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第142話:それぞれのシコク訪問1

(アイラ視点)

 トラウ城に入った熊車はシャイン姫の使う屋敷に入った。

 屋敷と言ってもホーリーウッド家の内クラウディア屋敷の様な大きなものではない。

 こちらに泊まる時に使うだけの屋敷の為日ノ本的部屋割りで考えれば6LDK+講堂と道場1つずつといったところ。

 あれ?十分広いよね?感覚がホーリーウッド家のサイズ感に染まりきってるかな。


 とりあえず一度シャイン姫の屋敷の敷地に入った後、ユーリとナディア、エイラ、マナ姫とカネル氏がナナ姫とともに馬車に乗り換え会見に向かい。

 ボクとアイリス、神楽とヒロちゃん、エッラ、ソル、ベアトリカがシャイン姫の屋敷に残った。

 ただしベアトリカと熊車を外に残すことにしたので、ソルがベアに付き添っている。


「それではせっかくなので、まずはルートと会って下さいますか?」

 シャイン姫の屋敷の中に入ってすぐに、シャイン姫は尋ねた。

「はい、勿論」

「赤ちゃん、好きです」

 ボクは勿論アイリスも乗り気で、早く見たくてたまらない風。

 ボクたちの答えをきいて微笑んだシャイン姫は

「ではこちらにどうぞ」

 と、先導した。


 その部屋は、マナ姫の部屋と代わらない位の広さのある部屋だった。

 そこには胸の大きくはった女性が一人と年の若い女の子が二人、そして赤ちゃんが二人居た。

「ただいま帰りましたよルート、あなたたちもご苦労様」

 とシャイン姫が声をかけると、赤ちゃんのうち片方は「だー!あー!」と声をあげて、もう一人は我関せず。


 そして3人の女性は赤ちゃんを踏まない様に気を付けながら立ちあがり頭を下げた。

「シャイン様、おかえりなさいませ、お早いお帰りでございまし・・・・ア、アイラ様ぁぁぁ!しかもふたりぃぃ!?」

 と、26歳のカエさんは悲鳴をあげた。

 そして崩れ込む様な勢いで、ボクとアイリスの前まで来ると、跪いた。


「私があの時病を得ていたばかりにお供することもできず申し訳ありません!申し訳ありません!」

 とすがる様に懇願する。

 他の二人はきょとんと、赤ちゃんは突然の大声にも驚かずにケラケラと笑っている。


「カエ、お待ちなさい、こちらのお二人はアイラではありません私も驚きましたが、よく似た双子の姫君です」

 シャイン姫が言い聞かせると、カエさんはポカンとしたあと、漸く佇まいを正す。

 狼狽したことを恥ずかしそうにしながら、こちらの声を聞ける状態になったのでシャイン姫が紹介してくださる。


「えーこちらの女性はカエ、焦土島時代からシコク家に仕えてくれています。今はルートの乳母として私についていますが、元はその、アイラのお守りをしていました」

 と、少し伏し目がちに説明する。

 さらに続けて二人の女の子の紹介をしてくれる。

「こちらはリス、こちらはミツ、二人はカエを手伝ってルートやランの世話をしてくれています、私の夫であるシェイド様の家臣の娘です」

 と、紹介すると二人の女の子もこちらに向かって礼をする。


 リスは12才の栗毛のセントール族の女の子、ミツは11才の茶髪の女の子・・・いやこちらも種族名がヒト族じゃないね、日ノ本語に訳すなら猿獣人族とでも言うべきか。

 サテュロスでは猿系獣人はハヌ族系と呼ばれていたけれど、ボクの鑑定ではハヌ族とは異なる猿の人とでも言うべき種族名が表示されている。

 セントール族の方は馬の人ではなくセントール族なのに・・・。


 ボクがミツを凝視していることに気がついてか、シャイン姫は補足する。

「あ、気付かれましたか、ミツは猿獣人なのですよ、パッと見た感じではヒト族とあまり変わりませんが、こう見えて力も強いし、高いところの掃除なんかも得意なんですよ?」

 と、ミツを再度紹介する。

