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エピソード050 ギルド最強の男、登場です


 翌日、私達は冒険者ギルドの前に集合した。今回のクエストに参加する冒険者達と顔合わせをするためだ。


 ギルド前にはギルドマスターであるロンド、王国騎士団のケーニッヒとアッシュが待ち構えていた。


「ほう、刻限前に到着するとは感心だな」


「うちのリーダーはそういうの細かいので」

「ベルはまだ眠いのー」

「遅れるよりはいいでしょ。 ベル、眠いなら顔を洗ってきなさい。スッキリするわよ」

「ふわぁぁ……そうするのー」


 眠い目を擦りながら建物の中にフラフラと歩いていくベルを見送ると、ロンドは私に向き直り、目的の人物に連絡がついたかを確認してきた。


 その人物とは勿論ソフィアのことだ。

 以前渡した石の解析もそろそろ終わっていても良いはず。


 私は昨日からずっとケータイをかけ続けていた。その結果は……


「連絡がつきました。今日の顔合わせにも少し遅れるかも知れませんが参加するつもりのようです」

「なぜお前がドラム山脈に住む『変人』と知り合いなのか、なぜ離れているのに連絡をつけることが出来るのか、興味が湧くところであるがそこはおいておく。あの魔法使いが同行するのは心強い」


 ロンドはソフィアの事を『変人』と呼ぶのか。ソフィアに変人要素なんて……うん。コメントは控えさせてもらおう。


 そんなこんなでアッシュやケーニッヒの近況を聞きつつ暇をつぶしていると、目的のパーティのうちの1つがやってきた。


「やあ、待たせちゃったかな? 僕は『黄金果実』のシュルツだ。一応パーティリーダーをさせてもらってるよ」

「『フォー・リーフ』のパーティリーダー、シャロットよ。よろしく」


 髪をかきあげて爽やかに笑う金髪の男が私達に手を差し伸べてきた。シャロが私達を代表してそれに応じる。


 シャロの顔は真顔だが、時折口角がヒクついてる。シャロは軽そうな人はあまり好きじゃないからなぁ。


「あぁ! こんな可愛らしいお嬢さん達と一緒にクエストを受けられるなんて、僕はなんて幸運な男なんだ。このめぐり合わせを神に感謝したいね」


「ちょっとぉ、シュルツくぅん! あんな小娘に色目使ったらかわいそうよぉ」

「「「そうよそうよ!」」」


 シュルツは周囲に女性を4人侍らせていた。いや、武器を携帯している所を見ると彼女達も冒険者なのだろうか。

 その割には随分と扇情的で防御力の低そうな服装をしている。お世辞にも強そうには見えない。


「ふっ、銀髪の見目麗しいお嬢さん。あまり見つめないでくれたまえ。僕の可愛い子猫ちゃん達が怯えてしまうよ。僕は女性を等しく愛するから、心配しなくても大丈夫だよ」


 私が訝しげな視線を向けていたのを何と勘違いしたのか、シュルツはそんなぶっ飛んだことをのたまった。


 まさか出発する前から揉める訳にもいかないので、反射的にぶん殴りそうになって握りしめた左拳の力を必死になって緩めながら、とりあえず営業用スマイルを返しておいた。

 ローラとシャロが私の肩を軽く叩いて、『よく我慢した』とでも言うような顔をしている。


 その代わりといってはなんだが、私はロンドの事を睨みつけておいた。その視線を受けたロンドは肩をすくめて「シュルツはランクA。実力はたしかなんだ。諦めろ」と小さく呟いた。



 最悪だ。道中このキザったらしい男のハーレム扱いされるなんてまっぴらだ。せめて他の人達はまともでありますように!



 次に現れたのは5人の黒ずくめの集団だった。その内の一人、左目を布で覆った黒一色の影のような男性がボソリと挨拶をした。


「――『竜種滅殺ドラゴン・スレイヤーズ』、リーダーのクロム」


 それだけ言うとクロムは他の者の挨拶も聞かずにパーティのもとに戻り、黙々と武器の整備をしだした。驚くべきことにクロムは日本刀のような反りのある片刃の武器を所持している。


 この世界にも刀って存在してたんだ。何処で手に入れたのかとか、切れ味はどうなのかとかちょっと気になる。でも……


 私は彼らの服装をチラリと見て、急に古傷が疼くような幻痛を感じた。

 


 ぐっ、痛い。私の青い春の痛々しい古い記憶が呼び出されそうで色んな意味で辛い!



 『厨二病』という言葉は知らなくてもその異様な感覚は伝わったのか、シャロもローラも頬をヒクつかせている。


「彼らは竜種ドラゴンを討伐した経験もある冒険者達だ。ランクも平均でA、ギルド内でも5本の指に入るパーティだ……少々とっつきにくいのが難点だがな」



「冒険者ってランクが上がるほど変わり者なのか……?」



 ロンドの説明に、思わず疑問を呈するアッシュ。

 その気持ちは分かる。ちょうど私も似たような事を考えてたよ。


 少々げんなりしつつ、残り1組のパーティを待っていると、建物からベルが戻ってきた。

 随分時間がかかっていたけど、どうしたんだろうか。


「ただいま! おなかへったからしょくじしてたの。赤いかみのお兄さんがくれたの!」

「何? ……アイツ、いつの間にギルド内に入っていたんだ?」


 ベルの言葉に、はぁ、とため息をつくロンド。もしかして残りのメンバーとはその赤髪の人なのか。


「もしかして残る最後のパーティですか?」

「ああ。だがアイツはソロだからパーティというのは語弊があるな。しかしランクは最高評価のSランク。まだ若いが、ここでは最強の冒険者だ。二つ名は『赫灼』のアレックス」



