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第168話:御前会議1

(アイラ視点)

 とうとう辿り着いたミカドの御前、そこにはミカドとその家臣達、そしてそれ以外にもミカドからもっとも遠い部屋の入り口付近、列で言えば後列から順に、左側にサンキ(推定)の使者1名、ミカドの正面は空いているので少し離れて右隣にハルトマン氏(ハルトマン氏もミカドの部下と言えば部下なのだろうけれど)

 ハルトマン氏の前、つまりミカドに向かって右側中列に左からシンク・ジアイ、マナ姫、エロイース・フラットパインと3人の美少女が並んで座っていて、左側には配置と前情報からシングウ・ニコなのだろうヒヨウ地方のダイミョウの次男が座っている。

 3人娘の前、右前列にはシンチョウ・ヴォーダという24歳の男が一人で座っていて、この場にいるセントールの者達のなかで一番平静を保っている。

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 彼はヴォーダシュゴ家の当主、前の代までは一地方の一部を采配するだけの存在だったらしいが、分家当主であった彼の父は本家を掌握し地方の7割を取得、病の為に隠居を決めるが最期の仕事として、隣接していたシュゴ家ナガイ家と同盟、その当主ドウキの娘カヤリをシンチョウの正妻として迎え入れることに成功して、ドウキを後ろ楯としてシンチョウはヴォーダ家を継いだ。

 無論この時点ではシンチョウのヴォーダ家は元のヴォーダシュゴ家を簒奪したバサラシュゴ家の扱いであったが、かつては同じバサラシュゴ家でありながらも、すでにミカドにシュゴ家として認可されていたナガイ家を後ろ楯としたことは、ヴォーダ家の発展に大きく寄与した。


 その後紆余曲折は有ったものの、今は元から所有していたヴォーダ家のシュゴ鎧に加えナガイ家、ヘクセン家、ノースフィールド家のシュゴ鎧、そしてコンセンのダイミョウ鎧カイドウを保有している。

 ここに同盟関係にあるニカワ領主フラットパインシュゴ家、チクブ領等複数の地域に跨がるジアイ家を合わせれば一大勢力と言えるだろう。

---

 そして前列左側にダイミョウであるチョウビ家の猫系獣人の女性とトリシア姫が並んで座り、その背後にチョウビの角の生えた益荒男子ますらおのこと、眼光鋭き初老の男性、そしてリベル氏が座った。

 これまでの情報と、座っている場所からして、猫系の彼女こそがビテン地方のダイミョウチョウビ家の女性当主、ケイコ・チョウビその人なのだろうけれど、距離があるため鑑定はできない。


 ボクたちは右側の最前列、左側にはミカドに司会を任されたマディンという男がいる。

 彼はしばらくなにかを支度していたが、やがて進行の仕事を始めた。


「それでは第一に、すでに連日の議論となっておりますサンキ家からの訴状、ミカドから御料地を預かっているハルトマン・ノースフィールドが、ミカドの代官であることを笠に着て、サンキの防衛部隊を襲い、さらに以前より南海を騒がせている海賊とも繋がっているという訴えから処理していきましょう」

 と、マディンは顔に笑顔を張り付けたままでサンキの使者の方を見た。

 なお目は笑っていない。


 完全にサンキの訴状を疑っているね、それはそうか、すでにノイセの隣までをサンキは奪っているわけだし。

「この案件については、すでに昨日、一昨日も話し合いを実施しておりますが、双方の言い分が大きく解離しており、解決の糸口が掴めておりません、これ以上ミカドのお心を煩わせるのも良くないと、他家の皆様にもご意見をと、この様な集まりとさせていただきました」

 マディンは言葉を続けたけれど、すぐにサンキの使者(推定)が声を荒らげて待ったをかけた。


「お待ちくだされ!ここにおはすダイミョウ家、シュゴ家のお歴歴は当事者にはござらぬ!さばかりか、私どもサンキと敵対しているバサラどもまでいるではいるではありませぬか、これははじめから我々サンキの訴えを退けるためのものとしか思えませぬ、公平を謳う中央も御料地の不手際には甘いということですかな!?」

