表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

01 仮想と現実。



ハロハロハロー。

12/6午前3時に見た夢を、見ながら練った作品を書き上げてみました。ジャンルは一応SFです。多分、初めてですが、頑張ります!


とりあえず計三話!!!




 桜の花びらが、ひらひらと舞い落ちる季節。

 澄んだ青い空に舞い上がるそれを、私は感傷的に浸って見つめていた。

 美しくも散ってしまっている桜を見るのは、心奪われると同時に悲しくもなる。そう感じるのは、自分が花の名前を与えられたからだろうか。花が散るのは、悲しい。

 ふと、周囲を見回す。そうすれば同じく桜の舞を見ている人達が歩いていた。でも私とは違い、大きなゴーグルをつけている。それはMRゴーグル。

 複合現実だったかな。

 人工的な環境を作り出して、そこにあるかのような感覚を体験できるものがVR。そして現実世界から遮断する。

 MRはCGなどで作られた人工的な仮想世界に現実世界の情報を取り込み、現実世界と仮想世界を融合させた世界を作り出す。

 子どもの頃はテレビの前だけで楽しんだそのVRゲームは、ついには外にまで広がった。現実の世界と仮想の世界が、MRを通して繋がっている。

 MRゴーグルをかければ、違う景色が広がっているのだ。

 きっと規則正しく降り注ぐ桜の舞を見ているに違いない。私は現実の桜の舞を見ていたいから、待ち合わせの公園前で立ち尽くした。

 もちろん、私もMRゴーグルを持っている。今や仮想世界と現実世界が繋がる時代。必需品だ。肩にかけているサブ鞄にかけている。

 私は肩に乗った花びらを摘んで取って、公園のベンチに置いた。

 公衆ボックスがちょうど鏡のように私を映してくれたので、髪型のチェックをする。額をさらす大きな分け目で、前下がりの短いボブ。根元は黒いけれど、毛先にいくほど薄くなる茶髪。これは染めたわけではなく、れっきとした地毛である。父親譲りなのだろう。父も色素の薄い容姿をしている。私の瞳の色も、淡い茶色だ。

 母の方は真逆で美しい黒髪の持ち主である。正直、母のような美しい黒髪がよかった。それを言うと、父がショックを受けてしまうので秘密である。


「おはよう、姫花ひめか

「あ、おはよう、森ちゃん!」


 待ち人の到着だ。

 おさげと丸眼鏡の小柄な少女。私と同じ、黒のハイウエストスカートの制服を身に纏っている。胸元には、赤い大きなリボン。白のジャケット。噂ではこの制服は、軍服からデザインされたものらしい。

 森子ちゃんも、肩にかけているサブ鞄にMRゴーグルをつけている。


「やっぱり、あなたゴーグルつけてなかったのね」

「あ。桜が見たくて」

「仮想の桜の方が綺麗なのに」

「そうかな。私は現実の桜の方が好き」


 いつまでも減らない仮想の桜は、ずっと綺麗なままだろうけれども、私は現実の散りゆく桜を見ていたい。


「あなたらしい」


 森ちゃんはそう笑うことなく、学校に向かって歩いていく。

 桜の花びらの絨毯を踏みながら、信号待ちをする。ゴーグルをかけている人達も同じく信号で止まった。ちゃんと信号も車も見えているのだ。でも運転中のMRゴーグルは、禁止されている。罰金はいくらだったかな。

 同じ制服の生徒達と坂を登っていって、学校に着いた。そこで私と森ちゃんはゴーグルを装着する。同じくゴーグルを装着する生徒とぶつかってしまわないように、隅っこに移動することを忘れなかった。

 ゴーグルのスイッチを入れて、ログイン。

 創立七十年という立派で案外普通な学校は、ゴーグルを通して見るとそれはそれはそれは豪華な城のような煌びやかな外観の建物になる。色は白。そして、校門を潜っていく生徒達はアレンジした制服を着ているし、色とりどりの髪色をしていた。

 中には燃えるような真っ赤な髪を立たせている生徒。ファンキーだ。

 または普通に黒髪ロングの生徒もいる。ただし男子生徒の制服を着ていた。まぁ、仮想世界では、どっちを着てもいいと校則が言っている。

 仮想世界の私は黒髪と迷ったけれども、大きなウェーブのついたロングでプラチナブランド。でも母にちょっと似せた髪型だ。お尻に届く長さで、顎元は内側にカールしている。ここは母と同じなのだ。

