表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
204/220

第171話:いつまで御前会議だと錯覚していた?

(アイラ視点)

 ミカドの奏者の一人、マディンから発せられたその一言は、ボクたちに十分な衝撃を与えた。

 セントール大陸ではミカドとよばれる騎士王の末裔とされる家が一定の権威を持っており、その権威により7人のダイミョウと多くのシュゴ職を任命して治めさせる封建制度を取っている。

 とナタリィからは聴いていたのだけれど


「ミカドに当代先代といった交代は存在しない。ミカドは、アハトバインの討伐以前からご健在で在らせられる」

 そうマディンは告げたのだ。

 そしてその言葉に驚いたのはどうやらボク達だけみたいで、サテュロス側の人たちはそう驚いた様子を見せて居らず。

 ただ女性たちに囲まれて余裕のないロックだけが噛み付いていた。


「そんなことはセントールに住む者なら誰でも知っておるわ!神話の時代よりセントールに君臨せしミカドは騎士王の末裔であり、死ぬことはないなどという御伽噺はな、しかしそれはあくまで、ミカドの権威を高める為の方便であろうが」

 なるほど・・・と、納得する。

 王家や宗教指導者が神の末裔だったり、その眷属であったり、あるいは王権を与えたのは神であるといった信仰と王権の結びつき、あるいは王権を持つ者がその権威の維持のために、意図して信仰と結びつけるというのは、ボクの知る地球の歴史でもたびたび行われてきたことだ。

 ボクだってあきらのまま、この世界に存在する神秘を何も知らないままであったなら、ミカドはそういう風にして権威を保っている・・・そう結論付けることを不自然に感じることはなかったはずだ。


 とはいえ、今のボクは神話的、あるいは伝説的存在との接触持ってしまっている。

 魔剣や鍵と呼んでいる地形を変えるほどの力を持った武具の数々やそれらが収められていた遺跡、そして、まるで現在のセントール大陸情勢のことを初めから予知していたかの様な『箱』の存在。

 それにバフォメット、周回者でもあった彼はいったい何千年の間あの廃墟化した玉座に座っていたのだろうか?

 そういう途轍もない存在が実在していることをすでにボクたちは認識してしまっている以上、ミカドのことも権威のための御伽話とは断定できない。

 そして、そんなボクの逡巡を余所にロックとマディンの攻撃的な言葉のやり取りは続く。


「その様にミカドの神性を疑うこと自体、ミカドへの不敬である。そしてそれこそがサンキの背信の証でもある。今ここにいる諸ダイミョウ、シュゴ家の者たちはその様な疑念は持たぬし、仮に持っても口には出さない、そもそも心構えが違うのだ」

 と、マディン氏は周囲に目を配りながらロックとサンキ家を責める。

 それに対して、ロックはまた論旨をずらそうとし始める。

「これは異な事、仮にここにいる女たちがミカドへの敬意を持っているというならば、このミカドの御前で何ゆえ斯様な乱暴な振る舞いができるのですかな?」

 と、周りの女性たちを見回す。

 確かに、御前会議という場で、ゲストにすぎないボクの言葉に同調して立ち上がり手に棒なんかを持って使者の一人を取り囲むというのは些か乱暴に過ぎるかもしれない、とはいえそれも御前会議という場で幾度にも渡って女性やミカドへの無礼や侮辱を繰り返した男の口から出てしまえば空々しいばかりだ。

