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第56話:王都の生活2

 イシュタルト王家が突如養子を取ってから約2ヶ月が過ぎた。

 皇太子ヴェルガは重臣や直接接することのある者には直接その養子を紹介したものの、大半の家臣や直接接することが少ないと見込まれた者たちには書面のみで養子を取ったことを通知した。

 後年ホーリーウッド家の嫡孫に取らせることも決まっていると併記しているため、特に混乱は起きず。

 ほとんどの家臣たちは、あぁそういうモノどうぐが今城にはいるのだ。

 その程度の認識であり、その存在がすでに王族たちにとって家族として親しく扱われているなどとは思いもしていなかったのである。


 さてそれとは別に今城内を騒がしている若者が何人かいた。


 一人は年の頃15~6の乙女で、その佇まいからどこかの貴族の秘蔵の美姫で、それを見出したのはオケアノス簒奪侯の一族ジョージだという話は年始の祝宴以降有名であったが、その出自は不明、ただ現在はどういうわけか、王城にて儀礼や作法の訓練をしており、また一説には、とうとう正式にジョージに対してオケアノス侯爵代理の任命があったのだといううわさも合ったことから、この姫を娶ることを条件に王家とオケアノスとに和議が成立したのだという噂が広まり始めていた。

 さらに、その噂から発展してその乙女が国王ジークハルトの御落胤なのではないかという噂もまことしやかにささやかれ始めていた。


 次に13~5歳の少年、その青年はなかなかの美丈夫で、それでいて剣術や経理、史学研究にも適正があり、天才と呼ばれる様な才は無いものの、官吏として必要な才に恵まれていた。

 彼を教えた文官たちは誰もがその一人で一通りの業務をこなせてある程度自衛もできる少年を将来の重臣候補だと考えていた。


 さらには12~3歳の少女、その娘は身長こそやや小柄の148cm程度であったが、まずほとんどの人の目を引くのはすでに成人並みの大きめな胸である。

 しかし少し話したり手合わせを観たものは気付く、この娘の恐ろしさに・・・・。

 その娘は王国二十四傑に数えられる勇者『剣天』ジェリド、『魔砲将』ボレアス、『槍聖』アクタイオンにそれぞれ師事しアクタイオンからは「その豪腕、いずれ角笛すら穿ち貫くだろう」と唸らせたという。

 なお角笛とは大陸中央部にある山脈、悪魔の角笛のことである。


 またボレアスからは「槍を以って並の砲兵よりも強力な魔力砲撃が可能な類まれなる才覚があり、またその槍もわが鉄竜砲塔ドラゴンタワーよりもさらに打撃に優れる。」とやはりその豪腕を讃えた。


 そして軍の戦闘調練を行っているジェリドからは「武芸の才もさることながら、かの者を戦列に伴うだけで兵卒一人ひとりが百人力を発揮するだろう」とカリスマ性を讃えられた。

 このことから軍務畑に彼女を知らないものはいなくなった。


 さらに続く、珍しき黒髪と白髪の乙女を引き連れた双子の美少女やはりおそらくはどこかの貴族の娘であり、何らかの縁故により王城にて勉学に励んでいる。

 この双子の美貌も5年後10年後を見るのが恐ろしいほどに整っているため、王城の公共区画や離宮で働くメイドたちはかわいらしい双子たちを一目見ようと、休み時間など隙をみては、双子たちがよく見かけられる資料室や、中庭に足を運んでいた。


 まさかその双子の片方が件の、王家が養子に迎え入れた姫君だとは思いもしなかった。

 双子を片方だけ養子にしているとは考えつかなかったのだ。


------

(アイラ視点)

 2月も半ばを過ぎた。

 日々の暮らしに早くも慣れてきて、アイリスやアニスもボクとの生活の仕方に慣れてきた様だった。

 先週、邸に帰る時に、ルイーナとルティアとをそれぞれアニスの遊び相手として不自然なく顔あわせさせることに成功した。

 ルイーナの両親は城で軍務についていることもあり、それとなく接触することができて、会話を誘導してボクと同い年のマリエラと、アニスと同い年のルイーナのことを聞きだして、休日に遊ぶ約束を取り付けたのだ。


