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エピソード010 私、魔法使いの弟子になりました3

この物語における魔法の設定解説基礎編って感じです。説明が長く続くので苦手な人はご注意を。

 

「では、ルシアの魔法も確認したことじゃし、魔法の基礎講義をするかの」

「はい!お願いします」


 現状確認に時間がかかっちゃったけど、やっとソフィアの講義が受けられる。

 前世には魔法なんてなかったし、こちらの世界でも生活魔法くらいしか使い手がいなかった。いや、生活魔法もすごいんだけど、その殆どが前世でも代用の効くものが多く、正直がっかりしていた。


「あまり時間はないので『魔法とは?』みたいな理論的なものは飛ばすのじゃ。知りたければ後で本を渡すのでそれで勉強するのじゃ」


「あの、師匠。私、文字の勉強をしたことがないので、まず本が読めないと思うのですが……」

「なに?いやそうかルシアは平民じゃしな……、いや待て待て。お主、教会で文字を読んでおらんかったか?わしはお主が『お告げの木板』で自分の名前を読み終えてからぶっ倒れたと思っておったんじゃが」


 そう言えばそうだった。

 確かにアルファベットは前世と同じだし、『RUSIA』はまんま私のローマ字表記だからスルーしてた。


 でも、流石にすべてがローマ字表記で書かれているとは思えないんだけど……英語のように異世界特有のアルファベットの組み合わせで単語や文章が書かれていたら、前世とは文法……は日常会話は特に問題なく話せているから大丈夫かもしれないけど、流石に単語は無理じゃないのかな。


 よく考えて見れば今の私の母語は日本語じゃないんだな……。

 前世の意識に切り替えて日本語で聞くように集中すると、相手が何言ってるかわからなくなるし。

 マルチリンガルってこんな気分だったのだろうか。……と、ふとそんなことを思った。


「いえ、文字は読めないと思います。唯一自分の名前だけは覚えておかないと苦労する、と友達に言われたので覚えていただけです」


 ミケ、人柱になってください!

 商人との付き合いを積極的にしているミケならそんな事言いそうだし!


「ああ、あの猫人族の子かの。たしかに歳にしてはしっかりしてそうじゃったの。では、後日王都の貴族の子が使う文字勉強用の教材でも届けるのじゃ。大抵の魔法使いは魔法のことを書に残すので、文字が読めないと色々困るからの」


「わかりました!」


「うむ。では講義を続ける……まだ始めておらんかったの…・・始めるのじゃ。最初は魔法の種類に関してじゃ。魔法とは3種類に大別されるのじゃ」


 魔法は規模とその特異性で大別される。



 1つ目は無系統魔法、いわゆる生活魔法と呼ばれるもの。

 魔力を持っているだけで発動媒体――今では『聖環』――を持つ者ならば誰でも使用できる魔法で、火種を作ったり少量の飲み水を作ったりと火や水などの属性を使っているものもあるが、その規模の小ささから無系統に分類されている。



 2つ目は属性魔法。

 世界の核である7属性に対する高い適性を持つ者のみが扱える魔法で、その中でも魔法規模や魔法の難易度などのいくつかの基準によって初級・中級・上級・最上級とランク分けされている。


