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第12話:早すぎる再会5

 10月になった。

 9月末の平角イノシシの襲撃は、想定外の被害を村に出し、かわいがっていた馬を殺され、父も怪我をしたエレノア・ラベンダー・ノアは落ち込んで居たものの、父ブリスが今後に差し障りのないケガですんだことに喜んでいた。


 ケガをしながらもイノシシを撃退したことになっているブリスとエドガーは村人から感謝され、もともと定点の仕事には付かず村の業務全体にかかわっているエドガーはともかく、ケガがまだ治りきってはいないブリスとエグモントの分の仕事は、しばらくの間ほかのモノたちが分担することになった。


 幸いにして農閑期の今は、農業組の手が空いており、日々酒盛りに勤しんでいるところだったので特に文句を言うものも無く、みんな村の功労者に感謝していた。


 一方村長であるエドガーは、村の若い衆に剣を教えて欲しいと言われて困っていた。

 普通村のものが使うことのある武器は槍や斧や弓矢、または農具をそのまま使うことが多くこれは村の人間が相手にすることがあるのは基本的に魔物や動物だからである。


 村長であるエドガーはもともとが教育を受けていた階級の者であり、未来村長になる可能性があるトーレスやトーティスには剣を教えていたが、剣は本来対人を意識した武器であり、村のものには必要のないものであった。

 そのため村には剣の備えはあるものの、通常猪狩りなどに使うのは弓と槍であり、剣を使えるものが少なかった。


 ところがエドガーが到底討伐できなさそうな平角イノシシを狩ったこと(になっている)で村の若い衆が剣技の習得も最低限はしておくべきだとこぞって教えを請いにきたのである。

 しかし、エドガーはあくまで若い頃にホーリーウッド家の教育の一環でごく短い期間の修行しかしておらず、魔法も身につけていない為普通の鍛錬法しか知らないそこで困ったエドガーは秘密裏にアイラに簡単な強化魔法の指導を受けるのだった。


---


「えっと、そこで得物に意識を集中して、長く静かに息を吸って・・・それから一瞬息を止めて狙いを定め、一気に吐きながら剣を振るう。」

 アイラの指導にあわせて剣を振るうエドガー

「せぇい!!こうか!?」

「上手です父さん」

 さすがに村の中で堂々とやるわけにはいかず、アイラは父の手伝いで森の木や岩の配置などを確認するための作業に駆り出された形をとることにした。


 理由付けとしては、字が綺麗で賢く、もしも魔物に襲われたときにエドガーが担いで逃げれるから・・・サークラでは担いだら重たい(失礼)し走るのも遅いからだ。

 そしてその作業は早々に切り上げて、二人で剣術と初級強化魔法のレッスンをするエドガーとアイラ。


 エドガーとしてはこの村に危険があった以上、もう野心を疑われるとか、異母兄への遠慮はなかった。

 無論兄を裏切るつもりもないし、権力への執着もないが、この村を、家族を失ったかもしれないという事実はエドガーが魔法を覚えようとするのには十分な動機となった。


 無論根回しというか、兄への連絡は済ませている。

 今年最後のホーリーウッドに向かう馬車に手紙を預けた。

 普段の月々の馬車と異なり、年末と年始には村からホーリーウッドに送り出す様な食料も年貢も無いため

、村の馬車を使うわけではなくホーリーウッドから来た馬車が末端であるウェリントンまで道中によりながら手紙などを届け、帰りにその年の成果物や領主への嘆願書などを持ち帰るという制度になっている。


 今年のウェリントンの成果物はブリスが品種改良と固定化に成功した大型の丸ウサギと、アイラの発案で改良したソペ・ソル(日ノ本で言う味噌・醤油、こちらでは豆だけで作るものが多かったがアイラの育った場所では麦や米を一緒に使うものが一般的であったため前世で試作させたところ味が良く人気が出たので、今生ではそれをそれとなく母に試してもらい評価を得た。)、そして人工環境下での繁殖に成功したニワトリとホロホロ鳥のヒナを成果物として献上している。

 そして村長であるエドガーは、とある嘆願を兄に送っていた。


---

(アイラ視点)