 そして、その前提は実はすでに崩れてしまっている。


 それをロックに説明してくれたのは、マディン以外で最初にロックに風が如き疾さを見せ付けた女性ダイミョウだ。

「おや、使者殿は未だ御前会議の最中だと思っていたのか?」

 ひざの上にトリシア姫の頭を載せ、その猫耳を指でこちょこちょとなぞっている。

 トリシア姫は気持ちよさそうに時々体と尻尾をピクピクとさせて、ニャ、ニャと声を上げている。

 うん、ミカドへの忠誠心の強いケイコ女史がミカドの御前でこんな気を抜いた戯れをはじめるわけがないよね。

 しかしそんなことにもロックは気づかないらしい。

「な、何を言っている、現にミカドの御前で話合いを行っているのだろうが!」

 すでにダイミョウ相手への敬意もない様だけれど、本当に勢いで喋る使者だね、絶対向いてない、これならまだうちのピオニーの方が上手に『おつかい』できる。

 ピオニーはお手紙やご本を読むのが上手だからね。


「使者殿こそ何を言っているのか、先ほどミカドなら退席されたではないか、使者殿の無礼な態度のために御前会議はすでに終わっているのだぞ?」

 そう、ミカドはさっきボクに証拠物の提示を求めた後少しの間、御簾の向こうでストレッチしたりしていたけれど、やがて奥へ消えてしまった。

 もうよい、話し合いは終わりだという宣言通り、あの瞬間にサンキの訴えに関する御前会議は終了しているのだ。


「な!?」

 と愕然とした様子で御簾の向こうを見るロック。

 その向こうにすでにミカドの影はない。

 そしてそんなロックのことを心から蔑む様な視線で見たマディン氏は、重々しい口調で沙汰の続きを述べ始める。

「すでにミカドからサンキへの沙汰は決まっている。サンキ家使者、ロック・ベーコンの誠意なき対応もあり、ミカドはサンキへの信頼も興味も完全に喪われた。本日を持ってサンキ家のダイミョウ認可を取り消し、ダイミョウ鎧ダイサンキと、その他サンキ家が奪い取り保有している6領のシュゴ鎧に関して3週間以内の返納を命ずる。また、領土に関しては後ほど詳しく説明するが、北西側の1/10をニコ家に、南東側の1/5をヴォーダ家に割譲するものとし、残りの約7割については一時的に新たなダイミョウ家を立てて統治する予定であるため、サンキは領地の資料を整えた上で退去することを命じる。とはいえ、いきなり追い出してもいくあてがないであろうからな、居城の引渡しまで城内に留まることを許す。ただし、軍は町ごとの防衛隊を残し解散、兵士たちにはサンキの蓄えから3ヶ月分程度の給金を支給することを命じる。これらが果たされない場合はサンキ家は討伐の対象となる。以上だ。」

 うん、長い沙汰だったけれど言っていることは単純だ。

『サンキ家解散しろ』

 かなり厳しい沙汰だ。


 当然ロックは食い下がろうとするけれど

「おい貴様!それは本当にミカドのご意思なのか!?おい奏者!貴様の独断ではないのか!!ふざけるな!一体サンキが何百年中央に尽くしてきたと・・・・」

「黙れ!!ミカドの数千年の取り組みを一部とはいえ、家が興って僅か数百年の間に水泡に帰しよって!それと貴様今の沙汰は聴いていたか?貴様はすでにダイミョウ家の使者ではないのだ。貴様の仕えているただの土豪チョウケイ・サンキの元へこの沙汰を持ち帰るのが小者である貴様の仕事だ!交渉など貴様程度の小者に勤まる仕事ではあるまいよ!さっさと帰りたまえ!!」

 と、マディン氏に被せられて、気迫負けしたロックの言葉は聞こえなくなる。

 しかし、マディン氏の言葉が終わるとすぐに、無駄に回るロックの口は言葉をつむぎだす。


「小者だと!?このサンキ六将聖のロック・ベーコンに向かって小者といったかこの奏者風情が!」

 すでにサンキ家がダイミョウ家ではなくなったと伝えられたのに、まだそんな肩書きに固執するのは、状況を理解できていないのか?

 それともこれもまだミカド、中央側のパフォーマンスだと思っているの?

 それにしても六将聖ってやたら偉そうな肩書きだよね、将の字とったら六聖だし、君みたいな神がかって頭の残念なのがサンキにはあと5人もいるってことなのかな?


「もうサンキはダイミョウ家ではないと言った!ここにいる諸ダイミョウ、シュゴ家のものたちが各家々には伝えるだろう。少なくともチョウビ、イセイ、ニコ、ヴォーダ、ジアイ、ニカワ、シコク、シーマにはサンキがダイミョウではなくなったと伝わるな」

「それにうちの傘下同盟であるナガン、ソンコウ、ニコ家の傘下であるノコ、モーリー、ウキ、イセイと対バンドウで同盟関係にあるミサト、ショタにはすぐに話が行くだろうな、バンドウも最近ダーテ周りのことでイセイと距離を縮めつつあるから、そちらにも伝わるかもしれないが・・・さて、早くご主人様に伝えてあげなくていいのか?」

