表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
50/70

なんてつまらない……

 

 

 予想を超えた事態を前に、しかしまりあは怯まなかった。足を止めずにベルを追い回し、怒涛の拳撃をもって果敢に攻め続ける。



「凄まじい力……。物理保護障壁をこんなにも容易く打ち砕くだなんて。やっぱり、君は強いね。聞いた通り」



 余裕を含んだベルの呟きに、まりあは怪訝に顔をしかめる。



「聞いたって……一体誰から!」

「君相手なら全力を出せそう……。せいぜい死なないように気を付けて」



 詰問に答えずに、ベルは作り出した障壁を足場にして、高々と跳躍。大きく宙を舞って、後退した。


 開いた距離は約二十メートル。間髪入れずに、長方形の壁を出現させる。十重二十重に重ねられた魔力障壁が、彼我の間を隔てる。



「オォ――――――――――――――――――――――――――――――――――――ッ!!!」



 まるで意に反さず、まりあは重車両のような勢いで剛腕を振るった。


 連なる破砕音とともに、目障りな障壁が次々と打ち砕かれていく。



「まりあちゃん、頑張って!」



 初見こそ驚かされたが、ベルの障壁にまりあの突進力を弾き返すほどの力はない。これならいける、と離れた場所で意気込んだしぐれは、精一杯の声援を送る。


 その直後、眼前で煌々と紅色の光が瞬いた。



「―――聖浄なる光。聖火の灯。掲げ持つ砲身に焔をくべよ。我は崩壊破壊の撃ち手なり」



 厳かな声色が響く。


 瞬間、しぐれは己の感覚のすべてを疑った。



「……何、これ……」



 呆然とした呟きだけが零れ落ちる。今目の当たりにしている光景が信じられない。


 先程の過程が正しいとすれば、しぐれはまりあよりも感知能力が鋭く、魔力の痕跡やその大きさを目で見て感じ取ることができる。


 もしも本当にそうだとしたら、ベルと敵対している現状をとても受け入れ難かった。かの魔術師が放つ魔力量は、あまりにも箍が外れていた。


 まりあが持つ圧倒的な威圧感。

 屋上で美羽が放った憤怒の光撃。

 それらを遥かに凌ぐ途方もない魔力の塊が、歌うように紡がれる言葉とともに、際限なく膨れ上がっていく。



「茫洋を割り、大地を穿ち、目につく全てを一掃せん」



 間違いなく、何らかの攻撃の兆し。


 そう直感した時にはもう遅かった。



「#輝ける紅き極光__クリムゾン・レイ__#!」



 そして、視界が真っ白に閉ざされた。あまりの光量に、とても目を開けていられない。

 顔を覆ったしぐれの耳に、まりあの激声だけが飛び込んでくる。



「やあああああああああああいっ!!!」



 解き放たれた極光の砲撃を前にしてなお、まりあは猛り狂う。

 雄叫びとともに己の炎を呼び起こし、強靭な下腿で大地を蹴りつけ、驀進。真っ向から衝突する。



「きゃあああっ」



 衝撃の余波に耐え切れず、呆気なく吹き飛ばされるしぐれ。芝生の上を幾度も転がった末、ようやく止まった。


 全身の鈍い痛みに呻きながら顔を上げれば、そこには薄く煙を立ち昇らせるまりあの背中があった。



「ま、まりあちゃん!?」

「……っ」



 まりあの身体がぐらり、と傾く。


 急いで駆け寄るも、しぐれでは崩れ落ちる巨体を支えきれずに、二人はそろって芝生の上に倒れ込んでしまった。


 満身創痍に陥り、まりあの変身が解ける。



「くっ、私の炎じゃ相殺し切れなかった……」



 まりあは、声を詰まらせて呻いた。


 かの魔術師は逃げ回っていたのではない、すべては戦略の内。先の絶大な魔力砲を放つための布石だったのだ。


 相手の実力を見誤った。ベルの力はまりあのそれより遥か高みにある。


 悔しさのあまり叩き付けた拳は、あまりに小さく見えた。まりあは全身に浴びた破壊光線の痛みも忘れて、奥歯を噛みしめる。


 サク、サク、と芝生の草を踏みつける音が近づいてきて、二人の頭上に影を落とす。



「その程度なの? なんてつまらない……」

「……っ!」



 ベルは、何も言い返せないまりあを失望の眼差しで見下した。


 期待外れだった、とため息をひとつの残し、軽やかに中空へ跳ね上がる。そのままどこかへ飛び去って行った。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読了、ありがとうございました。
感想・評価いただけると嬉しいです! 最新話下部にあります!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