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第38話:クラウディアへの道程

 1月2日、日程も差し迫っているためホーリーウッド侯爵家の馬車は5台で連れ立ってホーリーウッド市を旅立った。

 1台目には女性だけで構成された近衛、碧騎兵隊の5名の移動中の宿舎を兼ね、日中は護衛用のキャンプ道具が収められている一番見た目が豪華な馬車。

 2台目にはハンナ、サークラ、トーレス、アニスとメイドとしてトリエラ

 3台目にはギリアム、エミリア、ユーディットにメイドとしてユイ、モーガン

 4台目の馬車にはユークリッド、アイラ、アイリス、カグラ、フィサリス、メイドとしてナディア、エッラが乗車していた。

 5台目は完全な荷馬車である。


 ユークリッドの乳兄であるイサミとユーディットの乳姉であるモーリンとその兄モーリスは留守番である。

 護衛として近衛の騎兵が紅、蒼、黒から3人ずつと碧が5名、それに馬車ごとに2人ずつ御者がついてきていた。


 日程は12日の予定で、14日の午前中には王都クラウディアにつく予定。

 最終日16日の謁見には間に合う予定の旅路。

 ホーリーウッド侯爵家としては馬車の台数が多いだけで例年通りの日程だった。


------

(アイラ視点)

 前日の朝に「例年通り明日から王都に行くけどアイラも強制参加ね」っていわれた時は耳を疑ったが、その日程を聞いてさらに驚いた。

 天気や道の状態にもよるけれど11~13日の日程ということで途中の峻険な地形「悪魔の角笛」に3泊することを折り込んでの馬車の旅、前世では馬車に補助動力がついたりして最後のほうは4泊5日程度が一般的になっていたし、それでなくてもボクやユーリは神楽の飛行盾という反則を使って移動していたので、クラウディア~ホーリーウッド間は本気で急げば日帰りで往復することも可能だった。

 もっといえば、ボク一人なら「跳躍」を使って数十秒で行き来できる、


 なのでこの馬車の旅は非常に退屈で苦痛だった。

 たまに別の馬車に行ったり、夜は街に泊まったりしつつ漸く悪魔の角笛の入り口までたどり着いたけれど

、遊びたい盛りのアニスやユーディットは母親か乳母の腕の中ずっとぐにゃぐにゃと体をよじってウニャウニャと文句を言っている。

 なにせまだ3歳前と1歳半未満の幼い子どもたちだ。

 馬車の中で景色を見るのに飽きてしまえば後は寝るかくらいしかできない。


 イシュタルト王国のことわざに「子どもが欲しけりゃ旅をしろ」なんていう無茶なものがあるのも納得できないことも無い。


 漸くたどり着いたこの「悪魔の角笛」はぱっと見は岩地や山脈が氷河で削られた様な構造にみえるが、実際には魔剣により地形を変化させられているだけのものである。

 しかも悪魔の角笛の東側山脈と、さらに東にある4つの峰が連なる連峰のほうこそ正しく魔剣の地形であり人間が悪魔の角笛と呼んでいる場所の大半は外周部分に過ぎなかった。


 道として使われている谷部分の東側斜面は魔物除けと馬車の離合も可能な広めの道と、宿泊するための野営地点が何箇所か設けられ整備された山道であるが、魔物に襲われることは皆無とはいえ、山の真っ只中で馬車で寝泊りするというのは、かなりストレスを感じることだった。


 さらに・・・

「うぅ・・・おしりが・・・。」

「アイラ、アイリス、大丈夫?」

 馬車のゆれは結構激しく、肉付きの悪いボクとアイリスの臀部は深刻なダメージを受けていた。

 一応フカフカのクッションを敷き、おきているうちは魔法で軽減もしているのだけれど、寝ている時なんかにダメージが蓄積している様で6日目ともなるとそのダメージはそれなりに深刻だった。