 物分りの悪いロックに僅かに苛立つ様子を見せるマディンと、彼の言葉に補足してケイコ女史が前を向いたまま、トリシア姫の耳を撫でながら、はっきりと通る声でつぶやく。


「ぬ、ぐぐ・・・ミカド!ミカド!!」

 と、ロックはうろたえた様子でミカドの名前を叫ぶが、御簾の向こうにミカドの姿は戻らない。

 仮にミカドの姿があったとてもうこの沙汰は覆らないだろうが、それにしてもこの男はなんと言って、主君にダイミョウ認可の取り消しを伝えるのだろうかね?

 しかもその原因のひとつに自身の態度の悪さが数えられているだなんて、ボクなら耐えられないな。

 無様な男だ。


「あゃぁー、たーた!!」

 ボクもきっと他のみんなもロックの声に応える声なんてないと思っていたのに、そのとき入り口側、つまりミカドの居た御簾とは逆の方から、幼い声が応えた。

 御前会議ではなくなってしまったとはいえ、あまりに場違いな声にみんなが入り口のほうを見る。

 するとそこには声から予想できた通り、控え室で寝かしつけたはずのエコーが居た。

 知らない黒髪の女性・・・いや女の子に、手を引かれている。

 見ればその背後にはエコーと一緒に控え室に残してきたはずのユナ先輩とナディアも少し申し訳なさそうに控えている。


「よいぞ、他の者に当たらぬ様にな」

 女の子は、エコーが神楽を見つけて、そちらに進もうとすると優しげに声をかけ自然と手を離した。

 まだ若い少女の声で、でもどこか聞き覚えがある声、そして見覚えのある姿をしている。

 解き放たれたエコーは、いつもの様によろけて見える足取りで、危なげなく神楽のほうへと歩いていく。

 本当によくなついてるよね、途中ずっと近い所にも見覚えのあるボクやエッラなんかもいるのに、神楽の方へ一直線だ。


「世も末だな!この様な場にガキまで迷い込んでくるとは!!」

 この機にまたも議題のすり替えを図ったのは元ダイミョウ家の使者だった男だ。

 女衆に囲まれていなければエコーに危害を加えていたのではないかと思えるほどの悪態、ミカドが代替わりをしていると考えているならばその係累だとは考えないのだろうか?

 まぁ何を言った所で、もう今更なにかが覆ることはないと思うけれどね。

 とはいえ実際こんなところに女の子が勝手に入ってきて、それも会議場の中に2歳前の幼女を投入するなんて誰が予想しただろうか、誰もが身動き取れないでいるなか、心臓に毛の生えている元使者の男はボクの方へ振り向いて黒髪の女の子を睨みつけると強気な態度をとる。


「この様に感情で動くのが女の本性よ、宮城にいる以上ここがミカドとの御前会議で使われる場所であると知らんはずはあるまい、こんなところにあんなガキまで連れてくるとは教育のなっていない小娘よな!」

 と、その女の子を責める。

 大の男が10歳くらいの女の子にそんな態度をとるなんて情けない、女の子は普通なら怯えてしまうところだろう。

 しかし女の子は僅かに眉をしかめただけだった。

 そして、不快そうな表情を隠そうともせず少年とも少女とも取れる先ほどより僅かに低い声で、大変に聞き覚えのある中性的な声で・・・

「あぁ無論知っているともよ、ただのロック・ベーコン、まだ使者のつもりでいるのか?ここには招かれていないただの民間人は入れないのだぞ?」

 と、ロックの顔を見返した。


 ミカドの声だ。

 つまりこの10歳そこそこに見える黒髪の女の子が、数千年を生きているとされるミカドその人なのか?

 驚きを隠せない、ボクは冷静な表情を保てているだろうか?

