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ep.7

「あら、ヴェルデットロ公爵のところの坊やじゃないの。」

「ご機嫌麗しゅう、ザフィロ王女殿下。」

「ふふ、お目当ての女性は見つかったのかしら?さぞ美しい女性なのでしょうね。」

「殿下!」



 豪華絢爛、というよりは質実剛健といった壮麗なゼリーヴァ王国の王都にある王城の廊下。そこにザフィロ・チェゼーロ第一王女が通りかかり、ベルナルト・マジカ・ヴェルデットロは頭を垂れていた。

 ゼリーヴァ王国の王室には、3人の王位継承者が存在する。アルブム王太子、ザフィロ第一王女、イディオータ第2王子。唯一の王女にして女傑と名高い、公務としては主に外交を担当しているのがザフィロ王女殿下である。余談ではあるが、婚約者はベルナルトの上司、ビアンコ・マジカ・アランドゥーエ公爵である。



「これからディーのところへ?」

「はい、イディオータ王子殿下の許へと馳せ参じるところです。」

「そう……。」



 ザフィロは一瞬考え込むような様子を見せた後、ひらひらと扇子を振ってまたねと立ち去った。

 今の間はなんだったのだろうか、とベルナルトは思う。聡明で溌剌としている王女殿下が言い淀むなんて、珍しい事があるものだ。そう思いつつ、足早にその場を後にした。



 ***



「ベル、僕の考えていることがわかるかい?」

「大変恐れ入りますが、殿下の御心を御推察することができず。申し訳ございません。」

「まあ、話してないんだから分かる訳ないよね。」



 何なんだ、この王子は。いつもいつも、この調子である。ちょっと疲れた、と小さく息を吐き出した。

 そもそも、公爵家子息のベルナルトが王太子ではなく第2王子の側近紛いのことをしているのは、ひとえに年齢と貴族家のバランスを考えてのことである。アルブム王太子殿下と同年代のビアンコ・マジカ・アランドゥーエ公爵が、アルブム王太子殿下の近衛魔術師として傍にいる以上、同じ公爵家であるヴェルデットロ公爵子息であり王国立魔術師団のマジカの名を賜っているベルナルトまでが王太子につくとバランスが少々悪い。第2王子も重要な王位継承者の一人であることからも、年の近いベルナルトとその側近であるリュエ・マジカ・ジエラストロンディ伯爵子息が傍についているという訳である。



「僕のカーラが、領地へ帰ってしまうみたいなんだ。護衛を頼めないかな、ベル。」

「彼女には既に多くの護衛を抱えているかと思いますが……。」

「だって彼らはカーラの様子を教えてくれないじゃないか。」



 そっちが本命か、と叫びたくなった。自分の私欲のためでも、使えるモノは何でも使うと方だとは思っていたが、ここまでくるといっそ清々しいかもしれない。抱えている仕事をどう割り振るか考えなければならないなと、魔術師団長に遠征許可をとらなければならないと、頭の中で算盤をはじく。魔術師団長の憐みの目をまた向けられるのか……、と本気で逃げ出したくなる自分を叱咤激励し、配下の礼をとった。

本日はここまで。

次回は明日。

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