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エピソード027 平和な日々と不穏な影

予定通り、これにて第一章完です。

…と言っておいて、この後一つ間話があるけどね。

※ いつの間にかPVが随分増えてました! 沢山の方に読んでもらえて感謝感激です!


空は快晴。広がるは絶景。

箒で空を駆ける私達を邪魔する者なんていない。


やはり空飛ぶ箒の移動方法は最高だ。


「師匠。私はやっぱり空を飛ぶ魔法を覚えたいです!」

「風属性の魔法が覚えられれば可能性はあるがの。地属性が得意なルシアでは難しいのじゃ」


私も水や風には適性があるはずなんだけどなぁ。

なんで魔法覚えられないんだろう。ちゃんと魔法の勉強もしてるんだけどね。


「でも努力は続けますから! もし飛べたら一緒に空の散歩をしましょうね、師匠!」

「楽しみにしてるのじゃ」


行きは3日かかったのに、空を一直線に進めば1日もかからない。

私は流れる景色を飽きもせずずっと見ていた。

時折、とんびみたいな鳥が近寄って来て、私達と並んで飛んでゆく。

前世では味わえないような幻想的な時間を私は楽しんでいた。


その時、チラリと私の目端でなにかが動いた気がした。

私は感じた気配の方向に注意を向け、じっと周囲を観察する。

それらしいものは確認できない。

もちろん、下には沢山の生物がいるし、空には鳥類も飛んでいる。

神経質にならなくても、私の視線を掠める対象は山ほどいる。


でも、なんというか、そういう感じではなかった。

言葉で言い表すのは難しいけど、強いて言うなら……敵意だろうか。


「師匠、今……」

「ルシア、村が見えたのじゃ」


前を向くと、たしかにもう数分の距離にボルカ村が見えた。


考えても仕方がないか。

私は先程の違和感を頭の隅に追いやると、村で待つ皆のことを思い描いた。


「おかえり、ルシア」

「無事に帰ってきたな」

「あーうー」

「お母さん、お父さん、ルイン。ただいま!」


私とソフィアの姿が見えていたのか、既に家族を含めた何人もの人が私を出迎えに来てくれていた。

思い思いに撫で回すものだから、私の髪はぐちゃぐちゃだ。

それでも嬉しい。


「無事でよかったよ」

「すごく大規模な市場が毎日立ってるって本当かニャ?」

「話聞かせろよな。 あと、ちゃんとお土産買ってきたんだろうな?」


「大丈夫! お土産沢山買ってきたから! 後で皆で見ようね」

タマ・ミケ・ポチも勢揃いだ。



ようやく帰ってきた。ここが私の居る場所だ。


そう実感した。



-----◆-----◇-----◆-----


「……気づかれたか?」


闇属性魔法で姿を消していた人物はボソリとつぶやく。

人が空を飛ぶ方法は一般的ではないため、敵国の空の上とは言え少々気を抜いていたようだ。


遠方に箒で飛ぶ者達を見つけた瞬間慌てて魔法で身を隠したが、果たして誤魔化せたかどうか。

現にそのうちの一人の少女はこちらの方をじっと観察していたように見えた。


しかし何もアクションは取らなかった。

気の所為だと思ってくれたことを願おう。


周囲に誰もいなくなったことを充分に確認し、魔法を解除する。

現れたのはワイバーン型の機竜に乗った15歳くらいの女性。


その姿は漆黒。

黒いマントに同じく黒で統一された軽装備の鎧と、頭部をすっぽり覆い隠す兜を身に着けている。


顔の左側を覆う仮面には目の部分を中心に幾何学模様が描かれ、本来右腕があるべき場所には禍々しい義手が設えてある。


彼女は箒の少女達が降りていった村を一瞥した後、機竜を操り目的の場所へと急ぐ。


今、この国に彼女の存在がバレるのは望ましくない。

まだ準備が足りない。

今暫くの我慢だ。


「しばしの安寧を享受するが良い。唾棄すべき愚者どもよ」


彼女の零した呟きは空に溶け、数瞬の後、そこには誰の姿もなかった。


お疲れ様でした。

楽しんで貰えたなら幸いです。


 第二章はルシアが新展開に巻き込まれていきます。間話と1日のお休みを貰って、開始は7/5を予定しています。


お楽しみに!

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