第78話:サークラの結婚2
楽しみなことが近づいてくる時、その日を待ち遠しく思って時間の流れはゆっくりと感じるだろう。
もうすぐ楽しい時間が終わりそうな時、永遠に訪れないで欲しいその瞬間はあっという間に喉元まで近づいてくるだろう。
どちらにしてもその瞬間というものはいつかはやってきて、そして過ぎ去っていく。
人の身でありながらそれを逃れることができるなどと自惚れるものもそうそういない。
ただ無駄だとわかっていても足掻くことをやめない人間はそれなりにいるものだ。
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(アイラ視点)
とうとうこの日がやってきてしまった。
今日は4月24日黒曜日、ウェリントン男爵家の長女にして、王家の養子であるアイラ・イシュタルトの実の姉であるサークラが、オケアノス侯爵代理の妻となり、未来のオケアノス侯爵の母となるための生活が始まる初日でもある。
同時にサークラは未来のホーリーウッド侯爵の義姉となることがほぼ確定していることは王国貴族であればほとんどのものの耳にすでに入っていたし。
耳聡い者であれば、ペイロード家の次男とかのウェリントン男爵家の末娘が婚約状態にあることもすでに聞き及んでいた。
そのためか、本人か代理人の参列希望の貴族家は王国貴族の9割に及び、ジークや養父、義父が断る理由を作れる人間に関しては排除したものの参列者は800人を超えることになった・・・。
結局通常の貴族御用達の王都聖母教会では足りず、国の行事でつかう様な祭殿を使うことになった。
まぁもともとジークたちはその可能性を大きく見て動いてくれていたのでそこはまったく問題なかったのだけれど、姉の結婚式は村娘のささやかながらも幸せな結婚ではなく、貴族の思惑入り混じる戦場となってしまった。
幸いなのは、ジョージが先んじて宣言したこと。
「自分は侯爵代理という立場であり、王家とオケアノス侯爵である我が母アクアに次期オケアノス侯爵の母として認められたのはこのサークラという女性に他ならず、簒奪侯家の自分が次期オケアノス侯爵の父として無条件で認められたわけではない。」
と、彼は王領貴族の前で宣言している。
つまるところオケアノス家が存続を許されたのは、正しくオケアノス家の血脈を繋ぐアクアの長男としての自分ではなく、国王家から許可された嫁であるサークラが産む、なおかつオケアノス家の血脈を継ぐものでなければならない。
それがイシュタルト王国としての決定であるならば、オケアノスの家督目当てで側室を送り込もうと考える無粋な貴族も現れないだろうし、サークラを傷つけることはすなわち王家へケンカを売ることになるのでサークラの身の安全もイシュタルト国内の貴族には脅かされることはないだろう。
さらにジョージ個人からウェリントン家へ、彼自身の心情として王命でもない限りサークラ以外の女性を受け入れるつもりはないことを宣言している。
理由は前者の後継者に関する話と・・・
「サークラさんほどの女性がイシュタルト王国内に何人もいるとはおもいません、そしてその中で私と添い遂げてくださるのはサークラさんだけだと思っております。母上もサークラさんのことを私以上にかわいがっておりますから」
そう、ジョージは3年にわたるサークラとのお付き合いでジョージは完全にサークラにほれた。
それはまぁそうだろう。
サークラは国中に名前が知れ渡る美姫のサリィをして、理想的なお姉様と言わしめるほどの美貌と村育ち故の気遣いと、成人した後に貴族教育を受けてもすぐに馴染む適応力を持ち、なおかつサークラ自身もジョージの誠実な人柄に惚れている。
比較対象がカールとピピンだから仕方がない、ほかにもホーリーウッドやクラウディアで接した男性も少しは居るが、ホーリーウッドに居た期間は短く、クラウディアではほぼ最初からジョージの婚約者になる向きでひとまずお付き合いから・・・となっていたので、まじめなサークラはジョージ以外に対して最初から恋愛を前提としない付き合い方しかしていない。