 父に剣術の教えを請われたときはどうしたものかと思ったが、父とブリスとだけに剣術と初級強化魔法を指南し残りの村の若い衆には父から指南させることにした。

 幸い父もブリスも確か高い素養を持っていたはず・・・そう思って2年ぶりに鑑定しなおしたところ


 エドガー・ウェリントン M33ヒト/

 生命587魔法26意思194筋力31器用27敏捷26反応30把握28抵抗52

適性職業/剣士


 ブリス・ノア M34ヒト/

 生命527魔法31意思163筋力28器用31敏捷27反応22把握31抵抗68

 適性職業/槍騎兵


 と一般どころか軍官学校に通う様な才能ある学生と比べても高い水準にあること確認できた。

 それと前世で17歳前で覚えてからまったく成長しなかった鑑定のスキルがようやく体になじんだらしく見える項目が増えていた。

 また父とブリスのステータスに大差が無いにも関わらず適正職業が大きく異なるのは、おそらく見えていないだけで彼らが所有している騎乗技能や、剣術などの適正も加味されていると考えるべきだろう。


 それで、二人には初級の身体強化魔法とイシュタルト王国軍の剣術の練習法を伝えた。

 またブリスにお願いして、エッラにも剣術と槍の稽古をさせてみる様にお願いしている。

 彼女は前世では成長期を追えてから鍛錬を始めたにもかかわらず、勇者相当職の槍王にまで登り詰めた。

 その彼女の才能は今生でもぜひ伸ばしておきたいと思ったからだ。


---

(????視点)

 馬車の窓から夕刻になりつつある空を見上げる。

 ウェリントンの村まであと1時間を切った。

 整備の甘い街道は馬車の底を殴るみたいな衝撃を時々伝えてくる。

 それでも馬車はそう急いでいるわけではないので、単に道が悪すぎるのだろう。


 ウェリントンから送られてきた荷物を検分したときあまりのことに妻から貰った魔道具の万年筆を落としてしまったほどだった。

 現在取り急ぎホーリーウッド兵24名(男16名女性8名)と連れ立って移動中であった。


(さてさてなんといって挨拶したものか?)

 この数年の各開拓村の中でも特に大きな成果といえた。

 各開拓村は、まだその年の暮らしにようやく余裕ができてきたところで、とても新しい挑戦などといっている場合ではない。

 その点ウェリントンでは昨年も、肉質と生産性を改善する試作だといって豚の品種改良を進めていたし、村の周囲で取れる果物や動物の採取と利用、またほかの土地で転用できないかなどの試みを行い興味深い研究成果を挙げている。


 さすが叔父上といったところであるが、今回のウサギには驚かされた。アレはいい毛が取れると組合連中が絶賛していた。そしてこれを機に叔父上やウェリントン移民組をホーリーウッドに呼び戻すか、ウェリントンを本腰を入れて開発するかという相談のために、今回は私自らウェリントンに向かうことになった。

 そしてもう一つ・・・叔父の手紙にあった私の従弟妹たちのこと・・・。

(会ってみるのが楽しみだ・・・。)


 馬車はひたすらに南へと走っていた。

----

(エレノア視点)

 先月末、かわいがっていた2歳の牝馬ベアトリカとその母馬のアンドレアがイノシシとイタチに襲われて死んでしまった。

 私は悲しかったけれど、そのときに父も怪我をして、それでも無事に村は危機を脱して父も後遺症はなく復帰できる様であったので泣くわけにも行かなかった。

 ベアトリカの父馬のアウグストも戻ってこない家族のことを思ってか寂しそうにしている、それを何も失わなかった私が慰めてやらないといけない、当年の牝馬エヴェリーナも、まだ母馬が恋しいはずなのに・・・。

 だから父やほかの村人の無事の代わりにベアとレアがその命をささげてくれたのだと思うことにしたのだ。


 また父は、私にもしものために剣の鍛錬ををやる様にと言った。

 今回のことで、今後もウェリントンにあるいは私がいつかどこかに嫁入りでもしたときに自分の身くらい守れる様にと・・・

 それで村長のエドガーさんのところでトーレスや、アイラと一緒に鍛錬をすることになった。


 それが一昨日からのことだったのだけれど、今まで邪魔しちゃ悪いな?と思って遠目でしか訓練の様子を見たことはなかったけれど、素振りや立会い稽古に汗を流すトーレスがすごく格好良くって、今までだって、村の男の子の中ではトーレスが一番身近な男の子だったけれど(カールもピピンもエッチなことしてくるから嫌い)、なんというか・・・一緒に肩を並べて戦いたいって思ったんだ。


