第85話:東奔西走
ゲーネ村東部の賊たちの拠点を目指して出撃したナイト・ウルフことアイラと、サークラの護衛を務める近衛メイドのエイプリル、それに道案内を買って出た村人のガウデンツィオであったが彼らは結局賊の拠点まで到達することなく村へ引き返すことになった。
というのも、彼女たちが賊の拠点に向かう道中で、すでに壊滅状態の彼らと遭遇してしまった上、彼らから西側にある拠点も現在村に攻め入るために行軍しているはずであるという情報を得たためだった。
ひとまず拠点に残っているらしい者と街道封鎖を続けているらしい少数の敵兵のことは無視して村に迫るもう半分の敵兵への対応のためにと村に引き返すことを決定した彼女たちは、捕虜にした4人を連れて村へと戻るエイプリル少尉とガウデンツィオ、そして飛行魔法で先に村へ戻るナイト・ウルフとにいったん別れた。
急いで村に戻ったアイラはいまだ村が平穏であったことに胸をなでおろしたが、同時に不審に思った。
(どうして近くの森の中にすら敵兵の反応がないんだろう?)
捕虜たちの情報どおりであれば少なくとも村の1km圏内には到達しているはずである賊徒たちは、いまだアイラの感知の範囲にはおらず。
アイラは、居るはずの賊がいないことに底知れぬ不安を感じながらも土地勘のない森の中を西へ西へと歩み始めるのだった。
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(アイラ視点)
森の中は、魔物や動物が少し忙しない様子で動き回っていた。
しかし、興奮していてもこのナイト・ウルフの巨体を見ればほとんどは近づいてこない。
何匹かの魔物はそれでも近づいてきたけれど、それは鎧越しにボクの存在を感じ取った(たぶん)繁殖期のオスだった。
どうして賊たちは森の中にいないのだろうか・・・?
村から3kmちょっとくらい西のやや南街道沿いの岩場に拠点構築しているといっていたから、まずはそこを目指してみようか?
本当にこちらに攻め寄せる気なら途中で会うはずだし。
まだ撤退していないなら拠点付近にはさすがにいるだろう。
そう考えて、向かってくる魔物だけ切り捨てながら森を西に進む。
途中でもやはり人の姿を発見することはできず。
タイラントフェイスも1グループすれ違ったが、特にちょっかいをかけてくるでもなくボクから逃げる様に北方向へ消えていった。
そして、2kmほど歩いたところでようやくボクの感知の範囲にその反応は引っかかった。
これは、森の中ではなくて南の街道側・・・?
捕虜の話では拠点防衛に4、街道封鎖に4くらい残してあとは村攻略に参加する手はずだったといっていたけれど・・・。
感知できる限り南の街道に100人を超える人間らしい反応が集まっている。
怒気とか殺気とか、そういう暴力的な気配を孕んでいて、進出中とか待機中ではなくすでに交戦状態かその直前だということがわかる。
ボクは飛行して気配の場所へと向かった。
高度を上げるとすぐに、その場所のことは見て取れた。
街道で東西に分かれて東側に40人弱の男たち西側には、賊とあわせて100どころか彼らだけで200人ほどのオケアノス軍と思わしき軍旗を掲げた一団が向かい合っていた。
西からやってきたことを考えればおそらくはネレース市所属の部隊なのだろう。
今朝クラウディアに来た早馬の人が道中で伝えていたのか、それとも商人や村経由の連絡が途絶したので調べにきたか・・・、とはいえ200人規模となれば、国内で動かす兵の数としてはそれなりに多い、やはり早馬から情報を受けて、急いで集めて進軍してきたのだろう。
早馬の速度とネレース市からクラウディアの距離を勘案すればネレース市にここの賊徒の、それも不確かなキャンプの情報がもたらされたのは一昨昨日の深夜から一昨日の未明にかけてだろう、さらにこことネレース市の距離を考えれば、かなり早い。
もしかすると、駐屯所の様なところの兵を集めながら騎兵だけがネレース市から進出してきたのかもしれない。
騎兵が10騎ほどで残りは徒だ。
「賊」に対して出す戦力としては騎兵10でも多すぎるけれど、「敵軍」に対してには200人の兵では少なすぎる。
おそらくは敵の先遣隊だと見越しての数。
