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ヒーローズ  作者: なかお ゆうき
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ステージ6 ザ・ジャパニーズ・ヒーロー②

――憲次郎、一般人なのに政治問題に介入しまくりだね。

「はは、マンガの世界では、強い男が動くだけで政治が動くんだよ」

――……まあ、フィクションだから別にいいんだけど……。

「濃い作品だから、女子にはちょっときつかったかな?」

――途中ちょっとだけ引き込まれたかな。

「はは、ちょっとだけかあ。まあ、この作品にしては上出来かな」

――掛け声は変わってて面白かったよ。

「あっ、そうなんだよ! アニメなんか、声優が遊ぶくらいだからね!」

――遊ぶって?

「気合入れたり、攻撃する時にヴァイオリンとかポットとかっていう、何の関係もない実際の単語を使うんだよ」

――え!? そんなのだめでしょ! 真剣味がないじゃん!

「それが意外とそうでもないんだよ! そこは声優の腕なのかな。何も言われなければまったく気づかないからすごいよ」

――へえ、面白いね! 一度聞いてみたいな……あ、フィールド変わったね。どこかな、殺風景だね。色合いも少し変だし。

「そうだね……」

 しかし僕は一目見てピンときていた。エメラルドグリーンと茶色の大地に、緑の海と空。ここはかの有名なスナック星だ……。

(なるほど、このステージはステップのバトル物か……)

――敵が現れたよ!

(この星のボスといえば……)  

 僕は辺りを見回し、それを発見した。宇宙一凶悪な宇宙人……。

「レゾーコ……」

――レ……ゾーコ?

「さっき言ったステップって雑誌に、八十年代後半から九十年代中頃まで掲載され、まさにステップ黄金期を先頭で引っ張った超人気バトルマンガだよ。『龍玉』っていうファンタジー風なバトル物なんだけど、徒手格闘をメインにしながらも、気功を使った空中浮遊による空中戦や、気功をビームのように発現して相手にぶつけたり、はたまた変身して強くなったりと、今ある異能バトル物の要素の多くはすでに用いられ、バトル物の一つの到達点、完成形ともいえる偉大な作品だよ。単行本は世界で一億冊を越し、驚くべきは十年以上ゴールデンタイムで放送されたアニメの平均視聴率が二十パーセント以上というモンスター番組だったということだよ」

――ゴールデンタイムでっ!? 信じられない……。

「そんなアニメはもう二度と出てこないだろうね。当時は本当にマンガとアニメ界のキングだったみたいだよ」

――それで、あれがボスなのね?

「最後のボスってわけじゃないけどね。一番知名度はあるかも」

――そっか、なんか不気味な格好してるけど負けないでねっ!

「うん! それじゃあ主人公の沙悟浄(さごじょう)をお願いします!」


 僕の体が大きく、筋肉がデフォルメされて橙の胴着に包まれる。そして角のようにとんがった髪がいくつか現れたら、オラはすっかり沙悟浄になっていたぞ。

 オラの変身が終わると、レゾーコのヤツがゆっくりと飛び立ち、オラの(めえ)に静かに降り立ちやがった。

「レゾーコってどんくれえ強えんだ? ゲームでは闘ったことあっけど、実際になんてねえからなあ。ワクワクすっぞ」

 オラの言葉を聞いたレゾーコの口角がキューッと上がりやがる。

『ふふ、地球人ごときの腕試しの対象になるなんて、この私もなめられたものですね。まあいいでしょう。少しは暇をまぎらわせて下さいよ』

「おうっ!」オラはレゾーコへ突撃し、パンチを繰り出した。「うりゃああああああっ!」

 ピュシュンッ――。

――消えたっ!?

『残念です。まさかこれほど遅いとは思っていませんでしたよ』

「――っ!!」

 レゾーコが一瞬でオラの後ろに回り込んだ。オラも慌てて後ろを向いた。けっど、レゾーコの強烈な一撃をもらっちまう。

「ぐああっ!」

 オラの体が吹っ飛ばされ、果てしなく遠くにある岩にめり込む。

――つよっ! え、ちょ……ちょっと、田中君大丈夫っ!?

