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第183話:痛みと役目

 ドスっという衝撃と共に脇腹に刺さる鈍い痛みにアイラはバランスを崩した。

 彼女は突然の襲撃に抗うこともできず。

 ただ一歩前へ右足を踏み出して踏ん張り、辛うじて耐えると、振り返りその襲撃者の正体を見やった。


------

(アイラ視点)

 痛みを感じるのはいつ以来だろうか?

 無論人としての生活の中で日常的に発生する生理的痛みを感じることや、寝ぼけたり不注意で肘や足の小指を壁や柱なんかに当ててしまい悶絶しそうになることは希にあるけれど、他人から痛みを与えられるのは・・・、そうだね東方事変の折、留守番をさせてしまったアイリスから『歓迎』された時以来だろうか?

 軍官学校の訓練でもボクは一度も痛みらしい痛みを受けなかったというのに、こんな遠く離れた異国の地で、一体何をやっているのか・・・。


 でも、倒れる訳にはいかない。

 今倒れてしまえばすぐ後ろに居るヒビキを不安にさせたり、泣かせたりしてしまうかもしれない。

 ボクはなんとか、一歩よろけたところで踏ん張る。

 突き刺さった衝撃は瞬間的なもので、すでにボクの体から離れている。

 しかしすでにその両腕がボクの腰に回っていて、ボクを逃がすまいとガッチリと掴んでいる。


「ヒビキ、いきなり飛びついたら危ないよ?」

 実際痛かった。

 食事の直後なら吐いていたかもしれない。

 とは言え、この可愛い犯人さんを不安にさせたくはないので、痛かったということは態度に出してはいけないね。

 ボクはなるだけ穏やかな態度を崩さずにヒビキのおでこを撫でた。

「あーまぁーГ」

 彼女は気持ち良さそうに目を細めて、ボクの手に片手を重ねる。

 片手分の拘束が緩む。


「ごめんなさいアイラさん、まさかあんなに勢いよく飛びつくとは思わなくって」

「ごめんねアイラ、大丈夫だった?」

 少しだけ遅れて、神楽とユーリもヒビキに追いついてくる。

「まぁなんとか」

 実際仕方ないことだ。

 ボクもまさかヒビキがこんなに勢いよく突っ込んでくるなんて思わなかった。

 脇腹に衝撃を感じた時は、ボクやメイド達に殺気を感じさせない手練の暗殺者の存在を疑ったくらいだ。

 実際ボクのすぐ近くにいたエイラとナディアも見逃している訳だしね。

 飛びついてくる、抱き着いてくるというのは想像の範疇で、ただ勢いが強すぎたのだ。


 しかしヒビキがボクの方に飛びついてきた理由も大体察しがつく。

 なにせ彼女はミカドから解き放たれた時、途中にいたエッラやボクに見向きもせず神楽に抱きつきにいったほど神楽に懐いている。

 そんな彼女が、すぐ近くにいた神楽ではなくボク飛びついたというのだから、理由は多分一つしかないだろう。


「ヒビキお腹がすいたの?」

 まだ今は幾分か機嫌良さそうに見える彼女だが、それはボクから食べ物をもらえると思っているからだろう。

 神楽が居るのに彼女がボクを選ぶ可能性は、食べ物くらいしか想像できないのだ。

「(最初に食べ物を渡したのはボクだものね)」

 いつ機嫌が悪くなるかもわからないので、取り急ぎ小さな食べ物で確かめてみることにする。

 子どもの機嫌は山の天気の様にコロコロと変わるので、不安要素は少ない方が良い。


 とりあえず焼しめた小さなビスケットを一つ取り出す。

 さいころ状に切り干したリンゴを練り込んで焼き上げたもので、リンゴだけでも元のリンゴよりも甘くなっている。

 しかしながら若干固めでヒビキの様に乳歯しか生えていない子では噛んで食べるよりもしゃぶって食べるのに適したモノに仕上がっている。


 時間経過がないか認識出来ないほど遅いとされる勇者の空間魔法収納で保存食を保管しているのは無駄に思えるかも知れないが、魔導籠手や暁天は何か事故で手元にない可能性があるのに対して、ボク自身に備わっている空間魔法収納なら確実に手元にある。