 ミツは照れてしまって、リスの後ろに隠れながらペコリと頭を下げる。

 てかセントール族なのにリスって・・・そっちの方が驚く。


 そしてセントール族、実物を間近で見るのは初めてだね、キ族系獣人はサテュロス大陸にはゼロではないけれど、ほとんどいないし、見かけても近づいたことはない。

 本当に手足が6本あるんだね。

 中・後肢は馬の様に蹄になってるし、腰から下が馬の様に体毛に覆われていて、中肢の辺りは裸というか上の服が少し裾が被る様になっていだけで、体毛が見えている。

 後肢の方はスカートタイプのハカマを身に付けていて、中肢はよくても後肢は人目に晒すものではないという意識が伝わってくる。


「それから、この男の子が私の長男のルートで、そちらの女の子がカエの娘のエミです」

 と、ルート君を足元から拾い上げながら紹介してくれたシャイン姫は次にボクたちを紹介する。


「こちらの方々はサテュロス大陸からお越し下さったお客人で、名前はたまたま同じですがアイラ姫様、アイリス姫様、カグラ姫様、シーマ家のヒロ姫様、それから侍女のエレノアさんです」

 と、シャイン姫の理解では、アイリスも神楽も、こちらで言うシュゴ家相当の姫君という扱いになっている様で、そう強調して紹介された。


 そしてそのままシャイン姫はボクにルート君を差し出す。

「どうぞお抱きになってください」

 顔が妹のアイラ姫に似ているからか、シャイン姫もナナ姫もボクを信用しすぎてると感じる。

 仮にもシャインシコク家の初代当主予定のルート君だと言うのに、初めてのボクにこうも容易く預けるだなんて。


 あぁでも赤ちゃんはやっぱり可愛い。

 だっこしたとたんにおっぱいをぐいぐい無遠慮に押して揉んでくるのはまだおっぱい=食べ物な赤ちゃんだから許されることだ。

 尖らせた口の周りの肉が妙に福福しくていつまでもこのままでいてほしいなと思うくらい。


「あらアイラ様、抱きなれていらっしゃるのですね?」

 と、シャイン様に感心されてしまった。

「年の離れた妹がおりますし、姪や友人の赤ちゃんでならされました。ルート君はもうとうに首も座ってますしね」

 でもルート君ははいはいをする時期の赤ちゃんなのでけっこう暴れるね、座った方がよさそう。


「座ってもいいですか?ルート君元気なもので、落っことしたら大変です」

 と訴えると、みんな少し位置を調整し、赤ちゃんを内側に入れて円型に座ることになった。


 赤ちゃんを相手していて、一番機嫌を良くしたのは神楽だった。

 ルート君は見ていて落ち着く顔をしている。

 髪の色こそ薄いものの、顔立ちが東洋風で、あっさりしているので、日ノ本を思い出してしまうのだ。

 アイビスもつれてくれば良かった。

 その上、二人の赤ちゃんを自由にさせていると、必ずどちらかが神楽の方へと向かっていき懐く。

 しまいには

「あぁ、ルートの母は私だと言うのに・・・ルートやこちらにおいでなさいな」

 と、シャイン姫が半泣きになる事態まで発展する有様だった。


 さすがに空気を読んだわけではないと思うけれど、母親が泣いているのがわかってか、そのときはルート君はシャイン姫の方に向かった。

「カグラ姫様は大変な美人でございますね」

 と、リスやミツもホウとタメ息を吐いてしみじみと言うくらい、神楽はセントール人にとって絶妙に美人の要素をし持った顔貌をしていて、サテュロスで言う姉サークラの様な万人受けする美人の様だ。

 マナ姫の言っていた通りだね。


 ボクとしては、赤ちゃんも可愛けれど、リスのことが少し気になる。

 お腹というか中肢のつけ根辺りに見えている体毛は頭髪と同じく栗毛、しっぽの毛はもう少し暗い色をしている。

 ただお腹の辺り丸出しなのはセントール族的には恥ずかしかったり冷えたりとかはないのかな?

 ボクたちの感覚だとへそあたりを出してる様なものなんじゃ?


