ひとりぼっちの鈴
鏡の世界に取り残された鈴は、音もなく立ち上がる。
「……」
しばし地面にめり込んだままのかがみんを見つめ、ゆっくりと手を伸ばし、抱き上げる。
「生きてる、よね?」
「うん、まあ、かろうじて……」
「ボクって邪魔者だったの?」
「いやいや、そんなことないさ。君にとって僕は家族みたいなものだろう? 僕だって同じ気持ちさ、鈴」
「……そう、だね」
名を呼ばれ、鈴は泣き出しそうに顔を歪めて唇を引き結んだ。
誰にも見られないよう前髪で目元を隠す。
小さなかがみんの背に手を回し、ぎゅっと胸の中に抱く。
「それでも、君はボクにとって大切だから……。だから、大丈夫。一緒にいる……」
「うん? そうだね、それがいいんじゃないかな」
かがみんの返事は聞き流し、鈴は心に言い聞かせるように、強く抱きしめた。
「あの、鈴? あんまり締め上げられると体に堪えるんだけど。えっと、何か怒っているのかい? 敗けたことを気にしているのなら……いだだだだだっ! あのっ、鈴? ちょ、苦し、い……っ」
強く強く、抱きしめ続けた。
読了ありがとうございました。第三章、これにて完結です。