 食べさせた分は後で補充しないとだね。


 ヒビキはビスケットをその小さな手で受けとると嬉しそうに笑顔で神楽の隣へ戻る。

 現金な反応だけど、フラフラと揺れるお尻が可愛らしくて腹もたたない。

 その後ろ姿を見送りながら、職務が発生するタイミングを察知してか、神楽の側に移動してきた少女に声をかける。

「さて、いよいよ・・・というほど待たせてはいないけれどメグの出番かな?」

「はい、カグラ様にお許し頂けるならば、お役目を果たさせて頂きたいと思います」


 小柄過ぎるフィーよりも更に少し小さい位の矮躯にも拘らず種族的特徴からその胸の大きさはフィーを上回る。

 そしてボクやエイラどころかアニスと変わらない位に幼く見える顔立ち、それはまだ11歳なのだから年相応だろう。

 そして頭にはグ族系の子どもらしいちょこんとした小さな角が生えている。

 彼女はヒビキの乳母役としてミカドから手配された。

 後はヒビキがその乳の味を厭うことがなければ、今後同行者となる。


「はい、メグさんのことを歓迎します。私たちだけではヒビキちゃんをちゃんと育ててあげられないかもしれないですから、メグさんの力を貸してください」

 神楽の言葉に何故か顔を赤くするメグ、照れてうつむき気味になりながら、神楽に差し出された手を握り、はいと頷いた。

 そういえば神楽はセントール人側からすればほとんど理想的な美少女なのだったか、多分メグは神楽に見惚れてしまったのだろう。


「ぅうー、ぅー」

 しかしここで不機嫌な声を出すものがいる。

 見れば当然の様にヒビキで、彼女はビスケットを手にしたまま神楽のお尻の辺りの布を逆の手で掴み、泣きそうな顔でボクを見つめていた。

 お口の方はすでに涙が溢れている。

「あ、ヒビキ、どうぞ召し上がれ、少し固いからゆっくりしゃぶりながら食べてね?」

 どうぞ、の辺りでビスケットを口許に運ぶヒビキ。

 律儀に待っていた様だ。

 子どもぽく奔放に振る舞っていたかと思えば、時折躾けられたモノが見え隠れする。

 すぐにどうぞと言わなかったことに少し申し訳ない気持ちになる。


 ボクの言葉を理解しているのかいないのか、まずはビスケットに噛みつき、歯が立たないとわかるとおしゃぶりに移行したヒビキは、眠たいのかなにも考えていないだけなのかわからない不思議な表情でビスケットをしゃぶり、唾液で解れた破片をモギュモギュと咀嚼する。

 夢中な様子からビスケットの味に過不足ないことは伝わってくる。

 それを確認した上で神楽とメグの方へ視線を戻す。


「こんなビスケット1個じゃあ、この年頃の子は満たされないだろうし、メグの働きにボクも期待してるよ?」

 ビスケットに夢中なヒビキを見つめて緊張した表情を浮かべるメグに更なるプレッシャーをかけかねない言葉を口にする。

 いじめるつもりではないので、頼りにしていることもちゃんと伝える。

「ボクたちはセントール族のことに詳しくないから、お世話した事があるというメグの経験を頼りにしているよ?」

 手を握りながら微笑みかけると、メグはまたも頬を赤くした。


 単に照れ屋だっただけなのかな?

「はい、ミカドのそしてアイラ様、カグラ様の期待に応えられる様、粉角砕心の構えです」

「(粉骨砕身の覚悟の様な意味かな?牛系獣人独特の言い回しだろうか?)無理はしなくて良いからね?ミカドのご厚意に報いる意味でも、ボクは君を不幸にしたくない、要望があったら教えてね」