 それで昨日から本気で訓練に身を入れてみたのだけれど・・・。


「そこまで!」

 夕方のウェリントン邸の庭にエドガーさんの声が響く

 目の前にはトーレスの木剣が私の頭まで20cmくらいのところで止められていた。

 そして私の木剣は、トーレスの右肩と首の間、首まで4cmくらいのところで止まった。


「いや・・・驚いた。才能がありそうだと聞いてはいたが、まさかたったの3日で3年半訓練しているトーレスに優勢をとるなんてな・・・」

 と、エドガーさんは頭をかきながら笑っているけれど。

「私が女の子だから、トーレスが思い切りよく打ち込めなかったんだと思うんです。」

 と、私は思うままに答えた。

 そんな私を見ながらトーレスは


「そういうわけじゃないよ、最短で頭を狙ってた。見てわかるとおり、僕は本気で打ち込んだ。ただエッラの方がより鋭い斬撃をくれたというだけだ。」

 そういってトーレスは悔しそうというわけでもなく笑いながら筋を伸ばしたりし始めた。

 そしてそのままで妹のアイラにたずねる。


「アイラはどう思った?僕がエッラ相手に手を抜いてる様に見えた?」

「いいえ、兄さんは失礼なことはしない人、昨日までは手加減をしていたけど、今日は本気でやっていたと思う。たったの3日で同じ年頃の中では強いトーレス兄さんを追い抜くなんて、エッラの才能は群を抜いていると思うよ。」

 とアイラはとても5歳前とは思えないしっかりとした口調で評価をつけた。


「アイラ、なんかすごいね・・・?」

 かわいい近所の女の子だと思っていたアイラが剣術の練習を半年ほど前からしているとは知っていたけれど、普段は妹思いの穏やかでかわいいお姉ちゃんなのに、剣術のことになるとこんなに饒舌になるなんて・・・。


「ボクもなんだかんだ剣術は好きだから、たくさん勉強したの」

 と、こともなげに笑って言うアイラにエドガーさんはとんでもないことを尋ねる。

「アイラ、この3日見ていて、今の村の中で剣の腕で戦ったら順位はどんな感じになる?」

 と子どもに、戦いのことを聞いたのだ。

 あの子煩悩のエドガーさんが剣術の訓練ではなく戦いの順位付けを・・・


「そう・・・だね、実際に戦い合ったら、父さん、テオロさん、エッラ、トーティス、ブリスさん、兄さん、エグモントさんくらいの順かな?後はみんな団子、エグモントさんは一度命のやり取りをしたのがよかったのか、思い切りがいいよ?」

 と、迷うことなく答えたアイラに私は驚きを隠せなかった。

(今までのアイラとどこか違う?でもなんでかな?)


「アイラ、ちょっとこっちにきて?」

 その子どもらしくない強い意思をもった目を見て私はアイラを呼びつけた。

「なぁに?エッラ」

 座っていた切り株の上からぴょんと弾むように降りたアイラはちょこちょこと私の前にきて首をかしげた。

 その前後のギャップにたまらずアイラを抱きしめて頭を撫でた。


「あんまり怖い顔しないで?アイラはかわいい女の子、それはこの間怖い体験をしたかもしれないけれど、そんなに急いで大人になろうとしなくたっていいんだよ?私が強くなっているっていうなら、私とトーレスがアイラのこと大人になるまで守ってあげるから、私、その・・・内気で頼りない、とは思うんだけど・・・、みんなアイラよりお姉さんなんだから、もっと私やほかのみんなに頼って良いんだよ?」

 いきなり抱きしめられてアイラはわけがわからないかもしれないけれど、こうして抱きとめていないと、あっという間にアイラがいなくなってしまいそうだって思って、それは寂しくて、私は数分に渡ってアイラを抱きしめ続けた。

文字数に対して思ったよりも話が前に進んでくれません、この調子で前回の年代に追いつくのに何ヶ月かかるのやら・・・。


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