第81話:東方事変3
アイラがサークラたちの無事を確認した頃・・・
ゲーネ村の東側3kmほどの地点に設営されたキャンプでは、40人ほどの男たちが、装具の点検をしていた。
任務も終盤、本国から指定された期間の街道封鎖もほぼやり遂げて二日後には撤収を開始する。
本国から持ち込んだ物資も、こちらで協力者から渡された物資も大体なくなり、ついでに襲撃をかけた商人の馬車から嵩張らずに価値がありそうなものは奪い取り、商人の死体は焼いた。
男たちの風体は生えるままにしたひげに、妙にそろった革製の胸当てを着けほとんどの者は粗悪な剣を持っていた。
男たちは野心的な、というには些か即物的に過ぎるギラついた目をしていて、自然彼らは物盗り目当ての野盗の類なのだと、見る者がいれば思ったであろう。
------
(賊徒に扮したダ・カール兵視点)
我々映えあるダ・カール伯軍第三中隊が命ぜられた任務は、敵指揮官であるオケアノス侯爵ジョージの殺害か足止めだった。
伝説というくらいはるか昔にヴェンシン王国の領土だったという、「空き巣狙いの様にして奪われたイシュタルト東部地域」と「獣たちに不当に占拠された旧ヴェンシン領土」の奪還は、ダ・カール伯国建国以来の国是であり、伯国内部でもダ・カール伯爵領と呼ばれる一般的な国なら王領と呼ばれる地域ではこの国是を根拠とした軍備費と諜報費として、他の地域からの租税を強制徴収していた。
そして聞いた話ではかのオケアノス地方をこれまで牛耳っていたジェファーソン氏がヴェンシン復権派の急先鋒だったらしいのだが、彼が失脚したことで国内のヴェンシン復権派のうち、伯爵領以外のものたちが重税への反発を強めたことが、今回の出兵の契機らしい。
そもそも一度国を失った旧ヴェンシン貴族たちが寄り合ったのは、かつてのヴェンシンを失いたくなかったためという建前で寄り合ったダ・カール伯爵を中心とするヴェンシン貴族たちだったが、一番最初の建国の時点で三伯国という勢力に分裂しているあたり、それぞれ自分たちがその「再建ヴェンシン王国」の主導権を握ろうとしていたことが見え見えだ。
また300年以上も戦争がなかったとはいえ、国の興りからして打算と権力欲にまみれた国の軍人として生活の糧を得ていたからには、国の思惑に従っての従軍、軍事行動は仕方ないと思っていたさ・・・。
しかしだ・・・。
賊のフリをして街道の封鎖、通りがかった者は民間人でも殺せなんてものを、軍の任務だとは信じたくなかった。
そのうえ・・・
「ギャハハハハみたかよ!あのオケアノス侯爵軍の貧相さを、見てくればかり豪華でまるで機能性のない馬車でよう!もう何日も経つのにまだ村で震えてやがる。」
「あんな貧弱な軍勢で侯爵様が移動するだなんて豚が岩塩背負ってる様なものだぜ!」
「襲撃の時メイドの2、3人さらって置けばよかったなぁ!休憩中退屈だよなぁ?」
周りで下品に笑っているのが、国の軍だと誰が判るだろうか?
