01
5月、雨が降っている夜中である。
玄関に頭からつま先まで濡れている豊春が立っている。
俯きがちで申し訳なさそうに「泊めて下さい」とだけ言った。
俺は何があったか勘ぐって少し言葉に詰まった。その間の後に目が合った。
「上がって。」
俺は高校を途中でやめた、もうみんな卒業したのだろうか。俺は豊春を一度このマンションの部屋に呼んだことがある。
脱衣所に案内すると、フラフラした足取りでついて来た豊春に、
「シャワー使って、服はそのまま突っ込んでおいて」
と洗濯機を指す。
先に足跡形に濡れた床を拭く。次に整えられたベッドから毛布を剥ぐのと同時に脇のゴミ箱を掴んで、毛布はソファにかけてゴミはキッチンの物と一緒にまとめた。
着替えとタオルを見繕って洗濯機の横にあるラックに置く。洗濯機も回しておいた。
ここまで割と手際よくこなしはしたが、動揺している。
高校時代、豊春とは仲は悪くはないがそれ程親しくしていたわけでもない。
でも昔は…よく遊んだ。
下着は新しい方がいいかと思ったがコンビニがあまり近くにない、出かけている間に倒れられても困る。
脱衣所から出てきた豊春は上が白い大きめのシャツと、俺が履くとハーフ丈の短パンが7部丈になっていた。
ドライヤーをしないまま出てきたので「乾かしておいで」と言う。風邪をひかないか心配だった。
玄関では気にかける余裕がなかったが、口の端に大きな青あざがある。口内も切れてるかもしれない。
適当に乾かして半乾きで戻ってきた豊春をソファに座らせると、傷にしみないように湯で淹れた緑茶に水を足しぬるくして出す。あとアイスノーも。
俺はじろじろ見られては落ち着かないだろうと思い、洗い物が溜まっていることを理由に豊春への注意を逸らすことにした。
たまに様子をみると豊春は少しずつお茶を飲みながらぼーっとしていた、俺から話しかけるのははばかられた。
10分ほど経った後に変わらない様子なので
「とりあえずベッド使っていいから寝たら…?」
と言うと、頷きもせず軽く頭を動かしてこっちを見た。寝室の方を指差しで教えると力なく立って歩いて行った。
次の日、俺はいつもの時間にソファで目覚めて、あまり物音を立てないように生活した。
昼の2時頃に起きてきて軽く身支度した豊春に
「座って待ってて」
と言ってキッチンの正面がカウンターになっている席に座らせると、飯の用意をする。昨日よりは元気そうに見えるので、
「今日は用事ないの?」
と軽い調子で尋ねると、
「…ない。」
と答えた。
「俺も、じゃあゆっくりしよう。」
フライパンで焼いたトーストに卵とクリームチーズのディップ、トマトと玉ねぎの和風サラダを出す。
豊春は何かを言いかけると、また俯いてしまった。
俺はなんとなく気鬱な事情を察していた、いつ帰るかなどは聞かなかった。
「何飲む?お茶か水かパインジュース。」
「…パイン…。」
それから一緒に住むようになった。