「ア、アイラ姫様、いかがなさいましたか?リスめはなにか粗相致しましたでしょうか?」

 と、いつの間にかリスがびくびくとして尋ねるほど凝視していたらしい。

「ごめんなさい?セントール族の女の子とちゃんと会うの初めてで、その、見えてるのはお腹なのかなって、少し気になって」

 と、素直に伝えた処、リスは人型と馬型の境目とでも言おうか、人体の骨盤の辺りの皮膚が露出している所と体毛に覆われている所の辺りを手でおおって隠し、顔を赤らめた。


「あまりまじまじと見られては恥ずかしいのです」

 やはり恥ずかしいらしい、お腹扱いなのかな?

「ですが、我々セントール族にご興味がおありの様子、リスめでよろしければ説明させていただきます」

 と、リスは早々に上の服を脱いだ。


 あまりの行動の早さにボクたちは驚くけれど、ミツは慌てずに縁側に簾をたらして外から中がはっきりと見えない様にした。

 初めて見るセントール族の肢体はそれは神秘的で、この世のものとは思えないはずだと思っていたのだけれど、よくよく考えればリスティの外皮の様な変形する肉体まで見ているので思ったよりも自然に受け入れられる。


 その上半身の構造は、おおよそ常のヒト族と変わらない。

 ヒトと同じく血色の薄く透ける皮膚、12歳だと言うのにすでにフィサリスと同じ強度DからE程度の乳房、違和感があるのはその下からだ。

 腰は細くくびれている。

 ただそこには見慣れたものがない。


「おヘソが・・・」

 アイリスが呟く

 神楽も少し恥ずかしそうにしながらも、人体の神秘に興味津々にみつめている。

「はい、私どもセントール族にとってここは鳩尾の様な場所です。ヒト族や多くの獣人で言うお腹にあたるのは、この馬と似た体の下側の部分で、ややこを授かった時も体の下側に孕みますヘソもそちら側です。逆に乳は馬と違い、この胸から出ます」

 と、リスは日焼けしていない色白な乳房を誇示する。

 アレ、それってヘソ出してるより恥ずかしくない?胸の直ぐ下ってことだよね?

 しかしそこでルートとエミが乳房に反応してか、リスの方に這いずって行く。


「ルート様、エミ、お腹が空いた様ですね?」

 と、言いながらカエさんがルート君のほうを抱き上げる。

 すると、すぐさまミツがカエさんの着ている服の脇の辺りを捲り上げる。

 そこは普通のセントール服よりも大きく開いていて、カエさんの乳房が半分位見えている。

 カエさんがそこにルート君の頭がくる様に横抱きにすると、ルート君は自ら乳房を掴むと少しひっぱって 口をつけた。

 なるほど、ミツやリスはこういう補助の役割か。


 片方が授乳されている間、もう一人がぐずらない様に相手をするわけだ。

 ところで気になるのは

「シャイン様は乳はやらないのですか?」

 せっかく目の前にママがいるのに、乳母の乳というのも何となく寂しい。


「はい、お乳をやっていると中々次の子を孕める様にならないではないですか?ですから私はやったことないですね?どこも城を預かる様な家の正妻はそうだと思いますよ?」

 とのこと

「それ胸痛くありませんでした?」

 と神楽が尋ねる。

 日ノ本の常識では、赤ちゃんに母乳を与えることで、母親の方にも良い効果があると言われていた。

 サテュロスでも体験的にそれが判明しているのか、乳母を雇って育児を任せる場合でも最初の1~2ヶ月は、生母が乳をやることもそれなりにある。


「すごく痛い時もありましたね、ですがそれは体力が戻りつつある証拠だと言われましたよ?」

 と暢気な回答。

 なのでサテュロスでの妊娠、出産、授乳期の話を聞いて貰うと、少し興味を持った様子。


「そういえばカエは、胸が痛くなったり、熱を出したりはなかったわね?」

 と、シャイン姫はもっとも身近な出産経験者に尋ねる。

「そうですね、少し張る時もありますが、ルート様やエミが吸ってくださると楽になりますね。確かに最近は重湯や果汁等もしっかり飲まれますので召し上がる量が減り、張ることも減ってきましたが」