そういう意味では我が第三中隊の任務『小隊単位で旅人、行商人に扮して国境を超え、協力者から装備を受け取り、その後は賊徒に扮して街道封鎖、期間は4/26~5/5まで、可能なら32日前後に通過すると見られる東征侯爵代理ジョージ・フォン・オケアノスの殺害を含む』の実行部隊としての適性は最高といっていいだろう、何せ品位が本物の賊徒となんら遜色ないのだから。
こいつらはこれでもダ・カール伯国常備軍、つまり貴族家の三男以下で構成されているはずなのだが・・・
そもそも『侯爵様』実際には代理が、兵を少数しか連れていないことを笑っているが、それはイシュタルト王国とダ・カール伯国との治安の差を物語るものだ。
我が国は治安が悪く、貴族が長距離を移動するのであれば兵士を50人はつけねばならない、商人ですら10人以上つけるし、敵が多いダ・カール伯爵ともなれば100人はつける。
20人に満たない兵士しか必要ない程度に状態が安定しつつあったのだろう。
長年オケアノスの蚕食を進めていたジェファーソン氏が断罪されてまだ半年ほどだというのに、我々に協力してしまった内患さえいなければ侯爵閣下でもその程度の護衛で移動できるほど治安が整っていたということだ。
まずわが国には伯爵までの貴族しかいないという違いもあるが、それより上の爵位を名乗る侯爵の軍勢を蹴散らしたのだといくら勝ち誇っても、実際には花嫁を連れ帰る行列で、打ち破ったところで何の自慢にもならない。
我々は国軍の1中隊で、あちらは一種の花嫁行列なのだ。
その上初回の襲撃では足止めのために馬狙いであったとはいえ、こちらは2人やられて相手の被害は馬数頭のみであった。
メイドをさらう余裕など最初からなかったのだ。
その後人数の差を生かして、夜中に交代で火矢と毒矢を放つという嫌がらせを繰り返しているがどれほどの効果が出ているだろうか?
さすがに治療術を使える兵も混ざっているだろうから致命傷には至っていないだろうし、あと今夜と明日の夜と仕掛けた後は、一気に国境まで後退しつつ狙えるならば後方を霍乱していくのが、こちらの任務だった。
だがしかし、今日まで中隊長とともに部隊の者たちを何とか思いとどまらせてきたが、彼らは何度も一気に人数差であの村ごと押しつぶす作戦ともいえないものを進言している。
メイドや召使いが多く、護衛は15名ほどにしかみえない馬車隊を40名以上で奇襲気味に襲い接近戦を仕掛けてもいないのにこちらは二人も死亡したのだ。
接近戦を仕掛ければおそらく被害は与えても部隊は壊滅状態となるだろう。
しかし撤収となる前に一度仕掛けたいという連中の意見をとうとう止めることができなくなってしまった。
連中は、これまで護衛が2人しかいない商人や、荷物らしい荷物も持たずに太い木の棒だけをもって街道を抜けようとする村人だけを相手にしておきながら、自分たちが百戦錬磨の兵にでもなったつもりで快勝に酔っていたのだ。
花嫁行列に対して2人死者が出たことすらも、『貧弱なりに侯爵軍はさすが粒揃いだが村人を守りながら戦うのは難しかろうから勝てる』だそうだ。
今日は危険を承知で、西側のキャンプとタイミングを合わせて日中から村に攻撃を仕掛けることになる。
何のことはない、オケアノス侯爵撃破という殊勲と目の前に見える若い女という欲に目を奪われたのだろう。
このまま押さえつけても一部が勝手に襲撃をしそうだという見解に至ったわれわれは、中隊所属の82名中東西の拠点の防衛に4名ずつと、街道封鎖要員として8名を残し66名で包囲戦を仕掛けることとなった。
しかし忘れてはならない、イシュタルト王国は大陸最大の国家である。
仮に此の度のダ・カール、モスマン共同によるオケアノス挟撃が首尾よく行った所でイシュタルトを落とすことは不可能で、その後報復は確実にされる。
宣戦布告なしで内通者を通じて先に兵を入れて街道で民間人を虐殺。
ヴェンシン再興という大義名分もこれで失った様なものだ。
なにせ我々が封鎖している街道はヴェンシン王国であったことがない土地なのだから。
報復が始まれば伯国の民衆は逃げ惑う暇もなく土地を追われることになるだろう。
