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エピソード025 私、帰っていいですよね

今日は短いので2話連続です。

※ブックマークも少しずつ増えて、読んでくれる方が増えて嬉しいです!


火の勇者グレンは担架に載せられて闘技場を去っていった。

グレンを倒してVサインをしていた私は内心冷汗ダラダラだった。


何とか勝てたよ!

頑張って挑発し続けてみたけど、上手くやれていただろうか。

途中から頭が真っ白になって、自分でも何を言ってるのかよくわかってなかった。


戦闘中、何度も降参しようと思った。

武具の効果が通用しなかったらどうしようとか。

グレンが冷静に武具をしまわずに攻撃を続け、私の武具の効果が切れてしまったらどうしようとか。

複合魔法が成功しなかったらどうしようとか。

決め技が効果なかったらどうしようとか。


今になって、足が震えてきた。


結論。

私は農民として、畑を耕しているのが丁度いい。


「……私、帰っていいかな?」


私の小さな呟きが聞こえたのか、騎士団長のフォルブスが慌てて引き止めた。


「ま、待ちなさい。勝者には王からお言葉がある」


確かに、王様に一言もなしに帰るのは不味いかもしれない。

私は闘技場を見渡し、王様が居そうなところを探した。

あからさまなVIP席のような場所を見つけたので、私は傍まで行き跪いた。


「良い試合だった」

「ありがとうございます」


言葉はシンプルだけど、最大限の褒め言葉だ。


「まさかグレン殿に勝ってしまうとは」

「相性と運の賜物でございます」


ホント、私の言った通りだよ。

私の武具に火属性に対する対抗策があったら何とかなっただけだ。

依然として私が魔法攻撃に弱いことには変わりがない。

もし、グレンが火属性以外の魔法を使うことが出来たら、その時点で私の負けだった。

だって、防ぐ手段がないんだもの。


「ルシアよ。玉座の間で余が言った言葉。本気で考える気はないか?」

「王国の騎士団に所属する、というお話でしょうか?」

「うむ。余は先程の試合で確信した。お主には戦の才能がある。一農民にしておくには惜しすぎる人材だ」


それは買いかぶりすぎだと思う。

私の戦闘方法が特殊で、グレンが対応できなかっただけ。

いわば奇策、小手先のテクニックの類だ。

私は剣もまともに振れないし、弓も扱えない。

魔法にはそこそこ自信が出てきたけど、それも万能ではない。

騎士団に所属してもワイルドカードすぎて扱いに困るだろう。


それに何より……私は普通に家族とのんびり暮らしたい。


「申し訳ございません」

「……そうか。では今は大人しく引き下がろう。お主の師匠も余を怖い目で睨んでおるしな。だが、もし今後困ったことが余を頼れ。勝者への褒美はないとは言ったが、これくらいは良いだろう」

「ご厚意に感謝致します」


「皆、今日はよく集まってくれた! 今日の試合を拝めた事は皆の糧になるだろう。戦い抜いた彼らを拍手で讃えたい!」


「今宵はささやかだが宴を開く! 楽しんでくれ。以上だ」


-----◆-----◇-----◆-----


「全く、試合中生きた心地がせんかったのじゃ」

「心配かけてすみませんでした」


私は闘技場を出たあとソフィアと合流し、貴賓室に通された。

夜まではこの部屋で待機しておけ、ということだろう。


「まぁよいのじゃ。いい試合だったことは確かじゃからな」

「運が良かっただけなんですけどね。次は勝てないと思います」

「次などあって欲しくないのじゃ……」


ホントにその通りだ。

そしてこの後の宴会に参加したら回復したグレンにまた会う可能性がある。

もう因縁をつけられるのはこりごりだ。


「師匠、提案があるんですけど……」


-----◆-----◇-----◆-----


「なに? ルシアとソフィアがおらぬだと?」


パンドラム国王は、慌てて駆け込んできた侍女から手紙を受け取った。


『拝啓、パンドラム国王陛下。

私の為に宴を開いてくれること大変感謝致します。

ですが、そろそろ家族が心配していると思うので帰ります。

今度、美味しい野菜を持って伺いますね。

それでは。

草々、ルシア』


「くっ……はっはっは! やられたわ! ルシアよ、美味い野菜楽しみにしておるぞ」


お疲れ様でした。

いつも貴重なお時間を頂いて読んでもらい、とても感謝です。

楽しんでもらえるよう、そして何より、私自身が楽しんで書いていきますね。

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