 バーナーを点火したような音が、私の耳を通過していった。

 途端、作戦を思い返し逡巡していた思考が、人生で最大の信号で一気に塗り潰された。



 痛い……痛い…痛い…痛い、痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いッ痛いッ痛いッ痛いッ痛いッ痛いッ痛いッ痛いッ痛いッ!!!



「あ…ア゛ア゛ア゛アァ──!!ン゛ッ…ンググ……ッ」


 私が取り乱し、致命傷判定された時点で、決闘は私の負けとなる。


 未知の痛みに思わず絶叫しかけるが、唇を噛みちぎる勢いで口を閉じ、声を漏らさんと必死に耐える。


 

 口内に鉄の味が広がる。



 遠くから、誰かが私を呼ぶ声が聞こえる──。



 ボタボタと大粒の涙が止めどなく溢れ出る。

 痛覚信号で脳がヂヂヂッ、ヂヂヂッと焼き切れそうだ。

 視界がチカチカと明滅して鬱陶しい。


「ン゛ンッ……ン、フゥッー…フゥッー…」


 何の攻撃を受けた?

 私は必死に状況把握に専念する。さもないと、意識が痛覚に持っていかれそうだ。


 デンデンが膝立ちの状態で顎門を開いている。つまりブレス攻撃だ。しかし、そこから炎は噴出していない。

 痛みのもとは右腕。上腕筋の一部が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。出血はあるが、思ったほどじゃない。


 総合して導き出される答えは──



「『熱線』……、もう一つのブレス攻撃──……?」



「そういう事だ。俺に膝をつかせた事は称賛してやる。だが……これで終わりだ。無様に逃げ回れ、ニンゲン」


 私の防御が通用しない攻撃。


 先程までとは戦況は完全に逆転し、私は高速に飛来する熱源光線を必死になって避けざるを得ないという、危機的状況に陥った──。


お疲れ様でした。

数話前の話からどうしてこうなった、とお思いの方もいらっしゃるでしょうか。私もです()


最近投稿が不安定でごめんなさい。

もう暫くお仕事が忙しいので、落ち着いたらまた毎日投稿出来るようにがんばりますね!

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[良い点] 戦闘の風景や技との描写が非常に良い! 一人称の心情などが本当に分かりやすく、まるで自分が戦っているかのように感じられました(*´ω`*) [気になる点] もう少しだけスピード感があると良…
2020/08/31 22:44 退会済み
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