仮にその目論見が外れて敵の大部隊がいたとしても、200で一当てすれば2日くらいは稼げる。
その時間があれば状況の見極めもできるし、兵も集められるだろう。
ネレースの指揮官は優秀らしい。
でもよく考えれば、早馬の人が賊の存在を伝えたなら、ジョージたちの未着は聞いたのかもしれない、それにオケアノスに侵略してきた敵国のことも・・・。
さすがにネレース市ほどの重要拠点ならば、少しも怪しいところのない信頼できる者を置いているだろうし、そうであれば現在の状況ででき得る限りのことをしてくれるはずだ。
まぁ指揮官に会ってみれば、この部隊の行軍目的もわかるだろうし、たとえ5倍ほどの戦力であろうが、少なからず犠牲は出る。
その犠牲の中には子を持つ父とているかも知れない。
それならば、少しでも味方の被害を減らす努力はやって然るべきだろう。
幸い今はまだ激突前、賊側の指揮官らしき者(捕虜たちの言葉を信じるなら中隊副長格の片割れギンガムという男だろうか)が、オケアノス兵の男となにやらやり取りをしている。
整然と並んでいるオケアノス兵と比べると後ろにいる賊たちは気が立っている様子なので、気勢を殺ぐ意味でも、ここでの乱入は価値があるだろう。
そうと決まればなるべく派手に登場するべきだ。
威圧効果が高いほうが尚良い、ボクは隠形術を最大にして気配を遮断する。
それからちょっとだけエッラの真似をして、ナイト・ウルフの脚部に魔法の風を纏わせると飛行魔法で足から足から地面に向かって急降下する。
気配の希薄なところから急に轟音をとどろかせて落着、しかもかなりでかいとあれば驚くこと必至だろう。
徐々に地面が近づいて・・・・。
何人か肉眼でボクや影に気づいた兵や賊がこちらに注目するのがわかる。
ドォォォォン!!
地面に着く直前に風の魔法を破裂させて音を立て、砂埃を巻き上げる。
飛行魔法で降りてきただけだからそのままだと音とか余り派手にならない。
ついでにちょっと光ってみよう。
光弾ではなく、こちらでは使い手の多くない雷系魔法を使って発光放電してみる。
「な、なんだぁぁぁ!?」
「ヒィ!?魔物だ!!」
「いや待て、でかいが鎧だぞこれは!」
賊徒たちは前方に展開するオケアノスの兵ではなく、突然眼前に現れたボクのほうへと剣を向ける。
オケアノス兵たちは、最初はたぶん賊徒側の戦力かと警戒していたのだろうけれど、賊徒側がボクに剣を向けたこと、そしてほとんど配備されていないとはいえ、ジョージの護衛の中にいたセイバー装備を知っているものがいたのだろう、すぐに賊徒たちに意識を戻す。
オケアノス兵たちの手前もあるので、ボクは堂々とナイト・ウルフとして振舞うことにする。
「聴け!すでに貴様らの別働部隊は壊滅し、ダグラスやニコラスら4人の生存者も投降し捕虜となった。貴様らによる商人や民間人の殺害という蛮行について野盗や賊徒の類であれば全員死刑だが、敵国の兵が任務として行ったのであれば、慣例に習い捕虜とする。貴様らダグラスたちの様に投降するならばよし、抵抗は死を意味すると知れ。」
彼らの隊長、副長格の名前を出したことで明らかに動揺が感じられた。
そもそもナイト・ウルフの威容を見た時点でおびえていた様だが、すでに同輩が虜囚となったと知って絶望しているのだろう。
彼らがなにか交渉をしていたのもあるいは、東側キャンプの人間が作戦時間になっても行動を開始しない西側の様子を見に来ることを考えての引き伸ばし工作だったのかもしれない。
200対40は圧倒的でも200対40かと思っていたのに実際には80というのは中々に苦戦する戦況だろう。
そういえば名乗っていなかったことを思い出したボクは、仰々しく大剣を地面に突き立てると名乗りを上げる。
「私はナイト・ウルフ、恐れ多くもイシュタルト王のご寵愛を受ける姫君、アイラ・イシュタルト姫殿下にお仕えする者である。貴様らが、おとなしく降伏するならば、姫殿下の名の下に正当な取調べと捕虜としての身柄の扱いを約束しよう、無論兵士として降伏するならばだが・・・」
取調べの結果正しく任務としての行動しかしていないとわかればめでたく労働刑、もしも女性への恥ずかしめとか、犠牲者への過度の加虐などが認められれば死刑になる可能性もあるけれど、任務として従事してたなら大丈夫だよね?