二人は何事もなければ、王国史に新たなおしどり夫婦として名前を残すことになるだろう。
自由恋愛推奨のイシュタルトではおしどり夫婦も珍しいわけでもないのだけれど。
まぁそういうわけで、サークラの身はひとまず安全、頻繁には会えなくなること以外は心配することはないのだ。
ジョージとサークラの結婚式は参列者の数の多さの割りに和やかなムードの中で執り行われた。
というのも、サークラの花嫁姿があまりにも現実的ではない美しさをしており。
さらにエストラスガールとして数名の少女が結婚式に彩りを加えたのだけれども・・・。
あぁエストラスガールというのは、地球で言うリングガールやらベールガールなどの様に結婚式のお手伝いをする子どものことだ。
地球と異なる点としては、聖母教式ではこの役割を占めるのは女の子であるということだ。
エストラスガールが運ぶものは指輪など物品だけではなく「受胎」や「発情」を運ぶとされているが、そのいわれのためエストラスガールは3~13歳の間くらいの、新郎新婦に縁のあるもので特に見目麗しく新郎新婦が早く子どもを作りたいと思うような、理想的な少女が選ばれる。
しかし聖母教における創世神話では聖母が生んだ雄性のモノたちは、一部が聖母と交わっている。
そのため聖母教では両者の合意の上であれば近親相姦や近親婚は禁忌ではないが、結婚式の演出の時点でその可能性を想起させることをわざわざやらないというわけだ。
それで今回も複数の、誰もがかわいい、もしくはこんな娘が欲しいと思える様な娘が数名選ばれたのだ。
主催者家族の身内から・・・。
エストラスガールの数に本来制限はない、基本的には最低限衣装のカラーリングを花嫁とそろえるが、財力や人脈を見せ付けるならば、花嫁と同じデザインのドレスにヴェールなしで花飾りをつけるのが最上とされる。
そして少女たちの数が多いことも、それら一族が繁栄していることを見せ付ける意味合いがある。
今回サークラがかわいがっている少女たちということ、オケアノス、ウェリントン両家に縁があること、見目麗しいこと、3~を目安に成人を迎えていない少女という条件の下に選ばれたエストラスガールは・・・
サークラを理想の姉と呼び慕うサーリア・イシュタルトとエミリー・イシュタルトを筆頭に、実妹であるボクことアイラ・イシュタルト、アイリス・フォン・ウェリントン、アニス・フォン・ウェリントン、飛び入り参加のユーディット・フォン・ホーリーウッドそしてまだ3歳になっていなかったが、アクセサリを運ぶくらいはさせても大丈夫だろうとセシリア・イシュタルトも参加、お姉ちゃんたちとおそろいの純白のドレスを着て上機嫌そうだ。
さらにウェリントン家との婚約がなったことで準親戚扱いとなったペイロード家からラピス・ラズリ・フォン・ペイロードが参加することになった。
これだけの数と質のエストラスガールが居るのにヤジや嫌味を言える貴族はいない、それはすなわち王室の許可した婚姻への批判となり、王国筆頭格である4大侯爵家のうち、南以外を敵に回すことになる。
それ以前に、前述のサークラの美しさも、エストラスガールを勤める娘たちの愛らしさも権力に腐心する一部貴族にすら邪心を抱かせない神々しさがあった。
絶世の美女であるサークラの裾を持つやはり絶世の美少女のサリィと、トーレスに恋をしているからなのか前周の14歳の頃の彼女よりも圧倒的に美しく開花しつつある11歳のエミィの美しさに、人々はため息を吐き。
花嫁が歩く道を清めるために花びらを撒くアイリスと、、増え過ぎた参列者に花を渡していくボク、ラピス、アニスの姿に笑顔をこぼす。
参列者が多すぎて、ボクが花を収納しラピスとアニスが時々ボクから補充を受けながら配って回った。
それでも全員に花を送ることができないため、前半分に座っている招待客くらいにしか渡していないが・・・・。