 ボクの言葉に彼女は何か驚くがことがあったのか目を見開いて、それから

「では早々で申し訳ないのですが・・・」

 と声を少し小さくしながらボクの耳に口を近づける。


「ボソボソボソボソ(ここでは恥ずかしいので、お乳をやるのは救護室でもよろしいでしょうか?)」

 伝え終わると彼女は更に赤くなってしまった。

 周りを見てみる。


 比較的高い壁に囲われて、人の出入りも多くない宮城の一角とは言え、ここは屋外。

 お役目とは言え、はじめての授乳が屋外というのは11才の少女には酷というものだろう。

 その上ユーリとシンチョウ氏という殿方の目もある。


「もちろん、座ってやれる方が良さそうだしね、場所は近いのかな?」

「はい、あちらです」

 彼女が指差したのは右手側の壁の一ヶ所、確かに引戸らしいものが見える。

 ここで訓練中にケガした時専用の救護室なのだろう。

「ユーリ、エッラ、ボクたちはヒビキにおやつをあげてくるから、一旦はずすね?」


「うん、僕はこっちで待ってるね」

 ユーリも空気を読み、エッラはもちろん、ナディアやユナ先輩もこちらに残り、ボク、カグラ、ナタリィ、エイラがヒビキ、メグ、ノアと共に救護室に向かうことになった。


「ヒビキ様、あちらのお部屋で食べましょうね?」

 と、メグがヒビキを連れて行こうとすると

 ヒビキはビスケットをとられると思ったのか神楽に半ば隠れながらイヤイヤと首をふる。

 神楽はそんなヒビキがかわいくてたまらないと、フニャフニャ顔をして

「ヒビキちゃん、あっちで座って食べよ?」

 と呼び掛けると、ヒビキはおぅと元気よく返事して、その場に座り込んでしまった。

 座って食べる様に言われたと勘違いした様だ。


 そして両手でビスケットをしっかりつかんでモグモグとする。

 そろそろ喉も乾いてきた頃だろう。

「ヒビキ、あっちのお部屋でミルクが貰えるって、ミルク分かるかな?」

「みぅく?」

 ボクが呼び掛けるとヒビキは首を傾げながらおうむ返しにする。

 その表情があまりにも可愛らしくて、今すぐ跳躍で王都屋敷に連れ帰ってアニス、ピオニーと並べて寝かしつけたい衝動に駆られるけど、なんとか我慢する。


「喉乾いてるでしょ?汗も少しかいてるし」

 と、ハンカチを一枚取り出して、わずかに湿ったおでこを拭ってやる。

 座り込んだまま、ビスケットをしゃぶるヒビキはまるでリスか何かみたいで可愛いね、もっと見てたいけれど・・・いや焦らなくても良いか、どうせ食べ終わったら喉もカラカラだろうし、それから救護室でも遅くはないよね?


 案の定と言うべきか、それから2分程して、明らかにビスケットをモグモグするペースの落ちていたヒビキはなんとかビスケットを食べ終わると立ち上がる。

 それからボクと神楽の間位に歩いて来ると、今にも泣きそうな表情を浮かべながら

「たーたぁ・・・あーらぁ・・・」

 と言いながら順に神楽、ボクへと縋りついた。

 ひょっとしてボクの名前を呼んでくれたの?

 可愛らしくて胸の辺りがキュンとする。

 身について久しい母性が大いに刺激される。

「もうボクの名前も覚えてくれたんだねー、賢いねー」

 リュウやスノウ、ポーラの名前はボクが付けた後すぐに憶えていた様だったのでちょっと悔しかったんだよね。

 頭をナデナデするけれど、しかしその表情は笑顔にはならない。


 哀願する様な瞳、求めているのは水分、頃合いかな?