「りゃああああっ!」

 オラは岩石の内部で気合を爆発させた。

――岩を吹き飛ばしたっ!

「やっぱりこのままでは勝てねえか……できりゃあ冥王拳は使いたくなかったんだけどな……」

――冥王拳?

「ああ、あの世とこの世の全宇宙を支配する冥王様から教わった、超パワーアップ術なんだ」

――おお、なんだかすごいね、頑張って!

「おうっ! 冥王拳っ!」オラの体を真っ青なオーラが包み込む。「いくぞっ!」

 オラは猛スピードでレゾーコへ飛んでいった。

『くく、地球の猿が何をしようと、このレゾーコ様には関係ないですよ。カアッ!』

 レゾーコのヤロウが掌から気功を発射した。

「たあっ!」

 だがオラは、気功を右手で弾き飛ばし、レゾーコの眼前に迫った。

『なんだとっ!?』

「ありゃああああっ!」

『ぐおっ……』

 オラのパンチが顔面にヒットし、今度はレゾーコの方が派手に吹っ飛びやがった。

――やったっ!

「いや、まだだ……」

――えっ?

 崩れた岩石の中からレゾーコが飛び出してきやがる。

『この私にホコリをつけるなんて、正直驚きました』

「へっ、どうだ? 少しは猿を見直したか?」

『くくく、ご冗談を……。でも、面白い芸を見せてくれたお猿さんは、ご褒美を上げないといけませんね』

――なにこいつ! チョー嫌な奴!

『光栄に思いなさい! この姿を見せるのはあたなで三人目ですよ。はあああああああああああ…………っ』

――でっかくなった!?

「レゾーコは変身することでパワーアップするタイプなんだ」

 それまでオラより小っさかった体が一気にオラより一回りも大きくなりやがった。おそらく今のままじゃオラに勝ち目はねえ……。

『なに、ボサッとしてんだっ』

 ――口調も変わったっ!

「――っ!?」

 一瞬で目の前に現れたレゾーコがボディブローを放ってきた。オラの体が穴が開かんばかりにへっこんだ。

「かっ……」

『ほら、もう一発っ』

 レゾーコがオラの顔面を蹴った。オラは地面に激しく叩きつけられた。

「ぎゃああっ!」

――田中君っ!

『悪いな、久しぶりだから力の加減ができないんだ』

――むかつく! 

 オラは激しい苦痛に喘いだ。耐久力補正がかかっていてもこの痛みはひでえぞ。さすが全宇宙を征服しようとしているヤツだけのことはある……。

「だがっ……」

 オラのオーラが青みを増す。

『ん?』

 オラは姿を消し、次の瞬間にはヤツの背後に移動していた。

『な、はやっ……ぐがっ!』

 オラのパンチがレゾーコの顔面をとらえる。そして吹っ飛んだレゾーコをオラは超スピードで追った。

「だりゃああああああああああああっ」

 オラの猛ラッシュが、防御すらできねえレゾーコに次々とヒットすする。

『ぐ、がっ、ぐほっ、う、かっ、ぐえっ………………』

――すごい、すごいっ!

「これが、十倍冥王拳の力だ……」

 レゾーコを海に叩きつけっとオラはつぶやいた。すげえ消耗だ。ハイパーインフレ制度搭載の『龍玉』がこれで終わってくんねえと分かっているだけになおつれえ……。

 予想通り、レゾーコが海から勢いよく飛び出してきた。

『フハハハハッ!』

――まだ生きてたっ!

『おもしろいっ! 本当におもしろいっ! これほどの猿が宇宙の片隅のゴミみたいな星にいたとは! 見せてやろう俺の次の形態を!』

――まだ変身するのっ!?

 レゾーコの体からトゲが飛び出し爬虫類のような格好に変わっていく。

『この変身をさせたきさまに敬意を表し、一瞬であの世に送ってやる』

 レゾーコがとんでもねえスピードで飛んできやがった。

――田中君っ!