遠慮する必要がない、仕掛けたのはこちらだ。
下手をすれば連帯責任でタンキーニやその他の同胞たちまで滅ぼされる可能性もある。
完全に勇み足であり、この戦争が終わった後には、もう二度とこの大陸にヴェンシンという国家が浮き上がることはないだろう。
そして私も、ダ・カールが滅びた上、この様な卑劣な作戦に従事したとなれば、生きて故郷に戻ったところでよほど運がよくなければ生きてはいけないだろう。
それが判っていても、軍としての行動であれば私は従わないわけには行かなかった。
男爵家の七男(次男四男五男の兄らは夭折しているので実質四男だが)とはいえ、貴族の特権で無駄飯食いと評判の常備軍に入り、他領から奪い取った糧を食んできたのだから、軍人としての役目は果たさねばならない。
今日も愛用の、2本の短直槍を使わずに済むと良かったのだがと念じながら、森にまぎれて、例の村へと歩みを進めるべく、私たちは立ち上がった。
------
(ジョージ視点)
陛下に報告してくると仰って跳躍していった姫殿下は、戻ってくると直ぐにその懐から封書を取り出した。
中には陛下からの指令書が入っており、それを姫殿下とともに読む様に指示されていた。
指示に従い姫殿下と共に封を切ると、中には正式の命令書が2枚入っていた。
2枚とも内容はほぼ同じもので、1枚はジョージ・フォン・オケアノスに対するジークハルト・イシュタルト陛下からの指令書、もう一枚は対象については無記名、指令者の名は同じく陛下であるが、任命者の項目が設けられていてそこは無記名だった。
おそらく私が死亡している場合に備えて用意していたものだろう。
と、いうことはこの書面はここに来る前から受け取っていて、今の間は本当に跳躍で直接話しを聞いていたかは怪しい・・・、姫殿下は結晶通信機の開発にも携わっていたはずなので、もしかしたらその試験機の様なものを秘匿しているのかもしれない。
王家で秘匿されているものは気づかないほうが良いだろう。
とりあえず書かれている文面の気になったところを尋ねることにしよう
「姫殿下、この『ナイト・ウルフ』なる護衛者はどちらに?」
私の聞いたうわさではナイト・ウルフなる姫殿下の護衛者は、『影の者』で、私が卒業と同時に拝領し今回オケアノスに置いてきてしまったセイバー装備と呼称される鎧と同系統の装備を姫殿下から直接賜った凄腕の戦士という話だ。
指令書にはアイラ様経由でならかの護衛者を戦力して数えてよい、ただし顔や正体を探らないこと書かれていた。
姫が跳躍で着たのだから、件の戦士も跳躍のことを知らされている数少ない人物なのだろう。
しかしながら、今近くにその様な凄腕の戦士がいるとは感じられないし、そもそも姫と近くにいてその様な戦士の気配を感じたことがない。
よもや、すでに王国軍でセイバー装備を拝領している中でも勇者となっている者ではないかと、以前セイバー装備を受領している方の一覧(侯爵代理なので、閲覧することができた)で確認していたところ『剣天』の専用セイバー装備が『ソード・ウルフ』だったため当たりかと思ったのだが、見事はずれであった。
そもそも軍幹部が姫殿下のためとはいえ護衛に付きっ切りというわけにもいかないか・・・。
とにかく、素性は明かされないにしても、とうとうナイト・ウルフにあえるのかと思うと自然心が高鳴った。
姫殿下の重要性・・・この姫殿下は養子縁組によって王家に迎え入れられた姫である。
その目的は表向きには、西侯爵家に嫁入りすることが決まった身の上で平民であったので王家がその後ろ盾となるためだ。
イシュタルトは自由恋愛を推奨している国で、本人同士の同意があれば近親婚ですらも許されている。
そんな中でも貴族と平民の結婚にはそれなりの秩序が求められていて、準貴族である準男爵までなら特になにもないが、男爵以上の正室に分家筋でもない平民を望むならば一度養子縁組を経ることが多い。
無論絶対ではないが・・・、そんな中この姫殿下は相手が侯爵家とはいえ、そんなに実例が多くない王家の養子となり、それもほぼすべての王族から愛しい娘、妹、姪などとして扱われている稀有な存在だ。