暗に降伏した時点で賊ではなく敵兵であると宣言することになると示しているのだけれど、彼らはすでにそれを正しく理解できているみたいだ。
ダグラスたちが言っていたが、東側は隊長と副長が二人で面倒をみれるので性格に難のあるものが、西側は副長格一人で面倒を見ないと行けないのでお行儀の良いものが多い編成だというのは本当らしい。
といっても東側の難のある人も2人しか見ていないのだけれど。
それから、オケアノス兵側の指揮官格の騎兵3名を交えて賊徒改めダ・カール兵はおとなしく投降、身柄はオケアノス兵に預けることとなった。
オケアノス兵150名が近くの屯所では足りないのでネレース市まで捕虜たちを護送してくれるらしい。
残りのオケアノス兵はボクとともに一度ゲーネ村へ向かうこととなった。
ダ・カール兵は皆おとなしく鎧と武器をオケアノス兵に渡し、身軽な格好となって連行されていった。
捕虜としての連行なのに妙に晴れ晴れとした顔をしたものが多かったのは、この任務の最中にいろいろ感じていたのだろう。
身分を偽り、国は違えど一般人を殺す任務の内容、圧倒的に国力に勝る国にケンカを売った祖国、そしてそこに住んでいる家族にもう一度会えるかわからないという不安、それらが一応は捕虜として扱われることとなり、少なくとも名誉は守られ、賊として刑死する可能性はこの上なく低いものとなった。
それだけでも彼らの心情はだいぶ穏やかになったのかもしれない。
手に縄をかけられ移動していくダ・カール兵たち。
計画通りに村のほうへの移動を開始する直前にオケアノス兵の斥候が来たらしく。
挟撃を避けるため一時移動を取りやめて待機していたが結局捕捉され、にらみ合いになっていたという。
おかげで村への襲撃も回避され、西側は一人の犠牲もなく全員を捕虜にできたのだからイシュタルトにとっても上々の結果だといっていいだろう。
兵士たちの行軍速度に合わせてゲーネ村に戻ると、そこにはすでにスティングレイ少尉たちが帰り着いていた。
そして・・・
「な!村の中に魔物がおるではないか!」
「村人は安全なところへ!」
「このデカブツ相手に良くぞ持ちこたえた。加勢するぞ!」
ボクがつれてきたオケアノス兵たちは一様に武器に手をかけると構えながらその魔物の元へ直走る。
「あ、お待ちください、このクマはいい子ですから!」
突然現れたオケアノス兵たちの行動にとっさに止めに入るスティングレイ少尉の声、兵たちはその声を聴いて立ち止まった。
どうやら例のクマ、そのまま村まで着いてきたらしい。
クマは兵たちの声にこちらを向くとそのままこちらに向かって歩き出した。
もちろん石斧をもって二足歩行のままで・・・。
もう見た感じは獣人とあまり変わらないね、毛深いのと顔がクマなのと、ちょっと大きすぎるくらいか。
クマ獣人のユウ族でも身長は2m20cmくらいだからその4割増し程の・・・、しかも足音は非常に静かでとてもお行儀よく感じる。
クマが近づくにつれてボクの周りにいたオケアノス兵たちはあわてた様子を見せる。
大きさがそのまま恐怖となっている。
いい子だからっていわれても3m級のクマが近づいてきたらそれは恐怖を覚えるのに十分だろう。
そしてそのクマはやがてボクの目の前まで来ると石斧を地面に置き、四つんばいになるとその鼻先や首の辺りをナイト・ウルフの腰の辺りにこすりつけ始めた。
「グゥゥ・・・クヒクヒ」
鼻をヒクヒクさせながらグイグイと体をこすり付けてくるクマ、これが犬や猫ならかわいいが、クマだと先ほどのやり取りでおおよそ無害だとわかっていても多少の恐怖心は出る。
そういえば食べてるときはなんとなく人間っぽくてかわいかったかな?
