エピソード001 俺、いつの間にか死んだらしいぞ
どうも初めまして、アマガエルです。
昔コツコツ書き溜めていた黒歴史ノートが引っ越しの際に封印から解き放たれてしまったので、せっかくだから少し修正して投稿してみようと思いました。
アイデアを書き殴ったような部分もあるため、全体構成をもう少し考えないと……。
未熟なため拙い表現も多いかと思いますが、仕事の合間にちょっとずつ語彙や表現を勉強しますのでご容赦願えたら幸いです。
それでは、冒険奇譚のはじまりはじまり~。
俺の名前は水地武。
実家近くの地方工業系大学に通う普通の大学1年生だ。
あぁ、そうさ。普通だ。
残念だが、小説に出てくる自称普通人のように小さい頃から古武術習ってたり、マニアックな知識や技術を習得してたりは勿論なく。
そうだな……自己紹介するとしたらこんな感じか。
成績も特に良くも悪くもなく、強いて言うなら理系科目の方が得意な程度。
スポーツ経験は部活でやってた野球くらい。人より多少器用だったからピッチャーを任されるも、3年間ほどほどに頑張って、最後の夏は地区予選1回戦で敗退だ。
趣味は読書と映画鑑賞、あとはゲームか。
自分の部屋で好きなアクション映画の技をこっそり真似してみたり、ファンタジー小説で読んだ魔法を妄想したりしてる。
嫌いなものはホラー全般。
お化け屋敷とかホラー映画とか、気絶するか腰を抜かすかで周りに迷惑しか掛けない上にダサすぎるから、その類には二度と手を出さないと誓っている。
……どうだ?
マジで普通だろ。恐れ入ったか。
幼馴染が居たり、生き別れた妹が居たり、両親ともに海外出張中とかそういうシチュエーションもなしだ。というか、リアルでそんな奴いるかよ。幼馴染って伝説上の生き物じゃないのかよ、挙句の果てに好意を持ってくれるとか意味が分からんリア充死すべし慈悲はなし!!
……んんっ、少し興奮しすぎたようだ、話を戻そう。
とにかく特に将来の目標もなく実家から出るのも面倒くさいな、という消極的な理由から最も実家から近い大学に入学し、なし崩し的に数ヶ月が過ぎて今は夏休み。
俺は中腰で畑の草むしり作業に精を出していた。
「はぁ、腰いてぇ……」
凝り固まった腰を解すために立ち上がると、ポキポキッと小気味良い音を立てた。
え? なんで工業系の学生が畑仕事してるのかって? こいつはれっきとしたアルバイトだ。
アルバイトに密かな憧れを持っていた俺が父親に「夏休みにバイト探すわ」って告げたら、その晩に「優良物件だぞ!」と手作り感満載の書類を見せられたわけだ。
『オーナー(実家)の畑の管理(草むしり・耕作・収穫など)で、日給3,000円から。勤務日・勤務時間応相談。アットホームな職場です』
……オーケー。これはあれだ。今までの経験から応相談とか書いてるけど、『Yes』 or 『はい』の二択で毎日労働をさせられる。真っ黒だぜ!
つうか、アットホームな職場ってそりゃ実家だからなぁ!!
内心ツッコミまくりながらも俺はしぶしぶ了承した。何しろバイト探すために求人雑誌を眺めてみたが全く求人がない。流石ド田舎、と泣く泣く帰宅したばかりだからだ。
仕事内容は今まで通りの実家の手伝いだが,給料付くならむしろプラス。
お手伝いじゃない、これはアルバイトです、と自分を納得させ日々の畑仕事に精を出しているのだ。
「やぁやぁたける君。今日も精が出ますねぇ」
「あ、どうもヤスさん。お疲れ様です」
一息ついてたところに職場の同僚(単に隣の畑の住人)が声をかけてきて、俺はそれにいつも通り笑顔で応じた。
小さい頃からの顔馴染みであるヤスじいさん、というか畑の住人達とは家族同然の付き合いだ。たしかにアットホームな職場である。
ちょっと職場の平均年齢が高すぎる気がするがな。
「ほれ、野菜ジュースやれ。今日は暑いけぇ倒れたらあかんよぉ」
「ありがとうございます。俺の方は軽く水撒いて少し弄ったら終わりますから。ヤスさんこそ熱中症で倒れないでくださいね」
「若いのにゃぁまだまだ負けんよぉ。ほいだらなー」
ヤスじいさんは持っていた鍬をバーベルに見立てて上げ下げすると、自分の畑に向かっていった。本当に元気な人だ。
「俺も頑張りますか。丈のある草は抜き終わったから、水汲んでくるかぁ」
俺はバケツを右手に野菜ジュースを左手に装備して用水路に向かった。うちの畑は親父が趣味でやってるものだから専門的な設備はなく、言ってみれば家庭菜園を多少規模をでっかくしたようなもんだ。
その割に土地が余っているのか畑の面積はそこそこ広いため、すべてに水やりをするには何度か往復しないといけないのが面倒な点だな。
「(……ん? 土がユルいな)」
用水路手前の小さな畑の前で、俺は足元の感触に違和感を覚えた。
地面に湿り気があり、少しだけ土がぬかるんでいる部分がある。さらによく見てみると、草が茂ってはいるが少し耕したような跡があり、そこに水が溜まっているようだ。
「おかしいな。最近雨は降ってないし、この畑は空きのはずだけど……。どっかの子供が土遊びでもしたのか?」
今は夏休みだし、里帰りで畑の住人達の孫とかが来て遊んだのかもしれない。
耕したというよりも掘り返したと言った方が良いその畑は、円を描くような軌跡を描いたり、ところどころ掘り返されたりと滅茶苦茶だ。
「ま、いっか。別に俺の土地ってわけじゃないし。でも、ぬかるんでるのはなんでかねー、っとうおっ!? 最悪だ、漏れてんじゃねぇか!!」
見ると、その畑と隣接する用水路の一部に亀裂が走り、そこから水がチョロチョロと流れ込んできていた。
水が漏れていると、下流の畑に渡る水が少なくなるからすぐに直さないといけない。
さらに雨でも降れば漏れる量が増えて、ここだけでなく他の畑にも侵食するかもしれない。それで農作物が流されたり、水没して丹精込めて作った野菜たちが根腐れなんてすれば涙ものだ。
「「めんどくせえ。このくらいなら土嚢で詰めれば何とかなるかなぁ。あとでヤスさんに相談するとして、先に水を汲んでっと……」
ボシャンとバケツを用水路に投げ込み、水が溜まるまで待ちぼうけだ。
ただ待ってるのも暇なのでヤスさんからもらった野菜ジュースを飲む。よく振ってなかったのがいけなかったのか、勢いよく吸い上げたストローから塊が口内に飛び込み、俺は激しく噎せた。
「んぐぅブフォッ、ごほごほっ、き、気管に入った……あぁ?」
堪らず吐き出した野菜ジュースが土に落ちると、途端に地面が何らかの模様を刻みながら発光し、驚く間もなく俺はこの世界から忽然と姿を消した。
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気が付くと俺は知らない場所でパイプ椅子に腰かけた知らない女性と対面していた。
「……は?」
「はい、こんにちは。水地武さんね」
美人のパンツスーツ姿のお姉さんが履歴書みたいなものを持って、俺に声をかけてきた。
「記憶が混濁しているかもしれませんが、あなたは死にました」
は、え、ぇぇえええ?!?!
……俺、いつの間にか死んだの?!
お疲れ様でした。
楽しんでもらえたらなら幸いです。