「冥王拳百倍だああああっ!」 

 オラの体が青を通りこして黒く包まれる。

『なんだとっ!?』

オラはレゾーコのパンチを受け止めて殴り返した。

「だりゃあああっ!」

『ぐおっ……』

 レゾーコがよろけた。だがチッキショウ、あんまダメージはねえみてえだ。ヤロウがゆっくりと体を起こしやがる。

『ならば最終形態を見せよう……』

――まだあんのっ、しかも唐突っ!

 レゾーコの力みとともにえれえ閃光がそこら中に広がる。

 そんで再び姿を現したレゾーコの体は小っさく、えっれえシンプルになっていた。

――なんか怖さがなくなったね。実は弱くなっちゃったんじゃない?

 ビッ。レゾーコの指から発せられた高速の気功がオラに当たった。

「ぐっ……」

 オラはすんげえ衝撃を受けて地面に倒れた。

――田中君っ、大丈夫!? ギブアップするっ!?

「へ……平気さ…………オラにもまだ奥の手が残ってんだ……」

 オラはなんとか立ち上がり気合を込めた。

「ウルトラヤッサイ人という奥の手がなっ!」

 へへ、その言葉にレゾーコがあからさまに動揺しやがったぜ。

『なにっ、ウルトラヤッサイ人だと!? きさま地球人ではなかったのか!』

 レゾーコが奥歯を鳴らし、猛スピードでオラに向かってくる。

『チョエェェイッ!』

「ぐあ……っ!」

――きゃあっ!

 レゾーコの、全身を使った頭突きがオラの腹に突き刺さった。なぜだ!? なぜウルトラヤッサイ人になれないっ!?

 オラがウルトラヤッサイ人になれなかったことを知ると、安心しやがったのか、レゾーコがいびつな笑みを浮かべた。

『ふ、まあ、おまえがウルトラヤッサイ人などという眉唾物になれるとは思わないが、念のため早いとこ処分しておこう』

 地面で苦しむオラを尻目に、レゾーコが高く浮かび上がり、でっけえ気功ボールを作り始めた。

『この星と共に消滅しろ!!』

――田中君っ! 逃げてえええええっ!

『うるさいこのメス豚があっ!』

――ひっ……。

 ピクッ……。

『まったく、イラつくメス豚だぜ……』

「メス豚……?」

『ん?』

「メス豚って……メス豚って………………ミスズのことかああああっ!」

――田中君……。

 オラの中の何かが切れた。全身から怒りのエネルギーが湧き上がり、髪が白く逆立つ。

『な、なんだ……きさまいったい何をしたっ!?』

 レゾーコに、初めて恐怖の表情が浮かんだ。

 オレはレゾーコを睨みつけた。

「とっくに気づいてんだろ……。優しき心を持ち、激しい怒りによって目覚める、オレがウルトラヤッサイ人沙悟浄だあああっ!」

 叫んだだけで気迫が爆発し、レゾーコをのけぞらせた。

『ぐっ……』

「ミスズを傷つけるようなこと言いやがって……。覚悟しろよ、おまえだけは絶対に許さなねえ……」

――田中君っ……!

 オレはレゾーコに背を向けた。

『きっ! …………ふふ、だが変身するのが少し遅かったようだな………………もうエネルギーは溜まったぞおおおっ!』

 レゾーコが死の玉をオレに向かって撃ち下ろした。巨大な死の玉が大気を揺るがしながらオレに迫る。

――田中クーーーーーンッ!

『ふ……ふは、ふはははははっ! 勝った、勝ったぞお!』

「アホンダラアアアアアアアアッ!」

 オレは振り向きざまに右手から気功を放った。オレの気功が死の玉を突き破りレゾーコを襲う。

『な、な……なおおおぉぉぉぉぉ………………』

 レゾーコがオレの気功に飲まれて体を消滅させていった。

「バカヤローが……」

 つぶやくと、オレは地球へ帰るために宇宙船に向かおうとした。が、その時、

――田中君! レゾーコがっ!