そして指輪やを運ぶユディとシシィの姿には泣いている人まで出る始末。
まぁわかるよ?まだ一人で歩かせるのが不安になるくらいの小さな女の子がしっかりと役目を果たしているんだ。
特に自分のほうがお姉さんだからしっかりしないと・・・と一生懸命に前を見て、でもシシィの歩幅にもあわせつつ歩くユディの姿はなかなかに感動的だから、子ども好きで涙腺の弱い人にはかなりの攻撃力だろう。
そうしたエストラスガールたちの頑張りもあってか、結婚式は大きなトラブルもなく終わり(強いていうならば新婦の父が見られない顔で泣いていたのがトラブルといえばトラブルかも)
サークラは今夜、オケアノス邸に泊ることとなった。
サークラにとっては生まれてはじめての家族と離れての外泊である。
無論護衛もついている。
以前からサークラに従ってメイドとしてアクアの世話をしていた東出身の軍官学校卒業生で、セイバー装備を与えられた18歳のエイプリル・スティングレイが近衛メイドとしてサークラに近侍することとなった。
アクアの方にはもう一人の近衛メイド王領出身の21歳ハイデマリー・ローゼマリー・リープクネヒトがついていて、今日から3泊はサークラとジョージはオケアノス邸で泊り、アクアは王城に留まる。
そして27日には、最後とばかりにホーリーウッド邸に泊ってから、28日にクラウディアを発つ。
オケアノスまではそれなりの距離があるものの、ホーリーウッドへの道筋とは違って比較的平坦な平地と森の間道が多いため7日ほどで到着する、なので4月35日か36日がオケアノスへの到着予定日だ。
ボクは5月のオケアノス側の式の日である6日にこちらでおめかししてから跳躍しあちらで参列する予定、ついでにアイリスも連れて行くことになった。
それはそれとしてホーリーウッド邸では、アイリスがいじけていた。
「うぅぅ・・・アイラァ・・・おねえちゃんがいないよ・・・お家の中におねえちゃんがいなんだよぉ?」
ここ数日は義両親とユディもいるので、ユーリは基本ユディと一緒に寝ている。
たまにしか会えないお兄ちゃんに必死で甘えるユディがかわいいので2日に一回はボクも義姉として一緒に寝ているけれど今日は神楽と寝ようかと思っていたら、部屋にアイリスがやってきたのだ。
今はボクと神楽はベッドサイドに座って、アイリスはカーペットに膝立ちして座ったボクの足にすがり付いている。
「アイリス仕方ないよ、むしろもう19なのにうちにいたのがちょっと遅いくらいなんだよ?」
政治的思惑とかオケアノスの治安とか、理由があって今まで遅れてしまったけれど、結婚式のサークラはすごくきれいに笑っていたから、きっとこれで幸せなのだ。
「でもでも、お姉ちゃんなのに、おうちに帰ってこないんだよ?」
そういってアイリスは涙を浮かべた顔でイヤイヤする。
「今日はいいけど、明々後日にはもう一度こっちに泊るからそのときちゃんと笑ってお別れしないといけないんだよ?」
すがりつくアイリスをなでてやりながら、なるべくやさしく言い聞かせる。
アイリスの下唇がヘの字になってひっくり返って、このところしょっちゅう見ている本当に寂しいときの表情。
そして足にすがりついているから自然、上目遣いでボクを見る。
「アイラは寂しくないの?サークラおねえちゃんなんだよ?」
「もちろん寂しいよ、ボクだってサークラお姉ちゃんのこと大好きだもの、でも結婚したらだいたい女は家を出て行くものだし、サークラお姉ちゃんはこれからお母さんになるんだよ?」
涙を指で拭い、前髪を耳に掛ける様に払うかわいらしいおでこが汗をかいていて、乙女にはあるまじきことだけれど、鼻汁も垂れ流しになっている。
鼻をかんだり、涙を拭いたりする(今夜はサークラも世話になっているだろう)用の薄手のハンカチを神楽が取ってくれたので、鼻に押し当ててやるとピチーと妙に気の抜ける音とともに鼻をかむアイリス。
