エピソード031 私、冒険者登録をします
やっと冒険者になりました。新キャラ達も正式加入です!
「……ここが冒険者登録をする場所で良いですか?」
「……はい。さっきはごめんなさいね」
受付のお姉さんはやはり少し申し訳無さそうだ。
別に謝ってもらうほど困ってなかったからそんなに気を使ってくれなくていいのに。
「気にしなくていいですよ。慣れてますから」
すでに騎士団や勇者に絡まれた事があるんだよ、今更だよね。
『ヒャッハー3人衆』というパワーワードだけは面白かったけどね。
「あなた、見かけの割に強いのね。……では、冒険者カードを作成します。冒険者としての能力を記す必要がありますのでステータスを確認します。この水晶に触れてください」
ステータス魔法の画面を見せたら良いのに、と思ったけど誰でも使えるわけではないのだろうか。
ともかく、差し出された水晶に私はためらいなく両手で触れた。
私の左手からは『聖環』が外されていた。
ふふふ、こんな事もあろうかと、建物に入る前に外しておいたのよ。
私は【聖環・地】を外すと割とステータスが激減するんだよね。
【聖環・地】には随分不服そうに抗議されたが、ちゃんと冒険者カードが発行されたら付け直すので我慢して欲しい。
ここは、私TUEEEがテンプレかもしれないけど、そんなの当事者になったら迷惑なだけだよ?
アーシアの加護は外せないので、DEFが高くなっちゃうのは仕方ないけどね。
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ルシア [一流の農民]
lv: 15
HP: 200/200 MP:400/400
STR: 115(-80) DEF: 020(+151)
MAT: 014(-13) MND: 025(-24)
SPD: 025(-24) LUK: 011(-10)
[スキル]
・土いじりlv.6
・投擲 lv.5
・加護 (****)lv.8
[魔法]
・【ストーン・バレット改】lv.4
・【アース・プロテクト】lv.5
・【ジオ・グラビティ・バインド】lv.2
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よし。ちゃんと【聖環・地】の加護が消えている。
何故か加護の欄のアーシアの名前が潰れている。これも【聖環・地】を外した影響なのかな?
「あら? 思ったよりレベルが高いですね……。こ、これはッ!!」
受付のお姉さんは私のステータスを見ると声を上げ、慌てて口を抑えた。
え、この流れは!『私、やっちゃいました?』的なやつですか?!
えー、困っちゃうなぁ、ふふふ。
「な、何か問題がありましたか?」
「すごい。属性魔法を覚えてるし、DEFが3桁……? STRは……いや、それよりも……ステータスの補正が異常すぎてその他が弱すぎるわ! ほぼ5歳の子供と同じじゃない!? あなた呪われてるわよ!!」
まさかの私TUEEEではなく、私YOEEEすぎるそうです。
酷い言われようだ。いや、事実だけど。
でももうちょっと落ち着いてください。悪い意味で目立ってます!
「こ、これはその。呪いではなくて加護の影響で……」
「あなたの長所が完全に潰れてるじゃない! これは加護じゃなくて呪いよ!!」
正論すぎてぐうの音も出ないです。
なんか自分案外強いんじゃないのか、って最近は思ってたけどそんなことないっぽい。
私、ちょっと冒険者する自信無くなってきた。
「こんなステータスで冒険者をするなんて無謀よ?!」
「だ、大丈夫ですよ。DEFはあるのである程度は何とかなりますし。いざとなれば私の代わりに攻撃してくれる強いパーティとか探せば……たぶん……」
あと、ついでに私の代わりに魔法をなんとかしてくれる人が欲しいです。
「そう言えば、あなた。パーティメンバーはいないの?」
「数名心当たりはいますが、今は誰も」
「そう……」
受付のお姉さんは何かを思案していた。
もしかしてこれ不味いパターンだろうか。冒険者として認められないとか?折角モチベーションが出てきてたのに。
「あの、私、冒険者にならないとちょっと困るので却下されるのは……」
「ああ、却下はしないわ。申請されたらよほどのことがない限り断わらないから。それよりもギルドの規定で、例外を除き、パーティメンバーが決まっておらず一人で冒険者登録をしに来た人は1年間養成所の方に行ってもらうことになっているの」
え、それは困る。
私の冒険者としての期間は1年。
その間にある程度お金を稼げないとそもそも冒険者になる意味がないし、村の皆にも申し訳が立たない。
「それも困るというか、私お金を稼がなきゃいけなくて」
「とは言え、これは規則ですから……。経験のあるパーティメンバーがいるなら話は別なのですが」
私は今日この街に来たばかりで、知り合いなんて誰もいない。
経験もない私をすぐに拾ってくれるパーティなんて流石に……。
「……へぇ。確かに色んな意味で異常なステータスね。でも、属性魔法もあるしDEFもすごく高い。守りを中心とした運用なら充分即戦力よ。あてがないなら、あたしのパーティに来ない?」
私の後ろからひょっこり顔を出したのは、先程助けに入ってくれたシャロットというツインテの少女だった。
どうやらすでに用事は終わったようで、登録に時間がかかっていた私の様子を見に来たようだ。
他人のステータスを勝手に見るのはマナー違反らしいが、そんなことよりも私をパーティに誘ってくれているようだ。
ここは逃す手はない。私は少女の提案に飛びついた。