 瞳はプラチナブランドに合うように、ブルーアイ。ウエストにはベルト。そして、腰には短剣が二つ携えている。スカートには前にスリットが入っていて、ニーハイブーツを履いた足がチラリと出る仕様。

 森ちゃんは、深緑色の髪をツインテール。制服にアレンジはないけれども、ライフルを背中に背負っている。

 他の生徒だって武器を所持しているけれども、これは学校に関係なかったりする。間違っても武器を生徒に使えば、校則違反。器物破損の場合は、罰金。


「おはよう! 姫花ちゃん! 森子ちゃん!」

「あ、おはようございます。ナンパ先輩」

「おはようございます、ナンパ先輩」


 校門を潜ると待ち構えていたかのように、飛び出す先輩が現れた。

 特に驚くことなく、私と森ちゃんは挨拶を返した。


「今、間違いなくナンパ先輩って言ったね。俺、南場なんば先輩だからね」


 ナンパ先輩こと南場先輩は、キラキラな金髪をしているけれど、現実世界では染めたと丸わかりの金髪をしている。軟派だと自己主張するかのように、制服は着崩していて、ジャラジャラとアクセサリーをつけている。耳にたくさんのピアス、腕には時計やたくさんの腕飾り。

 父もたくさんの腕飾りをつけることが好きだっけなぁ。父の日は、毎年腕飾りにするくらいだ。父も毎回喜んでくれる。


「それにしても、二人とも相変わらず綺麗だね!」


 実際、ファーストコンタクトはナンパじみていたので、私と森ちゃんの中ではナンパ先輩と確定した。そんなナンパ先輩は、森ちゃんにご執心のようだ。冷たくされることが堪らないらしい。そっちの気があるのかな。


「先輩は相変わらずチャラいですね」

「あはは、チャラいですね」


 森ちゃんに続いて、私も笑って言う。

 ナンパ先輩はガクリと首を折って見せたけれど、すぐに顔を上げて笑みになる。これが私達の朝のやり取りだ。


「今日の放課後、ダンジョン一緒に行かない? もちろんありさちゃんも誘ってさ」

「先輩は他に誘う友だちいないんですか?」

「いいですよー。ありちゃんにも確認しますね」


 冷たい反応の森ちゃんの代わりにオッケーを出して、私は腕輪をタッチした。そこから宙に表示された電話マークにタッチ。アドレスの中からありさちゃんの名前を選択して、電話をかけた。今や電話は、これ。


「もしもしありちゃん? 今学校着いてね。南場先輩が放課後ダンジョン行こうだって。ありちゃんの予定は大丈夫?」

「大丈夫だよー!!」


 返事は、耳に当てたヘットホンからではなかった。上を向けば、アーチ型の窓から手を振る三つ編みのおさげの女子生徒が手を振っている。あの子が、ありちゃん。


「ありちゃん! おはよう! 彼氏さんにも話通しておくね!」

「はーい!」


 そうナンパ先輩が言う。ありちゃんには一つ歳上の恋人さんがいる。彼と登校したのだ。ナンパ先輩とは、最近私達繋がりで友だちになったらしい。

 三人で並んで、校門を真っ直ぐ行ったところにある昇降口に向かう。

 規則正しく花びらが舞い降りてくる。やっぱり現実の方が好きだな。

 仮想の花びらを振り払ってから昇降口に入って、靴を取り替える。仮想ではブーツに変わりないのだけれどもね。


「じゃあ放課後ね」


 そうナンパ先輩は私達を教室まで送ってくれて、手を振って自分教室に向かった。私は森ちゃんに目をやる。

「何よ」と冷めた眼差し。

 脈なしです、先輩。どんまい。

 この鴻ノ巣高等学校は、授業中はMRゴーグルを外す決まりだ。

 他の学校はMRゴーグルを取り入れた授業があると反発する声があるけれども、今のところ学校側は、方針を変えないらしい。

 私は別にどっちでもいいのだけれどね。授業に取り組んだ。


 そうして、放課後。

 MRゴーグルを装着して、私達は坂を下り、今朝森ちゃんと待ち合わせした公園に来た。その氷川公園に設置されている個室の公衆ボックスにそれぞれ入る。置き引き防止の鍵を閉めて、始める準備は完了。コードを伸ばしてゴーグルに差し込む。サブ鞄から取り出したゲーム用コントローラーを公衆ボックスにある接続箇所に繋げた。