 またルティアの家は外クラウディアでも外壁に近い僻地のほうで、食うのにも困るというほどではないが、生活に余裕はない、そんな中で育てた一人娘を前世ではボクのアニスに付き合わせて行方不明にさせてしまった。

 前世で彼女の母と話したことを思い出しつつ、生活に余裕ができれば次の子をもうけることもできるか・・・と考えたボクは、ジークと相談の上でルティアをアニスの友人として召し上げる算段をした。

 召し上げるといっても、無理矢理親と引き離すわけじゃなくて、メイド見習いとして奉公させるということだ。


 彼女は前世でも軍官学校に上がるまでは毎日親の農業を手伝っていた。

 そんな彼女が軍官学校に入ることになったのは彼女に才能が有ったからだ。

 そのため初年度の入学費用などは免除の上で入学し、彼女に支払われる見習い軍人としての給金はほとんどが家のことに充てられていた。

 あれと一緒だね、ルティアに魔法の才能が有るのは今生でも変わらない、ジークには彼女は才能があると推薦した。

 アニスの一つ年下の見習いメイドとして教育を施すために子どもに支払われるものとしては破格の給金をジークに用立ててもらいルティアの両親は三日三晩考えた末に首を縦に振った。

 娘がそれで教育を受けることができ、幸せになれるならば会えなくなっても構わない、幸せになるんだよ、ティア・・・と感動のお別れシーンをやっていてくれたところ申し訳なかったが、別にすぐ引き離すわけではなく幼い内は週2日の通いで、適正を見て将来は住み込みでの奉公をする可能性もあることを告げると恥ずかしそうにしていたそうだ。


 なにはともあれ、その様にしてアニスはお友達を二人得た。

 当面ルイーナはマリエラとともに週一度程度ホーリーウッド邸に遊びに来る、逆にルティアは週に2~3日平日を中心に邸でアニスの相手をしてくれる様になった。


 そんなわけで邸に残しているアニスに関する心配事も少し減り、今朝もボクは登城した。

 やっぱりねぇ、年頃の近いお友達って大事だと思うんだ。

 特に小さい頃には家族以外と接する機会を自分からはなかなか設けられないからね。

 その点マリエラとルイーナはいいね、アイリスとアニスのお友達という条件を姉妹で満たせる。

 もちろんボクも一緒に遊ぶけれど、


 サークラたちと別れてから所定の乗り場に馬車を乗り入れ、エイラと合流する。

 今日はアイリスがさみしんぼだったので部屋まで着いてくる。

 隣にアイリスと神楽、後ろにエイラとエッラを侍らせて、王族居住エリアの私室まで歩みを進める。

 実にいつも通りのすがすがしい朝。

 居室で着替え終わると今度は勉強をする予定の資料室方面へ歩みを進める。


 通りがかる顔馴染みの衛兵やメイドたちに頭を下げられ、それに手を上げて応える。

 この区画に勤める人たちは大体ヴェル様やジークから直接紹介されている。

 みんな皇太子の養子であるボクに対して穿った見方をすることもなく、あくまで姫君として相応の礼を尽くしてくれる、王城の使用人たちの教育が実に行き届いている。


 しかし今日はどうもめぐり合わせが悪かったらしい、正面から王弟セラディアス元公爵が歩いてきた。

 その荒い金の使い方と、イシュタルト姓を使った無茶な金策がジークの目に留まり最近身辺調査を受けているはずの彼が何で王城にいるのだろう?

 まぁ鈍い彼のことだから、調査を受けていることにも気付いていないだろう、大方娘オリヴィアと孫オルガリオの住んでいる離宮に金目の調度品でもくすねに来たのだろう。


 一応王弟ではあるが無役の彼と、ヴェルガ様の養女となったボクとでは、ボクのほうが立場が上らしいので普通に歩くことを継続する。

 ジークに聞かされたことが正しいなら、現在ボクが道を譲る必要があるのがジークと養父母、そしてハルベルトたち3兄妹だけだそうで、他のものは皆ボクに道を譲るべきなのだそうだ。

