エピソード間話 神々の慟哭
アーシア被害者の会の慟哭です。アーシアに悪気はないんです、信じてあげてください!
その昔、この世界は1柱の創世神によって創造された。
神の名は創世神オルフェノス。
辺境世界創生部第二課のオルフェノスは上司の命令によりこの世界に派遣された。
オルフェノスは無人の惑星に降り立つと、まず自身の手足となる7柱の大精霊(部下)を創造した。
火の大精霊 ボルカニカ
水の大精霊 ヴォダフニカ
風の大精霊 エアロニカ
木の大精霊 ウドニカ
地の大精霊 ジオニカ
闇の大精霊 ダグニカ
光の大精霊 サンモニカ
部下は非常に優秀であり、彼らに世界の創造を任せ、オルフェノスは世界に異分子が入らないように世界の壁を創る作業に没頭した。
大精霊はそれぞれ眷属を従え、この世界に生物が住めるようテラフォームしていった。
資源が枯渇した世界のために、7柱の大精霊が協力して世界に魔素を満たした。
エアロニカとウドニカが協力し、空気を創り、魔素を循環させた。
ヴォダフニカとウドニカが協力し、水と生命を誕生させた。
ボルカニカとジオニカが大地を広げ、生物の住む場所を整えた。
サンモニカとダグニカが朝と夜を創り、生物の活動と休眠の機会を与えた。
オルフェノスは大精霊達の働きに大変満足し、褒美(特別賞与)を与えた。
特に勤勉だったウドニカには、眷属らに神の因子の付与と擬似的な生命の創造に関する権限を与えた。
生物は何度も滅びと再生を繰り返し、1万年後、やっと安定期に突入したことにオルフェノスは安堵した。
やっと、休暇を取れる。
そう思った矢先だった。
地球という高度に発達した世界の神から『神メール』が届いた。最初はそんな上位世界の神が辺境の神の私になんの用かとオルフェノスは訝しんだ。
メールを読んでみると、どうやら手違いで地球に住んでいた人の子の魂がこの世界に転生してしまったらしい。文面は上位世界の神に在るまじき完全下手対応だ。
「ああ、これは大失態だ。責任者は胃に穴が空く心持だろう」
オルフェノスは責任者に少し同情した。
メールの続きにはこの世界に左遷という形で地球で担当した下位神を派遣し、件の人の子をサポートさせる旨が書かれていた。
オルフェノスは臨時ではあるが神の同僚ができることに上気し、少しぐらいなら件の人の子を優遇してやっても良いかな、と浮かれた思考で考えた。
「さて、その者の名前は……ふむ、ルシア、か」
オルフェノスはどんな恩恵を、どのタイミングで、どの程度与えるか、思案した。
その前に、派遣される下位神がそろそろ到着するはずだ。世界の壁を通過するできるようにするための準備をせねば。
「私は急いでルシアちゃんのもとに行かなければいけないのよ!私の行く道を遮る邪魔な壁なんてぇ、ぶち壊す!」
ぱきゅぃいいん!
途端、世界の壁に穴が空いた。
何千年もかかって創造した世界の壁に、穴が空いた。
「ああああああああああっ!!」
創造神オルフェノスの全力の慟哭が――世界の片隅で轟いた。
彼の慈悲はルシアに届くか。
――それは神のみぞ知る。
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「うう、い、胃薬を……」
今日、件の人の子が転生した世界から抗議の『神メール』が届いた。
――派遣した下位農耕神アーシアが世界の壁をぶち破って不法侵入したらしい。
「すでに向こうの神に迷惑をかけているのに、なぜ追い打ちをかけるのか……」
私か?私が悪いのか?
普通、連絡を取って入るだろう?それが常識だよな?
私は、デスクの引き出しから『神胃薬』を掴みだし、錠剤を口に流し込んだ。
「か、課長……お水です……」
「うむ、ありがとう……」
庶務の子が気を利かせて持ってきた水で胃薬を流し込み、私は独りごちる。
「なぜだ。なぜアーシアくんは私に迷惑を掛ける。仕返しか?仕返しなのか?確かに今回の件はアーシアくんのみのせいだとは言えんし、私にも責任の一端はある。しかし、……ブツブツ」
「か、課長そのお伝えしたいことが……」
気づくと、水を持ってきてくれた庶務の子が、まだ私のデスクの前に佇んでいる。
そして机の上に置きっぱなしになっていた胃薬をそっと私の方に押しやった。
……嫌な予感がする。
「な、なんだね……?ああ、コップか。大丈夫だ私が後で洗いに行くよ君は早く自分の持ち場に戻るん……」
「調査隊からの連絡で、件の人の子にアーシアが接触し……霊障と勘違いさせて、その……気絶させたらしいです」
「あ、ああ、あああアーシアァァアアアアアア!!!」
お疲れ様でした。
楽しんでもらえたらなら幸いです。