 コケることはほぼないし、両手にモノを持たせても大丈夫だろう。

「ヒビキ、お飲み物あげようね?」

 ボクは手に木のコップを取り出すとヒビキに見せびらかす。

 するとヒビキは泣き顔ではなくなってコップに注視する。


 それからボクはちょっとわざとらしいかなと思いながら周りをきょろきょろと見まわして

「ここにはテーブルも座れるところもないね、あっちに行こうか?」

 と空いている手をヒビキに差し出す。

 正しく伝わっているのか、ヒビキはボクの手を取ってくれた。

 ボクは神楽とアイコンタクトを取ってから、救護室に移動した。


---

 救護室は40cmほど上がった板張りの床にいくつかの竹で編まれた行李こうりが置かれている。

 おそらくは負傷者を横たえる布団でも入っているのだろう。

 他にも引き出しの付いた机や棚があって棚には包帯や薬、切開用の刃物なんかが入っているらしい。

 ノアが座布団を出してくれてエイラと一緒になって床に置いていく。

 メグがヒビキに履かせている特殊な靴を脱がせてくれて、ボクが両脇をかかえて床の上にヒビキを持ち上げる。

 この床の高さでは、ヒビキは一人で上がれないし降りられない。

 ある意味安全な部屋だ。


 メグは座布団に座ると早速とばかり脇の下に空いた隙間から左乳房をまろびだした。

 若く張りのある肌、その先端の薄い紅色の部位と変わらない位に頬を紅くしてメグはふぅと息を吐く。

「少し待って」

 間髪入れずに、エイラがメグの傍らに座ると、洗面器とアイロンバー、結露の柄杓を魔導籠手から取り出してお湯を用意する。

 飲み物だと思ったのかヒビキが洗面器に向かおうとするのを手を繋いで抑える。

 お湯の温度を確かめたエイラはタオル(バラトと呼ばれる、ダイバーラットと言う魔物の毛皮を加工した物)を湯で絞るとメグの左乳房を拭う。


「く、くすぐったいです」

「ごめんね、でも汗もかいてるしだろうし」

 ボクたちと合流する前に結構親しくなっていたのだろうか?

 なんとなく距離感が近い気がする。


「もうよいでしょう」

 ひとしきり拭った後、最後に僅かに乳首に乳汁が浮いたのを確認して、タオルを残して片付けるエイラ

「ヒビキ様、ど、どうぞ」

 そして左胸を出したまま真っ赤な顔で両腕を開きヒビキを待つメグ

 しかしヒビキは洗面器を片付けたエイラと洗面器のあった辺りとを見つめてベソをかいていた。

 よほど飲みたかったらしい。

 洗面器に注がれた水が、飲用水に思えるほど乾いているのだ。


 乳房を晒しているのに見向きもしてもらえないメグは徐々にしょんぼりとして、長めなお耳もシュンと力なく垂れる。

「ヒビキちゃん、たーたのお膝においで」

 見かねた神楽がメグの隣に座り誘うと、ようやくヒビキの視線は洗面器なあった所より少し上のメグの乳房に向けられた。

「チッ?」

 聞き様によっては舌打ちの様な声を上げながらヒビキは神楽の膝に上半身を預けて床と座布団の境目に座り込んだ。


 神楽に体を預けながらも、視線はメグの乳房を見ており、興味を持っている事がわかる。

 だけど同じ乳房ならば神楽のモノを欲しているのか、ヒビキの右手は神楽の胸元の方へ伸ばされる。

「にゃ!?ヒビキちゃん?」

 服の上から触られるとは思わなかったのか神楽は狼狽え声をあげるけれど、だからといってヒビキのお触りを拒否することはなく受け入れている。

 ボクだって日中人前で触ったことのない神楽の、豊かに育ちつつあるその部位。

 神楽はマジカレイドシステムデネボラを用いてブラジャーもつけているので、小さなヒビキの掌の力ではほとんど形を歪めることはなく、掌の重なった所だけが僅かに沈む。


「たーたぁあーっま?」

 神楽じゃだめなの?と聴いているのだろうか?

