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ヒーローズ  作者: なかお ゆうき
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ステージ4 長く続くのには理由がある!

「父さんはこれで育った。おまえもこれで育った」

 宏治は宏一の頭をくしゃっとなでてはにかんだ。

「おまえの子供もこれで育つことになればいいな」

                  

『僕の見た星』  多嶋 典康






 DAY4、大荷物を抱えた僕は、運動部の朝練と同じくらいの時間に登校し、高梨の机の横に本棚を設置した。僕はその中いっぱいにマンガを置いておいてあげた。

 一時間二十分後、多くのクラスメイトの眉をしかめさせた本棚は、いつも僕のマンガを横取りする高梨をも驚かせた。

 そしてそのすぐ後、なぜだか高梨と担任のバトルが始まったようだったけど、高梨に幸せのおすそわけができていい気分だった僕は、二人のやり合いをあまり聞いていなかった。




「おまえ…………今日も用事ってやつがあるのか……?」

 放課後、僕が意気揚々と帰り支度をしていると、どこかやつれ気味の後藤が寂しそうに声をかけてきた。

「え、ああ、うん。じゃあ、また明日な」

 またしても後藤は律儀に僕を追ってこなかった。

 僕は振り向かず歩いた。今にも小便をもらしそうにプルプルと脚を震わせている後藤のことを笑………………思いながら。理由を知らずに置いてけぼりをくうのはさぞかし辛かろう。後藤よ、あと十万五千八百六年待ってくれ! そしたら話してやることも億に一つは……。




「むふ、むふ……むふふふふふふふ……」

 怪我の功名とはまさにこのことだ。

脇腹(ご主人様)のコンディションを損なわないようにと、僕は今回走るのをやめた。よく考えれば、待ち合わせ場所に別々に到着することが目的なのだから、もう走る必要はなかったのだ。僕のネックであった後藤も、待てを完璧に習得しているわけだし。

 そうして普通に歩いてバス停に向かっていたら、この信じられないようなシチュエーションが起こったのだ。

 相川さんが僕をストーキングしているっ!

 最初に気づいたのは偶然だった。何気なく後ろを向いただけだった。しかし、五十メートルくらい後ろに相川さんの姿を認めて、僕の心臓の鼓動が早くなった。

 そこで僕は、すぐに横断歩道を渡り、一分経ってまた振り返ってみた。

 するとどうだ! 相川さんが横断歩道を渡っているではないか! 完璧に僕をストーキングしている!

 僕のテンションが一気に上がったのは言うまでもないだろう。背中を優しくくすぐられているようなゾクゾク感は、今まで知らなかった快感だ。た、たまらない。

 だから僕は、ついつい遠回りをしてしまった。あまり何回も後ろを向くと、相川さんに不審に思われてしまうから、もう振り返ることはできなかったけど、僕はたっぷり三十分余計に時間をかけてバス停へと行ったのだった。

 しかし、バス停で待っていた相川さんの姿を見た時、僕は自分の異常さを知り、しばらくその場から動くことができなかった。



  

  * * *




――昨日の最後の敵は強かったね。今日はあれ以上強い敵が出てくるのかな?

 仮想世界で目覚めると、相川さんがまるで友達のように気さくに話しかけてくれた。僕もすっかり自然と返せるようになっていた。

「どうだろう……普通に考えればそうだけど……。でも、昨日もちゃんとピンチに味方が助けにきてくれたし、その作品にある程度の知識があればちゃんと勝てるようになっていると思うよ」

――その作品に適したキャラクターを選択できるかが肝ってことね。

「うん、そうだと思う」

――今日も頼りにさせてもらいます!

