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エピソード008 私、魔法使いの弟子になりました1

皆様、いつも見てくれてありがとうございます。

ソフィアと一緒にルシアが得た能力の確認です。

若干説明回みたいなのが続くので、此処らへんは後に修正するかもしれないです。

 

 聖環の儀式の数日後。

 本日のお手伝いを終えた私は、村から少し離れたひらけた場所に来ていた。


「(とりあえず、これくらい離れておけば村の人にも気づかれないよね)」


 村に戻った翌日、先に帰ることになってしまったミケとポチに謝った後、二人から教会で教えてもらったという『聖環』の使い方を実践すべく、ずっと機会をうかがっていた。


 そのことをソフィアに話すと、魔法の講義も兼ねて『聖環』のことを教えてもらうことになったのだ。


「では、始めるとするかの。今日はまず聖環の儀式で授かった力と魔法を確認し、その後魔法の基礎について講義するのじゃ」

「わかりました!ソフィア師匠!」


「うむ。まずは『聖環』についてじゃ。基本的なことはもう知っておるだろうが、一応復習なのじゃ」


 ソフィアは私が教会で司祭から聞いたことを改めて説明してくれた。



『聖環』が神々の遺産、アーティファクトであること。


 多くのアーティファクトは現在の技術では再現が難しいが、『聖環』は解析が進んでおり、オリジナルには劣るが複製可能であること。


 遡れる記録では、50年前にはすでに聖環の儀式が行われており、その頃から『聖環』の複製品を5歳の子供が得られるようになったこと。


 己の力の把握を補助し、潜在能力を引き出し、資格ある者にはふさわしい武具を授けること。



「……と、こんなところかの」

「はい。だいたい司祭様に聞いた通りです」

「うむ。ではもう少し詳しい話をするのじゃ。『聖環』のオリジナルについてな」



 『聖環』のオリジナルは別名『聖環・属性』とも呼ばれ、この世界の核となる火・水・木・風・地・闇・光の7属性に対応する7つしか存在しないこと。


 『聖環・属性』は複製された『聖環』とは異なり、特別な加護を持つこと。


 『聖環・属性』の適合者になれる条件は完全には解明されていないが、その1つに特定の属性に対する高い適性が必要であること。



「特定の属性が優れているだけじゃ適合者と認められないんですね」

「うむ。複製された『聖環』は【聖環・無】とも呼ばれとってな。その名の通り、属性を持っていない『聖環』じゃ。

仮に高い属性適性があったとしても『聖環・属性』の適合条件に見合わない場合は、【聖環・無】の石がその属性の色に染まるだけ、というわけじゃ」


「それにしても師匠はずいぶん『聖環』のことについて詳しいんですね」


 教会で聞くような内容は別として、ソフィアは『聖環・属性』の話やオリジナルと複製品の違い、適性についてなど、一般の人では知らなさそうなことを詳細に知っていた。


「そりゃそうじゃ。『聖環』がわしの研究のメインテーマなのじゃ。なんなら『聖環』の複製品を最初に作ったのはわしじゃからな」

「師匠すごいです!」


 まさか解析困難と言われているアーティファクトを複製までした人物がソフィアだったなんて!


 私はとんでもなくすごい人に弟子入りしたのではないだろうか。

 ――でも、『聖環』って約50年前からあるっていってたけど、複製品を最初に作ったのがソフィアなら、本人は一体何歳なのか……と口が滑りそうになったが、殺気を感じたので自重し、別の思ったことを口にした。


「『聖環・属性』って、なんだか選ばれし勇者って感じがしますね!」

「カァーカッカ!では、ルシアはさしずめ『地の勇者』ってわけかの?」


 ソフィアが不思議なことを言うので、私は頭に疑問符を浮かべて首を傾げた。


「え?なんで私が勇者なんですか?」

「忘れたか。お主が持っているのは【聖環・地】、れっきとした地属性のオリジナルじゃ」

「ええっ?!」


 『聖環・無』と『聖環・属性』には格の違いがあり、見る者が見ればすぐに見分けがつくものらしい。


 自分がそんなすごいものを持っているとは思わなくて――いや、教会で【聖環・地】に告げられたような気がするけど、正直あの時は頭がいっぱいいっぱいでよく覚えていなかった――、先ほどの自分の発言を思い出し、ため息をついた。


「はぁ、前言撤回です。少なくとも私は勇者なんて器じゃありません」


「勇者とは選ばれてなるものではなく、勇ある者の軌跡をそう呼ぶのじゃ。わしはルシアが将来勇者と呼ばれていても何も可笑しくないとは思うがの。まぁ、今はさしずめ『地の農民』といったところかの」