 彼は発言の許しも得ていないままで、ひとしきり大きな声で吠えると、マディン氏を睨めつけ、マディンやカシュウは明らかに嫌悪感を感じさせる眼をした。


 なるほど、ずっとその部分、つまり、公平であるべきミカドが自分達の身内であるハルトマン氏の言のみを尊重して、サンキの非を責めるのか?という一点でごねているらしい。

 ミカドが自ら不正をすることはないと、ミカドの権威は揺るいではならないが、その家臣の一人一人は人間である。

 であれば、その常人であるところのハルトマン氏の言い分をそのまま鵜呑みにしたという評価、風聞は、ミカドの権威の瑕疵となりかねないのかもしれない。

 半分以上推測だけどね。


「その様な事はありません、まことサンキ側に非がないのであれば、公平であるミカドはハルトマンに裁きを申し渡すでしょう。とは言えその男は不正や偽証を嫌うという意味では我々以上ですからな、初めから不手際など疑いなどしておりませんよ?」

 マディンは笑顔で、反面少しの隙もない冷徹な目付きでサンキの使者の顔を見て、それから感情は読み取れないものの嫌悪や憎悪も感じられない視線でハルトマン氏の顔にも視線をやった。


 ハルトマン氏の方は、既に言うことはないとばかり無言で頭を下げただけ、それを見てサンキの使者は、ハルトマン氏が反論できるだけの証拠を持たないのだと考えたのか、立上がりハルトマン氏を指差しながら続けた。

「この男は!かつてシュゴ家当主であったにも関わらず、そこなバサラ者に破れたことで恨みに思っていたのです。そしてそのバサラ者が中央に上ると聴き、ノイセ通過の際復讐を遂げる為にアシガルグソクを必要としたのでありましょうや、サンキがミカドに訴えこの男を呼びつけておらねば貴様はここにはたどり着けなかったであろう、ソナタはサンキに感謝して傘下に下るべきである。サンキ家がバサラ者の面倒を見てやることなどほとんどないのだ感謝しろよ?」

 と、ハルトマン氏を馬鹿にした上で、ヴォーダ家当主シンチョウの方をも指差した。


「御使者殿、未だ咎の在処をミカドは定められておらぬ、言葉を慎まれよ」

 マディンは使者を嗜めるが、使者は暫くは聞き苦しい持論を述べた。

 シンチョウ氏、シングウ氏、それにチョウビ家の使者達や三人並んだ娘たちも嫌な顔をしている。

 どうやらサンキは信頼されている。

 ・・・悪い意味で、誰もこれサンキの使者の言い分を信じていないよね?


「サンキの、言い分はそれで終わりか?」

 暫くは、黙っていたマディンだったが、とうとうミカドがなにかを彼に伝え、マディンはサンキの使者に声をかけた。

「その男とその恩知らずのバサラ者のふてぶてしい態度に思うところもあるが、まぁ良いでしょう、とにかく我々の兵が訓練中に一方的に襲われた。それは確かなのです!」

 マディンの言葉にサンキの使者はもう一度自分達の非がないことを強調したが、やはり誰も信じていないね。


「それではミカドに代わりお心を伝える」

 先程ミカドが伝えた言葉をマディンが伝えるらしい。

 開始の挨拶はミカド自ら発したけれどミカドが話している時、ダイミョウ家もシュゴ家も頭を下げたままになっていたから、進行の都合上、そういう風習になっているのだろう。

 かくして、マディンは告げた。


「イセイの姫君とシーマの姫君、貴方方はサンキに対して述べることがあるハズ。とミカドが仰せです」

 ボクたちの方は向かないままで、マディンは左右に別れているマナ姫とトリシア姫の間に視線を渡した。

 そして、サンキの使者が明らかに狼狽した。


 どうやらボクたちやマナ姫とトリシア姫が誰であるのかを把握していなかったらしい。

 先程の発言から最低でもヴォーダ家とその傘下同盟のシュゴ家や、チョウビとニコの存在は知っていたらしいけれど、意図的に伏せてた?

 なら二人(とリベル氏)をそれぞれ関係者の様に座らせたのもそういう意図があるのかな?


 そして、もうひとつ。

 サンキの使者の態度は、単純にイセイの姫君の存在に驚いたのか、それととサンキの軍勢が妨害しているはずのイセイの姫君の存在に驚いているのか?

 若しくは航路的に高確率でサンキの封鎖しているノイセ側から来るはずのシーマの姫がここにたどり着いている事を驚いているのか?

