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ヒーローズ  作者: なかお ゆうき
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エピローグ

「おはよう」

 翌日、僕が登校するとすでに、制服を着た骸骨は、僕の後ろの席に座り、微妙な角度を保ったまま上半身を力なく傾斜させていた。

「…………おはよう…………」

 確実なことは言えないが、骸骨の口から布がすれるような音がした。

「なんだよ! おまえ本当に体大丈夫か?」

「…………さあ…………」

「うーん、今日は久しぶりに帰り本屋にでも付き合ってもらおうと思ったのに……」

 僕は残念だなあっと遠くの方を見た。

「…………へっ…………?」

 骸骨の眼窩奥底に光が灯る。

「その様子じゃ、あまり無理はさせられ……」

「っっっっっっっっっっっっっんだよっ!」

「おわっ!」

 驚いて視線を戻すと、骸骨の姿はなく、あの、変態妹厨で名を馳せた、泣く子も黙るワイセツ物陳列罪常習者〝後藤〟の姿があった。

「なんだよ急にっ! てかおまえ今までどこ行ってたっ!?」

「なあああに言っちゃってんの田中君っ! 僕はずっとここにいたのよ? ホント勘弁してほしいわあ、ほょっほっょほっほょっほょっ……」

 クラス中を引かせる気持ち悪い大笑いの中にあってただ一人、僕だけは小さく笑っていた。


 そして僕は、またあの最下層民の日々に戻った。しばらくなかった高梨のマンガ強奪も、ほどなくして復活し、あの一週間がまるで夢だったかのように、見慣れた日常が僕を取り巻いていた。

 これがマンガやアニメだったら、僕と相川さんには強い絆ができ、二人の関係が急速に接近するっていうのがテッパンなんだろうけど、悲しいかな、僕と秀才華やかグループの距離はとてつもなく遠いらしく、あれ以来、僕は相川さんと一言も話すことができていない。

 よってそんな調子であるから、相川さんとお兄さんのその後のことは分からない。でも、あの時の相川さんのお兄さんの様子と、毎日見られる相川さんの光り輝く明るい姿を見る限り、おおむね良い方向へと向かっているんだろうと思う。

 だから今は、二十年か三十年か経って、同窓会で会った美しい大人の相川さんと、昔あんなことがあったねと軽く談笑が出来たらいいなという淡い希望を抱く以上のことは考えていないし、それすら過度に期待はしていない。

 僕と相川さんでは住む世界が違うから。

 あの奇跡のような一週間は、そんな二人の運命が、神さまのちょっとした気まぐれでたまたま重なっただけにすぎないのだ。

 あっただけで感謝すべきものなのだ。

 あ、でも一つだけ変わったことがある。

 ビックリするほど少ないけれど、目が合うと、相川さんは僕にニコッと微笑んでくれるのだ。

 僕には充分すぎるほどの変化だ。


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