 無論年長者に対する払うべき敬意は払うけれどね。


 ボクは今町娘風とは言わないが、少し質素なドレスに身を包んでいて、アイリスも最初から簡素なドレスに身を包んでいる。

 ダンスのレッスンのとき以外は簡素な格好のほうが動きやすいからね・・・。

 そんなボクたち双子+独特な和柄風ドレスに身を包んだ神楽に、メイド姿のエッラとエイラ、まぁ目立つよね、王城が広いとは言えここは所詮廊下だからね、無論見つかりました。

 でも彼が人並みに王城の情報を仕入れていたら、特に大事にはならなかったはずなのに・・・


「おい娘たち、貴様らなぜ我に道を空けぬか?」

 セラディアスはボクたちに対して難癖をつけてくるつもりの様だ。

 まぁ彼を処罰するのにジークも少し悩んでいるらしいし、ちょっと手伝ってあげるのもいいかもしれない。

 ジークにとっては一応異母弟で、きっかけがないと捕縛に踏み切れないだろうしね。

 「異母」弟だから財産没収目的で貶めた、なんて声高に叫ばれたりしたらイメージ悪いし、実際には没収できる財産もないけれど。


「これはセラディアス殿おはようございます、無役の王弟閣下が朝から王城にいらっしゃるのは珍しいことでございますね?」

 まずは軽めの挑発をしたつもりだった。

 ヴェル様の養女であるボクをヴェル様は重臣や顔を合わせることが多そうな城内の人物には引き合わせている。

 セラディアスも王族扱いはされないとはいえ、仮にも王弟に当たるため、直接挨拶するための呼び出しをかけたが、体調不良を理由に登城しなかったため、これが初顔合わせだ。

 それでもセラディアスにも書面でボクを養子にした旨は送っているし、ボクの外観などについても報せているとヴェル様がおっしゃっていたのだ。

 故に、無役で、立場も現在のボクより下に当たるセラディアスを殿と呼ぶのは十分常識の範疇のはずだったのだけれど・・・念のために補足するとこの世界での「殿」は同格を含む無役の者を呼ぶ一般称で、たとえば上位貴族などが相手でも無役の者であれば殿呼びしても失礼にあたらない。

 また軍や官庁に所属する場合には、階級に殿をつけて呼ぶことも正しい呼称となる。


 彼はボクに殿呼びされたことが不服な様であった。

 無役をわざわざ口に出したことの方は気にしていない様だ、気付いていないだけか?

「おい小娘、我が王弟セラディアスと知っていてその態度か?」

 そういって大きなおなかを反らせて威圧してくる。

 ボクにとってはただの肉塊に等しいけれど、アイリスと神楽は不快な想いをしておびえてしまっている。

 そのことがボクを苛立たせた。


「そうですね、セラディアス殿に対してはこういった対応で正しいとマナーの先生が教えてくださいました。」

 ボクはあわてず淡々と、できる限り感情を乗せずに応対する。

 その態度がさらに気に食わなかったのか、セラディアスは不愉快そうな顔を隠そうともせずにボクに問う。

「ほぅ!誰だその先生とやらは!いたいけな小娘に適当な教育をしおって、我が教育してやらねば!」

 そこで空気を読むのに長けたエイラが反応してくれる。


「王家近衛メイド、王族直属のノイシュ・ウーリヒールド少佐です。王弟閣下、僭越ながら閣下の姫様への態度は少々無作法かと」

 と、ボクの前をかばう様にしてエイラが移動し、ボクの身分を明らかにする。

 エイラから観れば無役の王弟で元公爵なので閣下という呼び方をしている。

 しかし、主人であるボクに対する不遜な態度をとったことで静かに怒りを覚えている様だった。


「な、この娘がヴェルガの取った養子!?しかし、どうみても双子だぞ!?」

 おそらく離宮などでうわさになっている双子とヴェル様の養子は別の話だと思っていたのだろう、うろたえるセラディアスに対して、エイラは淡々と応える

「はい、ですから、こちらがヴェルガ皇太子殿下の養女であらせられるアイラ姫様、お隣が姫様の実の妹で、ホーリーウッド侯爵家から貴族教育のためにお預かりしているアイリスお嬢様です。こちらの黒髪のご令嬢も同じくお預かりしているお方です。」