「は、はい! 是非お願いします!」
「よし! じゃあそういうわけだから。ちゃっちゃとこの子の冒険者登録を済ませてやって?」
規則はクリアしたので、受付の女性は慌ててステータス情報をカードに転写すると、それを私に手渡した。
カードを見ると、私の名前と登録した街の名前、そして『職業:農民、冒険者ランク:E』という文字が書かれていた。
「これで登録は完了です。カードはなくすと再発行に銀貨1枚を必要としますので、なくさないようにしてください。……それではあなたの今後の活躍を祈ってます」
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私と2人の少女は冒険者ギルド内にある酒場の一角を陣取り、お互いの自己紹介を始めた。
「私はルシアです。さっきは私のためにどうもありがとう」
「シャロットよ。シャロでいいわ。別にあなたを助けたわけじゃないわ。あたし達も最近メンバーが抜けたから探してたの。そこんとこ勘違いしないように!」
「ローレライ。ローラでいいよ。よろしく」
そこで一旦話を中断し、シャロとローラは勝手知ったる感じで店の親父さんに飲み物を注文していた。
聞いたことのない飲み物だったが、たぶんノンアルコールだ。
私もついでに水を注文しておいた。異世界では水はタダじゃないのが普通だ。
全員の飲み物を受け取ると、それぞれが喉を潤しながら話を再開した。
「ルッシーはワケアリ?」
ローラは誰にでも愛称を付けたがるようで、既に私の愛称を決めたようだ。
ジュルジュルとラッシーのような飲み物を飲みながら、先程の私と受付の女性とのやり取りを思い出したようで尋ねられた。
「るっしー? ……ああ、私のことか。別に訳ありってほどじゃないよ。村のために1年の間にお金を稼ぐ必要があるってだけかな」
「それは割とワケアリっぽい気がするけど。いいね、興味湧いた」
ローラは身を乗り出してニヤリと笑った。
外見からクールな印象を受けていたが、意外とギャンブラー気質なのだろうか。
まぁ冒険者って職業自体がギャンブル要素満載なんだから今更かもだけど。
そんなローラをやれやれと見やりつつ、シャロは私に何が出来て何が出来ないのか、戦闘経験などを尋ねてきた。
どうやらパーティ(といっても私が入っても3人だけど)のリーダーポジションはシャロになりそうだ。
私は特に隠すことも無いので素直に聞かれた事に答えた。
村の襲撃の際にオークを撃破したことや火の勇者と模擬試合に辛うじて勝利した話をすると2人は大いに驚いていた。
「なんで戦闘経験のない男2人と子供2人でオークを撃破できるのよっ!? Cランクのあたし達でも苦労するのに!」
「2年前に『獄炎のグレン』が負けたって噂が立ったけど、嘘だと思ってた。ルッシーすごいね」
2人の冒険者ランクはCらしい。
Eから始まるらしいから中堅どころの実力って感じなのかな。
それにしてもあのナンパ勇者は『獄炎』なんて二つ名を持っていたのか。
絶対名前負けしてるよね!
「話を聞く限り、戦力として充分過ぎるわね」
「うん。私達の相性を考えれば前衛守護で動いてくれれば嬉しい」
シャロは身体強化の魔法が得意な剣士で、火属性の『ボール系』で牽制する攻撃型の前衛職らしい。
ショートソードを二本差ししているが、別に2刀流というわけではなく、そのうちの一本は魔法をエンチャント出来る特殊な剣で奥の手なのだそうだ。
よく知らないけど、エンチャントと複合魔法は違うんだろうか?
ローラは見た目通り弓使いだった。
さらに『探索者』というスキルを持っているらしく、罠の察知や簡易的な索敵能力がある。
戦闘時には後方で弓を放ち、近接戦も短剣でこなすらしい。
前・後衛と揃っているならたしかに私が防御主体で回せば中々バランスが良い。
魔物と戦ったりすることを考えれば一応ヒーラーが欲しいけど、それは流石に贅沢かな。
「わかった。一応戦闘するのに盾は買っておきたいから、最初は易しめのクエストでお願いね」
道中のモブリンとの戦闘時、盾がなくて仕方ないから手で抑えたりしたんだけど、触った感触が直に分かっちゃうからちょっと苦手なんだよね。
ヌルヌル系とかと対峙したら、絶対躊躇する気しかしない。
「オッケー、決まりね。それじゃあ……」
「「パーティ『フォー・リーフ』にようこそ! ルシア!」」
「うん! よろしくね!」
キンッとグラスを重ね、私達は乾杯でパーティ結成をお祝いした。
「それで、装備を揃えるために簡単なクエストって、あんたお金は持ってないの?」
「無いわけじゃないけど、少しの間の生活資金は残しとかないと」
いきなり装備を揃えたらすぐに一文無しだ。
私も一応女の子だし、宿が取れない状態はちょっと遠慮したい。
「じゃあルッシーも私達の部屋に泊まったら? もともと3人部屋を押さえてたから1人で泊まるよりは安くつくよ?」
「いいの?」
「お金の無駄だから2人部屋にしようと思ってた所だったのよね。割り勘分を払ってくれるなら別にいいわ」
「ありがとう!」
その後私達は宿に移動し、今後の活動について念入りに打ち合わせしたのだった。
そう言えば、街に到着してからアーシアが「私も出たい!」と頭の中で五月蝿いんだけど、邪魔にならないかな……明日シャロに聞いてみよう。
お疲れ様でした。
いつも貴重なお時間を頂いて読んでもらい、とても感謝です。
楽しんでもらえるよう、そして何より、私自身が楽しんで書いていきますね。
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