 ここからは、VRモードだ。

 公園などにはダンジョンが設置してあり、中にはもちろんがモンスターがいる。倒せばお金やアイテムが落ちるのだ。ちょっとしたお小遣い稼ぎになるから、放課後の定番。これをバイトと呼ぶ人もいると、この前ニュースでやっていた。

 稼いだお小遣いは、アバターや武器に使う。もちろん現実のお金もアバターに使えるけれども、その逆はまだ出来ない。仮想のお金を現実で使えるように、今検討中だと世間では言っている。

 ダンジョンは洞窟タイプ。入ったら、もうモンスターの領分だ。ライフが表示される。それが全てなくなれば、ダンジョンの出口に戻されるのだ。

 私達のレベルは、66。


「では私が前衛を任されますね!」

「自分で言っちゃった」

「姫花は前衛が好きですから」

「回復は任せて!」


 私は前衛で、短剣二つを構える。

 後ろでは二拳銃を構えながら笑っているナンパ先輩。

 そのまた後ろには、ライフルの調整をしている森ちゃん。

 最首尾にいるのは、回復職のありちゃんだ。

 下り坂の洞窟を進んでいけば、モンスターと出会す。インプだ。なんだか悪魔の化身みたいな黒くておっかない顔をして、猫背の細い身体。

 Rボタンでターゲットを捕捉。そして○ボタンで攻撃。方向キーを駆使して、敵の攻撃を避けながら次々と倒していく。後方のインプも倒していくのは、ナンパ先輩と森ちゃんが撃ち抜いているからだ。

 こうして、順調に進んでいった。インプの集団を二つ倒すと、お金はだいたい一人当たり1000円溜まった。


「もっと奥に進もう!」


 ナンパ先輩はそう提案するので、断る理由もなかった私達も頷く。

 地下二階までは、インプや小ゴブリンなどの倒しやすいモンスター。まぁ、初心者向けってところだろう。

 地下三階からは、ちょっと大きなモンスターが出てくる。それに圧倒されては攻撃を受けてしまう。ここからは、大きなモンスターに臆さないことがコツだ。

 人並みに大きな蜘蛛が襲いかかる。


「きゃあ!」


 ありちゃんの悲鳴が聞こえるけれど、別にモンスターに襲われたわけではない。洞窟を這って出る蜘蛛に驚いているだけだ。あるいは気持ち悪がっている。

 ありちゃん、回復だけはお願いね。

 私は右手の短剣で前足を切断し、左手の短剣で頭を刺して仕留めた。急所がつければ、一気にライフを削れて倒せる。

 ナンパ先輩も森ちゃんも、頭を狙ってドンドンッと撃ち抜く。

 仕留め損ねたモンスターは、私にお任せあれ。

 蜘蛛の集団も倒し終えて、2000円まで稼げた。


「今日はこれくらいに」


 切り上げようか、と言い出そうとした時だ。


「いいカモ見付けたぁー」


 声をかけられた。

 三人の男の人達がこっちを見ている。

 カモというワードを聞いて、私と森ちゃんはありちゃんを庇うように後ろに下がらせた。


「何何? PK?」


 ナンパ先輩は、私達を庇うように前に出る。

 PKとは、ゲームでプレイしているプレイヤーを不意に攻撃をして、金品の略奪行為のことだ。ダンジョン内でも、PKとなる。現実で言うカツアゲに分類されるものだ。強盗ともいう。