「な、まさか、貴様が・・・ミカド・・・?」

 ロックはあからさまにうろたえている。

 彼がいるなら、ボクが多少驚いた顔をしていた所で、目立ちはしないだろう。

「どう見てもガキではないか、やはり代替わりしたばかりの!それもこんな小娘がこのロック・ベーコンを愚弄するとは許せぬ!!」

 うろたえるというか逆上していた。

 文脈も少しおかしいし、正常ではないね、情報と感情とを処理しきれていないのだろう。


「すまないなアイラ姫、ご助力頂きながら奏者達が不手際をした様だ。5分で追い出す様に命じたのだがなぁ」

 しかしミカドはもうロックに興味を失った様にボクを見つめる。

 距離は近い、鑑定・・・鑑定・・・。

 こちらに歩み寄ってくる彼女の鑑定を数度試みたところで、ようやく鑑定できる距離になったのか、ステータスが表示される。

 その表示は・・・

 ミカドF---12ヒト

 生命225魔法184意思3233筋力11器用36敏捷32反応48把握231抵抗100

 職業/天帝 預言者


 表示上はヒト族だけど、バフォメットさん同様年齢の表示にバグがある。

 ステータスは意志力が周回者並、把握の力が特化した勇者並み、それに抵抗力が100の他は常人の範疇だ。

 それでも生命と筋力、敏捷以外はロックを圧倒しているけれど・・・。

 年齢の数値が5桁でバグっているので神話の時代から生きているというのは確かかもしれない、とはいえ名前がミカド扱いということは、本当に彼女だけがミカドということなのだろうか?


「申し訳ございませんミカド、ご指示の通りに沙汰を述べたのですが、想定以上に諦めが悪く、未だに掃除がすんでおりません」

 マディン氏はロックに興味を失った様にミカドのほうへ向き、平謝り。

 ロックを取り囲んでいた女性のうちセントール人たちが、ロックにつきつけていた道具をしまいその場で平伏しようとするけれど

「あぁ良い、姿を晒しているうちはそこまでかしこまらずとも良い。お前たちは私にとって子どもの様なもの、必要以外の場面で格式ばった対応は必要ない、今は御前会議ではないのだから・・・それはそれとして・・・禁軍、狼藉者を外に捨ててこい」


 と、ミカドは他の人たちには今は頭を下げる必要はないと留めた上で、狼藉者ロックを外に追い出す様に命じた。

 例の悪名高い禁軍とやらに・・・

「な!ミカド!お待ちください!なにか行き違いがあった様にございます!私どもサンキのミカドへの忠誠は・・・」

 途端に顔色を変えて、かなり切迫した様子で弁明を始めるロック、禁軍とはそこまでヤバイモノらしい。

 しかし、ミカドはそんなロックの態度を意に介した様子もなくボクの目の前に歩いてきた。


 綺麗な女の子だ。

 神楽もとても綺麗な女の子に育っているし、ボクの周りにいる子たちは皆並外れて容姿の美しい子が多いけれど、このミカドの美しさは非人間的というか、造られたみたいに整っている。

 これまで出会った中で容姿に優れるサリィやサークラと並べても遜色ないどころか、上回る美少女オーラを放っていて、近づき難いほどだ。


 そんな彼女は神秘的な微笑を浮かべたままで、ボクの手を取った。

 そして・・・

「セントール族の少女を助けて頂いたこと、セントール大陸に生きる者として礼を言わせて頂きます。ありがとうございました」

 そう快活そうな少女の声で奏でた。


「い、いいえ、通り掛かりに保護しただけですから」

 エコーのことは幸運だった。

 事前にその話が耳に入ってク魔物に興味を持っていなければ、あるいはうちにベアトリカがいなければ興味を持つこともなく一瞬でク魔物を排除してしまっていたかもしれない。

 そうすれば、いずれエコーは死ぬことになっていただろう。

「私の禁軍ではおそらくクマ魔物たちの排除だけを行い、あの子がいても助けることはなかったでしょう。あの子が助かる道はアイラ姫たちが通り掛かること以外に存在しなかったのです」

 そういってボクの手を離してから、ミカドは小さく目を伏せながら姿勢を戻す。


 そのときボクの背後ではロックが聞き苦しい声をあげていた。

「ミカドォォォ、後悔するぞぉぉ!後悔させてやるからなぁ!われわれサンキを疑い辱めたこと、必ず後悔させてやるからなぁ!は、離せ!私はまだあの小娘にいってやらねばならっ・・・」

 ゴス!

