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第153話:南々セントール、合流

(アイラ視点)

 トラウの上空に転移したボクは、すぐにその魔法力の反応に気が付いた。

「(これ、エッラの魔法力?戦ってるというの?誰と!?)」


 それは、ボクに長年仕えてくれている姉の様なメイドの魔法力。

 彼女の放出する力は強力なので、上空からでも感知することができる。


 でも・・・

「エッラがこんなに力を振るう相手なんて!」

 エッラの力は強力で、正直今放出している力も本気の4割位、でもエッラの力は本当に強力なので100%を振るう機会なんて対人ではまずないといっていい。

 その上、相手側の魔法力がまったく感知できない、その状況から考えれば相手は有象無象の多人数か、エッラがこれだけの力を使っても魔法力をほとんど放出せずに対応できる相手、後はものすごく魔法力操作が巧くてほとんど放出しない相手・・・そんなのボクの知る限りユーリか、朱鷺見台の・・・あぁ、そうか、ユーリか・・・。


 納得すると緊張が少し緩む、まだ確定ではないけれど、エッラがこれだけの力を振るっているのに、神楽やソルの魔法力が感じとれなイということは、多分模擬戦かなにかでユーリと手合わせしているんだろう。

 アイリスの気配も落ち着いているし、緊急事態では無さそうだ。

「良かった」


 ほとんど無意識に安堵の声が漏れる。

 ついさきほどまで殺伐とした空気の中に身を置いていたからか、つい襲撃の可能性に固まってしまったけれど、よくよく考えれば本当に襲撃ならエッラが暴れて町から煙が上がったり城が半壊したりしてるはずだもの、早とちりして急降下攻撃なんかしなくて良かった。


「とりあえず変身を解いて・・・とナイトウルフも収納」

 さっき着てた薄青のセントール服姿に戻る。

 次に魔法で軽く化粧を落とし、肌色を戻す。

 さらに普段使いの日焼け止めをかねたパウダーを少しはたき元の姿に近づける。

 肌ケアの類も最低限していないと、ナディアが泣きそうな顔で見てくるのだ。


 別にセントール服を着ているのはおかしくはないだろう、シーマの城に入るのに着て、着替える暇を惜しんで帰ってきたと言えばいい。

 トラウを発って都合3時間弱経っているし、戻っていいよね?

 場所は・・・神楽に聴こうかな?

「(神楽、聞こえる?)」

 暁天の通信機能を使って神楽のデネボラにメッセージを送る。

 すると1秒と経たずに神楽はレスポンスをくれる。

「(はい、アイラさん、聞こえていますよ?)」


 落ち着いた声、やっぱりエッラが戦ってるのは襲撃者ではなく訓練相手なんだろう。

 確信を得て安堵する。

「(今トラウの上空まで戻ってるんだけど、カグラかアイリスの近くに跳躍しても大丈夫そう?)」

 ボクの問いかけに神楽は少し考えるそぶり、というよりは周囲を確認してから答える。

「(そうですねアイリスちゃんの周りにはたくさん人がいますから、ちょっと待ってください、私が場所を変えますから)」

 とのこと、人目のないところに移動してくれるのだろう。

「(わかった。ありがとうね)」

「(いいえ)」


 数分して神楽は再度通信を寄越した。

「(アイラさん、今私一人ですからどうぞ、いらしてください)」

「(ありがとう、今から行くね)」

 神楽にデネボラ側の発信機能をいれてもらって上空からその位置を暁天で計測する。

正確な位置を確かめてから跳躍する。


 跳躍特有の暗転を抜けるとそこは薄暗い部屋の中、採光は小さな窓が二つ高いところに開いているけれど、夜には恐らく使うのだろうランプシェードが部屋の隅に見えている。

 部屋の中には棚がいくつもあり、竹籠がおかれている。

 どうやら脱衣所の様だね。


「おかえりなさいアイラさん」

「ただいまカグラ、心配かけたね」

「いいえ、ご無事で戻られたならそれだけで十分です」

 いつも通り聞き分けの良いお利口さんの神楽、その姿に何か不安を覚える。

 いつも通りのはずなのに、どうしてだろう?