 僕は全身の力が抜け、危うく倒れそうになった。この混じりっ気なしのストレートな頼られっぷりはたまらない。今だけは相川さんの全意識は僕に集中しているのだ。ヤバい、考えただけでも興奮してしまう。

――すごい優しい感じの絵だね。

 僕の妄想を相川さんのインフォメーションが強制終了してくれた。

「そう……だね」

 僕は辺りを見回すことなく相川さんの言葉を理解できた。

 まさにアニメなステージだ。書き込みの少ないこの田舎の優しい画は、幼児物だろうか。

 その時、どこからともなく声が聞こえてきた。

――鳴き声?

 僕はその声がする方へ進んだ。そうして草地から林へと入った時、僕はその声の主を発見し、この優しい画の理由を理解した。

――アカカビマンだ!

 ステージ4にして初めて、相川さんが僕より先に、敵キャラの名前を口にした。幼児に抜群の支持率を誇る、調理器具をかわいく擬人化した国民的アニメ『フライパンマン』のライバルだ。

「相川さん、知ってるの?」

――うん、幼稚園の時に観てた。懐かしいな。

「じゃあ主人公は……」

――任せて、フライパンマンでしょ!

 相川さんの嬉しそうな声を聞いて、なんだか僕まで嬉しくなった。

「うん、よろしく!」

 僕の体が激変していく。シンプルな体に目鼻口のついたフライパン頭。冷静に考えればとてもシュールなキャラだが、かわいらしい作画がそれを帳消しにする。


『ボク、フライパンマンっ!』

 へんしんがおわったとき、ボクはおもわずちからのかぎりさけんだ。

 ボクは、じてんしゃに、かいすいをかけられているカバこちゃんをたすけるために、いそいでそこへかけつけた。

「アカカビマンっ! カバこちゃんのじてんしゃを、サビさせようとするのはやめるんだ!」

 アカカビマンがボクにきがつき、とてもおどろいたかおをした。

『ゲゲっ! フライパンマン、またおれっちのジャマをするつもりか?』

「キミがわるさをするかぎり、ボクはキミをほうってはおかない! はやくそのきりふきをボクにわたすんだ!」

『やなこった! おれっちは、わるいことをするのがすきなんだよ』

 そういって、アカカビマンが、きりふきをせなかにかくしてしまった。

「キミがいうことをきかないのなら、ボクはちからづくで、そのきりふきをとりあげるぞ!」

『イロハニホー! できるものならやってるみなあ』

 アカカビマンがあっかんべーをした。ぼくはくやしくなった。

「くそー! もうおこったぞお!」

 ボクは、ビュンととんで、アカカビマンのところへいった。

 でも、アカカビマンはボクにむかってきりふきをふんしゃした。ピシュー。

「うわあ!」

 かいすいが、ボクのかおにかかってしまった。

『イロハニホー! きょうこそ、おまえをたおしてやる!』

 ピシュー、ピシュー。アカカビマンが、なんかいもきりふきをふんしゃした。ボクのかおがどんどんサビていく。

「かおがサビて、ちからがでない……」

――フライパンマンっ、まけないで!

 ミスズちゃんのおうえんがきこえたけど、ボクはカラダじゅうのちからがぬけてしまい、ついにたおれてしまった。でも、そのとき、

『フライパマーーーン、あたらしいかおだよー!』

 はしこさんが、ボクをたすけにきてくれたのだ。そして、てつおじさんのたんぞうしたフライパンを、ボクにむかってなげた。

 シュル、シュル、シュル。とんできたフライパンが、サビたフライパンといれかわり、ボクはふっかつした!

「ねつでんどうりつひゃくばいっ! フライパンマンっ!」

 ボクはあたまのフライパンをひきぬいて、ちからいっぱいアカカビマンをぶった!

「フラーーイパーーーーンチっ!」

 バチン!

『シー・ユー・カビィーーンっ―――――』

 アカカビマンが、おきまりのセリフとともに、とおくへとんでいった。カバこちゃんのじてんしゃはまもられたんだ!

『ありがとう、フライパンマン!』

「ボクがいるかぎり、アカカビマンのすきにはさせないっ!」

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