 と、カエはサテュロスの子育て論に得心言った様に答える。

 まぁ、サテュロスは聖母教が一般的であることも大きな理由だと思う。

 生母の乳房に対してそれなりに信仰というか、神聖視する傾向がある。

 それこそ、出産中に死んだ母親の乳房を生れたての赤子に吸わせるとか・・・。


 とにかくシャイン姫もその事に興味は抱いた様子で

「私は、この子に一度も乳を与えたことはありませんでした。乳が張って痛くても、熱出ても体力が戻っている証だと言われて・・・でもいまだに『体力』戻っていませんからね」

 と、シャイン姫は呟く。

 体力っていうか、まぁアレのことだよね。


「そうですね、次の子の時は、最初の二ヶ月位はためしに何度かやってみたいと思います。それで結果的に早く次の子が授かれる様になれば、ナナや家臣にも試させてみますよ」

 と、続けてにこやかに笑った。


「ところで、リスはもう12歳だし立派なものを持ってるけれど、結婚はしてないの?」

 と、アイリスが服を着直している途中のリスに突然かなりきわどい質問をする。

 セントールの侍女の類はサテュロスのメイドと違い、少なからず側女的な要素を含んでいて。

 仕えている主人が望めば愛人の様な関係を経て側室になったりすることもある。

 側室になることがあるのはサテュロスでも一緒だけれど、子どもを産むことが重要な文化みたいなので、サテュロスの様に契約外だからと断ることも中々できないみたい。


「え、えっと・・・」

 と、リスはシャイン姫の方を伺って複雑な表情を浮かべる。

 これは、すでにそういうことがあったと見ても良いのだろうか?

「私が説明してあげようか?」

 と、シャイン姫はリスの頭を撫でる。

 この様子なら二人は中が悪い訳でも無さそうだ。

 けれどリスはなにやら照れてしまい答えられない。


 やがてしびれを切らせたのかシャイン姫は説明を始める。

「元々リスはシュミット殿、私の夫シェイド様の兄君の婚約者だったのです。ですが、リスがまだ当時4歳と幼かったうちにシュミット様は戦死されてしまい、代わりにシェイド様にという話もありました。ただシュミット様の喪の明けないうちには返事ができない、とリスの実家が渋ってるうちにうちの家がシコクシュゴ家となり、地域の名士や豪族で次期当主の結婚相手が決まっていない家を探したところ、一番手にシェイド様のご実家が名乗りを挙げて、私とシェイド様もまぁ気が合いそうでしたので、結婚がとんとん拍子に決まりまして、いまやリスは、シュミット殿の未亡人という扱いになってしまいました。それはそうですよね、シコク家の分家の父となるシェイド様相手に結婚を渋った家という扱いになってしまいましたから、どこももうリスを嫁にとは名乗りを挙げません、私もリスのことを知ったのはもうシェイド様に城も任せた後だったので何もしてあげられませんでしたが、シェイド様も私もリスのことは気にかけていますから、シコクの未来のためにも正室と嫡男の座は渡せませんが、子どもさえできればいつでもリスを側室に迎える用意はできています。産まれるのが娘なら、ルートのお嫁さんにしても良いかも知れませんね」


 思ったよりも複雑な関係だった。

 単にもうシェイド殿から情けを受けている、それをシャイン姫も認めている。

 位だと思っていたら、かなり複雑な関係だった。

 そしてすでにお手付きにはなっていることは間違いないだろう。

 じゃなかったら今のシャイン姫の言葉でますます赤くなる要素無いもの。

 初々しくて可愛いね。


 アイリスはそのことには多分思い至らないままで、そっかぁ、辛かったねぇと呟いてリスを抱きしめて涙を流しているけれど、ボクはリスの心中を慮ると、居たたまれない気持ちになる。

 初めての客人の前でそういうことがバレるのは辛いよ多分。

 結構内々の事情だと思うのだけどばらしてもいいものなの?


 しかしこの頃のボクたちは知らなかったのだ。

 もっと大きなネタがもうじきに飛び込んでこようとしていることに・・・。

リスやミツは元々獣人の予定ではありませんでしたが、セントールには獣人系が結構いる設定なのにシーマ編では全然話に出せなかった(背景には猿獣人や鼠獣人もいたのです)ので急遽種族を変えました。

 今はヘソの話くらいしかしていませんが、そのうち他のキ族(奇蹄類ぽい獣人種族)と合わせて、他の人種と大きく違うところを目立たせてやりたいです。

 

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