「通報しちゃうよ?」

「その前に、PKしてやるよ!」

「たった数千円を略奪するつもりなんですか? 罰金は倍ですよ、バカですか」

「森子ちゃん! 挑発はよくないよ! よくない!」


 森ちゃんが諭すけれど、それは逆効果。宥めようとしたナンパ先輩は、慌てた。

 私はそんなナンパ先輩の前に出てる。


「私がお相手いたしましょう。ここではなんですし、MRフィールドで」


 ダンジョンから抜け出して、公衆ボックスの前で直接対決を申し出た。


「え、ちょっと、姫花ちゃん!?」

「私に勝てたら、私の所持金を渡しましょう」

「はっ! MRフィールドで対決をして勝てるとか思っちゃってる? いいぜ、所持金全部もらってやるよ!」


 MRフィールドの対決が、決定。

「ちょっと!」と割って入ろうとしたナンパ先輩を「これでいいんですよ」と森ちゃんが止めた。

 私は腕輪をタッチして、ダンジョンの入り口に戻るを選択する。

 あっという間に、公衆ボックスの中に戻った。

 私はゴーグルに差し込んだコードとコントローラーを抜いて、サブ鞄に入れる。他の皆も、ちょうど公衆ボックスから出てきた。もちろんPKを仕掛けようとした男の人達もだ。


「姫花ちゃん、まじでやるの!? やめた方がいいよ!?」

「大丈夫ですよ。申し訳ないですが、この鞄持っていてください」


 止めようとするナンパ先輩に、鞄を二つ預けた。

 それから私は、腰に装備された短剣を抜いて構える。


「バッカじゃねーの。MRフィールドじゃあ武器なんて、ないも当然だぜ!」

「それが幸いですよね」

「は?」


 私を嘲る彼らに冷たく言い放って、身を屈めて走り込んだ。

 一気に距離を縮めた私は、短剣を顔目掛けて振り上げる。刃がまさに目を切った。だが、所詮は仮想の短剣。何も触れていない。


「ひぎゃあ!!」


 だが、男の人は情けない悲鳴を零して、尻餅をつく。

 仮想を見ている目には、その刃物は突き刺さって見える。リアルに作られているものだから、余計だ。

 私は尻餅ついた男の人のことは放っておいて、次の男の人に狙いを定めた。短剣を胸に突き立てる。ように拳を胸に叩き付けた。


「かはっ!」


 胸を押さえて咳き込む男の人の次は、真横にいる男の人だ。

 グサリと目に短剣を突き立てやれば。


「ぎゃああ!!」


 悲鳴を上げた。仮想なのに、いいリアクション。

 そんな彼の足を、蹴り飛ばして倒した。


「まだ、やりますか?」


 仮想の長いプラチナブランドの髪の毛を払う仕草をしてから、短剣を持って尻餅をついた男の人を見下す。彼が主犯格だ。決めるのは、彼だろう。


「くっそう!」


 そう言うだけで、男の人達は荷物を持って逃げ出した。


「姫花ちゃん、つよぉお! なんで!? 何を習っているのっ?」


 私の荷物を抱えて駆け寄るナンパ先輩に問われる。私は腰に短剣を戻した。


「彼女の親が教え込んだそうですよ」


 森ちゃんが、代わりに答える。


「姫花ちゃんの親、何者!?」

「FBI特別捜査官兼SPです」

「ちょっと特別すぎて理解追い付かない!」


 ニコリと私は答えた。親の話をするのは、いつでも好きだ。こうして驚いてくれるし、何より。


「すごいね!」


 そう言われるのが好きなのだ。私は笑みを深める。


「髪、地毛だとは聞いていたけれど、両親とも外国人だったの?」

「いえ。日本人ですよ。仕事は主に海外なんですけれども。その家族が、私に自衛を教え込んだんです。物心つく前からです」


 幼い頃を思い返しながら、クスクスと笑う。


「PKに遭う時は、彼女が撃退することが一番です」

「いや一番は逃げるか穏便に話し合いで済ませるかだからね?」

「いえ、姫花に任せることが一番」

「いや逃げるか話し合い」


 森ちゃんとナンパ先輩が言い合うの姿も、見て笑ってしまった。


「さぁ、ありちゃんを送って帰りましょう!」

「そうだね。怖くなかった? ありさちゃん」

「姫花ちゃんが居れば全然大丈夫ですよ」

「姫花ちゃんってそういうポジション?!」


 見物人達を分けて通り、帰り道を歩く。

 夜桜が綺麗にライトアップされて、少し欠けた月が夜空に浮かんでいる。

 私はMRゴーグルを外して、景色を見てみた。ライトアップされた夜桜に不規則に降り注ぐ花びら。そして少し欠けた月が、ぼんやり。

 やっぱり現実がいいのだと思う私だった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