 何にせよ先程ハルトマン氏に対して余裕を持っていた態度とは明らかに変わったね。

 つまり、サンキの使者は自分の所属するサンキの軍勢がノイセを封鎖してることは知っていると考えて間違いないだろう。


 やはり目的はモノノフであるハルトマン氏を中央に釘付けしている間に、なにかしら理由を付けてノイセを併合してしまう事だろう。

 これまでそれをやって、ミカドから実力行使がなかったので舐めていたのだ。

「発言を許可くださるということでよいのじゃろうか?」

 トリシア姫は、少しマナ姫と目を合わせ、それから自身が語ることを決めた様だ。


「勿論でございます・・・あぁいや、イセイの姫君には説明を致しておりませんでしたな、ミカドの御前での話し合いでは、基本的に前方に座るものほど発言権は上、具体的に言えば・・・」

 と、マディンは一呼吸入れて説明を開始する。

 その内容は以下の通り。


 まずはサンキの使者ロック・ベーコン。

 彼はサンキの重臣ではあるが、ミカドや中央から見れば1勢力の家臣に過ぎないため、同じくミカドの家臣に過ぎないハルトマン氏とほぼ並べて置いているが、現在この場での発言権は低いそうだ。

 この発言に対してロックはあからさまに不満感を表したが、マディンはただ後でわかる・・・と言って取り合わなかった。


 それからシュゴ家の継承の挨拶のすんでいないニワカのエロイース・フラットパイン、ジアイのシンク・ジアイ、現シュゴ家当主の妹であるマナ姫とは、同じ『シュゴ家の継承権の高い係累』という括りにされたらしい。

 さらにそのままニコ家の使者シングウ・ニコはダイミョウ家の使者で次期継承者ではないためこの位置取り。


 前に出て、ヴォーダ家当主シンチョウは今回の話し合いを聞けばこの位置取りは解ると割愛された。

 やはり彼はダイミョウとなる様だ。

 そして、チョウビ家、当主であるケイコ・チョウビが来ているためダイミョウとしてその位置、トリシア姫はチョウビと取り引きがあるので一緒に居ることになったと説明した。

 縁組だといっていたから、実質人質扱いだろう。

 普通ならばダイミョウ家が最前列となるのだけれど


 今回は異例となるボクたちが居る。

 マディンはボクたちについても、このあと解るとして、詳細を伏せたが、ある問題発言を残した。

「今回特例でこちらにお座り頂いているアイラ姫様とナタリィ姫様、カグラ姫様はミカドと同等と言って良いご身分の方々だと言うことで、このあとミカドが自ら歓待する予定です。また、こちらのユークリッド様もチョウビ家やニコ家、サンキ家を合わせたものに匹敵する戦力を保有する勢力のお世継ぎなので、くれぐれも失礼な事をされませぬ様に・・・」


 何があるというのだろう?

 確かにサテュロス大陸からの使者を名乗っている以上それを信じてもらえるならば最大の賓客になるけれど、それならば、こんな大勢の前での顔合わせはどうなんだろうか?

 ロック・ベーコンの奴、あんなにこちらを睨んでさ、すごく嫌われてるね。


 それに、確かにボクたちは昨日のうちに、ミカド側へ一行の名簿を渡したし、ミカド側からボク、ユーリ、神楽、それとナタリィの4名を使者として指定された。

 とはいえ、家の規模や戦力をほのめかす記述はしていないのに、どうしてそんなことに?

 それに神楽の説明もやけに上の身分になっているよね、提出した名簿では、未婚の貴族とか思われて縁談とかにならない様に、ボクの客分扱いにしていたのに・・・。

 まさか姫の客分は姫じゃないといけないとかそういう慣習は無いと思うけど。


 とにかくボクたちは、この大陸での最高権威と同等という、謎の厚待遇であるらしい。

 それを良かったと考えるか厄介と考えるかはこれからの話し合いの結果次第だろう。



申し訳ありません更新を半月以上開けてしまいました。

以前からパソコンが壊れていたこと、月末に携帯の端子が壊れた事、出勤方法が代わり、出勤時間に書くことができなくなったことが重なりました。

 報告が遅くなり申し訳ありません。

 今後も暫く更新が以前より遅くなることがあるかと思いますが更新は続ける予定であります

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