 各属性によって大まかな特徴があり、火は攻撃と幻覚、水は回復と支援、風は速度と回避、木は創造と成長、地は防御と操作、闇は侵食と忘却、光は開放と記憶を特徴とする。


 特徴に関しては、各属性魔法の使い手が分類としてまとめたものなので、必ずしも明確ではない。

 闇と光が他の属性よりも抽象的なのは担い手が少ないことと、魔法が特殊で分類が難しいため、らしい。



 3つ目は治癒魔法、正しくは神聖魔法と呼ばれる。

 個人の資質ではなく、神に祈りを捧げ、その恩恵として行使できる神の御業の模倣。その最も顕著な特徴は、死への干渉である。


 様々な制限があるらしいが、卓越した神聖魔法の担い手は制限内であれば失った四肢を生やし、破裂した臓器を元通りにし、病を治し、死者を復活させることも可能だという。


 教会で治療を受けることができるのはひとえにこの神聖魔法のおかげである。属性魔法の水が回復の魔法を使えるが、その原理は全く異なるらしい。



「……というわけじゃ。ここまででなにか質問はあるかの?」

「いくつかあります」

「ほう、理解が早くて優秀じゃの。好きに質問してくれて構わんぞ」



Q. 『聖環』の複製品がなかった時代は魔法はどうだったのですか?

A. オリジナルはあったので魔法という存在自体は知られておった。が、一般には普及しておらんかったらしい。


Q. 属性魔法には特徴があるとのことですが、属性が異なっても共通した魔法はありますか?

A. 詳しくは後で話す予定じゃが、ある。例えばお主の【ストーン・バレット】をわしは『バレット系』と評したが、例えば水を加速させる【ウォダ・バレット】というように同系統魔法は存在するのじゃ。


Q. 闇と光の属性魔法の担い手が少ないと聞きましたが、その理由は?

A. 不明じゃ。しかし、属性魔法を扱う者はその属性に見合った本質を持っておることが多い。闇と光は人の本質の部分が特殊なのかもしれんな。


Q. 私は【聖環・地】に地・水・風の適性があると言われましたが、複数の属性を扱える人はいますか?

A. 良い質問じゃ。簡潔に言うと少ないが存在する。わしもその一人じゃ。最も得意な属性は風じゃが、他に火・水・地の属性魔法を扱えるぞ。えへん!


Q. 神聖魔法がチートすぎる気がするんですが、私はアーシアという一応神がいるんですが、神聖魔法は使えるんですか?

A. チートというのがどういう意味か分からんが、本人に聞いたら良い「使えないわ!」のじゃ……。



「えーと、今のところは以上です」

「思ったより飲み込みが早くてびっくりじゃ。あと基本的な講義としては先程質問にあった魔法の系統のことじゃな」

「はい、お願いします!」



 属性魔法の行使において、いくつかの『系統』が存在する。

 これは学術的な分類なので、学説毎に枝葉末節は異なるが、ほぼ共通する大分類として『攻撃』・『防御』・『支援』・『回復』・『拘束』・『例外』がある。



 『攻撃』は魔法を使って攻撃をする系統であり、そのほとんどが放出系、つまり、炎で燃やしたり、風の刃を飛ばしたりする方法である。

 その他に罠のように攻撃魔法を設置するタイプもここに含まれる事が多い。

 有名なのは、【ファイアー・ボール】のように凝縮して発射する『ボール系』と、【ウィンド・カッター】のように薄く引き伸ばして切断力を高める『カッター系』。



 『防御』は魔法を使って防御する系統であり、物理防御系と魔法防御系の2つに分けられる。『支援』よりも効果時間が短いが、効果自体が高いのが特徴。

 防御魔法を他者に付与したり、広範囲を防御するのはレアで地属性に多い。

 有名なのは、【ストーン・ウォール】のように攻撃を遮って防御する『ウォール系』と、【ストーン・プロテクト】のように防具として着る形で付与する『プロテクト系』。



 『支援』は状態異常の魔法を予防したり、バフ・デバフをかける系統であり、比較的効果時間が長いのが大きな特徴。

 有名なのは、【パワー・ブースト】のようにバフをかける『ブースト系』、【スピード・ダウン】のようにデバフをかける『ダウン系』、【パラライズ・レジスト】のように状態異常を予防する『レジスト系』。


 『回復』は神聖魔法とは別で、属性魔法を使った回復の系統であり、神聖魔法よりは回復量も回復できる限度も低いが、比較的安易に扱えたり、継続的に小回復させるのが特徴。

 有名なのは、【アクア・ヒール】のように体力を回復させる『ヒール系』、【アクア・リヒール】のように体力を継続的に小回復させる『リヒール系』。


 『拘束』はその名の通り対象の動きを封じる系統であり、非殺傷性であるのが特徴。そのため、魔物を狩ったり捕獲する冒険者や兵士に人気がある。

 ただし、その多くが魔法の行使に手間がかかるのが難点で、使い手自体は少ない。『拘束』の系統は種類が多いが、全てまとめて『バインド系』とされている。

 なお、【グラビティ・バインド】のような重力操作型の拘束魔法は『攻撃』に分類する説もある。


 『例外』は上記で分類することのできなかった魔法をひっくるめた分類であり、有名なのは闇属性の精神干渉魔法や木属性の創造魔法。

 特に創造魔法は、難易度は高いが錬金術や人造生物を作り出したりできるらしく、近年では『創造』という大分類を追加しようという動きもあるという。



「……という感じじゃ。何か質問は?」

「1つだけあります」


「意外じゃな。わしはむしろこちらの方が質問が多いかと思ったが」

「話を聞いた限り、あくまで学術的な分類、つまりわかりやすいように纏めただけですよね?今後の研究でも時々刻々と変化しそうなものに私がツッコミを入れるのは野暮だと思います」


「……お主、本当に5歳かえ。末恐ろしいの」


 私、前世では普通というか、科目によっては成績良くない方だったんだけど、末恐ろしいと言われるのか。日本の教育すげえです。

 いや、私が5歳だからだよね。うん、知ってる。


「まぁ良い。それで質問とはなんじゃ?」

「私の愛する【ストーン・バレット】というか『バレット系』が代表例に出てこなかったんですがなぜですか?『攻撃』の大分類に含まれるものなんですよね?」


「あー……。うん、そう。アレじゃ……、わ、忘れとったのじゃ!」


 ソフィアは焦った。

 あんなにキラキラした目で見てくるルシアを前に本当のことが言えるわけがない。


 

 『バレット系』に分類される魔法の起点が全て魔法外の事象によって発動せざるを得ない都合上、投石(笑)とか水遊び(笑)とか言われていることは。



「なるほど。師匠でもド忘れとかするんですね!なら仕方ないです!」

「は、ハハ。わしも人の子じゃからな……。と、とりあえず魔法の基礎に関する講義はこれにて終えようと思うが、他に聞いておきたいことはあるかの?」


「ソフィア師匠が先日見せてくれた『複合魔法』というのが興味あったんですが」

「ああ、なるほどの。じゃが、『複合魔法』は難しいので、もう少し魔法の勉強と練習をした後の方が良いのじゃ」


 なるほど。中級編あるいは上級編の技術ということか。

 ならば将来教えてもらえることを楽しみにして、基礎的なことをコツコツとやっていこう。


「わかりました!今日はありがとうございました!」


「うむ。なかなか教えがいがあって面白かったのじゃ。わしは明日からしばらく研究に戻らねばいかんのでこの村から一旦離れる。教材はルシアの家に送り届けるようにしておくので、勉強と練習をしっかりしておくのじゃぞ?」


「もちろんです師匠!」


 こうして、短い間だったが、ソフィアの魔法講義は終了した。

 今後、年に数回の頻度でボルカ村にソフィアが現れてはルシアの指導をして、数年後には立派な魔法使いになり、王都を揺るがす大事件に巻き込まれる事になってしまうのだが、それはもう少し先のお話である。


お疲れ様でした。

楽しんでもらえたらなら幸いです。

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