 となにやら鈍い音で、彼の声は途切れた。

 目をやれば、なにやらアシガルグソクを装着した性別未詳の者たち・・・訂正、男とか女とか以前にこれは人かどうか怪しい、鑑定ができないし、アシガルを装着しているにしては体が細く小さい、これではなんというか、アシガル自体が体であるというか、ロボットみたいな?

 とにかくアシガルグソク装着兵の様な何かが2人(体?)で失神したロックの腕と足を持ち上げているところだった。


「こ、これは・・・」

 思わず口から漏れるため息にも似たボクのつぶやきに、ミカドは「あぁ・・・」と小さく息を吐いてから

「アイラ姫はご覧になるのは初めてですね、彼らは私の禁軍です」

 と、そのアシガルポイ者を上向きに開いた掌で指し示した。

 しかし禁軍の二人はミカドから紹介されていることを気にとめた様子もなく、ロックを運び出していく。

 命じられたこと以外には無頓着で、命令を与えたミカドの言葉にすら反応せず命令を優先して動いている。

 融通の利かない者達らしい。


「見ての通り命令には忠実ですが、あまり細かい動作は得意ではありません」

 ミカドがそう言っている間にロックは運び出されて行ってしまった。

「えっと・・・」

「あぁご心配なさらずとも、すぐ命をとったりはしませんよ、あの者がしっかりと役目を果たし、チョウケイに認可取り下げを伝えたのであれば、あの者の咎を私は責めません」

 ミカドのその言葉には嘘はないのだろう。

 その神秘的で穏やかな微笑には、優しさ、それも慈母の様なそれが含まれている。

 あれだけ無様と悪態を晒したロックに対してすら、未だにセントールに生きる者すべてに向ける愛を向けているというのだろうか?


「あの・・・ミカド?なにゆえお姿を晒されたのですか?舐められる可能性がある幼い姿は、大陸外の客人であるアイラ姫様達以外には晒さないと仰っていたではありませんか?」

 マディンが苦笑を浮かべながらミカドに真意を問う。

 他の居合わせた人々も奏者以外はミカドの姿を見るのは初めてらしく、先ほどまで戯れていたケイコ女史やトリシア姫でさえも、皆驚いた表情でミカドの姿を凝視している。

 ただひとり神楽に夢中のエコーだけが、なにか宇宙語的な言葉で神楽に話しかけていて、神楽はエコーを抱き締めて頭をクシャクシャと撫でてやりながらミカドの方を見ている。


「あぁ、その予定だったのだが別に必ず隠さなくてはいけないわけではないしな、ロックの態度に苛立って席を外したら泣き声が聞こえて、様子を見に行ってみるとエコーがカグラ姫に会いたがっているのを、後ろの二人がなだめるのに難儀していたので連れてきた。それにしても、この私が女で子どもの姿を見せてもロックの女性蔑視は変わらなかったな、やはりサンキは更正不可能の様だ」

 ミカドはマディンの質問に悲しそうな表情を浮かべて答える。

 そしてそれからミカドは一番前、御簾の手前に立つと

「私のこの姿に尋ねたいことのあるものも居るだろうがな、私がミカドだ。少し騒がしくなった故会議は中断したが、また15分後に再開し、私のことも簡単に説明しようと思う。休憩を取ってくれ、それと、あのセントール族の幼女を同席させてやって欲しい、両親を失って不安定な娘なのだ。今これ以上不安な思いをさせたくないのでな、カグラ姫に懐いている様なので、騒がしくしない限り一緒に居させてやって欲しい」

 と小さく頭を下げた。

 それに対して表立って反対する者は居らず。


「われわれチョウビはミカドのお心に沿う様に振舞わせていただきます」

 とケイコ女史が跪いて返答したのをきっかけにセントール人全員が承諾してくれた。

「そういうわけだ。カグラ姫はエコーを抱いたままで良いので会議に参加して欲しい、それでは今から15分の休憩だ」

 と、最後にミカドはカグラに声をかけると、ゆっくりと御簾の中へ戻っていった。


ロックさん、見せ場ないまま、ご退場

私は信念のある悪人とかを上手く表現できない様で、大体悪人が無能で野心家になってしまいます。

ロックはその中でも小物ですが、もう一度くらい登場する機会が与えられる予定です。

そしてハルトマンが空気なので少し見せ場を作ってあげたいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