「ハッ!」

 振り向くと、巨大な装置がレゾーコの体を修復していた。見る見るうちにレゾーコの体がつなぎ合わせられていく。

 最後に銀色の塗装が施された時、オレは悟った。

「メタリックレゾーコだ……」

――メタリック?

「アニメ版では、さっきの攻撃で勝ったことになるんだが、映画版のサイドストーリーというくくりで、レゾーコが生きていたという設定があるんだ……」

――そんな……。

 歩くたびにまぶしいレゾーコが、こっちを睨みつけて叫んだ。

『きさまに受けた屈辱を返すためにこうして復活したぞおおおおおっ――』

「……っ!」

 メタリックレゾーコが超スピードで突っ込んでくる。速いっ! オレは顔面にメタリック頭突きを受けてしまった。

「ぐあっ……」

 メタリックレゾーコの連撃が始まった。ものすごく重い攻撃が次々と深刻なダメージを与える。

『キェェェェェェェェェイッ!』

「がっ………………」

 メタリックレゾーコの回し蹴りに吹っ飛ばされたオレは岩盤に突っ込み、動けなくなってしまった。

「く、くそ……強い……」

――た、田中君っ、何か手はあるの!?

「へっ、実際の映画じゃ、ベジタブルっていうライバルと力を合わせて何とか勝つことができたんだ…………一人じゃちょっとお手上げだぜ……」

――そんな……。

「ま、ちっと消極的だが、前の時みたいに、味方が現れるのを待つしかねえかな……へへ」

(その前に負けなけりゃいいけど……)

『すぐに死ねると思うなよ……』

「なっ……!」目の前にメタリックレゾーコが現れた。「へへ……味方の登場を期待していたら、最も見たくねえヤツが現れやがったぜ……」

『まだ減らず口を叩ける気力が残っていたか』

 強烈なパンチが腹に入る。

「ぎゃああああああっ!」

――田中君っ!

 メタリックレゾーコのいたぶりが始まった。一撃ごとにオレの悲鳴がフィールドに響く。

(く……も、もうダメか……)

 味方が一向に現れやしねえ。激しい攻撃にオレの気持ちは切れかけた。意識が段々と薄れていきやがる。ついにダメージをまったく感じなくなった。

「……?」

 メタリックレゾーコの攻撃が蚊に刺されたほどにも感じねえ。何が起こった? ゲームオーバーってやつか?

 やがてメタリックレゾーコが攻撃を止め、苦々しい表情をした。

『お……おまえは誰だ……』

「へ……?」

 オレは自分の体を見た。そして腰まで伸びる白い長い髪を見てハッとする。

――敵が映画版に変身できるなら、田中君も変身できると思って急いで調べたの! それ、ウルトラヤッサイ人サードってやつみたいだけど、強くなってるかな!?

(ウルトラヤッサイ人サードだって!? もっと格上のシェルだって倒せっぞ!)

 オレは気合で周りの岩を吹っ飛ばして宙に浮かんだ。

「ナイスだ、ミスズ! 最っ高だぜ! サンキュー!」

 オレは両手に気合を込めた。

「カァァァムゥ」両手の気合が緑の光となる。「チャッツゥゥゥゥ……」

 吹っ飛ばされたメタリックレゾーコが空中で姿勢を立て直した。

『もう遊ぶのはやめだっ! 今すぐ息の根を止めてやる!』

 ピュシュンッ!

 メタリックレゾーコがテレポーテーションしてオレの真後ろに現れた。

『死ねええええええっ!』

 メタリックレゾーコが掌から気功を放とうとした。

 ピュシュンッ!

だが、オレは気合を込めたままテレポーテーションしてヤツの背後に回った。

『なにっ!?』

(カッ)アァァァ――ッ!」 

 オレは溜め込んだ全気功をメタリックレゾーコに向けて放った。ヤツの体が完全に、もう二度と修復できねえくらい跡形もなく消え去ったぜ。

「オレがナンバーワンだ!」

 オレは、どこかで見てるはずのミスズに向けて親指を立ててニッと笑った。

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