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筋肉少女まりあ★マッスル 全力全開!  作者: ユエ
2話 しぐれの友愛
41/70

助けてくれてありがとう

  

 

「やれやれ。美羽では駄目だったか。いい線いっていると思ったが、なにぶん想定外が多すぎた。そういう意味では、魔法少女になりたての美羽には荷が重すぎたかもね」



 決着がついた途端にこの言い草だ。

 何食わぬ顔でしゃしゃり出てきたかがみんは、まだ小刻みに痙攣を繰り返している美羽を睥睨し、やれやれと肩を竦めた。


 残された六つの尾に魔力を宿し、美羽へと力を分け与える。



「魔法少女の肉体だ、魔力さえあればすぐに修復できるだろう。目が覚めた時、君たちへの激しい怒りで、さらに強力な力を身に着けているに違いない」



 かがみんの負け惜しみを、まりあはただひと言で斬って捨てる。



「そいつにそんな勇気はないよ」

「……さて、どうかな?」



 最後まで余裕のある態度を崩さず、睨み合うこと数秒。

 かがみんは、くるりと踵を返す。



「まあいい、治療は終わりだ。僕は行くよ。さらに強い魔法少女を作って、何としてでも君を……いや、君たちを排除する。首を洗って待っているといい」



 別れ際の捨て台詞まできっちり済まし、その場を去り行こうとするかがみん。その小さな頭部を、まりあの巨大な手のひらが鷲掴みにした。



「おお?」

「まさか、何事もなく帰れると思っているの?」

「あ、いや、こういった争い事は魔法少女同士で……っ」

「飛んでけーっ」

「ああー……」



 魔力によって盛り上がった三角筋が生み出す膂力は、生身の時と比べものにならない。

 かがみんはあっという間に彼方に消え、真昼の空の星になった。



「そこの二人、逃げるな」



 次いで、まりあは鋭く声を飛ばし、卑怯者どもの機先を制する。


 そそくさと屋上の扉を開けていた姫香と小咲は、肩を跳ね上げて急停止。互いに顔を見合わせて逃亡を諦めた。

 背筋をピンと伸ばしてこちらを向いた二人は、各々あらぬ方に視線をさ迷わせる。



「あ~、えっとぉ~。美羽ちゃんが勝手にやってたっていうか~。私たちは、そのう……」

「……私たち二人とも殺される」

「ちょ、止めてよ、小咲ちゃん! 縁起でもないこと言わないでえっ!」

「姫香ぁ、私死にたくない……っ」

「いや、そんなこと、さすがに、ねえ。……えっと、殺さないで……っ」



 恐怖による妄想に憑りつかれ、涙ながらに命乞いを始める二人。


 まりあは、そんな彼女らを一瞥すると、美羽を指差し、脅しのつもりで命じた。



「連れて行きなさい、そして二度としぐれをいじめないで」




★   ★   ★





 二人きりになった屋上で、魔法を解いたまりあとしぐれ。にこっと気持ちの良い笑みを浮かべて、小さくハイタッチを交わす。



「やったね、しぐれ」

「うん。全部まりあちゃんのおかげだよ」

「もう何言ってんの、しぐれが頑張ったんだよ? 全部しぐれがやったの。もっと自分を褒めてあげなくちゃ。さ、笑って?」 

「……うん、そうだね」



 しぐれは、隣にある明るい笑顔を誇らしげに見つめた。烏滸(おこ)がましくも、思う。まりあの笑顔を守ることができたのだ、と。


 変わりたいと思えたのも、そのための勇気をくれたのも、すべてはまりあのおかげだ。だから、彼女に伝えたい。


 精一杯の感謝を込めて、しぐれは微笑んだ。



「まりあちゃん、助けてくれてありがとう」

 

 

 

 

これにて2章完結です。読了ありがとうございます。

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