 あぁ、鎧衣モードで魔導鎧装マギリンクフォルト『慧眼』を展開してるからかな?

 神楽の鎧装姿なんて、滅多に見ないから・・・。

 うん、扉の前にはソルと、ベアの気配があるけれど、今ここにはボクと神楽しかいない。

 だったらちょっとくらい良いかな?


「カグラ、ハグしても良い?久しぶりに単独行動したからかな?なんだか寂しくって」

 ボクがそうしたくて抱きしめたいと願い出ると、神楽は微笑を浮かべる。

「あ、待ってください・・・はい、どうぞ、私はアイラさんのこと大好きですから」

 ボクの申し出に鎧装を解いてくれ両腕を広げて待つ神楽に正面から抱きつく、17歳の神楽は、前周でカナリアを名乗っていた彼女と比べて少し身長が低い、それでも13歳のアイラよりも10センチ以上大きくて、顎がおっぱいの上に乗る。

 少し頭を傾けると温かくて良い匂いがする。


「うぇへへ・・・アイラさんなんだか甘い臭いがします」

 スンスンと神楽はボクの髪や、おでこの辺りに鼻を近づけて匂いを嗅ぐ。

 多分団子の匂いかな?神楽の吐息がくすぐったい。

「カグラも甘い臭いがするよ?花か果物みたいだ」

 神楽の匂いは、保管中に服につけたポプリの匂いと神楽の匂いな混じったモノで、肺一杯に吸い込みたくなる。

 そのまましばらく抱き合っていると神楽寂しさが紛れたのが伝わってくる。

 ついでにボクも殺伐としていた心が紛れてきた。


「まだマナちゃんもワコ様もデート中で、今みなさん訓練場を見学してるんですけれど、ユーリさんとエッラさんがシコク兵の相手に飽きてしまわれて、お二人で打ち合いをしてるんです、今ならみなさんそちらに集中されてますから、こっそり訓練場に戻っても気付かれないと思います」

 やっぱり、ユーリとエッラが手合わせをしているみたい。納得だね。

 あの二人なら確かにそういう試合運びになるだろう。


「ここ脱衣場だよね?何て言っていれてもらったの?」

「はい、肌着が捲れたから直してきますと伝えたら、女中さんからこちらをお使いくださいと言われたんです。今なら誰も使ってないからと・・・」

 じゃあしばらく誰も来ないのかな?

 もう少しだけ神楽と二人きりが堪能したいかも、もちろんベアとソルにはもうボクが現れたことはわかっているだろうけど、二人?ともボクと神楽の親密さは知っているし、多分もう数分位は大丈夫だよね?


「カグラ、キスもしていい?」

 ハグしあったまま少し上を向いて尋ねる。

 神楽の唇は瑞々しくて、近くで見ていたボクは多分、少し欲情してしまったのだ。

「勿論です。丁度私もアイラさんとしたいと思っていました」

 と、神楽は目を瞑ってボクの唇に短く触れる様なキスをくれる。

「ありがと、それじゃあ戻ろうか?」


 扉の前に待っていたソルとベアとも合流して、二人?は勿論ボクの無事を喜んでくれる。

 訓練場に行くとまだユーリとエッラは打ち合っていて、そのすさまじい応酬にシコクの人たちは呆れた様子を見せていた。

 ボクたちは慣れっこだけど、ヒロちゃんはキャーキャーと黄色い声をあげて、母同然に慕うエッラと、未来の夫になる可能性もあるユーリとに声援を贈っていた。


「お、おいおいまだ速くなるんかよ?」

「てか、あの女子、うちの嫁入り前の娘より背低かったがなんであんな強いんじゃ!?」

「背低くても胸はあったろう、あれで多分大人なんよ」

「大人なんだろうけれど強すぎるだろう?80人抜きした上、腕自慢は2周目も挑んだんだぞ?」

 おおぅ、80人抜き以上やっても消化不良って、うちの幼馴染のお姉さんメイドはいつからそんな戦闘狂になったんだろうか?