そう考えたボクは再び餌をやる算段を考える。
何かご褒美的な理由がないと餌付けしてはいけない気がしてクマの頭をなでつけながら少尉たちに尋ねる。
「どうしてこの子が村にまで来てるの?賊騒ぎのときも村までは来なかったんでしょう?」
たずねるとガウデンツィオ氏が苦笑しながら答えた。
「いやー村まで来たこと自体今回が始めてですよ、どうもいただいた食べ物が気に入った様で・・・またもらえると思って村まで護衛してきてくれみたいです。」
なるほど、見ればクマは体をこすりつけながらその鼻先はナイト・ウルフの撫でている手のにおいを嗅ごうとしている。
匂いが残っているのかな?
まぁちょうどいいのでご褒美をあげようじゃないか。
とりあえずさっき気に入っていた様子のジャーキーでもあげようかな?
と、ナイト・ウルフの手のひらに鳥ささみのソル味ジャーキーを一切れ出してみる。
クマはジャーキーが現れた途端ピクリと反応したが、物欲しそうにジャーキーとナイト・ウルフの頭部を見つめるだけで奪って食べたりはしない。
その様子を見ていたオケアノス兵たちは驚いた様子であった。
「魔物なのに犬みたいに『待て』をしているぞ?」
「魔物・・・じゃなくて動物のクマなのか?理性がある様に思えるぞ?」
そうだ普通魔物は意思力が30未満である場合が多く、その行動は本能によって支配される。
目の前に好みのメスがいれば犯すし、好みのエサがあれば食うか、取り置く。
亜人になりきれていない魔人なんかも意志力が低い。
その点このクマはすでに意志力が100を超えている。
意志力100というと特に波風なく生きてきた8~10歳児程度の意思を持っていることになる。
つまり、それくらいの子どもと同程度には自身を律することができる・・・?
王家が溜め込んできたステータスの見方のノウハウに従うならだが・・・。
ボクはささみを手のひらから指先に移しそれをクマの鼻先に近づけてやる。
するとクマは地面にペタンと座りこみ、自由になった掌をボクの前に差し出して待ったので、その上にささみを置いてやる。
するとクマはそれを器用に握りこむと口元に持っていって食べ始めた。
さらにオケアノス兵たちがどよめくが、とりあえず無視して、収納から適当に大皿を一枚取り出すと地面に置き、その中にパンと今の時期は勇者の空間収納がなければお目にかかれない冬物の野菜、それに豚ベーコンを少し置いて、最後にいーこいーことクマの頭を撫でてから、兵士の隊長副隊長を連れて村長宅付近にいるジョージたちの方へ向かう。
「グゥゥム」
と小さく一鳴きして、クマは皿の食べ物を物色し始めた。
よく考えたらナイト・ウルフの手で撫でても硬くて痛いのかもしれない。
「侯爵代理閣下、西側の賊徒の鎮圧に出向きましたところネレース市の兵隊たちと合流することができました。西側の賊はすべてダ・カールの兵であると認め、投降、捕虜となりましてございます。」
簡潔に報告すると後は隊長たちが話を進めてくれる。
ジョージはこの後ボクがオケアノスまで跳躍で連れ出す予定になっているので、残ったオケアノス兵にはサークラたちの護衛と東側の賊徒の残りの捕縛と移送をお願いすることになる目算が高いけれどそれ以前に、このままオケアノス市へ連れて行くのかそれとも一度クラウディアや、ネレース市に戻すのかという点もジョージと彼らの話合いの結果次第になるのか。
ジョージたちが村長宅に入って行くのを確認して、ボクは森の中に姿を隠すと跳躍し再び空からアイラとして村に戻った。
なんというか地球での変身ヒーローものを思い出すけれど、正体をばらせないって面倒だね。
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(ジョージ視点)