「ロンドさん、あんま褒めないでくれ。俺なんてまだまださ」



 そんな飄々とした口調がギルドの方から聞こえた。ベルの言う通り、短く切りそろえた赤髪赤眼の男性がそこに立っていた。

 歳は成人くらいかもう少し上くらい。たしかに最強と呼ばれるには若い年齢だ。


 アレックスは集まった者達を見渡し、その視線は私に向いた所で止まった。()()()()()()()()ジッと目を凝らして見つめてくる。


 ……え、なんですか。また面倒事ですか? ちょっと二つ名を聞いてゲス勇者の事を思い出したのは謝りますから許して下さい!


「……面白そうなのが何人か混じってるな。『黄金果実』と『ドラゴン・スレイヤーズ』は分かるとして、……お前達は?」

「『フォー・リーフ』です。この度の騎士団の方から報告があった、暴走種との戦闘経験があるので呼ばれました」


 シャロが少し緊張した声で返答する。アレックスはハハンと納得した顔で頷いた。


「あぁ。氷竜の暴走を止めたってのはお前達のことか。なら期待させてもらうぜ」

「ご期待に添えるよう微力ながら尽力致しますわ」


-----◆-----◇-----◆-----


 全員が集まったところで情報共有が行われた。流石に上級冒険者と言われるだけあってほぼ全員が何かしらのスキルや属性魔法、武具を所持しているようだ。


 特に強そうなのはやはり各パーティのリーダー各の3人、シュルツ、クロム、そしてアレックスだ。

 

 シュルツは細剣レイピアを使うSPD重視の剣士らしい。

 『共有シェア』という合意した相手とステータスを加算して共有するというスキルが優秀だ。


 例えば私とシュルツが『共有』を行うと、私のDEFの値を持った剣士となり、回避を考慮しない瞬速の一撃を放てるようになる。


 欠点として、共有中はスキル非保持者は陶酔状態になるらしい。前言撤回、何そのドラッグっぽい危なそうなスキル。絶対合意なんてするもんか。


 クロムはこちらの世界では珍しい、刀を使う技巧派の剣士らしい。

 この人もスキルが強力そうで『隠蔽』、『必殺』、『隠形』という、語感から考えてゲームで登場する忍者っぽい。


 ここまでは苦労して聞き出したが、それ以降は何も話してくれなかったので詳細はわからない。……この人集団戦とか出来るのかなぁ。


 アレックスは斧槍ハルバードの武具を所持しており、シャロと同じように魔法を武器にエンチャントする魔法戦士らしい。

 ちなみに二つ名通り、得意な魔法属性は『火』と『光』だという。



 ……何故か私の知り合いの魔法使いは、ソフィアを除いて火属性魔法の使い手が多い気がするけど、何か法則があったりするんだろうか。



 これだけでも強そうなのに、他にもいくつかのスキルを有しているらしい。すべてを教えてはくれなかったが、とりあえず『鑑定』スキルを持っているのは分かった。

 

 さっき私のことをジッと見ていたのはおそらくステータスを見ていたからか。私よりも優秀な『鑑定』スキルだ、羨ましい。


 とりあえずの情報共有を終えたところで、今日は解散となった。

 出発は明日の明朝。私達は濃い人達と付き合ったせいが、特に何もしてないにも関わらず随分と疲れてしまった。


 これが強い人特有のオーラに当てられたってやつだろうか……絶対違うよね。

 ……そう言えばソフィアは間に合わなかったみたいだし、後で連絡入れておかないと。


-----◆-----◇-----◆-----


 解散した後、アレックスとロンドのみがその場に残っていた。


「『フォー・リーフ』の奴らをどう思った?」

「バランスはいいが、ステータスは平凡だな。1人が飛び抜けてヤバいが」


 アレックスは『鑑定』スキルで覗かせてもらった際に、つい凝視してしまったステータスを思い出した。


「ほう、2人ではないのか?」

「確かに氷竜の少女は流石の竜種とあって、ステータスは人族の平均を軽く超えているな。だが、俺にとっては大した問題じゃない。問題はもう1人のルシアってやつだ。

一極集中型のステータスといっても度が過ぎる。俺でも全力で攻撃しないと通らないんじゃないか?」


 アレックスはまいったとばかりに頭を掻いた。言葉の割には表情に随分と余裕が感じられるが。



「――それで、任せていいのか?」



 鷹のように鋭い目つきで、ロンドがアレックスを睨みつける。




「ああ、任せとけ。駄目だと判断したら――俺が引導を渡してやる」




 アレックスは不敵に笑い、遠くを見やった。その視線の先には、何やらくたびれた様子ながらも、仲睦まじく笑いあう4人の姿があった。


お疲れ様でした。

いつも貴重なお時間を頂いて読んでもらい、とても感謝です。

楽しんでもらえるよう、そして何より、私自身が楽しんで書いていきますね。


※ 事前連絡:8/4は投稿をお休みさせていただきますね。一ヶ月に1日くらい投稿お休みしてもいいよね……ね?

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― 新着の感想 ―
[一言]  一通り読んで、村の税金対策の為に冒険者になった件は理不尽?不自然?な気がします。  それ以外は、とても良いです。
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