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閑話:獣人洋服事情


「そういえば獣人ってみんな服着てねーの?」


 きっかけはポプラの無神経な一言だった。



 コーラルと心なしか楽しそうに話していたエキナセナは、それを聞いた途端にぎっと眉尻をつり上げて鬼のような形相になる。私はこっそりアルディラさんのそばへ退避した。


「そんなワケあるか!」

「でも獣形態ん時って全裸だろ? お前も素っ裸だったじゃん」

「ぅなッ! あ、ぐ、まさか、見て」

「大丈夫よエキナセナ。私が見せなかったし、エルくんが掛けた布もあったから」


 アルディラさんの言葉にほっと息を吐くエキナセナ。どうやら羞恥心は私たちと同じ基準のようだ。


「…………捕まった時に宝珠を奪われた」


 エキナセナはすでにアルディラさん達にも自分の身の上話を済ませてあるので、奴隷だった彼女の言葉にアルディラさんとコーラルが悲痛な面持ちになる。

 聞けば捕まった時は裸にされて鎖で繋がれていたらしく、尊厳も何もない扱いに私含む女性陣が特に憤慨した。けれどエキナセナはそれに関しては、逃げる時に奴隷商を原型が分からないまでボコボコにして股間のブツを潰して使い物にならないようにしてやったと誇らしげに言ったことで多少の溜飲が下がる。

 もちろん私たちは拍手喝采。ただ一人男性であるポプラがきゅっと内股になって震えていた。


「宝珠っていうと、魔道具かしら」

「そう。絹の精霊が魔法付与してくれたものよ」

「絹の精霊?」


 自分が精霊だと知ったばかりのコーラルは好奇心に目を輝かせる。私も刺繍を生業とする職人として是非知りたい! 精霊についてもだけど、その宝珠に関してもっと詳しく!


「正確には絹の原料となる糸を吐き出すシルクルという虫の守護精霊よ。絹の宝珠は獣人の形態変化にあわせて、服を形作ってくれる」

「そんな便利なものがあるのねぇ、旅の荷物が減りそうだわ。でも絹の精霊ってシルクルの産地で祭られているのは知ってるけど、私も見たことが無いの。契約なんてもっと難しいんじゃない?」

「ファームララスでは、結構契約してる者が多い。だから魔法付与も出来るし、そういう魔道具もたくさんある」

「ええ!? そうなの……。精霊の加護が豊かと言われるだけあるわね。独自の技術も発達しているようだし、早く鎖国終わらないかしら……! 行ってみたいわぁ~欲しいわぁ~」


 アルディラさんが羨ましそうに言う姿に韓国コスメ買いに行きたい! って言ってた前世の同僚を思い出した。かくいう私もその魔道具超欲しいんですけど。


「どんな見た目なんですか?」


 コーラルの問いにエキナセナは指で鶏の卵大のわっかを作る。


「これくらいの、乳白色の玉。綺麗だから見せてあげたかったけど……」


 エキナセナはとても残念そうな顔をして落ち込む。それと連動して耳がへちゃっと力なく折れて、その瞬間私たちの間で間違いなく「きゅんっ」という音がした。幻聴? たとえそうだとしても、私たちの心は一つになったはずだ。




「ね、ねえエキナセナ……不躾で悪いのだけど、そのっ」

「エキナセナさん、あの、お願いが……」

「ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから……!」



「「「耳と尻尾を触らせて(ください)!!」」」



 なんて見事な三重奏。女性陣の心は今この瞬間、結束した!




 …………………………そう思った時期が私にもありました。




「きゃあああ、ふっさふさね……!」

「やわらかいですっ、気持ちいいですっ」

「や、あの、ちょっと」

「獣の方の狼のごわごわとした毛皮とは比べ物にならないわっ! やだちょっと髪もサラサラね!? 半年間野宿だったんでしょ? どうやったらこんなに綺麗に保てるのかしら」

「もふもふですぅ……!」

「ふわ!? そこは駄目……!」



「………………なんか、あっち楽しそうだね」

「入りてぇ……オレだってアルディラ姐さんにナデナデしてもらいたい……」

「ああ、そっちね……。俺はエキナセナの耳と尻尾にさわりたいよ……」

「お前の方がアウトだろーが……。獣人は恋仲でもねーかぎり異性にどっちも触らせないぜ……」

「知らなかった……!」


 体育座りで指をくわえてみている先には、キャッキャとエキナセナをかまい倒すアルディラさんとコーラル。とても華やかで楽しそうな空間が形成されている。

 今ばかりは男装なんてしている自分が心底憎い。こんな馬鹿な変装さっさととっちまえよって思う。




 やっぱり生まれ持った性別は大事にしなくちゃいけない。

 そう思った今日この頃。













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