ナイト・ウルフ氏が村を出てから、何度か岳父殿と話合いおそらく、ナイト・ウルフの正体はアイラ姫殿下である可能性が極めて高いと結論づけた。
まずは言い訳が苦しい。
仮に姫殿下が安全な場所にいなければナイト・ウルフが安心して離れられないというのは認めるとしても、それならばわざわざ姫殿下が上空に退避してからナイト・ウルフが現れるというのは多少無理がある。
注意を向けている方向を悟らせない、護衛を完全なものとするというのであれば隠れての護衛というのも、普通の姫君の護衛なら意味があるのかもしれないが、護衛対象があの姫殿下ではその程度の差異は価値がない、あの方が討ち取られる様な状況下では、隠れた守護者の視線が5つ6つ増えた程度では価値がないのだ。
そしてもう一点、あの姫殿下は可憐で聡明な姫君として通っているが、実のところかなり好奇心が強く、御転婆である。
無論その聡明さも可憐さも偽りのものではないが、あの姫殿下が約1時間に及ぶ作戦行動中一度も村に降りてこなかった。
それがありえないのだ。
その時間があれば確実にアニスと遊ぶために降りてくる。
退屈な時間をお一人で過ごす方ではないのだ。
ましてこの村には2週間ばかり顔を合わせていないアニスと、それに加えてこれから会う機会が減るサークラがいるのだ。
最低でも近くで護衛しようとするはずだろう、近くにいられるならば
これはある意味信頼といってもいいだろう、あの方が一度も降りてこなかった時点で彼女・・・ナイトウルフの正体は姫殿下だ。
その見解で岳父殿とも意見が一致したのだ。
そして、ナイト・ウルフの帰還後、あえて当事者である彼女を同行させずに、今後の話合いのために臨時本部としている村長宅にはいると、すぐにアイラ姫殿下が入室してきた。
無論ナイト・ウルフを伴わずにお一人で・・・いやクマが軍官学校制服姿で普段よりスカートの裾の短い姫殿下の後頭部に鼻を擦り付けるほど近づけてついて来ていた。
それを見たときにはもう間違いないと確信していた。
というか隠す気がな・・・いやいや、姫殿下は純粋な方でもある、きっとあれで隠しているのだろう。
実際、姫殿下の異常性を知らない人間からみれば幼い姫君が空を飛んだだけでも驚くことだったのだ。
それはもう驚きのあまり、空に飛び去る姫をしたから見上げて、下着を見てしまっていることに気づく者が現れない程度には・・・。
そんな彼らがナイト・ウルフ=アイラ姫という事実にたどり着くことはなかったのだから、姫殿下の特異な常日頃を知らない人間相手ならば十分に通じる隠し方だったのだろう。
多分・・・きっと?
しかしさすがに出会って2分以内のはずのクマを引き連れて、怯えることもなくの登場は、あまりに不自然であるはずだったが、それでもこの場にいるネレース市の兵たちは気づくそぶりがなかった。
そこで気づく、そういえばこの者たちは今村に着いたばかりだったのだと。
姫殿下がナイト・ウルフのことを別人だとするのには何かわけがあるのだろう。
またジークハルト陛下御自らその「影の護衛」の存在を認めている以上、臣下に過ぎないわれわれはそれに合わせるしかない。
岳父殿のほうを見ると仕方ない、といった表情で肩を竦めてこちらを見ている。
ナイト・ウルフと姫殿下の交代の瞬間を見られていないのだから、ここにいる指揮官格をごまかすのはまだ楽だろう。
そう考えることにして、後は外で待っていて二人の交代を見たはずの兵たちの察しが悪いことを祈るばかり・・・よもや味方が無能であることを祈ることが、母を解放したあとに訪れるとは・・・人生とはやはり何が起こるかわかるものではないなと、この姫君と初めて出会った日から今日までを思い返しながら会議を始めた。
最近の台風は来るタイミングがわからなすぎてちょっと・・・
くるぞ、くるぞ、こない。
ならまだいいのですがね・・・。