 告げるエイラの言葉に顔色を少し悪くするセラディアス、自分がとった態度を思い返しているのだろう。

 しかし彼は少しすると開き直ってしまった様だった。


「ヴェルガの娘ということは我の姪孫ということだろう?挨拶するのが道理ではないか!何故なにゆえに道も譲らず、そのまま通り過ぎようとした!」

 そういって強気になるセラディアス、そういえば前世でも気位ばかり高くって、ジークの息子の一人ともめていた人だね。

 そんなだから貴族との腹芸が苦手なボク程度も相手にできないわけだ。


「はぁ?先日ヴェルガ養父様がおっしゃっておりました。先日セラディアス殿と顔を合わせるために時間をとったのに、セラディアス殿は体調不良とおっしゃって狩りに出かけておられた。と・・・ゆえに、セラディアス殿は、わたくしと顔を合わせるのもお嫌なのだろうから、城内で見かけても知らぬ存ぜぬで通すこと、またわたくしはユークリッド様に嫁ぐまでは、正しく王族として扱われるので道を譲ったりする必要もないと」

 実際にはジークの兄弟やヴェル様以外の子女など多数の元王族、元公爵、現公爵らとご挨拶させていただいたため別にセラディアスのために取った時間ではなかったけれど、それを体調不良といって断ったまではいいけれど、まさか王都から西に3kmほどの狩猟場で鹿を狩っているとは思わなかった。


「な、何をいうか、その日であれば我は体調不良で邸で療養しておったわ。その節は挨拶にも行かず失礼したが、これとそれとは別であろう、王族といえど年長者への礼というものを疎かにしては、他の貴族にも甘く見られるというものだ。」

 まだ強気でいられる彼の厚顔には恐れ入るが、そろそろアイリスと神楽をこの男の視界に入れておくのが不快になってきたので、終わらせてもらおう。

「・・・ハウガン商会ミッテヒェンのひまわり、マー・リェンの半月、ハイネスベルクのヘラジカ、モジュガ商会古代カプラス系の鏡、燭台、磁器類など、ミドガルド古書店、ランドルフの小説「月光」の第一刷、ハイルディンの詩集「枯れ草」の原本、ほか稀稿本多数」


 これらは、セラディアスがここ最近城からくすねて換金したモノの一部だ。

 セラディアスのことだから、絵画や本の名前なんて覚えていないかもしれない、なにせ月光など同じ本を商会から回収したものをもう一度売却しているのだから・・・。

 すでに彼が懇意にしていた商会には彼やその家人が何かを売りにきたら王城に連絡が来る様になっている。

 商会に損失が出ない様に再買取し、罪状を固めている最中だ。

 さすがに商会の名前を言われて何かを察したのか顔を真っ赤にしたり真っ青にしたりしながらセラディアスは

「な、なにを・・・!?」

 などとうめいている。

 そしてなおもつらつらと罪状を読み上げるボクを不愉快に思ったのかこともあろうにすでに王族だと名乗ったボクに対して両手でつかみかかった。


 よけることはたやすい、でもそうはしない。

 エイラにも目で合図し、不要だと伝える。

 そしてその手がボクの首にかかる直前に大きく息を吸った。

「ヒッ!?」

 神楽はそのあまりの所業に小さな悲鳴を上げ。

「王弟閣下がご乱心召された!衛兵!衛兵!姫様の一大事です!!」

 エッラはボクがある程度戦えることを知っているので、すぐに芝居をあわせてくれた。

 そしてすぐさまセラディアスの腕をひねり上げる。

「ギャアアア!!」


 セラディアスが叫び声をあげると同時ボクは首の圧迫感から開放された。

「カっハ!けほけほ・・・。」

 本当こんな腹芸も蓄財もできないのが王城に出入りしているなんて・・・

 すぐに近くにいた衛兵やメイドたちが駆けつけ、衛兵はエッラに無力化されているセラディアスをさらに抑えつけ、メイドたちは神楽やアイリス、ついでにエイラを抱きこんで目隠しをする。

 エッラはセラディアスを衛兵たちに任せるとボクの首の具合を見てくれる。


「アイラ様、首に絞められた後が残っています。すぐに治療室に向かいましょう、気分が悪かったり頭が痛かったりはしませんか!?私がついていながら、手を出させてしまうだなんて!!」

 迫真の演技だね、・・・演技だよね?