 治癒魔法で治してはいるんだけれど、治癒で治っているはずなのに、痛みに慣れてしまったせいで痛みが残る感覚があるのだ。


 うつぶせになっているボクの頭をユーリが、お尻を神楽が撫でてくれている。

 少し恥ずかしいのだけれど、魔法でも治せないものが心で寄り添う相手に撫でられるだけで不思議と痛みが引いて行く気がする。

 隣をみるとアイリスも仰向けでナディアに膝枕され、膝を折った隙間から、エッラにお尻を撫でられている。

 アイリスは特に恥ずかしがる様子も無く「ふぇー」などと息を吐きながらおとなしく尻を撫でられている。

 緩みきった表情が無垢でかわいい。


 角笛の野営地でもボクたちは馬車の中で寝ることができる。

 御者は荷馬車の中で寝る。

 近衛たちは持ち回りで夜の番をして、それぞれテントと馬車で交代で寝る。

 この夜の間はさすがにメイドとはいえ、婚姻や親戚関係に無い男女を一緒に寝かせるわけには行かず。

 馬車の通常組み分けからアイリスとトリエラを交換、ユーリは両親とユディの馬車に行き、ユイとモーガンはやや広い碧騎の馬車に移る。


 この3日の馬車での寝泊りについてはボクはどの馬車でもいいよといわれたので今夜は神楽の馬車を選んだ。

 順番に明日はユーリたちの馬車に、明後日はウェリントン一家の馬車で寝る予定。


 馬車の中は割りと狭くて、ボクと神楽、フィサリス、ナディア、エッラ、トリエラ6人も寝ると割とぎうぎうだ。

 トリエラは10歳としては大きいものの全員が比較的小柄な女児であるため何とかなっている。

 そしてボクは漸く女児と言える年齢となったものの体格的には未だ幼女並みのため神楽と同じ布団で寝ている。

 狭い馬車内では二人一組で布団を使ったほうがかえってのびのびと眠れるのだ。


 再会してからこっち、神楽のスキンシップは徐々に過激を極めるものになってきている。

 なんというか・・・おそらく彼女が暁であったボクにして欲しかったことを、アイラボク相手に発散している節がある。


 要は手を握る、なでなで、ハグ、キス以上のボディタッチ、神楽はボクにいつも「もっと触って欲しい」そして「もっと触らせて欲しい」と常に請うていた。

 そしてボクは年齢と、正式な夫婦に至っていないことを理由に、男女の交わりに類することを先送りにし続けていた。

 それは神楽を大事に思っているからだよといい続けていたが、心を通わせた相手とその関係に至ることがどれだけ幸せであるかも、今のボクは前の周のアイラの時に知ってしまっている。


 だから神楽に体をいい様にされることに抗うことはできなかった。

 といってもそこは神楽も、6歳になったばかりのボクの体のこともちゃんと考慮してくれて、キスしながらの軽く腹や腰を擦る程度のものだけれど・・・。

 それでも10歳と6歳の子どものする接触としてはかなり過激なもので、体力に劣るボクは最後にはいつも息も絶え絶えになって荒い息を吐くボクのことを最後には優しく抱いて、眠りにつくのだ。

 しかもときにはユーリと二人掛りで・・・

 今夜は横にメイドもいるので一緒に寝ただけだった。


 角笛を通ると聴いた時、バフォメットがいるであろう角笛のダンジョン・・・というか台座のある場所まで行こうかとも思ったけれど、なんとなくバフォメットはすべての魔剣を集めてから行ったほうがいいだろうという気がして止めた。

 大陸に7本あるはずの魔剣のうち手元には現在カメ島の斧の魔剣のみがある。

 魔剣は帝国では神器、ナタリィたちは鍵と呼んでいる代物。

 7本集めることでどうやら真の姿を現すらしいが、前世ではそれらしいことは無かった。


 6本目まで集めたらバフォメットかナタリィに心当たりが無いか聞いてみようと思う。


---


 野営でも、もちろん道中の町に宿泊してもさしたる問題も無いまま、道中二回小規模な魔物の群れに遭遇はしたものの、予定通り14日の午前中に、クラウディアに到着した。

 この都市の威容は前世で始めて見た頃といささかも変わるところ無く。

 一辺約20kmに及ぶ城壁に囲まれたほぼ正方形の巨大都市、さらに内側にも一辺6kmほどの城壁に囲まれた内クラウディアと呼ばれる土地があり、そちらに近衛軍の設備や軍官学校、王城など古くからの設備がある。


「わぁーすっごいね!アイラ!アレ見て!あそこにいるだけで、ウェリントンよりたくさん人がいるよ!」

 興奮気味に南門に並ぶ人たちを見るアイリス。

 年始だからか確かに人が多い、とはいえ、東西南北の4大門にほかに小さな入り口が数箇所あるというのに、南だけでこの人数か・・・とボクはため息をついた。

 今回ボクたちは角笛ルートを通ったので、クラウディアの南門から街に入る。

 並ぶ人たちは多いけれど、ボクたち一行はこの国では上から数えたほうが早い大家であるのでこういうときには裏口というか、関係者しか使えない道を使って入場する。


「そうだねアイリス、人も多いし・・・ほらあそこ、トリエラの仲間がいるよ」

「ほんとだ。お耳ピコピコだ。」

 順番待ちの列に壮年男性でスキンヘッドに丸っこい耳がついている男性が居た。

 奥さん?と小さい男の子を連れている。

 ほかにもチラホラ獣人系の者が見える。


 母たちの乗った馬車ではきっとトリエラが仲間たちの姿を、ズロースをチラリとさせつつ尻尾をフリフリ見ていることだろう。

 目のやり場に困るトーレスの姿が目に浮かぶ様だ。


 ホーリーウッド家の馬車は5台並んで関係者入り口からクラウディアに入り、そこからさらに1時間ほどかけて内クラウディアに入り。

 さらに10分弱、前世でも長い時間を過ごしたホーリーウッド家の内クラウディア別邸にたどり着いた。


 前世ではここで4人のメイドたちアリーシャ、アリエス、エリナ、エイラと出会って、その後長い付き合いとなった。

 エイラにいたってはそのままホーリーウッドに骨を埋めるまで付き合ってくれた。

 エイラの父がジークだったとわかった時には、おどろいたものだけれど・・・。


 今日の別邸には見たことのないメイドが6人いて、フローリアン様からの依頼で年末から邸の整備をしてくれていたという。

 そんな彼女らに迎えられて、人生二度目の長旅を終えた。

 いや、家に帰るまでが旅だとしたら漸く半分というべきなのか・・・2月前には返れると思っていたのにまさかホーリーウッドに帰るのに、あんなに時間がかかることになるなんて、この頃のボクは考えていなかったんだ。



GW中は普段どおり書きあがり次第投稿してのペースアップを図るべきなのか、書きだめをするべきなのかちょっと迷うところであります。


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