 神楽はちょっと困った表情を浮かべるとヒビキの頭を撫でで、それからヒビキの手を持ち上げるとメグの左乳房に重ねさせた。

「ごめんね、私じゃあ出ないから・・・、メグお姉ちゃんが、おっぱい飲んでも良いよって、飲んでみる?」

 神楽の問いかけにヒビキはきょとんとした表情のままで、神楽の胸をトントンと叩く。

 そっちが良い、と言っている様だ。


 とは言え、神楽は種族的にも生理的にも今は授乳が可能な状態ではない。

 最初から選ばせてやることなどできない、というのに神楽はおもむろにデネボラを起動させると、その変身(着替え)を解除した。

 魔法力で編み上げられた服が光になって消失すると、変身前に身に付けていたサテュロス風の普段着ワンピース姿の神楽が姿を現した。

 もちろん胸は隠れているけれど、ブラは無くなった。

 服の上からでも柔らかさでそれが分かるのだろうヒビキは神楽の胸を叩くのをやめて、フカフカとゆっくり掌を当てて沈める。

 ヒビキの手の動きに合わせて形を歪めるのを見て、それはあきらのものだ!と嫉妬心の様なものが首をもたげるけれど、何を幼子おさなご相手に、と冷静になる自分もいる。


「それでもヒビキちゃんがそうしたいなら、ちょっとだけ・・・」

 それは神楽がワンピースの肩部分をずらして右胸をはだけても変わらなかった。

 神楽は少しだけボクの方を見て逡巡する様子を見せたけれど、ヒビキに視線を戻すと右を軽く寄せて強調する。

 ヒビキは大好きな神楽の白く眩しい肌に目を見開くと、手をのせたままじっと見つめる。

 こんな時でもかつての躾の成果なのだろう、興味津津の様子を見せながらも神楽の許可を待っている。


「いいよ?」

 神楽がそういうと、ヒビキは上体を精一杯伸ばし神楽に抱き着く様に、その乳房を口に含んだ。

「んっ・・・・!」

 少なくともこの世界に来てからは、ボク以外には触られたことがない神楽の露わになったその部位がヒビキによって隠されると、神楽は少し艶っぽい声をあげた。

 刺激が強いのだろう。

 言うまでもなくヒビキの口の中は今渇いているし、ビスケットの残滓だってあるだろう。

 ヒビキの飛びつき様からしてその勢いだってそれなりに強いはずだ。


 神楽は何度か声を出したものの、ヒビキを引きはがすことなく。

 彼女が納得するまでその上体の背中をさすってやりながら、求められるままに乳房を差し出し続けた。

 やがて、そこから何も出ないことを理解できたのか、ヒビキは神楽の胸元から口を離すと、もう一度手をのせて、小さくその胸を揉みしだいた。

「あぁ!」

 そこでようやく神楽は少し大きな声を出した。

 痛かったのだろうか、と不安になって少し近づくと神楽はボクに目を合わせて

「どうしましょうアイラさん」

 と不安そうな目をする。

「どうしたのカグラ?」

 なにか、痛くなったとかだろうか?

 彼女もまだ少女の年頃、多感で不安定な時期なのだから、こんな慣れないことをやって不安に駆られることもあるだろう。

 だからボクは努めて優しく笑いかけた。


「拭かないでおっぱいに口をつけさせてしまいました」

 その方向性は意外だったけれど、確かにせっかくエイラがメグの汗を拭ってくれたというのに、神楽がそれをする前に乳房を含ませてしまえば、衛生的ではなかったかもしれない。

 とは言え、ヒビキは多少の指吸いもある。

 それに授乳前に汗を拭くのも念の為というのと、実際に乳の出る女性の場合は、赤ちゃんより先に刺激を与えて乳を少し出して赤ちゃんの食いつきをよくするという目的もあるので、大きな問題にはならないだろうと思う。


「大丈夫だよカグラ、心配しないで良いから」

 ボクはそのまま神楽の隣まで行くと不安そうにする彼女の頭を撫でてやる。

 するとヒビキもマネをして、一生懸命に手を伸ばして神楽の頬をぺたぺた触る。

 喉が渇いて泣きそうだったのに、優しい子だね。

 

「ヒビキ、ごめんねカグラはおっぱい出してあげられないから、メグのおっぱい貰おうね?」

 ボクは神楽の胸に収納から出した蒸しタオルを被せながらヒビキの視線をメグの乳房に誘導する。

 すると今度はヒビキにもメグの乳汁が見えたのだろう。

 先ほどよりも興味深そうにメグの乳房を見やる。

 そして彼女は許可を待つ様に神楽の顔と、メグの乳房とを行ったり来たり視線をさまよわせた。


 神楽とメグは視線を合わせて頷き合うと

「いいよ」

「どうぞ」

 と、ヒビキに声をかけて、ヒビキは神楽の膝に体重の一部を預けたままでメグの乳房に左手を添え口をつけた。

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