 ちょっと不安になるくらいまくし立てるエッラに大丈夫、と手で制止をかける。

 後ろで私を誰だと思っている!とかちょっと無礼な姪孫に教育しただけだ!

 などと喚く声が聞こえるが、セラディアスはそのまま手錠をかけられ衛兵たちに連れて行かれた。


---

「まったく、アイラ様の手練には驚くばかりですが、あまり無茶なことをなさらないでください、あの豚が刃物でも持ち込んでいたらどうするつもりだったんですか!」

 プンプンと聞こえてきそうなくらいボクを心配してくれるエッラに首を冷水の入った皮袋で冷やしてもらいながら少し休んでいる。

 居合わせたメイドたちにアイリスのことは連れて行ってもらい、ボクたちは4人で治療室にきて、常駐している医官にとりあえず大丈夫そうだけど赤くなってるから冷やしておきましょうと現在お休み中。


「そうですよアイラ様、あの場合は手を出そうとしたという事実だけで後は明らかになっている罪状だけでも陛下が対応されたはずです。アイラ様が体を張らなくてもよかったのです。あんな方にアイラ様を触らせてしまうだなんて、アイラ様のお付に推薦してくださったユークリッド様に顔向けできません!」

 エイラからしたらボクが触られただけでも反省案件らしい、そりゃあハグやキスはユーリやごく限られた親しい人以外には遠慮したいけれど、その様子だと握手とか人ごみでの接触とか、あとはダンスとかもだめな感じなのかな?

 だとしたらちょっと過保護かも。


 5分ほど冷やして、そろそろ資料室に向かおうかと医官に皮袋を返したあたりでにわかに治療室の外が騒がしくなった。

「アイラ!無事か!」

 入ってきたのはこの国の最高権力者、好色で有名なあの方・・・。

「お、おじい様!?」

「陛下!?」

 すぐにエイラたちは跪く。


 治療室に飛び込んできたジークはすぐにボクの元に駆け寄ると抱き上げた。

「無事な様だな・・・、セラディアスがそなたを殺そうとしたと聞き気が気でなかったが、おぅおぅかわいそうに小さな首にこんな手形が・・・、ヴェルガが視察で城を空けている間を狙ってこの様な暴挙にでるとは、セラディアスは許しがたい!」

 あぁこれも演技だ・・・とわかる。

 この機にボクがただの政治の道具ではなく寵愛も受けていることを知らしめ、また正直なにをしでかすかわからず目障りなセラディアスに対して苛烈な罰を与えられる様に周囲に印象を与えているんだね。


 どのくらいからが重たい罪といえるかはわからないけれど、お金関係であるとか、イシュタルトの姓を名乗り王家の評判を貶めたなどの大衆にわかりにくい罪状では、衝動的ではあるが小狡いセラディアスが異母弟憎しでの不当な罪科を受けたと主張すれば、信じてしまうものが出るかも知れない。

 しかしそれが幼い無抵抗の姫君を朝の廊下、メイドや衛兵その他大勢の前で難癖付け、さらには首を絞めたという罪科は、どんな理由があろうとも許されない悪であろう。

 その罪科であればたとえば相手が国王のジークであろうと悪人になるだろう。

 無論その人柄を知るものたちは何かの間違いだとも主張するだろうが・・・。


 さて大体の予想通り、この日のうちにセラディアスの邸は強制的に捜査され、いくつかの王城からの盗品やイシュタルトの名で無理矢理召し上げられ表向きはメイド、実質性奴隷にされた女性などが発見された。

 その後セラディアスは処刑されることになり、その家人も多くは罪科を受けることとなった。

 オリヴィアとオルガリオはそのまま離宮に据えおかれることにはなったが、実家というものを失うことになった。

 しかしそれからの二人はむしろ後ろ盾というか足枷がなくなったことで活動を制限されることが無くなり、王家の面々との対話を重ね、絆を少しずつ深めていくことになるのだった。


前作で出してたけどいらない人とか、いても害しかない人なんかを早め早めに減らしていきます。

でも、悪人でも出会いが違えば悪い人じゃなかったり、更生できたりするので、いろいろ変わっていく予定です。


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