ボクの手の中に生暖かい使用済みハンカチが残るが、専用の容れ物も神楽が近くに置きなおしてくれたので、丸めて放り込む。
息がしやすくなって少し落ち着いたのか、アイリスは立ち上がり神楽とボクをはさむ様にベッドサイドに座ると無理やり膝枕にうつ伏せに頭を乗せつつ、まだいじけている。
けれどもう夜9時を回っているし、明日は普通に学校なので、そろそろ寝る時間だ。
「アイリス、そろそろ寝よう、明日の講義に差し支えるよ?明日の1限はなぁに?」
そういって声を掛けるとアイリスはうつ伏せになったまままたイヤイヤをする。
「やだ!寝ない!寝たらすぐに明日になっちゃう。4回寝たらお姉ちゃんいなくなっちゃうよ。」
「寝ても寝なくても、明日の朝は来るし、お姉ちゃんはいなくなる。その間寝なかったらアイリスが体を壊してしまうよ?」
「そうしたら。お姉ちゃんが心配して看病してくれるかも?」
がばりと体を起こしてアイリスが光明を見出した様に大きな声で言う。
「オケアノスに向かうのは、あちらでの結婚式の予定もあるし、出て行く日は変わらないかな、ただ次に会うまでお姉ちゃんが覚えているのはアイリスの気分の悪い顔になるから、きっと心配になってオケアノスでもくらーい気持ちで過ごすことになっちゃうかも・・・。」
そう告げると心根が優しいアイリスはまた悲しそうな顔になる。
「やだ、お姉ちゃんに心配かけたくない。」
いい子だから頭をなでてやる。
「そうだね・・・じゃあ笑顔で送り出せる様にしないとね?」
そういって締めると、アイリスはまだ少し寂しそうだったけれど、涙を浮かべたままでうなずいた。
それからおずおずとボクの袖をつかむと
「アイラ・・・今日ここで寝てもいい?」
と普段からたまに一緒に寝ているのに、不安そうにわざわざ許可をとってくる妹。
「もちろんいいよ?」
「じゃあ私は遠慮しましょうか?」
と神楽がベッドサイドから立ち上がろうとすると、ボクの膝の上に身を乗り出して、神楽の寝巻きのスカート部分を引っ張るアイリス。
「まって、カグラちゃんも一緒がいい・・・だめ?」
と不安そうな表情でつぶやくアイリスを見て、神楽はやさしげな笑顔を浮かべてベッドの上に戻る。
「もちろん良いですよ?私はアイリスちゃんのことも大好きですから」
そして神楽がベッドの上に横たわるとアイリスは、その正面向かい合う位置に身を投げる。
それをみてボクが最初そうしようと思っていた様に神楽の隣に体を横たえ様とすると、アイリスが若干怒り気味に言う。
「違うの!アイラはこっち!」
と、ボクと神楽とでアイリスを挟む様に仕草する。
無論本当はわかっていたので、すぐにアイリスの背中側につくと
「それで、カグラちゃんもっと近づいて?」
とアイリスは少し下に体をずらすと、ボクの胸元に後頭部を押し当てる様にしてから、両手を広げて神楽を待ち受けた。
なるほど、と頷いた神楽はアイリスを胸元に抱く様にして接近して、アイリスはその体を抱き寄せた。
ちょうどボクと神楽の顔が斜めに向かい合う様になって、すぐ下にアイリスの頭がある。
アイリスはボクのふくらみ始めたばかりの胸に頭を押し付けて、同時に神楽の小ぶりな胸にも顔を埋めてようやく落ち着いた。
意見を求められないのでただジッと近侍していたエッラとエイラのほうを向いて首を縦に振ると部屋の魔導灯を落として部屋を出て行く。
「アイラは、ずっと私のそばにいてね・・・?」
不安そうにつぶやくアイリスと神楽の間に手をいれて無言でアイリスの胸に手をやる。
トントンとたたいてやる。
少なくともアイリスが離れていくまでは一緒にいるさ・・・最悪ずっと離れたくないならまた前周みたいに・・・。
「一生離れたくないならいっそ、アイリスもユーリのお嫁さんになったらいいよ。」
とつぶやいたのだけれど、泣き疲れていたらしいアイリスはすでに夢の中だった。