それだけでなく、前述のセイバー装備をはじめとする各技術の開発に彼女がかかわっており、彼女が王家に入った年からの魔石回路、魔法陣、蓄魔力槽、結晶魔法などの各種技術研究、魔鉄類の鍛造法、新型船の開発、さらに農作物や食品加工法、産廃もとい嫌われ者の排除(簒奪侯家のことを含む)などあらゆることが劇的に進歩を見せている。
そういえば4000年の謎といわれた紅茶も彼女がその工程を確立したのだったか。
そして何よりあの年ですでに勇者としての覚醒をしており、その上で可愛らしい容姿をして、それを活かすだけの知恵も回る。
考えれば考えるほどこの王国にとって必要な方だと思える。
この姫殿下の重要性を考えれば、つけられている影の者は間違いなく王国最高の技を持つ者だろう。
その任務の重要性ゆえか、本名も経歴も不明で、ただナイト・ウルフというコードネームだけ知られているところからも、代々の国王陛下が重用しているという影の者たちと同様の存在感を放っている。
目撃されたことが1度だけあるといい、一度はクラウディア内部に魔物が出現した騒ぎの際「魔砲将」や「剣天」「槍聖」殿の率いる部隊が強大な魔物を一瞬で蹴散らすナイト・ウルフを目撃したという。
そのナイト・ウルフを限定的にでも戦力として働かせて良いというのはかなり特別なことだろう。
「はい、今もどこか近くにいるとは思いますよ?あの人は必要な時にしか出てきませんので」
姫殿下は笑みを浮かべながら言う。
「アイラの護衛はそんなに強いのか・・・、待てそれは男なのか?女なのか?」
岳父殿は感心する様につぶやいた後、姫殿下の体を隠す様にして後ろから覆い被さり尋ねる。
どうも岳父殿も護衛の存在を見たことがないらしい。
「ナイト・ウルフは女性ですよ、安心してください父さん。」
姫殿下に手で押されると岳父殿はその体を離した。
「岳父殿、アイラ殿の護衛はセイバー装備を所有している上かなりの凄腕だとうわさに聞いております。真実ならおそらくはエイプリルと二人だけで敵拠点を蹴散らすことができるでしょう。」
そう伝えると岳父殿は目を見開いた。
エイプリルのセイバー装備は見ているし、ホーリーウッドに配備されたセイバー装備持ちのことも何度かは目にされているのだろう。
「なるほど、セイバーが2領あれば、歩兵の50程度は相手できるだろうな。それにエイプリルのサークラ護衛の任務も解くことが可能だろう。」
エイプリルはもともとサークラにつけられた護衛であり、その任務はフローリアン様から命じられたものである。
そこにわれわれが一時的にとは言えサークラから離れることを命じるのは憚られていた。
しかしアイラ殿であれば同じ王族となるので、エイプリルも素直に指示を聞くはずである。
エイプリルとナイト・ウルフのセイバー装備二人組みでなら村の防衛力を減らさずに賊徒のキャンプを突破可能だろう。
「ボクがスティングレイ少尉に命じれば良いのですね?姉を守るために賊徒を討伐せよと」
そう告げる姫殿下に首肯で返すと姫殿下はすぐに歩き出した。
「ボクがここに残っていると任務に忠実なナイト・ウルフは安心して作戦行動に入れません、なのでボクはスティングレイ少尉に攻撃を命じたあと飛行魔法で上空に待機します。」
その後家から出た姫殿下はエイプリルに一時的にサークラの身辺警護ではなく、サークラの安全のために周辺の危機の排除を命じ、エイプリルもその命を受けた。
姫殿下はその後飛行魔法で上空に退避され、その後退避された姫殿下を見送る様に森の中からそれが現れた。
------
(アイラ視点)
意見のすり合わせは終わった。
これからボクはアイラ姫の護衛である「ナイト・ウルフ」として、この村の東西に網を張る賊徒、おそらくはそれに扮した旧ヴェンシン派兵士たちを襲撃する。
その際ともに攻勢に打ってでる同胞であるエイプリル・スティングレイ少尉は、キスカよりも色の薄いくすんだ金髪の女性で、その瞳には確かな怒りを宿していた。
「それではスティングレイ少尉」
オケアノス家の馬車のうちのひとつ、特に豪華な造りとなっている女性用の車両の前でアクアとサークラの警備のために量産型セイバーを装着してたたずんでいる彼女はフルフェイスの兜だけ取り外している。
