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旅人さんのツクモ神  作者: フクロウの旦那
序章 化物と呼ばれた旅人 遊楽
1/6

序節

猛禽の書いた初連作です。

『ま、暇だし観てやるか』位の気持ちで観てくださいな


 雲一つなく太陽が明るく照らす早朝。人々は薄汚れた街並みを背景に、古ぼけた街道を歩んでいく。自分のため、家族のため、恋人のため。各々が違う理由を持ち、年齢も性別も関係なく、自らの目的のために仕事に励んでいた。その街道の片隅に一人、小さな老人が移動式の露店らしきものを開いている。


「はぁ。やはり、ここらへんじゃ売れるものも売れんわのぉ」

 自らの露店が見えないというように、眼前の街道を行き交う人の流れを見つめながら、老人は困ったように眉間にしわを寄せ溜息を吐いた。ふいに店棚に目をやると、三人ほどの痩せた子供が服を袋代わりにして、置かれた食料品を必死に詰めこんでいた。


「何をしとるか!」

「やべ、逃げろっ!」

 老人が怒鳴って近づいていくと、リーダーらしき少年が引っ張る形で、子供らが逃げていった。老人はそのまま追おうかと考えるも、自身の店や体の事を考えて戻っていく。


(・・・ここよりも王城に近い場所で開いた方が良かったやもしれんなどと、今更後悔してきたわい)

「そんな顔している所悪いが、少し良いか?」


 老人が顔をうつむかせるようにして考えていると、不意に声をかけられた。その事に少し驚きながら顔を上げると、顔は黒い帽子を深く被っていてよく分からないが、大体二十になりたてのような外見の、どこか落ち着いた雰囲気のある少年が立っていた。


「おっ、いらっしゃい!」


 露店前に客らしい人がいると分かった途端。先ほどのしわ寄せ顔をやめ、少しわざとらしさを感じるような、柔らかな笑みを浮かべながら接客モードに入る老人。


「このリンゴ5つと・・・この短刀を貰えるか?それと、この国についての情報も」

「リンゴ5つと短刀と情報じゃな。それだと、大体銀貨3枚と言った所じゃの」


 老人が買う物とその値段を口にすると、腰に掛けた財布の中を漁る少年。少年が手を入れると、中で硬貨同士が擦れ合う音が何回も響いた。中を覗きながら少し困ったように漁り続け、やっとという風に銀貨3枚を財布から取り出し、老人に手渡した。


「ほいっと・・・確かに、銀貨3枚丁度貰ったぞい」

 銀貨を手渡すと、老人は丁寧な様子で質素な短剣とリンゴを袋に詰め込んでいった。


「しかし、情報を売ってくれと言われても動じないんだな」

「売れる物は何でも売買する。それが商人の基本であり、ワシの心情じゃからな・・・それよりお前さん、この国について聞きたい事があったようじゃが、何が聞きたいんじゃ?ワシもこの国に来たのも久しいし、流石に全ての事をとはいかんが」


 淡々と口にしながらも商魂らしいものが見え隠れする口ぶりに感嘆を示しながら、少年は問い掛けたい事について口にする。


「ああ、聞きたい事は、この国の治安や内情についてだ。知っている限りのことを教えて欲しい」


「内情はともかく、治安なら周りを見ればわかるはずじゃが・・・」

 そう呟いて、老人は露店の周辺を見まわす。道を沿うように建つ建物はどれも崩れそうな外で、道を舗装する石畳も所々が剥げ、土の部分が露出している状態で放置されていた。そこを歩む人々の恰好も、最低限の人間としてみれるかどうかという薄汚れたものや、色や質感が似通った布で繕われたツギハギだらけのものがほとんどで、みれる服装をしているのは、立ち寄った商人や傭兵といった、国外から来た者だけしかいない。


「・・・この様子をみて、わからんかの」

「確かに、ここの治安が世辞でも良いとは言えないのは見ていてよく分かった。だが俺が聞きたいのは、『この国全体の治安』と『第三者でも解る内情』についてなんだ。正直、この国に入ってから色々と嫌な視線や感覚ばかりで気になって仕方ない」

「・・・気は進まんし、話は長くなるがええかのう?」

「ああ、情報が貰えるのなら構わない」


 何処から話そうかと考えると同時に、口角を下げその表情を暗くしていく老人。少年がそれを申し訳ないような、困ったような風に見ていると、横から誰かの腕が伸びて来て、少年の財布を奪っていった。


「あ、しまった」

「へへ、これは貰って行きますよ!」


 少年が撮られた財布を目で追うと、赤いフードを被った少女が道脇を走って逃げていった。その光景を他人事のように少し見ていると、少年は唖然とした老人に目を向け直し、情報について催促する。


「すまない。口にするのが苦痛なのかもしれないが、俺もこの国の事について知りたい理由があるんだ。だから」

「あんたそんな事言っとる場合か!?あれはあんたの財布じゃろうに!」

「・・・ハァ。わかった、追いかければいいんだろう?後でもう一度聞きに来るからな」


 状況を理解した老人が、追いかける様子を見せない少年に言葉をかける。少年は何か言いたげな反応を示したが、諦めた様な面倒そうな表情で溜息を吐き捨て、速足程度の歩みで少女を追いかけていった。その後ろ姿を見て、老人は呆れたという反応をしている。



(・・・変な奴じゃったのう。あんな様子で、本当に大丈夫なんじゃろうか?)


次の話は、早くかけるといいなぁ・・・

というか、近日に出すので待っていて下さい。

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