もう暑い夏真っ盛りだというのに3人で密着して寝たため、翌朝起きたときには3人ともかなり距離をとっていた上、寝汗でお漏らししたみたいに下着や敷布にしみるほどぐちょぐちょになっていたため、朝から体を清めねばならなくなって、学校前にかなりバタバタすることになった。
そんな感じでボクより余裕のないアイリスがいたから、ボクはサークラが家にいないことやジョージと共にオケアノス邸にいることをあまり意識せずに済んだ。
しかしサークラといられる最後の夜ともなるとボクもかなり寂しくなってしまって、アイリスと一緒に泣いてしまった。
もちろんアイリスみたいに大泣きしたわけではなくって、すすり泣く程度だったけれどちょっと悔しい・・・最後の夜は、オケアノスに持っていくために私物の少なくなったサークラの部屋にベッドを3つ並べて、ウェリントン家の全員で枕を並べて一緒に寝た。
そして予定通り28日の朝にはサークラやジョージ、アクアに二人の近衛メイド、ジョージの側近のアンリとパブロにその他護衛の兵士やオケアノス家のメイドたちとともに、オケアノスでの結婚式にも参列する父エドガーと母ハンナにアニスも一緒に、オケアノスに向かって旅立っていった。
お見送りのため学校に申請して1限は欠席、その夜は寂しがるアイリスをなだめるのにまだ口もきけない妹ピオニーの助けを借りてなんとかぎりぎり、ピオニーはピオニーで母がいない間の臨時の乳母として派遣されてきた育児休暇中(娘さんと一緒にホーリーウッド邸に泊まりこみで来ていただいた。ごめんね旦那さん)の王城メイドとの仲がなかなかよくならなくって大変だったり・・・。
30日には義両親と共にホーリウッドに帰るユディが、ユーリやボクに抱きついて
「かえりたくなーい!」といってゴネたり。
両親も義両親もいない日程を見計らったのか、ホーリーウッド家の面々が帰った途端に「ぜひアイリス嬢をうちの嫁に!」
といってくる男爵(当主本人)やら子爵家の使者(こちらが男爵家なので本人は来ないがホーリーウッド邸に居候しているので本来来訪相手はユーリとなるので失礼)が朝に来れば「あ、今から学校なんで」
と、追い返し。
夕方や夜に来れば「就寝時間が近く学業に差し障るので」と門前払いにさせ
36日の休日には「城で陛下と昼餐会なので」と断り、完全に無視していた。
せめて親がいる時にきてほしいものだ。
といっても10も年上のあったこともない男の側室やあたりかはずれかもわからない貴族の次男なんかにアイリスはやらないが・・・
そうして、迎えた5月3日、水練のため円形闘技場で水に浸かっていると突然ボクたちは学長室に呼び出された。
学長室に行くとノイシュが待っており、それから軍官学校に通っているウチの関係者のうち、ボク、神楽、エッラ、エイラ、ユーリ、ナディア、トーレス、シャーリーがそろうと馬車に乗せて王城へ連れて行った。
アイリス、トリエラ、ソニア、ソルは不要らしい?
「なにかあったの?」
とたずねても、ノイシュはただ「陛下からお話があります」とだけ答えて、ただその表情からなにかマズイことが起きたのだと、ボクは嫌な汗をかいた。
そうして重い空気を感じつつ王城について、ジークの前に通された後、ボクとユーリ、神楽、エッラだけが塔の部屋に連れて行かれた。
そうしてジークはようやくボクたちに呼び出した用件を知らせた。
「つい先ほどオケアノス市から早馬が来た。4月34日にドライセンが国境を侵して進軍を開始したそうだ。それからその早馬は、ジョージたちがオケアノスに向かう馬車の予定進路を遡り、道中で接触できた場合には、アクアやサークラたち非戦闘員をクラウディアに引き返させるという命も帯びていたが、道中にそれらしい馬車とはすれ違わず、代わりにオケアノスの西80kmほどの地点に山賊かなにかが森の中で小規模な陣を張っていたそうだ。練度が山賊のそれと異なるためおそらくは偽装した敵兵だと・・・。」
その報せの内容に、足元が崩れる様な浮遊感を感じた・・・。
ぎりぎりお昼休み中に間に合いました・・・。




