表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
筋肉少女まりあ★マッスル 全力全開!  作者: ユエ
2話 しぐれの友愛
37/70

プロテインこそ、力の源

 

 

「いけるかい、美羽!」

「言われなくったって!」



 呼び声で我に返った美羽は、ひしゃげたフェンスから飛び出し、猛然とまりあに襲い掛かった。



「安部まりあ、お前は絶対許さない! ぐちゃぐちゃにしてやる!」

「くっ、こんの!」



 まりあも負けじと拳を振り上げ、果敢に応戦する。



「すご~い、いいぞ、美羽! いけいけ~」

「……いや、簡単にはいかないぞ」

「えっ? なんで~?」

「あいつ、生身で美羽と張り合ってる」



 仲間の背中へ声援を送る姫香と対照的に、小咲は警戒の色を深めた。


 戦況はまりあの防戦一方だ。美羽から繰り出されるステッキの乱打を捌くので精一杯。

 先程から幾度となく体を叩かれ、かろうじて致命傷を避けている。


 生身のままのまりあが、魔法少女の美羽に対して、だ。


 圧倒的な劣勢に立たされながらも、まりあは決して負けていなかった。



「……過剰な魔力摂取の影響だね」


 

 その理由を、かがみんは冷静に分析する。


〝魔女の卵〟は魔力の塊だ。まりあはそんなものを常に供給し続けていた。

 度重なるプロテインの摂取。そして、筋力増強のための肉体改造。


 まりあは今、人としての限界すらを打ち破り、身体の構造そのものを根本的に作り変えてしまった。ひとたび魔力を開放させれば、変身していなくとも、その筋力は人外並みに増強される。



「今のまりあの筋力は人間のそれじゃない。くそ……っ」



 嫌というほど辛酸を舐めさせられたかがみんは、もはや認めるしかない。まりあのことを侮り過ぎていた。


 どうせ魔女に喰われるだろうと、楽観視してしまった。魔獣から魔力を供給できなければ、無力な少女と何も変わらないはずだったのだ。


 今やまりあは、未知の領域に到達した魔法少女だ。彼女が秘めたる可能性に対して、あまりに無頓着が過ぎた。


 これ以上の勝手は許さない。かがみんは、気勢を上げる。 



「いくら素の筋力がすごくても、魔法少女に変身されなければ力負けすることはないよ、美羽!」

「わかってるってーの!」



 同調するかのように、美羽は必殺の一撃を放つため、ステッキの先端に魔力を込め、振り上げる。


 防御では相殺できない。瞬時に回避の判断を下したまりあは、相手の挙動を目で追った。

 しかし、



「うらあ!」

「うっ、ぐ……っ」

 


 ステッキに気を取られ過ぎたせいで、死角から飛んできた鋭い手刀を捌き切れなかった。肩を痛打され、姿勢を崩される。


 必殺を囮に使った、冷静な一撃。美羽は怒りに狂いながらも、確実にまりあを仕留めに来ている。


 先の不意打ちはもう利かない。勝敗は純粋な力の差で決まる。埋め合わせることのできない戦力の差が、着実にまりあの身体を痛めつけていく。


 このままではいけない。

 額に汗かき焦るまりあだが、腹の底で煮え滾る真っ赤な情熱が、喉元まで湧き上がって来てくれない。


 魔力が足りないのだ。プロテインを摂取しなくては……っ。しかし、そのチャンスが見つからない。



「まりあちゃん!」



 痛みに呻くまりあの耳に、しぐれの悲鳴が届く。ひとり蚊帳の外に置かれながらも、まりあの身を案じて声を上げている。

 その足元に、スクイズボトルを見つけた。



「しぐれ、プロテインをっ」

「させるか! 美羽!」

「はあっ」

「きゃあっ!」



 かがみんの助言に従い、美羽は即座にチャンスを潰しに来た。隙を見せた瞬間を狙ってまりあを突き倒し、瞬く間に地面に組み伏せる。


 一度拘束されてしまえば、もはや脱出できない。四肢に力を込め、必死に足掻こうとも、覆しようのない圧倒的な力で押さえつけられる。



「うう……っ」

「そんなっ、まりあちゃん、待ってて!」



 まりあの窮状を目の当たりにし、しぐれは思わず駆け出そうとした。



「そこで止まりなさい、しぐれ」



 鋭い牽制の声とともに、美羽が振るったステッキから一条の紫紺の光が走り、しぐれの足元を焼き焦がした。魔力を凝縮して放つ魔砲弾だ。

 


「う……、あ……っ」



 突然の閃光に戦き、しぐれは体をつんのめらせて急停止。心臓に楔を打たれたかのように、硬直する。


 見開かれた双眸は恐怖に支配され、ただただ美羽へと注がれる。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読了、ありがとうございました。
感想・評価いただけると嬉しいです! 最新話下部にあります!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