「て言うか、あの二人が敵に居たらシコクは勝てんぞ」

「東西の最強と噂にきくダティヤナの先代チドリ殿や、チョウビ家の女ダイミョウケイコ様と同じレベルなのでは?」

 と、さらに呟くシコクの将兵達、ボクや神楽が後ろから入ってきた事にも気付かずにユーリとエッラの打ち合いを懸命に見守っている。

 何が恐ろしいかって、ユーリが見切り避けたエッラの横凪ぎ、その風圧がこの観覧席と化している訓練場の入り口まで届いている事だ。


「結構熱が入ってるね」

「はい、ユーリさんがどうもこちらの方々との打ち合いに満足できなかったようです」

 それにしたって、こんな訓練場で振るうには二人の武器は些か威圧的にすぎる。

 ハルトマン氏の大剣でもスヴェルグラムの半分もないだろう。

 二人の事だから寸止めを失敗することもないだろうけれど、避けても、打ち合っても風圧や衝撃が観覧席まで届くのだから本当に恐ろしい。


 おや?二人の動きが止まったね?

「なんかこっち見てないか?」

「なんだろうまた、俺たちの相手をしてくれるとか?」

「いや、あんなヤバイ動き見せられたらもう前に立てねえよ!」

 ボク達の前にいる兵士達が少し怯えているけれど、二人の目的は・・・

「おかえり、アイラ!」

 この場にいる兵たちには、ほとんど瞬間移動みたいに見えただろう。

 ユーリとエッラが一瞬で武装を解除すると、ボクたちのすぐそばまで移動してきた。


「ただいまユーリ、エッラ」

 ボクがただいまと、名前を呼ぶとエッラも頭を上げながら

「おかえりなさいませ、ご無事でなによりです」

 と、おかえりを言ってくれる。


 すると、二人の移動を追いかけてアイリスがこっちに走ってくる。

 元々アイリスは観覧席近くの屋根のあるスペースで兵士達に衛生学などの落とし込みを、ナディアとエイラは訓練場側で怪我人に備えていたみたいだけれど、二人もよってくる。

 そしてヒロちゃんもシャイン姫とナナ姫と一緒に観覧席の前の方に座っていたけれど、3人でこちらに歩いてきた。


「おかえりアイラ!」

 駆け寄ってきたアイリスはボクに飛び付くとむちゃくちゃに懐いてくる。

「おかえりなさいアイラお姉ちゃん、とと様はお元気そうでしたか?」

 と、ヒロちゃんも待ちきれない様子である。

 ヒロちゃんの手紙は多分政治的な話しとかないし、先に渡してもいいかな?


「うん、ヒロちゃんの部屋の片付けを一人でなすっていたよ、はい、お手紙」

「わぁ!ありがとうございます!・・・読んでても良いですか?」

 目を輝かせたあと、少しキョロキョロと周りを気にしてから遠慮がちに尋ねるヒロちゃん、それは早く読みたいよね。

「うん勿論、エッラ、模擬戦終わったならヒロちゃんについててあげて?」

「かしこまりました、それではユーリ様、手ずからのご指導ありがとうございました」

 エッラはユーリに礼を言ってヒロちゃんの隣につく。


「こちらこそ、久しぶりにおもいっきりやれて気持ち良かった。またそのうちやろう」

 ユーリはボクの隣、神楽の逆側につく。

「では、私はワコ兄様とマナ姫様とをお呼びして参ります。ここからなら・・・東の客間が近いかしら、ナナは皆様を東の客間に」

「わかったのであります」


 シャイン姫とナナ姫も役割分担してシャイン姫は訓練場を出ていった。

 そしてナナ姫は再度こちらに向き直り。

「それでは皆様ご案内させて頂くであります」

 手紙を読み始めていたヒロちゃんだけ少し出遅れたけど、みんなでナナ姫についていく。

 ようやくおめでたい報告ができそうだね。


シコク家はすごく強い将はいませんが当主ワコは強い(マナよりは)設定にしようと思っています。

 エッラの動きを追いきれた兵もいないので兵達が言っているケイコやチドリと同等などの発言は特に意味がありません。

ただしそれが本編中に関わってくるかは未定です。

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