量産型は砦内で待機しているのが前提なので冷却機能が最低限しかない、炎天下の下で兜までつけていると結構つらいのだ。
「はい、姫殿下!殿下の命に従い、サークラ様の安全の確保のために殿下の護衛ナイトウルフ氏とともに賊徒の無力化に従事いたします。」
スティングレイ少尉は陽気でまじめな女性であり、リープクネヒト少尉とともにアクアの世話と護衛をしていたが、サークラとジョージの婚姻に伴ってその任務をアクアの護衛から、サークラの護衛へと変更した。
サークラとも非常に仲がよく、職務故に奥様とかサークラ様と呼ぶけれど、その付き合い方は長年の友達の様に気安い。
そのサークラへの態度のことでたびたび先任のリープクネヒト少尉に叱られていた。
しかしリープクネヒト少尉も、もともと村娘だったのにトントン拍子に貴族になり、侯爵代理夫人になることが決まっていたサークラの戸惑いに少し思うところがあったらしく、口では叱りつつもどことなくやさしい雰囲気がいつも漏れていた。
3人とも仲が良く、これからサークラを良く支えて行ってくれるだろうとボクたちもある程度安心して任せられると思っていたのに・・・。
「スティングレイ少尉、そんなに泣かないで・・・、リープクネヒト少尉はアクア様をお守りするという大切なお役目を見事に果たしたのです。」
「殿下、私は泣いてなどおりません!」
言葉の通りスティングレイ少尉は決して涙は浮かべていなかった。
その目には怒りの炎を宿していて、泣き顔なんて見せていなかったけれど、それが虚勢だということはわかっていた。
彼女は同志を失ったその悲しみを薪にして怒りの炎を燃やしているだけで、その猛りはボクには泣いている様にしか見えなかった。
怒りも悲しみ、大きな力を生むけれど、制御しきれない力は自滅に導くということをあのウェリントンの夜にボクは経験している。
そうであるからには、目の前の信頼できる彼女が、その力に飲み込まれ様としているのを見過ごすわけにはいかなかった。
特にこの数日は任務のためにと抑えていたらしいのに、ボクがこれもサークラを守る任務の一環であると認可したとたんにこれでは・・・いくらセイバー装備を着けているといっても彼女の体は疲れもするし、精神も磨耗する。
この数日油断せずにアクアとサークラを守り続けてきた彼女はすでに疲弊しきっているはずだ。
「いいから、スティングレイ少尉はナイト・ウルフの援護について、アレは平時の業務しかしていなかったから、元気が有り余ってる。少尉は、冷静に、状況をみて、取りこぼしがあれば手伝ってあげて、深追いもしなくていい。セイバー装備は見た目だけでも威圧感があるし、大きなナイト・ウルフの方が重たそうなのに早く動くのだから、少尉のセイバーがどれだけ早く動くのか相手は警戒する。それだけでも十分に役立ってる。いざというときには先行して村に戻ってきてもらわないといけないから必要なときにはジョージ義兄様が魔法で合図してくれるから、そのときは少尉がすぐに村に戻って、ね、それが少尉の役割。」
興奮していた彼女だったけれど、ゆっくり丁寧に話しかけると少しずつ落ち着いた様だった。
「はい、殿下口答えしてしまい申し訳ありませんでした。私は大丈夫ですサークラ様のためにも、先輩のためにも役目を果たします。」
先ほどまでとは裏腹に彼女の瞳は理性を取り戻し、一筋だけ涙が流れた。
大丈夫な様だ。
「それでは皆さん、ボクは上空に退避しますので後のことはナイト・ウルフと相談お願いします。」
それだけ言葉を残して飛行魔法で空へと上がる。
飛行魔法のことを知らない村人たちが驚きの声を上げるけれど、気にせずにそのまま上空へと身を躍らせた。
それから雲に隠れる様にしてボクは魔力偏向機でナイト・ウルフを装着した。
そして村の人気の少ない場所、森の近くの焼け落ちた民家のある所に跳躍して、ゆっくりと歩み出た。
アイラが女ということもありますが、アイラの周囲の女性率が高くなりがちで男性キャラが増やしにくいです。
そしてせっかく居るはずのイサミとモーリスの存在感がまるで息をしていないので、そろそろどうにかしたいです・・・。