「そのまんまじゃないですか……」


 ソフィアは楽しそうにククッと笑い、話を切り上げた。


「さて。気を取り直して次は武具についての説明をしようかの。……とはいえわしも専門ではないので武具のことについてはそこまで詳しくないんじゃが」



 武具とはアーティファクトであり、『聖環』から何らかの基準を基に与えられること。


 ランクがあるそうで、仮称として上から順に『神具』・『英雄具』・『武具』と定められていること。


 普通の武器と異なり、特殊な効果を持つこと。


 特に『神具』の持つ特殊スキルや固有スキルは非常に強力であること。



「わしが知っているのはこんなところかの。それでルシアの得た武具はどういうものなのか見せてくれるかの?」


「はい、それは構わないんですが……主観ですけど、私の得た武具は武器じゃないと思うんです……」


「武具と銘打たれておるが、必ずしもその全てが武器というわけではないの。ルシアはわしの武具を見たであろう?箒じゃぞ?」


 先日乗せてもらった箒を思い出す。確かにあのときソフィアはその箒のことを武具だと言っていた。

 前世の記憶がある私なら、一応魔法使い、というか魔女にとっての武器が箒というのはギリギリ理解できる。でも、とてもじゃないが普通は箒で敵と戦うイメージはできない。



「では……出てきて、【農耕祭具殿】」



 ……なにも出てこない。



「……あれ?」


「何も出てこんが……銘を間違っているのではないか?しかもなぜ『祭具殿』……おそらく倉庫のことじゃろ?」

「わかりません。間違っていないはずですが」


『マスタールシア。助言をよろしいでしょうか』


 いきなり頭の中で声が聞こえた。これは先日の『聖環』から話しかけられた感じと似ている。


「指輪さん?どうしましたか?」

「何じゃ急に?」

「あ、いえ、指輪さんが私に話しかけてきてて……武具について助言してくれるとのことです。そのまま訳しますね」


 私はソフィアにも聞こえるように、【聖環・地】が話した言葉をそのまま復唱することにした。


「『マスタールシアが得た武具はある意味1つではなく、複数の武具を集めたものの総称です。なので、使用する武具を選択して命じてください』」


「なんと、そんな武具があるのか。じゃから武具の名前が倉庫を意味するのじゃな」

「でも私、その『祭具殿』にしまわれている武具がどういうものなのかわからないのですが……」


「『農耕で使用する道具をイメージすれば間違いないかと思います。あとは武具の方から勝手に応答してくれます』」


「なるほど、では……出てきて、【農耕祭具殿・鍬】」


 今度は反応があり、左手を見ると(くわ)の柄が握られていた。


 柄は高級そうな木が使用されており、吸い付くように手にフィットする。

 柄と刃床部の境目には注連縄しめなわ紙垂しでが巻かれ、鍬先の刃の部分にはダマスカスのような複雑な紋様がある。

 見たことはないが、祭事用の鍬、と言われれば納得できるような立派な鍬だ。


「あー……」

「えっと、他も試してみますね……なるほど、【農耕祭具殿・鎌】」


 私が唱えると、先程持っていた鍬が草刈り用の(かま)に変わっていた。


 こちらは先程までの鍬よりもシンプルだが、同じように鎌刃にはダマスカスのような紋様がある。

 軽く振ってみると、安物に特有のガタつきもなく、よく切れそうだ。


 そこから私は、パッと思いついた農耕に関連する道具を頭の中で並べ、武具として命じてみた。

 その結果、今の所【農耕祭具殿】からは鍬・鎌・馬穴ばけつ如雨露じょうろ・円匙(すこっぷ&しゃべる)・はさみ軍手ぐんてが取り出せた。


 つまりあれだ。


 私の武具は、農耕具版ゲート・○○・バビロンだ。


 確かアレの設定は王の宝物庫だったか。だから武具の名前が祭具殿なのか……?いや、納得しようとしたけどわからない。

 とりあえず、どこでも取り出せるマイ農具が手に入ったと思えばとても便利だ。


 もしかしたら他にも取り出せるものがあるかもしれないが、全容がわからないのでゆっくり試してみようと思う。

 ちなみに、鍬にも熊手のような備中鍬びっちゅうぐわや半楕円状の万能まんのうとか様々な形があるはずなのだが、統一規格で平鍬ひらくわしか無理なようだ。


 武具の特殊能力というのも試してみた。


 鍬で試してみたが、その効果は、私の周囲を範囲指定して鍬を振るうと瞬く間に数十メートル四方の地面をフッカフカに耕せるという、超絶簡単土壌改良スキルで農家垂涎の一品だった。


 戦いに使えるか、と言われれば大いに謎だが。


「とても便利です!私、気に入りました!これで立派な農民となれます!」

「……まぁ、わしの箒も武器とは言い難い武具なので人のことは言えんか。とりあえずルシアらしいと言えばらしいかのぅ」


 私はニコニコとしているが、ソフィアは苦笑いだった。


お疲れ様でした。

楽しんでもらえたらなら幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公が素直で明るいとストレスフリーで読み進めることができて良いですね。 はちゃめちゃな神とのコンビも期待が持てます。 [一言] 続きを、また読みに来ます! 更新作業、頑張ってください。
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